芸の不思議、人の不思議

大友浩による「芸」と「人」についてのブログです。予告なくネタバレを書くことがあります。


 ある時期までの私の二代目快楽亭ブラックの定義は次のようなものだった。

 快楽亭ブラックとは、四つの点から成る三角錐の辺の上を移動する運動である。
 四つの点とは、落語・歌舞伎・日本映画・風俗を意味している。
 この三角錐を成り立たせているのは、いわゆる「自分探し」の力である。
 アメリカ兵と日本人女性との間に生まれたが、父の顔は知らず、見た目は白人だが、英語は全くしゃべれない。つまり、白人社会からも日本人社会からも疎外され、どちらにも所属することができない。そんなブラックが、自分とは誰かと問うたときに、キーワードになったのは「日本」ということだった。
 落語・歌舞伎・日本映画は、いうまでもなく日本の文化だ。ブラックは自他ともに認める映画好きだが、洋画は見ないそうだ。
 では風俗は? 風俗はたしかに「日本」というキーワードとは違うかも知れないが、「自分探し」という言葉ではくくれる。社会のはみ出し者でも、菩薩のように受け入れてくれるのが風俗だからだ。
 だからブラックの落語は、どんなに猥雑に見えようと、そこには切実な思いが宿っている。

 ほぼ同趣旨の文章を、雑誌『落語32号』(1994年、弘文出版)に書いている。参考までに画像を掲載する。この文章、とある上方の大物評論家に激賞されたと人づてに聞いて、とても嬉しかった思い出がある。
快楽亭ブラック記事_落語32号

 さて、近年は熱心にブラックを追いかけてはいないが、私なりに直接間接に動向を気にかけてはいた。それで何となく感じていたことは、上記の三角錐の構図はもう当てはまらなくなってきているのではないかということだった。考えてみればブラックも今年(2025年)で73歳。自分探しもなにもない年齢ではあるのだが。

 そんな中、ブラックを取り上げたドキュメンタリー映画が公開されたというので、見に行ってきた。以下、ネタバレ(と言っていいのかどうかわからないが)を含むので、これから見る予定のある人はスルーしてください。

『落語家の業』
 2025年、榎園喬介監督
 渋谷・ユーロスペース

落語家の業チラシ

 あまり期待はしていなかった。下世話な関心というか、怖いもの見たさに近いような感覚で足を運んだ。

 しかし、面白かった。笑った、というだけでなく、いろいろ心が揺さぶられた。

 これまでの歩みを手際よく紹介しながら、ブラックの身に起きた近年の大きな話題に焦点を当てている。演芸資料としても貴重な映像を含んでいるし、人と社会との関係についての鋭い問題提起も含んでいる。

 上映期間終了後も参照可能な状態にして欲しいが、テレビでの放送は不可能だろうし、ネット配信という形でも難しいだろう。DVDでの販売を期待したい。

 ブラックの身に起きた近年の大きな話題の一つは、旧大須演芸場最後の日のドタバタである。

 名古屋の大須演芸場(足立秀夫席亭)は、家賃滞納により強制執行を受けることになった。2014年1月31日に最後の有料興行を行ったが、翌日より無料興行と題して来場者にカンパを募り、それを出演者等に配分した。

 2月3日に建物明渡の強制執行が行われる予定であり、前日に最後の興行を終えた…はずだったが、ブラックらは当日実際に執行がなされる時間まで興行を続けた。会場は大入満員。盛り上がる客席と外に集合して強制執行の準備をする執行官とを交互に映すショット。ブラックは言った。

「言っておきますけど、正義は向こう(執行官側)にあるんです」

 これにはひっくり返った。そして、遂に会場に現れた執行官を衆目にさらし、一種の見世物にすることで、雰囲気は最高潮に達した。執行官にはまことに気の毒なことであった。

 もう一つの大きな話題は、弟子であった旧快楽亭ブラ坊に関わる裁判沙汰である。

 2019年に打ち上げの場で、ブラ坊が自身の彼女について個人の尊厳にかかわる極めてプライヴェートな発言をした。翌年ブラックがこれを高座で話した。これを聞いた彼女が怒って、2020年にブラックと榎園を訴えた。

