消費速度とは

様々な万物や行為には例外では無く「消費速度」が存在します。そこで、本稿では、「ギャンブルの消費速度」について考察します。



ゲームの消費速度

初めにわかりやすい例として、「ゲームの消費速度」を考察します。私はファミコン世代なので、小学校低学年からファミコンで遊んでいましたが、ドラクエ等のRPGはゲームの進行速度が遅く、クリアまでに時間を要するという「ゲームの消費速度が遅い」状態が発生します。

このような時は、当時はインターネットが存在しなかったので、本屋で「攻略本」を購入して、ゲームの進行速度を上げてクリアした事を覚えています。当然、「攻略本」を使用した場合、ゲームクリアまでの速度や上達速度が格段に上がり、結果的に飽きる迄の速度が上がりました。

コナミのグラディウスの自機が強化される有名な隠しコマンド「↑↑↓↓←→←→BA」や、同じくコナミの「イーアルカンフー」の敵をジャンプキックの繰り返しでKOできるハメ技なども、結果的に飽きる迄の時間が速く、「ゲームの消費速度が速い」状態が発生します。

脳科学的には処理が前頭葉から小脳線条体へ移行して、報酬予測が低下し、意欲低下から飽きが加速します。(*1)



ギャンブルの消費速度

次はゲームの例に基づき、「ギャンブルの消費速度」について考えてみます。まず、ギャンブルを行う目的は、基本的には勝利して金銭を増加させるのが目的であり、負けるのが目的でギャンブルを行う人は殆どいません。自己治療仮説でギャンブルを行っても目的は変わらないのではないでしょうか。





ギャンブルの消費速度とインターネットの発達

インターネット発達以前は遊技台の波を読んで独自にパターン化したり、いつか良い波がくるから続けて遊技しないと負けを取り返せないと思い込んで、期待値マイナスの遊技台で勝負している人が多かったです。



当時は知識の無い遊技者が多く、特に止めた後に他の遊技者に出されると思われていたのは、2〜3号機のパチスロでは当時は裏モノ(非正規基板)が全盛期であり、その仕様にフラグ保留タイプが多かったり、パチンコの連チャン機が数多く存在していた影響もあるかもしれません。

「勝利」という目的の為に遊技者自身で打ち込んで、法則性などを発見する攻略的要素が興味(面白み)になっており、勝利する為の判断要素が不確実な程、攻略的要素を考察する時間や遊技時間が長くなり、「ギャンブルの消費速度が遅い」状態が発生します。

インターネット発達以後は、「ボーダー理論」「期待値」等の論理的な知識等がインターネットで簡単に収集でき、自身で攻略的要素を考察する時間が短くなり、勝利という目的の達成可否の認識できるまでの時間が短縮されました。これは「ギャンブルの消費速度が速い」状態となります。



ギャンブルの消費速度の両価性

脳科学的には「ギャンブルの消費速度が遅い」状態の要因である、不確実であった勝利する為の判断要素や攻略的要素は、色々と考察する興味(面白み)であるので、それを「ボーダー理論」「期待値」等の確率論でのルーティン化により、前頭葉から小脳線条体へ処理が移行し、報酬予測が低下、飽きが加速、「ギャンブルの消費速度が速い」状態となります。(*1)


ギャンブル依存症サイクル

しかし、ギャンブルには両価性である「勝利への欲求」と「プレイ(遊技)への欲求」が存在しますので、「勝利への欲求」が消費され、飽きが加速した状態でも、ギャンブルのゲーム性の高さから「プレイ(遊技)への欲求」が持続的な場合には、「勝利への欲求」が消失していた場合でも、プレイ(遊技)が継続します。これがギャンブル依存症での問題が継続する要因の一つとなるのです。





ギャンブル依存症のリスク変動

その要因を、ギャンブル障害およびギャンブル関連問題実態調査報告書(以下、久里浜実態調査報告書(2021)(*3)とギャンブル等依存症の治療・家族支援に関する研究総合研究報告書(*4)の調査から検証します。

調査からは、当たりまでの過程が複雑で判断要素や攻略的要素が多様で興味(面白さ)となっている、払い戻し率の高いパチンコ等はリスクが高く、当たりまでの過程が単純であり、払い戻し率の低い宝くじ等のリスクが低くなる事を示唆しており、この事から払い戻し率の高低やそのゲーム構造によりリスクが変動すると考察できます。

つまり、一方の欲求が消費されてもプレイ(遊技)が継続し、問題を継続させる要因の一つとなる理由は、パチンコ等の当たりまでの過程が複雑なギャンブルにおいて、興味となる相互に持続する二つの欲求により、問題が発生、継続させているからです。

対して、宝くじ等のギャンブルでは、考察過程が単純で払い戻し率が低い事から「飽き」が速くなり、問題が発生しずらい事が考察できます。



ギャンブル等依存症が疑われる人(推計)

国立病院機構久里浜医療センター(以下、久里浜医療センター)の調査による2013年の調査では約536万人、2017年の調査では約320万人が生涯においてギャンブル依存症疑いでありましたが、私はインターネット聡明期以前からパチンコやパチスロを遊技していたので、当事者の規模はインターネット発達以前と以後ではかなり減少したのではないかと考察します。

その理由は前述の通り、「ボーダー理論」「期待値」等の論理的な知識や戦略的な知識等がインターネットで簡単に収集できるようになったからです。


ギャンブル等依存症調査比較

情報が共有された現代では、「ボーダー理論」「期待値」等の論理的な知識や攻略的要素の知識等 を有した遊技者(プレイヤー)が増加しており、それが上記の調査における、直近1年のギャンブル依存症疑い率の低さに繋がっていると考察できます。社安研調査(*3)での回復者の65%が自ら回復方法を考察しているのも、情報が共有されている事を裏付けているのではないでしょうか。

