いびつな本棚

私の本棚にある本を、既読未読を問わず、一日一冊ずつ紹介します。死ぬまで続けます(予定)。なお、予告なくネタバレを書くことがあります。

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宮田律『現代イスラムの潮流』(2001年、集英社新書)

 イスラム世界における(執筆当時における)政治的状況の概略を綴っている。イスラム教の原理的な側面、思想的な側面については深くは語られていない。アメリカ同時多発テロ事件の直前に出版されている。面白く読んだが、もうすでに16年も前の本になってしまった。

 まえがき
 第一章 イスラムとは何か
  イスラムのイメージ
  ムハンマド
  五行と六信
  ムスリムの生活習慣
  イスラムの民族
  繊細な感性のイラン(ペルシア)
  親日国家のトルコ
 第二章 イスラムの宗教と、民族の融和と抗争
  救世主思想のシーア派
  宗派のモザイク社会、レバノン
  〔被抑圧者〕としてのシーア派
  イスラム世界の民族紛争とクルド人
  イスラムと異教徒との闘争
 第三章 成長する〔イスラム原理主義〕とは何か
  なぜ〔イスラム原理主義〕か
  イスラム政治運動の発展過程
  成長するイスラム政治運動
  教育や福祉を重視して成長
 第四章 パレスチナ問題──イスラムと異教徒との最大の紛争
  イスラムにとってのエルサレムの意義
  ユダヤ人のナショナリズムとホロコースト
  イスラエルの成立とパレスチナ難民の発生
  第三次中東戦争とユダヤ人によるエルサレム支配
  第四次中東戦争とレバノン戦争
  パレスチナ人の〔蜂起〕イスラム勢力の台頭
  パレスチナのイスラムとイスラムのパレスチナ
 第五章 現代の〔ジハード〕をスケッチする
  イスラムの平和思想とアフガニスタンのフランケンシュタインたち
  パキスタン──急進的なイスラムの震源地?
  エジプトのイスラム過激派
 第六章 イスラムとの共存・共生を考える
  イスラムとアメリカの間に生じる誤解と〔衝突〕
  〔衝突〕の背景──ユダヤ・ファクター
  イスラムに対する偏見をいかに乗り越えるか
  イスラム世界の内なるジハード
 主要参考文献

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会田雄次『アーロン収容所 西欧ヒューマニズムの限界』(1962年、岩波新書)

 これは名著。ビルマでイギリス軍の捕虜になった体験を綴ったもの。「イギリス人の正体を垣間見た」とまえがきに書いているように、彼らは理性とかヒューマニズムといったものに立脚しながらも、その背後に日本人に対する強い差別意識を持っているのだった。

> イギリスの女兵士は、なぜ日本軍捕虜の面前で全裸のまま平然としていられるのか。英軍は、なぜ家畜同様の食物を捕虜に与えて平然としていられるのか。ビルマ英軍収容所に強制労働の日々を送った歴史家の鋭利な筆はたえず読者を驚かせ、微苦笑させつつ西欧という怪物の正体を暴露してゆく。激しい怒りとユーモアの見事な結合がここにある。この強烈な事実のもつ説得力の前に、私たちの西欧観は再出発を余儀なくされるだろう。(カバー折り返しの紹介文)

 まえがき
 捕虜になるまで
  終戦前夜
  戦後の犠牲
  アーロン収容所へ
  捕虜生活に入る
 強制労働の日々
  女兵舎の掃除
  乞食班、泥棒班……
  「これが捕虜の顔だ」
  屠畜と飼育
  イギリス人の残忍さ
  騎士道英国
  イギリス下士官「禿鷹」
 泥棒の世界
  泥棒になるまで
  日本兵の奴め、泥棒では神様だ
  演劇班と泥棒
  ビルマ人の盗み
  イギリス人少佐の盗み
 捕虜の見た英軍
  青白きインテリはいない
  算術のできないイギリス兵
  イギリス兵の責任感
  「イングリ」とインド人
  剛健愚直なグルカ兵
  インド兵の見た日本軍捕虜
  黒い皮膚をめぐって
  インド兵の信頼を失う
  頼りないインド人
  インドの太陽
 日本軍捕虜とビルマ人
  ビルマ人兵補モングイ
  糞尿集荷作業にて
  イラワジ河の船頭
  ビルマの青年の楠公精神
  「日本の兵隊さんの子」
  怒らないビルマ人
  再び「残虐性」について
  よく働くビルマの子供
 戦場と収容所 ──人間価値の転換
  対陣中の統率者
  戦場から収容所へ
  捕虜生活の新指導者(1)
  捕虜生活の新指導者(2)
  捕虜の慰め
  『魚の歌』
 帰還

