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Troopers Depo:田原坂の戦い/ウォーゲーム・ハンドブック2017(K2P)(0101)


毎年、前年出版された自社ゲームのカタログと連載コラムの一括再掲に加えてゲーム付きで刊行されている国際通信社のウォーゲーム・ハンドブックの2017版の付録ゲームである表題作をプレイしてみます。
西南戦争の全体像を描くゲームは、国内ウォーゲーム誌各誌で取り上げられていますが、個々の戦闘について扱ったものは、これまであまり見かけませんでした。
以前全く同じ題材で季刊タクテクス誌に要コンポーネント自作ゲームとして付録になったゲームをプレイしたことがあるのですが、表駄作はなんと時代や装備も全く違いますが、ドイツ戦車軍団システムがベースとなっており、シンプルなのはわかりますが、このシステムがどう機能するのか興味津々です。


1.ゲームの概要

(1)全般
表題作は先に書いた通り、所謂ドイツ戦車軍団システムを使用しており、簡単には交互に移動/戦闘を行いますが、同システムの特徴として戦闘で退却したユニットは混乱状態として直近自手番終了時の回復まで移動/戦闘ができなくなりZOCもなくなる、というものです。
これにより、退却することで両脇を敵がすり抜けていくことも可能となり、単に土地を明け渡すだけではすまない効果が生まれます。
この他連絡線、陣地、抜刀隊といった個別ルールを加えたものとなっており、特に連絡線は高地がマップの大半を占め、かつ要地を取り込んだ地形ですが、こうした地形では原則街道沿いにしか連絡線が通らず、孤立すると退却時の混乱と同じ状態となるため身動きが取れなくなります。
こうした連絡線が通らない地形には部隊によるサプライチェーンを作ることで連絡戦を通すことができますが、こうした地形での連絡線を通す動きはドイツ戦車軍団シリーズの中でも独特な動き方となります。

田原坂を巡る戦いについてはウォーゲームハンドブック本誌にコンパクトにまとめられていますし、いつもながらですがネット上ではウィキペディア等でサクっと概要をつかむことができます。

ゲームは、1877年2月22日、両軍が木葉と田原坂で対峙する状況から始まります。
最終的にはやはり政府軍の勝利が明白なため、ゲームは薩摩軍の攻勢から政府軍が反撃に転じ、田原坂辺りまで押し返す辺りまで、という切り取り方となっています。
またゲーム劈頭の薩摩軍の奇襲/先手を表すため第1ターンは薩摩軍のみ二度戦闘を行える特別ターンとなっています。

これらを加味した勝利条件は、政府軍が自軍補給源から薩摩軍補給源まで続く街道を七本まで啓開することで、また薩摩軍が5ターン終了時に高瀬を占拠していればそれぞれサドンデス勝利となります。
それ以外は中央を通る街道をより長い距離確保している方が勝利となりますが、両軍が自身の補給源から途中で連絡線を切られることなく連続した街道を確保していたとすればヘクス1207を確保しているかどうかが勝敗の分かれ目となります。
途中で街道への連絡線が切られている場合は、補給源からの連続した街道の確保数によりますので、敵部隊撃破もさることながら連絡線確保(あるいは遮断)を巡る戦いも大きな焦点となりそうです。

両軍の兵力は、序盤、政府軍の1個連隊と第1旅団先鋒、薩摩軍の二個大隊が盤上にて対峙した状態で開始され、その後両軍が逐次増援で政府軍が2個旅団、薩摩軍が5個大隊を投入してエスカレートしていく展開です。
なお、開始時に木葉付近に展開している政府軍の第14連隊には本誌にもさらりと触れられていますが、後の日露戦争で有名となる乃木希典が率いており、これは本誌では書かれていませんが、この序盤の戦いで第14連隊は連隊旗を薩摩軍に奪われるという事件も起きています。

地形的には、高瀬と七本は高地と山地で遮られ、そこを通過できるのは1本の街道のみとなり、七本から少し北西に高地帯に入った所が田原坂があります。
勝利条件から、また先の連絡線を通すルールであるこの街道を巡っての激戦は必至でしょう。


2.シチュエーション分析と方針

(1)分析
既に両軍は田原坂付近でにらみ合いをしていることや、周辺が悪地であることから機動戦は困難であり、先に書いたように街道、その南北を通る道路に沿っての攻勢が主となりそうです。
ただし、街道沿いの攻勢は両軍とも部隊がサプライチェーンをつないで高地内を踏破する等の機動(史実でも政府軍は街道沿いの正面攻撃が頓挫すると高地帯を抜けて薩摩軍の側背を襲うという作戦に切り替えています)で相手の裏をかくことも必要となるでしょう。

