芸の不思議、人の不思議

大友浩による「芸」と「人」についてのブログです。予告なくネタバレを書くことがあります。

 結末を割ってます。

●アガサ・クリスティー『愛の旋律』(中村妙子訳、2004年、クリスティー文庫75)

 クリスティーの書いたミステリでも冒険物でもない普通の小説。まあ、「普通の」というのもよくわからないけれども。恋愛小説というと近いかも知れないが、ハーレクイン・ロマンスみたいなものとは違う。

 イギリスではメアリ・ウェストマコットの名で出版されたが、日本では最初からアガサ・クリスティー名義で出された。原題を直訳すると「巨人の糧」。

 原作は1930年出版。この年クリスティーはほかに、ミステリ長編『牧師館の殺人』、ミステリ短編集『謎のクィン氏』、戯曲『ブラック・コーヒー』を出版している。

 以下内容メモ。

 第一部 アボッツ・ピュイサン。
 バーミンガムのアボッツ・ピュイサンという美しい家に住むヴァーノン・デイアの、幼児期から少年期まで。ヴァーノンは独特の空想の世界にいる(作者は、一般的に幼児とはそういうものだとして書いているのか、ヴァーノンの特異性として書いているのか、よくわからなかった。後者だとすると、やや自閉症スペクトラムに近い気がしたが、成長後はその要素はあまり感じられなくなる)。
 母親マイラ・デイアとは気が合わない。マイラは夫のウォルターとも気が合わない。
 従妹のジョー(ジョセフィン)・ウェイト、隣家に越してきたユダヤ人セバスチャン・レヴィンと親友になる。

 第二部 ネル。
 ヴァーノンは20歳になっている。
 音楽への目覚め(それまでは音楽に対して嫌悪感を抱いていたが、あるコンサートへ行ったことで、電撃的に音楽に目覚め、作曲家を志す)。
 金持ちかどうかというメルクマールが描かれている(とりわけ幼友達のネル・ヴェリカーをめぐって)。

 第三部 ジェーン。
 不思議な魅力をもった歌手ジェーン・ハーディングの存在がヴァーノンにとって重要な意味をもってくる。ジェーンは、ヴァーノンの処女作を歌い、声をつぶした。
 ヴァーノンは成長したネルの美しさに目を奪われ、やがて愛し合うようになる。しかしネルは、ヴァーノンとの生活に不安を感じ、アメリカの富豪ジョージ・チェトウィンドを選んだ。
 しかし、戦争がはじまり、ネルはヴァーノンの元へ帰って来た。二人は結婚した。

 第四部 戦争。
 ヴァーノンは応召。
 ネルは看護婦になる(看護婦の世界をめぐるネチネチした人間関係がよく描写されている)。
 ヴァーノンが戦死したという報せが届く。ネルはチェトウィンドと再婚する。
 しかし、ヴァーノン戦死の報せは誤報だった。ドイツ軍の捕虜になっていたのだ。彼は新聞でネルの再婚を知り、車に飛び込んで自殺する。

 第五部 ジョージ・グリーン。
 ヴァーノンは生きていた。記憶喪失になり、ジョージ・グリーンとしてブライブナーの運転手として働いていた。アボッツ・ピュイサンはチェトウィンドがネルのために買い、今は二人が住んでいた。あるときヴァーノンは、運転手としてアボッツ・ピュイサンを訪れた。セバスチャンらはヴァーノンが生きていたことを知る。
 ヴァーノンは次第に記憶を回復してくる。しかしそれは思い出したくないことを思い出すことでもあった。
 ネルは、ヴァーノンとチェトウィンドの間で煩悶するが、結局安定した生活を保証してくれるチェトウィンドを選んだ。
 ヴァーノンはジェーンと暮らす。心では音楽を欲しているけれども、どうしても作曲する気持ちにはなれなかった。
 ジョーがニューヨークで倒れたという報せが届く。ジョーを愛していたセバスチャンはいち早く駆けつけた。ヴァーノンとジェーンも船で向かった。
 しかし、ヴァーノンとジェーンが乗った船が氷山に激突して沈没した。ヴァーノンは生きていたが、ジェーンは死んだ。
 セバスチャンは、ヴァーノンを慰めようとしたが、ヴァーノンは「ジェーンは自分が殺した」と言う。同じ船にたまたまネル夫妻も乗っていて、船が沈没する間際、ヴァーノンはジェーンとネルのどちらか一方だけを救える状況にあったが、彼はネルに手を差し伸べたのだった。
 ヴァーノンは自分がいかにジェーンを愛していたかに気づいた。音楽が自分に降りてきて、無性に作曲がしたくなった。

