芸の不思議、人の不思議

大友浩による「芸」と「人」についてのブログです。

グールドの《ゴルトベルク》1954&55年盤

懐都合で買いたいCDが買えないでいる。リコーダーCDさえほとんど買ってないもん。

その中で衝動買いしてしまったグレン・グールドの10枚組。これで1,790円。

10枚のうち4枚はバッハ、5枚はベートーヴェン、1枚は新ウィーン楽派が収録されている。

古い録音ばかりだが、逆にそういうものは手に入れづらいので、かえってありがたいぐらいのものだ。

バッハの最初の2枚は《ゴルトベルク変奏曲》。1954年録音のものと1955年のもの。

55年盤は、グールドのデビュー盤で、世界を驚かせた驚異の演奏。もちろんこれは以前から何度も聞いている。

というわけで、私としては54年の演奏に興味津々だった。で、聞いてみた。

うーん、凡庸な演奏ではないけれど、この54年録音でデビューしていたら、あれほどのセンセーションは巻き起こさなかっただろうと思われるような演奏だと思った。

テンポもごく穏当なもの。全体の所要時間は、55年の驚異の38:20に対して42:29だ。

この54年盤のあとに55年盤を聞くと、隠していた高いポテンシャルを一気に解放したような印象をうける。速いテンポによって、声部の弾き分けも実に鮮やかに印象に残る。「今までは猫かぶってましたが、ここで本気を出しました」という演奏だ。

54年盤を聞くことで、55年盤のすごさを再認識した。

ニコリンヌ・ピエルー フルート・リサイタル

●ニコリンヌ・ピエルー フルート・リサイタル

 1、ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
 2、マルタン:バラード
 3、ヨンゲン:ダンス・レント作品56b
 4、プロコフィエフ:フルート・ソナタニ長調作品94から第4楽章
 5、ゴダール:3つの小品の組曲作品116から「ワルツ」
 6、ライネッケ:フルート・ソナタホ短調「ウンディーネ」作品167から第3楽章
 7、タファネル:「魔弾の射手」の主題による幻想曲

 フルート:ニコリンヌ・ピエルー
 ピアノ:塩見亮

 収録:2009年6月25日、NHK大阪ホール


素直なフルートで、とても良かった。なんというか、「好もしい」って感じ。
テンポは概ね中庸で、テクニックをことさらに見せつけようとしない。
ヴィブラートはかけないか、かけても控えめ。

池田昭子さんのCDを試聴したときも思ったのだが、最近はヴィブラート控えめの演奏が増えている気がする。
古楽奏法の影響なのかな…などと考えたり。

ニコリンヌ・ピエルーはベルギー人だが、今は日本のオーケストラ(大阪センチュリー交響楽団)にいる。
インタビューで、「火山に興味があるから、前から日本に来たかった」などと、とぼけたことを語っていた。
もう、可愛いなあ、ニコリンヌちゃん。

水上勉『飢餓海峡』

●水上勉『飢餓海峡(上下)』(新潮文庫)

電車読者の一冊。

数年前に石川さゆりさんの一人芝居を見たのだが、これがとても素晴らしかったので、原作を読んでみたいと思っていたのだ。読み始めたら夢中になった。

ミステリ仕立てのドラマ。戦後という時代がよく出ているし、高度経済成長に取り残された、とりわけ地方の人々の貧困が物語の鍵になっていて、なんともやるせない気持になった。

チャペック『園芸家12カ月』

●カレル・チャペック『園芸家12カ月』(中公文庫)

風呂読書での一冊。なんとも素敵なエッセイ。ユーモアと園芸への愛に満ちている。

園芸家が何を考え、何をするのかという「園芸家の生態」を月ごとに活写している。記述が実にマニアック。だが、そのマニアックさは、外部の者を寄せつけない閉鎖性を少しも持っていない。列記される植物の名前を全然知らなくても、楽しく読めるのだ。こんな文章を書きたいものだなあ。

チャペック(1890-1938)はチェコの作家で、『山椒魚戦争』(1935)『R・U・R』(1921)が有名。『R・U・R』は「ロボット」の語源となったSFで、私はずいぶん前に読んだのだが、かなり面白かったのを覚えている。『山椒魚戦争』も面白かった。