(2)政府軍の方針と配置
序盤は薩摩軍にモメンタムがありますが、序盤に概ねの増援が逐次投入ではありますが、戦場に到着します。
ここまでに高瀬までの突破をなんとか阻止すること(なんせサドンデス条件なので)を優先課題とします。
政府軍も損害を受けるでしょうが、可能ならこの過程で薩摩軍にも少なからずダメージを強いるような戦闘/布陣を指向します。
増援が到着した後は数の優位をもって木葉を通る街道だけでなく、南北の道からも侵攻を匂わせることで、薩摩軍戦力の分散を狙います。
もし薩摩軍が乗ってこなければいずれかのルートから薩摩軍後方に回り込むだけですし、それなりに薩摩軍が対応してきた場合は、一番脆弱な箇所を高瀬周辺に拘置した予備戦力をもって突き崩して突破を図り、やはり薩摩軍後方へ回り込み退路を立って戦力漸減〜街道開通を狙います。
総じて序盤を如何に薩摩軍の攻勢を凌ぎ、損害を与えるかが戦局全般を左右するという考えで緩急をつけたいと思います。

(3)薩摩軍の方針と配置
薩摩軍は大きく攻勢〜守勢の流れとなるのは明らかです。
高瀬奪取によるサドンデスは続々登場する政府軍増援を見るに、よほど悪手を打ってくれない限り非常に困難であると考え、明らかなチャンスがない限り選択肢には入れないものとします。
基本は政府軍の侵攻ルートである街道を含む3本の道路にて可能な限り西進した後、陣地を全道路に置いて封鎖しつつ、政府軍の攻勢度合いに合わせ部隊は遅滞戦術で植木西方までできるだけ緩やかに撤退しつつ政府軍攻勢を受け流し街道を確保するものとします。
南北の道路はあくまで政府軍による後方突破を阻止するためのもので防御の中心はあくまで街道沿いとします。
また史実通り政府軍が高地を通って迂回機動しないよう、街道と南北の道路間の高地/山地にも部隊を数珠つなぎとしてZOCを交えた防衛線を構築して浸透を阻止します。
ただし、これは政府軍がそうした動きを見せてからの対応とし、そのために植木方面の街道/道路上に予備を拘置していずれの方向にも機動できるよう待機させます。
あくまで政府軍とは街道の確保距離での勝負を狙い、そのために序盤できるだけ政府軍を西まで押し戻す(撃破にはあまりこだわらない)ことを指向します。


3.プレイの経過

第1ターン(1877/02/22〜1877/02/24)。

薩摩軍は、第1ターンに投入される全軍の一部の登場を遅らせることもできますが、マップ上に予備として拘置させても同義であると考え、全てを予定通り投入するものとします。
また元々盤上にいる部隊は、伊倉方面から高瀬を目指す一隊と七本から街道を通り高瀬を目指す一隊に分けることとします。
増援は街道の南北の高地にスクリーンを張る二隊と北の道を封鎖する一隊を進ませ、残る二個大隊は植木で予備として拘置という布陣です。
戦闘は薩摩軍による木葉にいる政府軍の乃木希典率いる第14連隊を攻撃のみ。
これは、政府軍にうまく守られ、絶好のチャンスに損害を与えることができませんでした。
しかし、二度目の攻撃でやっと政府軍を撃退することに成功します。

★せっかくのダブルアタックのチャンスを得ていた薩摩軍ですが、ここで政府軍にほとんど損害を与えることができなかったのは、出だしとしてあまり良くない印象です。

第2ターン(1877/02/25〜1877/02/27)。

木葉周辺の第14連隊は木葉の部隊が後退したことで連絡線が途絶して混乱状態へ陥ります。
政府軍は慌てて高瀬の部隊を東進させて第14連隊との連絡線回復を図ります。
また北から到着した増援は三隊に分けて、一隊は伊倉北まで進出させます。
そしてもう一隊は北の道を進む薩摩軍の牽制及び反撃のために、残る一隊を街道沿いに第14連隊支援のために送ることとします。

薩摩軍は木葉西方の街道沿いで政府軍第14連隊に対する攻勢を継続し、やっと二個大隊を撃破する戦果を得ます。
しかし、街道を挟んだ南側では逆に政府軍の反撃を受け撃退されてしまいます。
また南北両翼の道路沿いでも助攻を実施し、北では一個連隊弱を撃退し、高瀬北の街道を封鎖する勢い。
局所的には勝利している薩摩軍ですが、全般的に見ると戦場のモメンタムを得ている割にはいまいちそれに見合う戦果が伴っていないのが気になります。

(続く)