 主な登場人物。

 ヴァーノン・デイア:主人公。アボッツ・ピュイサンの本来の継承者。空想の世界で遊ぶ幼児期を送る。音楽に目覚め、作曲家を志す。ジョー、セバスチャンとは生涯の友情を保つ。歌手のジェーンとは不思議な縁で結ばれる。成長したネルを愛する。
 ジョー・ウェイト:ヴァーノンの従妹。安定した生活のようなものに魅力を感ぜず、苦労や不幸を自ら買って出るような生き方を選ぶ。セバスチャンに愛され求婚されるが、事業家として成功する彼を選ぶことはなかった。
 セバスチャン・レヴィン:アボッツ・ピュイサンの隣に越してきたユダヤ人。後に事業家として成功する。ジョーに惚れるが、結婚は断られる。
 ジェーン・ハーディング:不思議な魅力をもったオペラ歌手。芸術の深遠を見ている。ヴァーノンの才能を高く買い、歌手としてのどをつぶしてしまうことがわかっていながら、彼の処女作を自ら歌う。
 ネル(エリナー)・ヴェリカー:ヴァーノンの幼友達。苦しい生活を送っており、安定した生活に憧れている。ヴァーノンは少女時代のネルには魅力を感じないが、成長したネルの美しさに魅せられてしまう。やがて二人は愛し合うようになる。ネルは二度にわたってヴァーノンではなく、富豪のチェトウィンドを選ぶが、「打算的」というのとは違うと思う。
 ウォルター・デイア:ヴァーノンの父。妻とは気が合わない。戦死する。
 マイラ・デイア:ヴァーノンの母。
 ジョージ・チェトウィンド:アメリカの富豪。一貫してネルを愛する。

 この小説で描かれているもの。

 幼児期の空想世界。
 
 母親との齟齬。マイラ・デイアは、自分では良い妻・良い母でいるつもりだが、実は「役割演技」に陶酔したような人物として描かれている。この描き方はまことにリアルであり、クリスティーの鋭い人間観察が光っている。

 金と生活との関係。金持ちかどうかがその人の生き方に関わってこざるを得ないという事実。

 芸術と生活との葛藤。ヴァーノンとジェーンは芸術側の人間であり(ジョーも近い。セバスチャンはよき理解者という位置づけである)、生活側の人間であるネルと対立している。

 翻訳で気になったところがあったのでメモしておく。

> 世界の果てばてから王や騎士が彼女の手を求めてやってくる。(P.335)

 「果てばて」というのはこなれない日本語だ。翻訳でこういう日本語を読みたくない。

> ネルとは週に一、二度会った。慌しい、満ち足らわぬ逢瀬だった。(P.348)

 「満ち足らわぬ」は、「満ち足りぬ」の自発ないし婉曲表現だろうが、極めてこなれが悪い。

> 賭けるなら、すべからくいい賭博師になって、負けてもあたふたしないことね。(P.400)

 「すべからく」の誤用。なお、

> 美というものはすべからく、あらゆる階級の人々に理解さるべきだというのが私の持論でして。(P.539)

 ここは正しい使い方になっている。おそらく偶然であろう(^_^;)。

※追記(2017.1.7)

 おそらく多くの読者にとって、ヴァーノンが作曲しようとしていた究極の音楽の姿―それはプロローグに示唆されている―がピンとこないのではないか。というのも、ヴァーノンの音楽を聞いた人々の反応が「賛否両論」だからだ。

> 「退廃的……病的……神経症的……小児的……」といったいいぐさは批評家連中のそれだった。
「すごいわ……ふるいつきたくなるよう……うっとりするわ」というのは女性たち。
「なんてことはないね。いわば大掛かりなレヴューってところじゃないか」
「『機械』と題する第二部の効果は驚倒すべきものだったね(略)」(P.10)

 物語の流れからいえば、天才音楽家のヴァーノンが幾多の愛の苦悩を経験し、それらを糧にしてようやく実を結んだ作品であるのだから、人々から絶賛されてしかるべきであろう。読者のカタルシスを最終目的とする大衆文学の語法からは、それが当たり前の結論である。ディーン・R・クーンツなら間違いなくそう書いていたはずだ。
 そうした読者の当惑を予想してのことだろう、解説の服部まゆみはこの小説が書かれた時代の芸術状況について説明している。