情報量が圧倒的に多くなった現代では、それを避けた対策は問題解決の本質を見誤る可能性を否定できません。



ギャンブル依存症で持続する二つの欲求への対応策

国立大学で数学を専攻、統計関連部署に配属された、ギャンブル依存症に悩む厚労省の元官僚の話が朝日新聞デジタル(*5)に掲載されていましたが、パチンコは「大当たりは確率で制御、長期的には必ず負ける」と理解していたのであれば、「勝利への欲求」は消費されており、「遊技への欲求」が持続しているだけです。

それならば、以下のように対応策を提案し、「遊技への欲求」を消費し、期待値がプラスの時だけパチンコ店で遊技、もしくはSNSで上級者に打ち子として雇って貰えば良いのです。



そもそも「大当たりは確率で制御、長期的には必ず負ける」は、一見正しいように見えますが、損益分岐点は釘で調整しており、遊技者の技量が反映されている事実を見落としています。

また、統計学に精通しているのであれば、ボーダー理論や期待値に全く言及していない点も怪しく、この記事を執筆した朝日新聞の堀之内健史記者はパチンコ等の知識に疎く、捏造している可能性も否定できません。




上記のギャンブル依存症問題を考える会(代表:田中紀子氏 - Twitter:@kura_sara)の動画では、当事者は競馬等で予想しているのが楽しいのであれば、賭けずに予想だけしていれば良いのではないでしょうか。

物足りないと言うのであれば、SNS等で同じような予想が好きな人を募り、1000円で100万ポイントを付与して、ポイントに応じてささやかな景品と交換すれば、満足度もあがります。

また、データを蓄積して予想方法の向上を目標にし、払い戻し率が100%を超えた時に現実において投票すれば、問題は発生致しません。


  • 当事者:「赤が5~6回続くとこんなに連続する確率は何百分の一だ。だから次に黒が出るに違いない。そしたら、また赤がでちゃう。そこで大金を失っていく。」

  • 田中氏:「確率計算をして、自分がその推理をして、それを当てるっていう事に喜びを得るタイプ。」

  • 当事者:「その通りですよね。競馬なんかも勝った時よりも予想している方が楽しかった。」

この動画でも怪しい点があります。当事者は赤の出現が5~6回続く確率が何百分の一と発言していますが、ハウスエッジ(0、00)も含めた赤の出現率は18/38、約1/2.1(約47.3%)であるので、赤が6回連続で出現する確率は約1/85.7(約1.1%)です。

そもそも、この確率はその時点から赤が6回連続で出現する確率なので、次に黒が出現する確率は約1/2.1です。次が黒が出るに違いないと確信している当事者は、理数系の大学院を卒業しているにも関わらず、ルーレットでのハウスエッジやベルヌーイ試行(独立試行)も理解しておりません。


へぇ~!だとすると、もうそれだけで依存症の人達ってハマりそう。だって169回まわせば、少なくとも1回は大当たりが来る~!って、座った途端に、ドーパミンが出そうな気がします。競艇なんかそんなのないですもんね。(*6)


動画においても「確率計算をして」とベルヌーイ試行で試行が独立している事が全く理解できていませんが、上記の田中氏のブログにおいても同様であり、田中氏が脚本を書いた捏造の可能性があります。


  • 「出玉が稼げないとわかっていても、長くやれば取り戻せると考え、時間と投資金額は増えると思う。」

  • 「コツコツやっていれば取り戻せると思う」

  • 「依存症者は損得勘定など麻痺していて、稼げないことなど分かっていてやっている」

  • 「とにかくやれれば良い。感覚は一緒。当たりの感覚があれば良い。当たった気持ち良さがあれば出玉は関係ない。」

  • 「勝ち負けにこだわるより、台の前に座ったら安心できた。ある意味、負けに行っていた。」

上記引用は、アゴラの田中氏の記事(*7)でのギャンブル依存症当事者の言葉ですが、「勝利への欲求」が持続している当事者には、「ボーダー理論」「期待値」等の論理的な知識や戦略的な知識等で持続している興味の消費を促す提案をしなければいけません。

また、収支は関係無いとする「遊技への欲求」が持続している当事者には、前述の通り、実機の購入等で持続している興味を消費させてあげれば、問題は最小限になります。パチンコが楽しくて当たりを「購入」している当事者には、いかにお金をかけずに当たりを購入できるのかを提案しなければいけません。



*2022年12月17日後半部分を削除致しました。


合わせて読みたいエントリー


(*1)参照元・バス事件、あれこれ - 公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授・篠原菊紀氏
(*1)参照元・ドーパミン危ない説って本当?- 公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授・篠原菊紀氏
(*2)参照・引用元・パチンコ・パチスロ遊技障害研究成果中間報告書 - 公益財団法人日工組社会安全研究財団
(*3)参照元・令和2年度依存症に関する調査研究事業「ギャンブル障害およびギャンブル関連問題実態調査」報告書 | 研究代表者:独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター
(*4)参照元・厚生労働科学研究費補助金障害者政策総合研究事業ギャンブル等依存症の治療・家族支援に関する研究令和元年ー令和3年総合研究報告書 | 研究代表者:松下幸生氏(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター)
(*5)参照元・ギャンブル依存症に悩む人、乗り越える人 パチンコ断ち、118日目に「スリップ」
(*6)参照元・警察庁が打ち出した依存症対策の設定復活は逆にヤバい!です - 公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会 田中紀子氏
(*7)参照元・パチンコ出玉規制はギャンブル依存症対策にはならない - ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子氏 | アゴラ