 このイギリス人の残虐性・差別意識を、マゾヒズムとアルビニズムで反転させて日本人の側から味わうと、『家畜人ヤプー』の世界になる。実際会田がここで書いている体験は、沼正三がエッセイで書いている体験と酷似している。


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小谷野敦『バカのための読書術』(2001年、ちくま新書)

 ベストセラー『もてない男』を書いた著者による読書案内。気にくわない本は乱暴に一刀両断していて面白いが、それだけに書かれていることを全面的に信用するわけにはいかない。例えば、105頁以下に読んではいけない本をずらっと挙げてあるところがあるのだが、そこに、「小林秀雄のほとんどすべて……日本の評論分を非論理的にした最大の元凶が小林である。」とか「河合隼雄『昔話と日本人の心』……大佛次郎賞受賞作だが、なんら学問的意味のない思いつきエッセイ。」とか「中沢新一のすべて……いんちき。」などと述べている。解釈が前面に出たものより、「歴史的事実」を述べた本を高く評価している傾向があるように思う。『もてない男』を別人が書いていたら、やっぱり「いんちき」などと言いそうな気がする。

 序言──バカは「歴史」を学ぶべし
 第一章 「難解本」とのつきあい方
  「あなたがバカだからです」事件
  特別頭が良くなくても……
  「ニュー・アカデミズム」はわからん
  科学と、科学でないもの
  日本にもある「『知』の欺瞞」
  難解でなくても面白い
  学問の根幹は歴史である、事実である
  インターミッション(1)外国語の習得法
 第二章 私の「知的生活の方法」
  蔵書派とカード派
  『知的生活の方法』はそんなに悪くない
  図書館、古本屋などの使い方
  新聞の使い方
  雑誌の活用法
  梅原―益田論争
  辞典、辞書、地図、年表など
  インターミッション(2)不純な動機の読書
 第三章 入門書の探し方
  新書判は必ずしもいい入門書ではない
  「解説」は使える
  「バカだと思われたくない」インテリ病
  経済学「入門」書
  「通俗心理学」は怪しい
  これからは統計学の時代である
  宗教「学」というのもおかしい
  政治学より、政治の歴史を
  インターミッション(3)女性伝記の楽しみ
 第四章 書評を信用しないこと
  日本の書評は褒めすぎ
  「ブックガイド」も凝りすぎ
  読まないでいい本を決める
  本邦初「読んではいけない本」ブックガイド
  インターミッション(4)知られざる世界
 第五章 歴史をどう学ぶか
  「史観」とは何か
  二種類の歴史の書き方
  「面白くない」のはやはり困る
  呉智英は「隠れ左翼」か?
  現代の若者の知力低下について
  歴史小説でも、歴史マンガでもいい
  世界史は概略がわかればいい
  難解でない歴史入門ブックガイド
  インターミッション(5)入手困難な本
 第六章 「文学」は無理に勉強しなくていい
  私は「国語」が苦手だった
  高校の「現代国語」は面白くない
  「小説」というジャンルの機能
  バカもこじらせてはいけない
  名作が名画になることもある
  私家版小説ガイド
  「バカのための年齢、性別古今東西小説ガイド」
  インターミッション(6)旅のお供の本
 終章 「意見」によって「事実」を捻じ曲げてはならない
 バカには難しいかもしれないあとがき

2017_05_07_35
村上陽一郎『ペスト大流行 ヨーロッパ中世の崩壊』(1983年、岩波新書)