> 二十世紀初頭は、芸術――美術、音楽、文学、演劇、舞踊、そして思想の革命――古い文化に反旗を翻したアバン・ギャルドの寵児たちの時代だった。(P.650)

 そして、

> ヴァーノンの求めるものは今までの音楽ではない未来の音楽である。(略)どうやら一九二一年に十二音技法を発見し無調音楽の体系を作り上げたシェーンベルク風の音楽らしい。(P.652)

 と書いている。ただし、プロローグを読む限り、それは十二音技法を明確にイメージしているというよりは、ミュージック・コンクレート的な要素も強い、もう少しあいまいなイメージのような気がする。そして、演奏が賛否両論を巻き起こしたという点については、ストラヴィンスキー『春の祭典』の初演(1913年)が作者の頭にあったのかも知れない。
 いずれにしても、服部さんの解説がなければこんなことは考えず、なんとなくおさまりの悪さを感じて読書を終えただろう。まことに痒い所に手が届く、素晴らしい解説だ。

 ネタを割ってます.

●アガサ・クリスティー『牧師館の殺人』(羽田詩津子訳、2011年、クリスティー文庫)

 原書は1930年出版。
 ミス・マープルのデビュー作。以後ミス・マープル物は、ポアロ物と並んでクリスティー作品の二枚看板となる。

 舞台はセント・メアリ・ミード村。牧師館の一室で治安判事のプロザロー大佐が殺されているのが見つかった。プロザロー大佐は、村中の者に嫌われていた。やがてローレンス・レディングが自首して出た。その後にアン・プロザローも自首した。が、二人は互いにかばい合っていたことがわかる。真犯人は誰か?

 ジェーン・マープル:セント・メアリ・ミード村に住む老嬢。
 レオナルド・クレメント:牧師。この作品はレオナルドの一人称で書かれている。
 グリゼルダ・クレメント:レオナルド牧師の妻。物語の末尾で腹に子どもができていることがほのめかされる。
 デニス・クレメント:レオナルド牧師の甥。
 ホーズ:副牧師。
 プロザロー大佐:治安判事で、牧師館で殺されているのを発見される。みんなに嫌われている。
 アン・プロザロー:プロザロー大佐の妻。ローレンス・レディングと愛し合っている。一旦は自首して出るが、それは偽計。実は殺人はローレンス・レディングと共謀して行ったのだった。
 レティス・プロザロー:プロザロー大佐の娘。実は母はレストレンジ夫人。
 ローレンス・レディング:画家。アン・プロザローと愛し合っている。一旦は自首して出るが、それは偽計。実は殺人はアンと共謀して行ったのだった。
 ヘイドック:医師。
 エステル・レストレンジ:謎めいた女性。実はレティスの母で、余命いくばくもない。ヘイドック医師とは古い友人。
 ストーン博士:考古学者。実は名うての泥棒。
 グラディス・クラム:ストーン博士の秘書。
 アーチャー:ならず者。
 プライス・リドリー夫人:ミス・マープルの友人。
 ミス・ウェザビー:ミス・マープルの友人。
 ミス・ハートネル:ミス・マープルの友人。
 レイモンド・ウエスト:ミス・マープルの甥。作家。本作ではさほど活躍しない。
 ハースト:巡査。
 スラック:警部。
 メルチェット大佐:警察本部長。

 物語の傍流に当たるが、ストーン博士と秘書のミス・クラムが話題になるところがある。

> 「ちょうど話していたところですのよ」グリゼルダが甘ったるい声でいった。「ストーン博士とミス・クラムのことを」
 デニスの作ったふざけた歌が頭をよぎった。
「ミス・クラムにその気はまるでなし」
 わたしはそれを口にして、みんなの反応を見たいという衝動に駆られたが、幸いどうにか思いとどまった。(P.30)

 この「ミス・クラムにその気はまるでなし」というのがどうもわからない。おそらく原文では韻を踏んでいるのではないだろうか。そう思って、別の訳(中村妙子訳、新潮文庫、『牧師館殺人事件』)を調べてみた。

> ミス・クラム
 石(ストーン)に
 目がくらむ(P.24)

 となっている。ストーン博士と石(ストーン)がかけてあり、なおかつミス・クラムと目が「くらむ」がかけてある。技ありであろう。
 とはいえ、羽田は、いくら中村訳に技があるとはいっても、それをそのままいただくことはできないわけで、ここらあたりが新訳者の苦しいところではないだろうか。新訳が常に良いというわけではない、ということでもある。
 田村隆一訳ではどうなっているのか。旧版のクリスティー文庫を入手したら、調べてみようと思う。