 2021年7月1日に判決が下され、ブラックが敗訴、損害賠償として30万円の支払が命じられた(榎園には20万円)。

 ブラックは、裁判期間中、芸名「快楽亭ブラック」を封印し「被告福田」に改めた。公判の日には、裁判所の外に人を集め、カメラも入れて、一種の「祭り」状態を演出した。映画はこの場面から始まっている。

 映画の終盤、金のないブラックは、有馬記念で馬券を買い、「当たればこれで賠償金を支払う。当たらなければ…」と言って、エフフォーリアに賭けた。これがなんと一着になったのであった。こんなことがあるんだね。この場面が後半のクライマックスになっている。

 この二つのエピソードから浮かび上がってくるのは、「まじめ」を廃し、「モラル」を一旦脇へ置いて、社会の逸脱者として全てを洒落のめすという、ブラックの生き方だ。

 モラルから自由な生き方は、ふだんモラルに縛られている人々にとって、一種の爽快感や癒しをもたらす。ブラックの会に人が集まるのも肯なるかなである。

 というわけで、この映画から伝わってきたのは、逸脱者としてのブラックのインモラルな生き方であった。

 もちろんそこに問題が無いわけではない。というより大ありだ。なにしろモラルに反しているのだから。裁判を「祭り」にしたことについても、強制執行の件と同じく、正義は「向こう」にあるのであって、ブラック側にはない。どちらかといえば私は、七割方、強制執行執行官や裁判所、原告の側に同情を寄せている。まじめに職務を遂行している人や傷ついた人が気の毒だと思う。それを忘れてはいけない。だから、ブラックを全面肯定しはしない。

 それでもブラックの生き方に、どこか共感する自分がいるのも事実なのである。

 ブラックは、ある意味で極めてピュアな生き方をしていると言える。この映画は、そうした一人の逸脱者の純度の高い生き方をカメラに収めた点で、高い価値があると思う。

 ただ、正直なところ、私はここに描かれている生き方を「美しい」とまでは感じなかった。そう感じるためには、もう一つ何かが必要な気がする。それは、何だろう…編集上の工夫とか…うーん…よくわからないが、例えばブラックが亡くなった後でもう一度この映画を見たら(失礼)、私は彼を美しいと感じるような気がする。

クリスティ_死人の鏡
・アガサ・クリスティー『死人の鏡』(小倉多加志訳、2004年、クリスティー文庫58)

 原書は1937年刊行。ポアロ物の中短編を集めたもの。
 ネタバレ有り。

1、厩舎街の殺人
 ガイ・フォークス・デイの日、あちこちで花火の音が聞こえる中、ミセス・アレンがピストルで自殺した…かに見えたが、調べると他殺が疑われるようになってきた。
 アレン夫人は、インドにいた時のことでユースタス少佐に脅されていた。裕福で下院議員のチャールズ・レイヴァートン=ウェストと婚約していたアレンは、彼のたねに悪い噂が立ってはいけないと考え、自殺したのだ。現場を発見したアレンの同居人プレンターリースは、ユースタス少佐を犯人に仕立て上げようと現場に細工をした。が、ポアロに見抜かれた。

2、謎の盗難事件
 チャールズ・メイフィールド卿
 ジョージ・キャリントン卿
 ジュリア・キャリントン夫人
 レジ―・キャリントン青年
 ヴァンダリン夫人
 マキャッタ夫人
 カーライル氏
 レオニー:ヴァンダリン夫人のメイド
 メイフィールド卿の家で、新型爆撃機の設計図が盗まれた。メイフィールド卿は、その時刻、家から出ていく影を見たというが、一緒にいたジョージ・キャリントン卿は見なかった。
 メイフィールド卿が自分で盗み、ヴァンダリン夫人へ渡したのだった。ヴァンダリン夫人は敵国の使者で、メイフィールド卿は設計図に気づかれない仕掛けをして渡したことが匂わされている。