 ペスト流行についての概要をコンパクトに知ることのできる良い本だと思う。

 序 ペストの顔
 一 古代世界とペスト
  ペストの記録
  最初のペスト文学
 二 ヨーロッパ世界の形成とペスト
  ペストのヨーロッパ
  変る中世社会
 三 黒死病来る
  黒死病前夜
  どこから来たのか
 四 恐怖のヨーロッパ
  ボッカチォの描く世界
  大流行の諸相
 五 さまざまな病院論
  黒死病以前の病院説
  十四世紀の病院論争
  なぜ伝染するのか
 六 犠牲者の数
  雨の降る日には糖蜜を
  死者の推定
 七 黒死病の残したもの
  隔離政策の出現
  ユダヤ人迫害
  鞭打ち運動
 八 黒死病以後
  中世の崩壊
  沈黙の祈り
  その後の大流行
 あとがき
 主な参考文献
 索引

 この本については『芸の不思議、人の不思議』に書いたことがある。

●『ペスト大流行』村上陽一郎(2007.2.2)

この本を手に取ったのは、実は落語「死神」への興味からなんです。金成陽一のエッセイに、「死神」の原話とされる「死神の名づけ親」(『グリム童話』)について、こんなくだりがありました。

> ボルテとポリーフカの研究によれば、「死神の名づけ親」のルーツは一三〇〇年代にまでさかのぼれるという。この世紀は黒死病と呼ばれたペストが、ヨーロッパのほぼ三分の一の人々の命を奪い去った恐ろしい時期であった。(『未来』1994年12月号)

つまり、「死神」に鮮烈に描かれているあの死のイメージは、ひょっとするとペストがヨーロッパにもたらした死のイメージなのかも知れないのです。もしそうだとすると、いま日本で「死神」が演じ、聞かれているということは、物語が700年の時間と洋の東西を超えて、一つのイメージを運んだということになります。物語が一つの記憶装置として機能していることになるわけです。なんだかとっても素敵ではありませんか。

さて、『ペスト大流行』ですが、非常に面白かった。コンパクトにペストをめぐるいろいろのことがわかりました。

ヨーロッパでペストが流行したのは、6世紀、11世紀、14世紀、17世紀、そして19世紀だそうです。本書は、14世紀のペスト流行についてもっとも重きを置いて書かれています。

農奴制など中世の諸制度が完成したのが13世紀。完成したということは、それが崩壊して新しい時代に向かう端緒でもある、ということです。新しい時代に向かって動きはじめたその歩みを、ペストが強力にバックアップした、という指摘はとても興味深いものでした。

例えば、ペストによって多くの農奴が死に、農業が機能しなくなる。領主たちは労働力を確保するために、仕方なく賃金を払って労働力を雇い入れることになる。ここに賃金労働者というものが生まれるわけです。これが、他の大きな流れとも相まって、資本主義の誕生につながっていくんですね。

さて、ヨーロッパ中世における死のイメージについてはどうでしょう。

本書にはこんなエピソードが紹介されています。「三人の生者と三人の死者」という短い物語が中世にあったそうです。

今を盛りと生を謳歌する三人の若者が、楽しみを求めて狩りに出る。気がつくとそこは墓場だった。彼らはそこで、三人の死者と出会う。死者はそれぞれ、教皇、枢機卿、教会高位聖職者と名乗った。彼らは骨になった指で生者たちを指しながらこう言った。「われらを憶えよ」と。

この物語は、「メメント・モリ(死を忘れるな)」を端的に表現しています。物語自体は13世紀のフランスには既に成立していたのだそうですが、メメント・モリが人々の意識に強く刻まれるようになったのは、14世紀のペスト以降のことだそうです。

なにか「死神」のもとになった死のイメージに触れたような気がしました。ただ、ヨーロッパの死のイメージについては、もっと詳しく知りたいと思うようになりました。

2017_05_07_34
石川文康『カント入門』(1995年、ちくま新書)

> 理性の欺瞞性というショッキングな事実の発見こそが、カント哲学の出発点であった。(略)彼の生涯を貫いた「内面のドラマ」に光をあて、哲学史上不朽の遺産である『純粋理性批判』を中心に、その哲学の核心を明解に読み解き、現代によみがえる生き生きとした新たなカント像を描く。(カバー折り返しの説明文より)