 結末を割ってます。

●アガサ・クリスティー『おしどり探偵』(坂口玲子訳、2004年、クリスティー文庫)

 原書は1929年発行。トミー&タペンス物の連作短編集。トミー&タペンス物としては長編『秘密機関』に続く第二弾。
 
 なお、創元推理文庫からは『二人で探偵を』(一ノ瀬直二訳)というタイトルで出版されている。こちらは本文が23の章に分かれており、巻末の解説に掲載されている原題一覧によれば17の短編から成っていることになっている。しかしクリスティー文庫版と内容は全く同じであり、クリスティー文庫版に欠落があるということは無い。

1、アパートの妖精
 プロローグ。結婚して六年経ったトミーとタペンスは、暇を持て余していた。そこへカーター長官が現れ、シオドア・ブラントという男が所長をつとめていた国際探偵事務所を使ってくれないかと頼まれる。二人は喜んで引き受ける。アシスタントはアルバート少年だ。
 カーターは、ロシアの切手が貼られた青い手紙が来たら、切手をはがして16という数字を確認し、自分に報せるように、と言った。

2、お茶をどうぞ
 ローレンス・セント・ヴィンセントという男が現れ、ブルック・ストリートの帽子屋で働くジャネットという若い女性の行方がわからなくなっているので、彼女を捜してほしいと頼まれる。ヴィンセントは秘かにジャネットに惚れ、結婚を申し込むつもりらしい。タペンスは24時間以内に見つける、と豪語した。実はタペンスとジャネットは昔馴染みで、なかなかプロポーズしてこないヴィンセントをその気にさせるため、および、新しい国際探偵事務所の宣伝のために、二人が仕組んだ「やらせ」だった。

3、桃色真珠紛失事件
 ローレル荘で桃色真珠が紛失した。犯人は、盗癖のあるレディ・ローラでも、社会主義者のレニーでもなく、メイドのエリーズだった。石鹸を割って中に隠したのだ。

4、怪しい来訪者
 ロシアからの青い手紙が届いた。ディムチャーチという男が警察官だと称してやってきた。トミーは古典推理小説の変名を使ってタペンスに手紙を書き、タペンスは本物の警察官に連絡して、ディムチャーチは捕まった。

5、キングを出し抜く
 「デイリー・リーダー」という新聞のタイトルに、毎日違った場所に微妙な点が打ってあることからトリックを暴く。

6、婦人失踪事件
 北極から帰って来た冒険家のガブリエル・スタヴァンソンから、婚約者のリー・ゴードン夫人を捜してほしいと依頼される。某所の病院で幽閉されていることを突き止めたトミーとタペンスは、リー・ゴードン夫人を救い出そうとするが…。太ってしまったリー・ゴードン夫人、太った女が嫌いなスタヴァンソンが予定より早く帰ることを知り、怪しげな療法で痩せようとしていたのだった。

7、目隠しごっこ
 目隠しをして盲目の探偵のつもりになったトミー。犯罪者にさらわれて目が見えないまま命をかけたゲームを仕掛けられるが、マグネシウムを発光させて相手の目をくらませ隙をついた。

8、霧の中の男
 女優のギルダ・グレンが殺された。犯人は霧の中から現れた警官だった。彼はグレンから離婚を迫られていた夫だった。

9、パリパリ屋
 トミーとタペンスが贋札造りの悪人を暴く。

10、サニングデールの謎
 トミーとタペンスは、軽食レストランで昼食をとりながら、巷で話題の「サニングデールの謎」を説いてしまう。ゴルフ場でセッスル大尉が帽子のピンで刺されて殺されていた。犯人は女装した男だった。

11、死のひそむ家
 21歳になったばかりのロイス・ハーグローヴの家に砒素入りのチョコ―レートが送られてくるという事件が起きた。相談を受けたトミーとタペンスは翌日ハーグローヴの家を訪ねたが、彼女を含め数人が毒物で死んでいた。毒物はリチンで、遺産を狙った老婦人が、自分は予めリチンを皮下注射して免疫を作っておき、みんなと一緒にリチン入りのジャムを食べたのだった。