3、死人の鏡
 ジャーヴァス・シェヴニックス=ゴア准男爵
 ヴァンダ・シェヴニックス=ゴア:妻
 ルース・シェヴニックス=ゴア:養女
 ヒューゴー・トレント:甥
 サタースウェイト氏
 スーザン・カードウェル:ヒューゴーの女友だち
 フォーブズ:顧問弁護士
 スネル:執事
 ゴッドフリー・バローズ:秘書
 ミス・リンガード:著述の手伝い
 レイク大尉:土地の管理人
 ポアロは何の面識もない富豪のジャーヴァス・シェヴニックス=ゴア准男爵から、手紙で呼び出された。用件は書かれていない謎の手紙だった。そのジャーヴァスがピストルで自殺した。
 と思いきや、他殺だった。犯人はリンガード。彼女は実はルースの母で、ジャーヴァスの新しい遺言によって遺産がもらえず不幸になると考えての犯行だった。

3、砂にかかれた三角形
 ヴァレンタイン・チャントリー:妻
 トニー・チャントリー中佐:夫
 ダグラス・ゴールド:夫
 マージョリー・ゴールド:妻
 ヴァレンタインをめぐって夫とダグラスが争っているように見えた。ところへヴァレンタインが毒殺された。
 実はトニーとマージョリーができていて、二人が謀ったのだった。

サキソフォックスを4曲を更新し、ルージュの伝言を公開しました。(2024.7.4)
バッハ:管弦楽組曲第2番(全曲)
をアップし、動画を公開しました。(2024.6.19)
沖縄のうた
をアップし、てぃんさぐぬ花海の声を公開しました。(2024.6.19)
ルネサンスの二重奏
をアップし、ギボンズ:ファンタジア(1)を公開しました。(2024.6.7)
サキソフォックスを4曲
をアップし、バッハのメヌエットを公開しました。(2024.6.7)
ブースケ:36のエチュード Vol.1
を更新し、第8番第9番を公開しました。(2024.6.7)
ルイエ:2本のリコーダーのための6つのソナタ
を公開し、ソナタ第6番を公開しました。全6曲完結です。(2024.6.7)
最近のリコーダー合奏曲
をアップし、テレマン:4つのフーガ調子の良い鍛冶屋東京オリンピック1964ファンファーレシューベルト:ますパッヘルベルのカノンを公開しました。(2024.6.7)
Taki さん編曲のリコーダー四重奏を3曲
をアップし、残酷な天使のテーゼスーパーマリオブラザーズ 地上BGMマツケンサンバ IIを公開しました。(2024.4.7)
ルイエ:2本のリコーダーのための6つのソナタ
を公開し、ソナタ第4番ソナタ第5番を公開しました。(2024.2.5)
ブースケ:36のエチュード Vol.1を更新し、第6番第7番を公開しました。(2024.2.5)
モーツァルト:5つのディヴェルティメント K.439bを更新し、ディヴェルティメント第2番を公開しました。(2024.1.30)
第6&7回リコーダーむつみ連
を更新し、「煙が目にしみる」を公開しました。(2024.1.17)
第6&7回リコーダーむつみ連
を更新し、「パーセル:シャコニー」を公開しました。(2024.1.8)
「グリーンスリーヴス」と「目覚め」をアップしました。(2024.1.3)


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 バッハ:管弦楽組曲第2番 BWV1067 をリコーダー四重奏で吹きました。
 バッハが書いた管弦楽組曲は全部で4曲ありますが、この第2番が最も知られているのではないでしょうか。部分的には第3番のエア(いわゆる「G線上のアリア」)が飛びぬけて有名ですが、曲全体で考えるとやはり2番でしょう。
 この第2番は、弦楽と通奏低音のほかにフルートがソロ楽器として加わり、実質的にフルート協奏曲のようになっています。フルートには技巧的なパッセージもあり、ロ短調という特殊な調で書かれているにもかかわらず、聞きどころも多くて、なかなかに華やかな味わいです。
 服部完治さんの編曲です。おそらく「リコーダーアンサンブル青い風」のために編曲したのだと思います。私が「青い風」に参加する少し前、2001年の発表会でこの曲を演奏しています。ただ、発表会では最初と最後の曲、すなわち序曲とバディヌリ―は演奏していません。
 編曲譜は AATB という編成です。原曲は、通奏低音も含めて弦楽4声部+フルートという編成ですが、フルートと第一ヴァイオリンは、フルートのソロ以外のところでは同じメロディーを演奏していることが多いので、これをまとめて第一アルトに受け持たせています。
 服部さんは、原曲のロ短調をニ短調に移しています。ただし、5曲目のポロネーズだけはイ短調に移しています。おそらくニ短調にすると第一アルトの音域が高くなって演奏困難だと考えたのだと思われます。が、バッハは全ての曲をロ短調で書いているので、これだと曲相互の調性関係が変わってしまいます。そこで、私がこれをニ短調に移しました。ですから、ポロネーズだけは私の編曲ということになります。