近況です

本村さんのインタビュー、大幅に遅れています。
申し訳ありません。
もうしばらくお待ち下さい。

仕事で追い込まれている上に、秋のいつものアレが始まっていまその真っ直中です。

「晴れの日」旗揚げコンサートは無事に終わりました。
お陰様でとても好評でした。
詳しくは「晴れの日」ブログに。

残務整理もおおかた終わり、記録用CDができあがるのを待っているところです。
とはいえ、すでに来年に向けて動き出しています。

本や音楽や映画など、見たもの、聞いたものもたくさんあります。
見て聞いて感じたことも。

なかなか落ち着いて文字にできないのですが、近々復帰します。

円楽師匠が亡くなりました。
一度中野のご自宅へお邪魔したことがあります。
話しているうちに興が乗ってきて、総入れ歯をはずして見せてくださいました。
見たくなかったけど(^_^;)。
寂しいです。

陰に隠れるように立川文都さんも。
志らくさん・談春さんと同期で、二人の影に隠れるような存在感でしたが、
決して二人に対抗して前にしゃしゃり出ようとはしませんでした。
そんなことが頭にあって、インタビュー記事の前振りで、
「大人の噺家」と書いたら、
「うまいこと言いまんなあ」と喜んでくれました。
私より一つ年上かな。
かなしいです。

「晴れの日」今週の土曜です

学校へ行ったはずの娘が午前中に帰ってきた。
やけに嬉しそうにしている。
「どうしたの?」ときいたら、学級閉鎖だって。

「晴れの日リコーダー合奏団」旗揚げコンサートが、いよいよ今週土曜に迫ってきました。

今日の昼、プログラムの印刷をしました。
リソグラフを使って印刷したら、ハーフトーンがかなり汚くなってしまったが、まあいいや。
演奏はかなりまとまってきました。

お時間のある方はぜひお越し下さい。
国分寺Lホール、19:00開演、入場無料です。

詳細はこちらを。
http://harenohire.seesaa.net/

曲目についての解説もアップしてあります。

カラヤンの芸術〜チャイコフスキーとブラームスの交響曲

19日は本村さんにインタビューをお願いした。高田馬場の居酒屋で。4時間ぐらいしゃべって、とても面白かった。テーマは一応「東京リコーダー音楽祭を終えて」というようなことだったが、話題があちこち飛んだりしたので、まとめるのには少し時間がかかりそう。近々、といっても9月頭ぐらいになると思うが、ミクシィ日記とブログ「芸の不思議、人の不思議」にアップする予定(どちらも内容は同じです)。お楽しみに。

帰宅して、あわてて翌日の準備。20日と21日は青い風の合宿へ。たくさん吹いてきた。夕べはバタンキューだった。

「カラヤンの芸術」2回目をざっと聞いた。

●カラヤンの芸術

 チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調作品36
 [制作:1974年、ユニテル(ドイツ)]

 ブラームス:交響曲第4番ホ短調作品98
 [制作:1973年、ユニテル(ドイツ)]

 チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調作品74「悲愴」
 [制作:1974年、ベルリン・フィルハーモニーホール、ユニテル(ドイツ)]

 ブラームス:交響曲第1番ハ短調作品68
 [制作:1973年、ベルリン・フィルハーモニーホール、ユニテル(ドイツ)]

 管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 指 揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン

 クラシック・ロイヤルシート、NHK-BS2
 2009年 8月10日 (月) 01:10〜04:15


作業をしながら横目で、というか横耳で聞いていたので、エバッて何かを言えた義理ではないが、なかなか面白かった。

名曲を4つ並べたこともあったかも知れないが、切れ味の良い表情、ダイナミックレンジの大きさ、きびきびとしたテンポなど、カラヤンはいかにもカラヤンであり、それゆえにそこそこ面白く聞けるのであった。それはそれですごいことだと思う。なかなかそこまで行けないもん。

とはいえ、もう一歩踏み込んで考えれば、それはやはり“サウンドづくり”に収斂しているのではないかという疑問が生ずるわけで…。

なぜサウンドづくりが良くないのかというと、畢竟その本質が一つのフェティシズムであるからだろう。

サウンドづくりが、いかにサウンドをきれいに作り上げるかというフェティシズムである以上、作品の奥にあるはずの精神性をないがしろにしてしまう……という言い方をすると、「音楽に精神性なんてものがあるのか?」と切り替えされてしまい、宇野功芳さんでない限り、明確な反論ができなくなってしまうのだが。