 はじめのほうはわかりやすく読み進めていたが、やっぱり途中から難しくなってきた。

 はじめに──血のかよったカント
 第1章 純粋理性のアイデンティティー
  1 カント哲学をつらぬくもの
  2 純粋理性のパラドックス──アンチノミー(二律背反)
  3 「独断のまどろみ」からの目覚め
 第2章 カント哲学の土壌と根──批判哲学への道
  1 証明不可能な根本真理──伝統的合理主義のまがり角
  2 「哲学者カント」の誕生
 第3章 迷宮からの脱出──第一アンチノミーの解決
  1 仮象を見ぬく視座
  2 「黎明」から「大いなる光」へ──第一アンチノミーの解決
 第4章 真理の論理学──経験世界の脈絡
  1 有意味で必然的な認識──ア・プリオリな総合判断
  2 人間の思考の根本枠──カテゴリー
  3 経験世界の脈絡──ア・プリオリな総合的原則
 第5章 自然因果の彼岸──自由と道徳法則
  1 自由の保証
  2 道徳的仮象と真の道徳──条件つきの命法と無条件の命法
  3 道徳法則への尊敬の念
  4 定言命法の定式
  5 「天におのれを懸けるものなく、地におのれを支えるものなし」
 第6章 自由と融合する自然──反省の世界
  1 目的因から合目的性へ
  2 目的なき合目的性
  3 自然の妙技
 第7章 理性に照らされる宗教
  1 道徳は不可避的に宗教にいたる
  2 根源悪
  3 理性宗教の具体相
 むすび──批判哲学の原体験

2017_05_07_33
小浜逸郎『やっぱりバカが増えている』(2003年、洋泉社新書)

 タイトルや見出しは煽情的だが、述べていることはきちんとしている(すべて賛成するかどうかは別として)。タイトル等は洋泉社の編集者がつけたのかも…とも思う。

 第一章 この利口バカな小権力者たちを見よ!
  1 上野千鶴子 その鉄面皮な政治主義と権威主義の仮面を剥げ
  2 斎藤学 このフェミニスト気取りの屁理屈屋を嘲笑せよ
  3 寺脇研 歴史上の最愚策「ゆとり教育」の元凶を糺せ
  4 立花隆 この「知の巨人」は裸の王様だ!
 第二章 社会をめぐるおかしなおかしな非常識
  1 「対話」はどこへ行ったのか
  2 「きずな」は薄れるだけなのか
  3 オウム信者に人権はないのか
  4 カルト宗教の向こうに何があるのか
  5 退屈が新しい「殺人衝動」をつくりだした?
  6 十二歳は子どもなのか
 第三章 性と家族の迷走を糺せ
  1 男女はどこまで「平等」なのか
  2 ジェンダーフリー教育はなぜ「愚か」なのか
  3 夫婦別姓はなぜ間違いなのか
  4 「母」であること、「父」であることとはなんだろうか
  5 いま父親はどんな役割を求められているのだろうか
  6 どうしたらバカ社会を終らせられるか
 あとがき

 上野千鶴子の言説について、

> 彼女は、「戦略」という言葉がとても好きで、いつでも自分は状況に対して意識的で醒めているというメンツを保ちたいのだと思います。(P.25)

 という指摘は私も感じていた。上野だけではなくて、フェミニスト同士の対談を読んでいると、互いにこんな言い回しばかりしていて辟易する。私がフェミニズムに興味を失った原因の一つはこんなところにもある。

2017_05_07_32
織田淳太郎『審判は見た!』(2003年、新潮新書)

 「威厳と珍事の狭間で、審判が垣間見たプロ野球裏面史とは!?」とカバー折り返しの紹介文にあるように、プロ野球の審判についてのエピソードを集めている。「スポーツにおいて審判はどのような意義を持っているのか」「審判とはどうあるべきか」というような考察はほぼしていない。面白いが、エピソードを集めた面白さである。

 はじめに 頻発する誤診騒動
 第一章 審判失格
 第二章 プロ野球審判という職業
 第三章 審判残酷物語
 第四章 ジャッジは不変か
 第五章 マスクと共にカツラが飛んだ!
 あとがき
 主要参考文献リスト

2017_05_07_31
小谷野敦『もてない男 恋愛論を越えて』(1999年、ちくま新書)

 この本はそうとう売れたらしい。まずタイトルのつけ方がうまい。内容もそれに応じて画期的である。どう画期的かというと、男の「見苦しさ」を堂々と俎上に乗せている点である。学術的記述というよりエッセイに近い。面白く読んだ。