12、鉄壁のアリバイ
 女性のアリバイを崩せたらなんでもする(おそらく愛を受け入れることになるだろう)と賭けをした男性から依頼を受ける。別の場所に同時に現れた女性のトリックは、双子だった。

13、牧師の娘
 牧師の娘であるモニカ・ディーンは、父が死んで、母と二人で苦しい生活をしていた。やがて叔母の遺産を相続したが、財産は思ったほど多くは無かった。叔母の家に住み、部屋を貸したが、幽霊騒ぎが起きて借り手はいなくなった。そこへ家を買いたいという人が現れたが、どうも不審な点がある。捜査に乗り出したトミーとタペンスは、叔母が残した書類から財産が庭に埋めてあることを見つけた。謎を解き明かし夜が明けたその日はクリスマスだった。

14、大使の靴
 アメリカ大使の鞄が船を降りるときにすり替えられた。同じイニシャルの上院議員の秘書が取り換えにやってきた。鞄の中には靴ぐらいしか入れていなかったので、被害はなかった。その後、上院議員と会ったときにその話をすると、知らないと言った。犯罪組織が税関をくぐり抜けるために、一時的に大使の鞄を利用したのだった。

15、16号だった男
 カーター長官から、ロシアから16号と呼ばれるスパイが事情を調べに事務所にやってくる、と通告を受ける。はたして16号はやってきてタペンスをさらっていった。ホテルへ逃げた16号らは逃亡に成功したかに見えたが、トミーはトリックを見破り、ベッドの中に閉じ込められていたタペンスを救い出し、16号も逮捕された。タペンスは新しい仕事を始めるという。母親になるのだ。

CIMG0176

 『名作挿絵全集(全10巻)』(1979-1981年、平凡社)を買った。嬉しい!
 明治から昭和戦後までの挿絵の名作を集大成したもの。昭和54年から56年にかけて出版された。
 パラパラと頁をめくっているだけでも楽しい。時間を忘れる。
 全10巻の内容は次の通り。

 1 明治篇
 2 大正・時代小説篇
 3 大正・現代小説篇
 4 昭和戦前・少年少女篇
 5 昭和戦前・時代小説篇
 6 昭和戦前・現代小説篇
 7 昭和戦前・戦争小説篇
 8 昭和戦後・時代小説篇
 9 昭和戦後・現代小説篇

 いつ頃からだろうか、挿絵がイラストという語に代わって、ほとんど重視されなくなったのは。しかし、少なくとも昭和のある時期までの小説等にとって、挿絵は重要な役割を果たしていた。例えば、永井荷風『東奇譚』において木村荘八の挿絵が果たした役割はとても大きかったはずだ。

 綺羅星のごとくいた挿絵画家たちは、腕達者が多く、また個性が光っていた。伊藤彦造の怪しい魅力、蕗谷紅児の大正モダニズム的抒情、高畠華宵の写実的抒情、少年小説の世界を彩った斎藤五百枝、竹中英太郎の幻想世界、まだまだ…。

 吉川英治の作品のほとんどは文庫本で読めるが、つい置き場所に困る箱入りの『吉川英治全集』(講談社)で欲しくなってしまうのは、挿絵が入っているからだ。ある作品が大規模な文学全集の一巻として収録されると、挿絵はカットされてしまうことが多い。例えば、先ほどの『濹東奇譚』は各社の文学全集に収録されているものには挿絵がない。岩波文庫版には収録されているから、どうしても岩波文庫で読むことになる。

 なろうことなら、もう一度挿絵の魅力について考え直したいものだ。近いうちに、この全集を通読するのをとても楽しみにしている。

CIMG0177
第一巻明治篇より鏑木清方の頁

 ネタを割ってます。

●アガサ・クリスティー『七つの時計』(深町真理子訳、2004年、クリスティー文庫)

 原書は1929年。『チムニーズ館の秘密』の続編で、バトル警視、ケイタラム卿、バンドル、ジョージ・ロマックス、ビル・エヴァズレーなど同じ人物が登場する。

 鉄鋼王のサー・オズワルド・クートは、ロンドン郊外のチムニーズ館を、所有者であるケイタラム卿から借りて住んでいた。もうすぐ貸借期間も終わりになろうという頃、泊まりに来ていた若い外交官のジェリー・ウェイドが死んだ。クロラール(睡眠薬)の飲み過ぎにも見えたが、不審な点もあった。ウェイドが死んだベッドのそばには、仲間たちがいたずらで仕掛けた八つの目覚まし時計があったはずだが、なぜかそれが暖炉の上に並べられ、しかも一つ少ない七つになっていた。しばらくしてやはり若い外交官であるロニー・デヴァルーが銃で撃たれて殺された。明らかに他殺だった。若い四人、ジミー・セシジャー、ビル・エヴァズレー、バンドル、ロレーン・ウェイドは、「セブン・ダイヤルズ」という組織を追って探索を始める。