何はともあれ、貴重なフィルムの放映ありがとう。>NHK

ハル・スタジオにて

昨日、晴れの日リコーダー合奏団で、奥濱春彦さんのスタジオコンサートに出演してきた。

 ※8/16「晴れの日」がゲスト出演します 参照。

会場は四谷三丁目のハル・スタジオ。普段はフラメンコの稽古をしているスペースだ。
そこに教壇ぐらいの舞台が作られて、周囲に椅子が並べられていた。

私たちは13:30に会場入り、私は13:45ごろから落語の会場作りをチェック。ベストな高さのテーブルが既に用意されていたので、それをステージに乗せる段取りに。ほかにはあまり注文をつけることはなく、顔に照明を当てることと、落語のあいだは客席を明るくして欲しい、とお願いした。

続いて晴れの日のリハ。思った以上に響くスペースだったので、安心した。予定の4曲をざっと吹き通した。
それを見ていたカメラマンの北澤さんや、衣裳デザイナーの方(お名前伺ってませんでした)が誉めてくださったので、気持ちよくリハを終えた。

やがて橘家圓太郎さんが楽屋入り。
フラメンコという未知の雰囲気の中で、何をやったらいいか、ずっと悩んでいる。
それを脇目で見つつ、私は全然心配してなかったのであった。
だって圓太郎さんだから(笑)。

15:00開演。1曲目が終わったあと、晴れの日の出番。
予定通り4曲を演奏した。

 1、バッハ:ゴルトベルクのアリア
 2、バッハ:平均律のフーガ第2巻第12番よりフーガ
 3、モーツァルト:ディヴェルティメント第4番よりロンド
 4、木曾節

フーガで、私が実に恥ずかしいミスをしたのだが、どういうミスかは、恥ずかしいので書けない(^_^;)。勉強になったなあ。

そのほかは、まあまあ上手くいったのではないかと思う。ロンドでは、「最近“黄金伝説”という番組に使われています」と説明してから演奏したら、前に座っていたお子さんが、曲が始まると「ああ、あれあれ」とうなずいてくれた。こういう反応は嬉しい。

その後はフラメンコ。私たちは楽屋に戻ってしまったため、前半のプログラムは見られなかった。楽屋で、床を踏み鳴らす迫力のある音が伝わってくるのを聞いていた。

後半は客席に回ってフラメンコと落語を楽しんだ。

奥濱さんのお弟子さん(だと思う)が3曲、躍った。眼前でのフラメンコは、すごい迫力がある。素敵素敵。

ダンスとは、女性の(というか、男性もそうですが)セクシーさをプレゼンテーションする装置ではないかと思っているのだが、フラメンコもまた、そうした優れた装置だと改めて思った。

なにしろ躍っている人がみんな、きれいに、セクシーに見えるの。もう、皆さんとお付き合いしたいぐらい(^_^;)。まあ、先方が断るだろうが。

そして、照明を明るくして、高座をステージに運んで、いよいよ圓太郎さんの登場。出囃子が鳴った途端、それまでとあまりにも違う雰囲気に会場からは笑いが…。しめしめ。

高座に上がって、「何をやろうかまだ迷ってる」という、その場の“本音”を、たくみに笑いに変えていく。「オーレ!」というフラメンコの掛け声の話から、歌舞伎や寄席の掛け声、花火の掛け声の話題になり、ごく自然な流れの中で「たがや」に入っていった。実にどうも、見事なものだ。

以前に聞いた圓太郎さんの「たがや」とは異なり、かなりあちこち工夫が凝らされていて、滅法楽しかった。もちろん会場も大受け。万雷の拍手のもと、高座を終えた。

再び舞台が暗くなり、いよいよ奥濱さんの登場。

和服をアレンジした黒と赤の衣裳がかっこいい。

奥濱さんのダンスは、本当に素晴らしかった。情熱的で、ものすごい迫力。専門用語があるのかどうかわからないが、“溜め”の魅力たっぷり。さっきまで楽屋で気軽に話していた人とは全然違う、雲の上の人に。

一番最後に、それまでの出演者が全員登場し、フォークダンス風のフラメンコを踊り、やがて客席からも何人か引っ張り上げられて、楽しい雰囲気のなか、大団円を迎えた。

落語のコーディネートをした者としては、高座が大成功してホッとしています。
晴れの日の一員としては、貴重な機会を与えてくださった奥濱さんに篤く御礼申し上げます。
客席の人としては、素敵なダンスを見せてくださった奥濱さん、出演者の皆さんに改めて拍手を贈りたい。
聞いて下さったフレンドリーでレスポンスのよい素晴らしいなお客さんにも、心から感謝します。