> 本書では「もてない男」の視点から、文学作品や漫画の言説を手がかりに、童貞喪失、嫉妬、強姦、夫婦のあり方に至るまでをみつめなおす。これまでの恋愛論がたどり着けなかった新境地を見事に展開した渾身の一冊。(カバー折り返しの紹介文より)

 まえがき
 第一回 童貞であることの不安──童貞論
  「童貞」という問題
  女を知る「おそろしさ」──二葉亭の『平凡』
  未亡人、突然の誘惑──鴎外『青年』
  童貞喪失の相手
  童貞がおいそれと失えない理由
  娼婦相手の童貞喪失の虚しさ
  マンガのなかの童貞
  童貞の苦悩──三木卓作品から
  四十まで童貞だった男──アミエル
  「やってみるとあっけない」のか?
  【童貞をよむためのブックガイド】
 第二回 「おかず」は必要か?──自慰論
  オナニーが異性愛?
  オナニーの覚え方
  「おかず」の発見
  オナニー用具の歴史
  女のオナニー
  『源氏物語』はオナニーに使われたか
  オナニー有害論
  セックスの相手がいないこと
  「性的弱者論」
  【オナニスムを窮めるためのブックガイド】
 第三回 女は押しの一手?──恋愛論
  いきなりキスしたり、強姦したり
  「女は押しの一手」思想
  恋の手管、愛の技術
  無償の愛の貫き方
  一人に決めるとなると…
  正しい恋する男のあり方
  完全な片思いはあるか
  理想の女性像はいかにして形成されるか
  その人でなければならない理由
  男はみんなマザコンである
  【恋愛を深めるためのブックガイド】
 第四回 てめえらばっかりいい思いしやがって!──嫉妬・孤独論
  「法界悋気」とルサンチマン
  「もてない男」への反響
  フェミニストはブスの味方か?
  男はフェミニストたりうるか、という問題は別にやるとして…
  ルサンチマンの効用
  それでも妬ましい
  友だちがいない男たち
  孤独を描いた文学が少ない
  【孤独を癒すためのブックガイド】
 第五回 妾の存在意義──愛人論
  妻は持たずに妾を置く
  妻の機能、妾の機能
  オンリーユー・フォーエバー
  妾こそが情愛の対象
  妾は一時の慰み物
  階級がなくなったこと
  一夫一婦制は有効か
  恋愛遊びをしたいなら…
 第六回 強姦する男、誘惑する女──強姦・誘惑論
  ある強姦をめぐる文章
  強姦事件の詳細
  「近代」が訪れていない
  正しい姦通罪の成立に向けて
  「強姦は憎しみから起こる」理論
  古典文学の中の強姦
  強姦か、誘惑か
  据え膳食わぬは…ってどういう意味?
  正しい誘惑の仕方は?
  【強姦を考えるためのブックガイド】
 最終回 恋愛なんかやめておけ?──反恋愛論
  松田道雄と神島二郎
  恋愛にしか人生の喜びがないなんて…
  「恋愛教」は現代最強の宗教である
  ああ、デコちゃん…
  恋愛結婚の起源
  結婚の捉えなおし
  『さようなら、コロンバス』は読んではいけない
  「恋愛不要論」連戦連敗
  【恋愛を超越するためのブックガイド】
 あとがき
 登場する著作社名索引

2017_05_07_30
村上征勝『シェークスピアは誰ですか? 計量文献学の世界』(2004年、文春新書)