■J. S. バッハ:管弦楽組曲第2番 BWV1067(服部完治編曲)


 全体は7曲で構成されています。
1、序曲
 いわゆるフランス風序曲で、バッハは記していませんが、グラーヴェ−アレグロ−グラーヴェ、という三つの部分から成っています。はじめのグラーヴェは4/4拍子、付点音符が特徴的な荘重な音楽です。次のアレグロは、2/2拍子、リトルネルロ形式のフーガです。まあ、何というすごい音楽なんでしょう。こんな作品が書けたら死んでもいいと思っちゃいますね。最後のグラーヴェも付点音符が特徴的ですが、こちらは3/4拍子で書かれています。
2、ロンド
 2/2拍子で、弱拍から始まっています。親しみやすい、可愛い曲。でも凛としたところもあって素敵ですね。
3、サラバンド
 3/4拍子。抒情的な曲。遅いテンポの曲としては、第3番のエアが有名ですが、それに負けない魅力をもった曲だと思っています。ちょっと気づきづらいですが、第一パートの旋律を、1小節遅れ、5度下(実音程では12度下)で、低音パートが追いかけるカノン形式になっています。
4、ブーレ I, II
 2/2拍子。ブーレI−ブーレII−ブーレI、という三部構成になっています。ブーレIはきびきびしたテンポで、ブーレIIは少しテンポを落として吹いてみました。
5、ポロネーズ
 3/4拍子。中間部はドゥーブルで、主旋律をバスに担当させ、第一パートは技巧的なパッセージで飾ります。
6、メヌエット
 3/4拍子。シンプルだけど何と美しい。涙に流されない凛とした淑女のような…。大好きな曲。
7、バディヌリ―
 2/4拍子の速い曲。原曲では一部フルートと第一ヴァイオリンで音型が違うところがありますが、服部さんはここでは第一ヴァイオリンの音型を採用しています。一切リタルダンドせずに曲の最後の音に突入しています(これがやりたかった)。

思い立って『リコーダー四重奏で楽しむ 沖縄ソング』(金子健治編曲、全音楽譜出版社)に掲載されている8曲を、すべて吹いてみることにしました。
金子健治_沖縄ソング+
 全部で8曲収録されています。
 ついでに、沖縄のうたの再生リストを作りました。以前に収録したデュエットも入っています。
沖縄のうた再生リスト

【01】てぃんさぐぬ花(沖縄民謡、金子健治編曲)


 「てぃんさぐ」とは鳳仙花のことだそうです。
 親の教えのありがたさなど、いわゆる人生訓を歌っています。民謡の歌詞は、このように、人があたりまえに生きて、あたりまえに生活していく中で確かに感じられる諸々のことを歌うことが多いですね。年のせいか、最近はこういうものに深く動かされるようになりました。
 こういう歌は、歌詞が無くては力が半減してしまうと思います。だから、動画にも歌詞を入れました。ウチナーグチ(沖縄弁)とヤマトグチ(本州弁訳)両方入れてあります。ぜひ歌詞とともに味わってください。
 なお、金子さんの編曲譜では、メロディーが拍の表から始まっていますが、実際の歌唱を聞くとほとんど例外なく拍の裏から歌い始めています。これ拍の表から歌い始めると、息継ぎがきつくて、西洋音楽的なブレスを意識的にやらなければならなくなります。私は、こういう自然発生的な歌にはそういう息継ぎは合わないと思うんです。だから、リコーダーで吹くに際しても、歌い方は実際の歌唱に寄せているところがあります。この姿勢は、このページで紹介するほかの曲でも同じです。