インチョン市立合唱団

この日の「クラシック倶楽部」は、ラ・プティット・バンドの演奏会とインチョン市立合唱団の演奏会とをつなげて一つの番組を作っていた。ラ・プティット・バンドが約33分、インチョン市立合唱団が約22分である。

●インチョン市立合唱団演奏会

 1、バッハ:モテット「異教徒らよ、主をたたえなさい」BWV230
 2、ウィテカー:ダビデが聞いたとき

 合唱:インチョン市立合唱団
 指揮:ユン・ハクウォン

 収録:2008年11月6日、東京オペラシティコンサートホール

 BS2クラシック倶楽部
 2009年7月23日(木) 10:55〜11:50


モテット「異教徒らよ、主をたたえなさい」。アカペラ。悪くはないが、本当のアンサンブルにはなっていないと思った。指揮者+17人という人数なら、もっと緊密なハーモニーがつくれるはず。ハーモニーだけ聞いていると50人規模の合唱団かと思ってしまう。

それから、やはりバッハを歌うには特別な研究が必要だと思った。調べてみると、バッハはこの日演奏した数多くのプログラムのうちの一曲ということで、それならなるほどと納得した。

バッハに比べてウィテカーは、私が聞き慣れていないせいもあるかも知れないが、だいぶ良かった。こちらは45人ほど(画面をざっと数えた数字。多少違うかも)の演奏。つまりこの人数のハーモニーが基本なのだろう。

ちょっとネットで検索してみたら、え、この合唱団てアマチュアなの?

どうやら世界を股にかけているアマチュア合唱団らしい。アマチュアでここまでできれば大したものだと思う反面、世界を稼ぎ回っているのなら、そりゃもうアマチュアじゃないだろうとも思った。

この日のプログラムの大方が、既にハイヴィジョンの「クラシック倶楽部」で放送されているらしい。今回の放送は、その時に放送しなかった残りということなのかも。

ラ・プティット・バンドのヴィヴァルディ

●ラ・プティット・バンド演奏会

 ヴィヴァルディ:
 1、二つのヴァイオリンと通奏低音のためのソナタニ短調「ラ・フォリア」作品1第12 RV.63
 2、フルート協奏曲ニ長調「ごしきひわ」RV.428
 3、ピッコロ協奏曲ハ長調 RV.444

 ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ:ジギスヴァルト・クイケン
 リコーダー:ペーター・ファン・ヘイヒェン(2,3曲目)
 ヴァイオリン:サラ・クイケン(1曲目)
 ヴァイオリン:赤津眞言
 ヴァイオリン:アンネリース・デコック(2,3曲目)
 ヴィオラ:マルレーン・ティールス
 チェンバロ:バンジャミン・アラール

 収録:2008年5月31日、神奈川県立音楽堂

 BS2クラシック倶楽部
 2009年7月23日(木) 10:55〜11:50


「ラ・フォリア」良かった。赤津眞言さんとサラ・クイケンさんが、細かいニュアンスに富んだ、極めて説得力の高い演奏を聞かせてくれた。何も文句ありませんです、ハイ。

シギスヴァルト御大は、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラという珍しい楽器を引いている。ヴィオラのように腕に抱えて弾くもので、チェンバロとともに通奏低音の一画を担当している。4弦。

「ごしきひわ」。フルート協奏曲といっても縦型フルートつまりリコーダーを使用した演奏。あまりスピード感を出さず、中庸のテンポ。ペーター・ファン・ヘイヒェンさんは、あまり自分を主張せず、堅実にまとめている。表情やアーティキュレーションの変化にもう少し切れ味があっても良いと思った。2楽章の装飾は面白い。

ピッコロ協奏曲。これはどうしたことだろう。ソプラニーノがサミングの調整や音程が難しい楽器だということは十分に承知しているつもりだし、この曲がまた細かい音符の多い曲だということも知っているが、それにしてもタッチミスは多いし、音程も悪い。特に2楽章の音程が目立って悪い。楽器との一体感が感じられないのだ。まさか使い慣れていない楽器なんてことはないと思うけれど…。こうなると、上記の「堅実な演奏」もただ音符をこなしているだけのものに聞こえてしまう。

ステージにあがるについては諸事情あると思うし、誰にでも調子の悪いときはあるものだ。次回の出会いに期待しよう。
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