 計量文献学というものを初めて知った。計量文献学の手法を使うと、文章のさまざまな要素を計量することで、書き手を特定することができるのだそうだ。とても面白い。

 はじめに
 1 かい人21面相の脅迫状と文体分析
  グリコ・森永事件
  書き手は二人?
  作家・内田康夫氏の推理
  脅迫状・挑戦状の漢字含有率
  かい人21面相の文章の模倣
 2 筆跡鑑定にかわる「文章の指紋」
  筆跡鑑定がむずかしくなった
  文体から書き手を推定する
  「パウロの書簡」をめぐる古くからの疑問
  文章の指紋
  この三人の作家の正体は?
  一人三人作家
  三つのペンネームによる文章の共通点──読点の付け方
 3 文学作品と哲学所の著者を推定する
  I シェークスピアは誰か?
   Did he exist or didn't he?
   シェークスピアの候補たち
   単語の長さの分析から
   シェークスピア別人説のその後
  II プラトンの『第七書簡』は贋作か?
   贋作説の背景
   二重母音、不変化詞を分析すると
   文の長さの分析で贋作説を否定
  III マーク・トウェインの戦争経験談?
   南北戦争経験談『Q・C・Sレター』はマーク・トウェインの著作か
   単語の長さを分析すると
   マーク・トウェインのシェークスピア別人説
  IV 『静かなドン』をめぐる疑惑
   ショーロホフとソルジェニーツィン
   『静かなドン』は盗作か
   コンピュータの分析では
  V 『紅楼夢』は一人の作家が書いたものか
   曹雪芹はどこまで書いたか
   四七の虚詞
   八一回以後は高蘭墅の作か
 4 聖書と宗教書の著者を推定する
  I 『キリストにならいて』は誰が書いたか
   著者はケンピスかジェルソンか
   語彙の豊富さを計るK特性値
  II 『旧約聖書』の中の「イザヤ書」の著者
   聖の予言者イザヤ
   著者は三人か
   文章の一貫性に疑問
   分析の問題点
  III 『新約聖書』の「パウロの書簡」
   パウロの一四通の手紙
   本当にパウロが書いたのか
 5 政治や犯罪の文献をめぐって
  I 英国内閣を攻撃した投書『ジュニアス・レター』
   二〇〇〇年以上謎のままだった著者の正体
   人物の識別指標とは
   区間推定法を用いた著者の推定
  II 『連邦主義者』の著者の推定
   作者は合衆国大統領?
   記述内容に関係しない言葉の分析
   執筆者の好みが現れる言葉の使用率
  III パトリシア・ハースト誘拐事件
   誘拐、転向そして銀行強盗
   法廷でのやりとり
   声明文の執筆者は?
  IV 東京の保険金殺人事件
   深夜のひき逃げ事件
   犯人の告白書・遺書
   四種の文章の類似点は?
   犯人逮捕
 6 日本古典の謎をめぐって
  I 『源氏物語』の計量分析
   古典文学の最高峰『源氏物語』
   作者に関する疑問
   「宇治十帖」の作者は本当に紫式部か?
   数値で見る『源氏物語』の全体像
   言葉の使用率で「宇治十帖」をみる
   『源氏物語』を品詞から分析する
   グラフでみる「宇治十帖」の異質性
   「宇治十帖」を書いたのは別人か?
   『源氏物語』の成立順序の疑問
   助動詞に基づく成立順の推定
   安本美典氏の計量分析
   本居宣長の犯したミス
  II 日蓮遺文の真贋問題
   問題となっている五編の分析
   日蓮の好みの言葉で
   言葉の情報に基づく分析
   品詞の情報に基づく分析
  II 日蓮遺文の著者の推定
   日蓮遺文の真贋問題
   問題となっている五編の文脈
   日蓮の好みの言葉で
   言葉の情報に基づく分析
   品詞の情報に基づく分析
   五編の文献の真贋は
   『三大秘宝稟昌承書』の異なる写本を用いた分析
 7 文体の変化とこころの変化
  I 川端康成の文体の変化
   心のありようと文章
   読点の付け方の変化
  II 日蓮の文体の変化
   佐渡流罪の前と後
 8 日本語の計量分析の課題と限界
  日本文の分析のむずかしさ
  ワープロ、パソコンと手書きとでは文体は異なるか
  日本の古典は宝の山
 おわりに
 参考文献

2017_05_07_29
柳瀬尚紀『広辞苑を読む』(1999年、文春新書)

 創造的力技的翻訳で知られる柳瀬尚紀さんを私は尊敬しているし、柳瀬さんの書く言葉遊びを主題にした力技的エッセイも面白く読んでいるが、これはさほど面白さが発酵しなかった。広辞苑を引きながら縷々述べるという企画だったが。

 まえがき
 第一章 初めての広辞苑
 第二章 ジェイムズ・ジョイス、広辞苑経由
 第三章 こんなにもカタカナ語が
 第四章 和製語再考
 第五章 三種の辞書を比較する
 第六章 語彙の取捨選択
 第七章 辞書は「一長一長」である

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