【02】海の声(島袋優(BEGIN)作曲、篠原誠作詞、金子健治編曲)


 au三太郎シリーズのために作られたCMソングなのだそうです。桐谷健太さん扮する浦島太郎が、かつて夢のように楽しい時間をいっしょに過ごした乙姫(菜々緒)に対する切ない思いを歌う、という設定の歌ですが、そうした限定されたシチュエーションを越えて、人が人を思うことの切なさ、大切さが、伝わってくる名曲ではないでしょうか。海に向かって熱く歌う桐谷さんの歌唱がグッときますね。私も熱い思いをリコーダーに込めました。

つづきます。

 北御門文雄編曲による『アルト・リコーダー二重奏曲集3ルネサンスの音楽から』(全音楽譜出版社)に掲載の曲を全曲吹いてみることにしました。

【01】C・ギボンズ:ファンタジア(1)


 ギボンズというとイギリスの作曲家オーランド・ギボンズが有名ですが、クリストファーはその息子だそうです(1615-1676)。クラシックとも、さらにはバロックとも違う、楽し気な掛け合いを楽しんでいただければと思います。おしまい近くでは両パートが付点音符半拍ずれで書かれているので、なかなか難しいです。
 この曲集にはクリストファーの「ファンタジア」が3曲収載されているので、便宜上番号を振りました。

 つづきます。

 サキソフォックスのナンバーをリコーダー化して吹いてみようと思います。今のところ4曲を予定しています。

【01】バッハのメヌエット(ペツォールト作曲、石川亮太編曲)


 バッハが妻のアンナ・マグダレーナに与えた練習帳に入っていたことから、長い間「バッハ作曲」とされてきましたが、実はクリスティアン・ペツォールトという人の作曲だそうです。ですから、近年はバッハを曲名の中に入れ込んでペツォールト作曲「バッハのメヌエット」と表記をすることが一般的になりつつあります。ヴァヴィロフ作曲「カッチーニのアヴェ・マリア」と似てますね。
 いずれにしてもバロック時代の小曲であることは間違いないのですが、このサキソフォックス版(サックス四重奏)では、バロックの約束事を全部はずして、全然バロックでない「バッハのメヌエット」に仕立てています。初めてCDで聞いたときは、聞きなれた曲が全く違う響きで耳に届いて新鮮でした。夢見るように素敵な編曲ですね。途中で別の曲のメロディーがチラッと顔を出したりするお茶目さもあって。で、自分でも吹きたくなり、楽譜を買い求めてリコーダーに移しました。こう見えて(どう見えて?)演奏はかなり難しいのですが、まあまあうまく行ったのではないかと勝手に思っています。

【02】ルージュの伝言(荒井由実作詞作曲、木村綾編曲)


 もともとは荒井由実が1975年にリリースしたシングルでしたが、その後、宮崎駿監督のアニメ映画『魔女の宅急便』のテーマ音楽に採用されて、若い世代にも知られるようになりました(私は若い世代ではないけれども、ユーミンのレコードについては記憶にありませんでした)。
 このサキソフォックス版では、途中からジャズアレンジになります。これがなかなかカッコイイと私は思っています。
 なお、2021年にカラオケ版でも吹いています。こちら。

つづきます。

リコーダー動画をいくつか公開していますが、ブログでの紹介をサボっていました。一念発起。まずは、最近のリコーダー合奏曲です。

■4つのフーガ〜オルガンのための20の小フーガ 第20, 7, 9, 13番(テレマン作曲、バーグマン編曲)


 ゲオルク・フィリップ・テレマンがオルガンのために書いた、1分半ぐらいの短いフーガを、ワルター・バーグマンが4曲集めて構成ました。楽譜は全音楽譜出版社のリコーダーピースから出版されています。
 比較的地味な曲たちですが、何度も聞いていると深い味わいが醸し出されてきます。
 各曲の終止音もピシッと決まって、私としてはお気に入りの演奏になりました。

■《調子の良い鍛冶屋》ヘンデルのガヴォット(ヘンデル&ブラヴェ作曲)


 《調子の良い鍛冶屋》という通称で広く知られています。
 原曲は、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル作曲「チェンバロ組曲第1集第5番 ホ長調 HWV.430」の終曲「エアと変奏」で、これをミシェル・ブラヴェが2本のフルート用に編曲しました。まあ、エアをガヴォットとしたところに創作性があるといえばあるのかも知れませんが、変奏の形などほとんど原曲のままなので、これをブラヴェ作曲というのはちょっと抵抗があります。ヘンデル作曲、ブラヴェ編曲でいいじゃないの、と思います。
 第5変奏まであり、だんだん音符が細かくなります。各変奏は前半(4小節)と後半(8小節)に分かれていて、それぞれ繰り返します。ただし、第2変奏は前後半とも通作形式で書かれており、第5変奏の後半は倍の16小節あります。この第5変奏の後半を繰り返すか繰り返さないかは、演奏者の解釈によるみたいですが、私は繰り返しています。だって、楽しいんだもん。
 先日仲間と遊びでこの曲を吹いたとき、第5変奏で急に速くなってしまいました。32分音符主体なので「速い」という印象があって、つい飛ばしてしまったようです。音符が細かくなってるんだから、インテンポのままで速く聞こえるんですけどね。
 『リコーダー音の風景 Vol.2 踊りのアルバム』(東亜音楽社発行)に掲載の楽譜を使わせていただきました。ト長調をニ長調に移調。早い話がアルトを持ってソプラノ用の楽譜を吹いただけです。
 元気になる、楽しい曲です。

■東京オリンピック 1964 ファンファーレ(今井光也作曲、大友浩編曲)


 オリンピックのファンファーレの中でも、1964年(昭和39年)東京オリンピックのファンファーレは最高傑作ではないでしょうか。あの時代を生きた人間としての懐かしさ…ばかりではないような気がします。東洋的なペンタトニック(五音音階)でできているような印象があるのですが、楽譜を見ると普通の(?)短調なんですよね。不思議です。
 40秒に満たない短い曲ですが、音程とリズムが合わないとカッコよく聞こえません。意外と難しいんです。楽譜を公開しておきますので、ぜひ遊んでみてください。ニ短調版とハ短調版です。私が吹いたのはニ短調版です(ただし、楽器は415Hzのバロックピッチ)。
東京オリンピック1964_ニ短調東京オリンピック1964_ハ短調

■ます(シューベルト作曲、ローゼンシュテンゲル編曲)


 はじめリートとして作られ、後にシューベルト自らがピアノ五重奏曲の中でも使ったという、楽しいメロディーの変奏曲です。アルブレヒト・ローゼンシュテンゲルさんのリコーダー用編曲は、ピアノ五重奏曲版を参考にしながら、リコーダーで吹きやすい、明快で楽しい変奏曲に仕上がっています。
 SATBの4声部で書かれていますが、各パートが2部に分かれるところがあります。とはいっても、全声部いっしょに2声部になるところはありません。ざっと見直してみたら、同時に鳴る音は最大で6つです。しかもほんのちょっとの時間。ですから四重奏とも八重奏とも呼びにくいです。
 このように、各パート2人以上で演奏することを想定して書かれていますが、私は基本的に各パート一人で吹き、分かれるところだけトラックを増やして重ねて吹きました。
 歌詞の大意を掲げておきます。Wikipediaからお借りしました。

明るく澄んだ川で
元気よく身を翻しながら
気まぐれな鱒が
矢のように泳いでいた。
私は岸辺に立って
澄みきった川の中で
鱒が活発に泳ぐのを
よい気分で見ていた。

釣竿を手にした一人の釣り人が
岸辺に立って
魚の動き回る様子を
冷たく見ていた。
私は思った
川の水が澄みきっている限り、
釣り人の釣り針に
鱒がかかることはないだろう。

ところがその釣り人はとうとう
しびれを切らして卑怯にも
川をかきまわして濁らせた
私が考える暇もなく、
竿が引き込まれ
その先には鱒が暴れていた
そして私は腹を立てながら
罠にはまった鱒を見つめていた。

■パッヘルベルのカノン 明日(パッヘルベル作曲、北御門文雄&大友浩編曲)


 あまりに世に知られたクラシックの名曲。やっぱりなんだかんだ言っても、パッヘルベルのカノン好きなんですよ。この曲を聞いたときの幸福感には、他にかえがたいものがあります。
 低音部が2小節にわたる8つの4分音符を延々と繰り返します。その上に、3つの声部が厳密なカノンを奏でます。そうなんです、上の3声部は2小節遅れで全く同じ音符を吹いているんです。この形を崩して低音部を省略したり、カノン声部を削って分散和音で飾り立てたりするような編曲に、私は魅力を感じません。
 でまあ、それはそれとして、ここでは「明日」という小書(こがき)をつけています。小書とは、能楽で用いられるもので、タイトルの脇に小さく書かれて、標準とはちょっと違う演出を表します。
 タイトルには悩みました。ただ「パッヘルベルのカノン」というわけにはいかないし、下手につけるとネタバレになってしまう。「アンコ入り」なんてのも考えましたが、あまりぱっとしないし。能楽の小書を思いついたときには「これだ!」と思いました。
 で、これからネタバレを書くわけですが(^_^;)、普通のパッヘルベルのカノンの途中に、岡本真夜さんの「TOMORROW」、森山直太朗さんの「さくら」、赤い鳥さんの「翼をください」を入れてあります。もちろん低音の音型は維持したままです。また、一部、本来のメロディーの代わりに山下達郎さんの「クリスマス・イブ」のメロディーを差し込んであります。面白がっていただければ幸いです。

 YouTubeでリコーダー合奏のための編曲譜を公開している Taki Recorder Channel さんから、作品を3曲お借りして、一人多重録音で吹いてみました。
 私としてはこれまであまり吹いてこなかったジャンルの曲が多く、しかもめちゃくちゃ楽しい曲ばかりで、とても良い時間を過ごすことができました。編成は全て SATB です。
 快く編曲譜をお貸しくださった Taki さんに、改めて御礼申し上げます。

 なお、Taki Recorder Channel の url はこちらです。
Taki Recorder Channel

【01】残酷な天使のテーゼ - 新世紀エヴァンゲリオン -(作曲:佐藤英敏)


 《エヴァンゲリオン》は、テレビアニメから劇場版、新劇場版までたぶん全部見ています。といっても、見たのはここ数年ですが。非常にスケールの大きい、奥の深い、特別な作品だと思います。少し X に描いたのですが、この作品の特異性は、親子関係の不全から来る自己肯定感の薄さや強い承認欲求といった「自我の欠落」の問題と、人類全体の命運を賭けた壮大な「神話的闘争」の問題とを、等価に扱っていることにあると思いました。いわばミニマムな物語とマキシマムな物語とを同じ比重で語っているんですね。
 で、アニメを見る前からこのテーマソングのことは知っていましたし、気になっていました。「残酷」と「天使」という語がぶつかり合うし、さらに「テーゼ」という哲学用語が重なって、もうタイトルだけでも気になりますよね。聞いてみると良い曲だし。作詞は及川眠子さん。
 Taki さんの編曲譜は、バスの動きが難しい。でもカッコイイんです。このバスを吹きたいと思って選んだようなもんです。とにかくブレスが大変で、カンニングブレスの連続でなんとか最後までつなぎました。上声部で「ン、タ、ンタッ」というリズムパートが出てきます。録音しているときも意識して、きちんと楽譜通り吹いたつもりなのですが、後で聞くとどうしても「ン、タ、ン、タ」に聞こえてしまいます。こういうところは今後の課題です。
 映像も、SFっぽい、作品に合ったものを見つけることができました。

【02】スーパーマリオブラザーズ 地上BGM(作曲:近藤浩治)


 お馴染み《スーパーマリオブラザーズ》のテーマ曲ともいうべき曲です。「地上BGM」と呼ぶらしいですね。
 《スーパーマリオ》は、初期のファミコンからスーパーファミコンまでは全部プレーしました。ジジイとしてはなかなかの腕前だと自負しています。
 Taki さんのこの編曲譜は、最初のファミコン版《スーパーマリオ》を元にしていると思われます(もっとも原曲は3声のはずですが)。それだけに懐かしい感じもあり、吹いていて楽しかったです。
 ただ、リズムが少々難しい。あと、終わり近くのバスで、低音域「ファ、ソ、ソ♭ファ」というくだりが二度出てくるのですが、これが地味に難しかったです。

【03】マツケンサンバ II (作曲:宮川彬良)

 いやぁ、なんてったってお祭りの曲だもの。滅法明るく、楽しい。吹いていても楽しかったです。
 この曲もやはりバスが少し難しかったです。あとはソプラノ。高い音域が出てくるので、興奮して吹き込んじゃうと音程が上がっちゃう。高揚しつつ冷静に…みたいな感じで。
 タタタタタッ、というくだりが何回か出てきます。上3声部はダブルタンギングでやっていますが、バスはそれだと切れが悪くなっちゃう。吹込口に舌をつけてシングルタンギングで吹くと、個々の音が歯切れよく吹ける、という技術的な発見をしたりしました。
 余談ですが、この曲を吹いたとき、ちょうど孫が一歳の誕生日を迎えたので、急遽思い立って、孫や家族の映像を重ねた動画を作ってみました。するとこれがドハマり。喜ばしいときにぴったりのお祭り曲ですね。

 夏に体調を崩して、生活リズムを改め、徐々に回復するものの、なかなかリコーダーを吹く気になりませんでした。12月22日に「リコーダーむつみ連」の久しぶりの収録があり、これをきっかけに再び多重録音をする気持ちになりました。

■グリーンスリーヴス(作曲者不詳16世紀、ウルリッヒ・ヘルマン編曲)


 私「グリーンスリーヴス」大好きなんです。もの悲しくて、聞くたびに胸が締めつけられる思いがします。
 この曲のメロディーにはいくつかのヴァリエーションがありますが、ここで演奏したのはリコーダー愛好家にはお馴染みのメロディーですね。「グリーンスリーヴス変奏曲」「グラウンド上のグリーンスリーヴス」などというタイトルになっていることもありますが、元は17世紀に出版された『ディヴィジョン・フルート』でしょう。この Urlich Herrmann 編曲の楽譜も、『ディヴィジョン・フルート』をベースに、4声のリコーダー用にしたものですね。対旋律を入れたりして(これがとてもカッコイイ)、とても素敵なアレンジになっているのではないでしょうか。
 「グリーンスリーヴス」のメロディーって、実はよく解明されていないようなんです。大きくいうと、ドリア調をベースにしたものと、短調をベースにしたものとがあります。簡単な見分け方は、メロディの最初、ラドーレミーファミ…のファに#がついているものはドリア調ベース、ついていないものは短調ベースです。ただ、ドリア調ベースでも終止形は短調っぽい形になっています。短調ベースのものも、始まりは長調になっています(解釈にもよりますが)。『ディヴィジョン・フルート』はこの形です。ドミソの和音から始まって、特に転調した風でもないのに、おしまいはラドミになっているという…。まことに不可解というか、神秘的というか、不思議な魅力をもったメロディーだと思います。

■目覚め - ネスカフェゴールドブレンド CM曲 - (八木正生作曲、たっしー編曲)


 お馴染み「ネスカフェゴールドブレンド」のCMソングです。伊集加代さんによる「ダバダバ」スキャットが耳に残っている人も多いはず。
 実はこの曲、CMで聞く短いバージョンのほかに、長いバージョンもあって、これがカッコイイんです。短いほうは山中美代志さんによる編曲譜が出ていて、吹いたことのあるリコーダー愛好家もかなりいらっしゃるのではないでしょうか。でも私は、フルコーラス版がどうしても吹きたいと思っていました。
 そこで、「たっしーの音楽室」のたっしーさんに、編曲をお願いしました。2022年12月のことでした。快くお引き受けいただき、最初の楽譜が上がってきたのが、翌2023年の正月でした。初荷ですね。
 その後ほどなく試し吹きをして、いくらかのやりとりをし、方針が定まって、改めて録音し直した上で、公開は2023年7月を予定していました。が、私の体調不良でリコーダー活動はGP(ゲネラルパウゼ)しました。その後、体調は回復して、昨年末に多重録音再開して録音しました。公開は2024年1月3日ですから、動き出してから丸1年ちょっと、足かけ3年に及ぶ壮大な企画(?)がやっと実を結んだというわけです。
 たっしーさんの編曲は本当に素敵で、とても気に入っています。また、やりとりの中で私としても学ぶところが多かったです。ぜひお聞きになってイイネを押してくださいね。

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