 ケイタラム卿:侯爵。チムニーズ館の所有者。
 バンドル(アイリーン・ブレント):ケイタラム卿の娘。最後にはビル・エヴァズレーと結婚することになる。
 サー・オズワルド・クート:鉄鋼王で、物語の冒頭、チムニーズ館を借りて住んでいる。
 マライア・クート:オズワルドの妻。
 ルーパート・ベイトマン(ポンゴ):オズワルドの有能な秘書。ビル・エヴァズレーとは幼なじみ。セブン・ダイヤルズの謎の男ナンバー7ではないかと疑われるが、違った。
 ジミー・セシジャー:チムニーズ館の客。セブン・ダイヤルズを追う四人のうちの一人。だが実は、犯罪者で、ヘル・エーベルハルトの発明した公式を盗もうとし、ジェリー・ウェイドらを殺した犯人であった。
 ビル・エヴァズレー:若い外交官。実はセブン・ダイヤルズのメンバー。最後にバンドルと結婚することに。
 ロニー・デヴァルー:若い外交官。射殺される。
 ジェリー・ウェイド:若い外交官。物語の初期に殺される。
 ロレーン・ウェイド:ジェリー・ウェイドの腹違いの妹。ジミー・セシジャーに惚れて悪事に加担する。
 ジョージ・ロマックス:外務次官。
 サー・スタンリー・ディグビー:航空大臣。
 テレンス・オルーク:秘書官。
 ヘル・エーベルハルト:発明家。国家の運命に大きな影響をもたらす公式を発明する。
 アンナ・ラツキー:伯爵夫人。実は女優のベーブ・シーモア。バンドルによってセブン・ダイヤルズの一員であることが見抜かれるが、実はセブン・ダイヤルズという組織は犯罪者集団ではなく正義の集まりだった。
 モスゴロフスキー:セブン・ダイヤルズ・クラブの経営者。
 バトル警視:ロンドン警視庁の警視。セブン・ダイヤルズのナンバー7。

 「すべからく」の誤用あり。

 ネタを割ってます。

●アガサ・クリスティー『青列車の秘密』(青木久恵訳、2004年、クリスティー文庫)

 ポアロ物長編ミステリ。クリスティーの気分が乗らず、食うために嫌々書いた作品らしいが、面白かった。ヘイスティングズは出てこない。
 
 豪華列車ブルー・トレインの中で、富豪の娘ルース・ケタリングが殺され、〈火の心臓〉と呼ばれるルビーが盗まれた。

 ルーファス・ヴァン・オールディン:アメリカの富豪。愛する娘ルースに〈火の心臓〉をプレゼントする。またルースに離婚をさせようとしている。
 ルース・ケタリング:ヴァン・オールディンの娘。夫デリク・ケタリングとは愛し合っていない。ブルー・トレインの中で殺害される。
 デリク・ケタリング:ルースの夫。浪費家。ミレーユというダンサーを愛人にしている。ヴァン・オールディンからルースとの離婚を迫られている。ルースが死ぬことで大金を相続した。ルース殺害の嫌疑がかけられる。
 ナイトン少佐:ヴァン・オールディンの有能な秘書。キャサリン・グレーに惚れてしまう。実は侯爵(ル・マルキ)と呼ばれる大泥棒。手下のエイダ・メイスンと宝石を盗みルースを殺害する。
 アルマン・ド・ラ・ローシュ伯爵:ルースの愛人。ルース殺害の嫌疑をかけられる。
 ミレーユ:ダンサー。デリクの愛人。
 キャサリン・グレー:ハーフィールド夫人の世話係をつとめていたが、夫人がなくなり遺産を相続した。無欲で、浮つかず、冷静にものを見る目を持っている。
 レディ・タンプリン:キャサリンのいとこ。利益に預かろうとキャサリンを家に招待する。
 レノックス・タンプリン:レディ・タンプリンの娘。キャサリンに同情的。
 エイダ・メイスン:ルースのメイド。実は侯爵の手下で、宝石を盗み、ルースを殺害する。
 ディミトリアス・パポポラス:ギリシャの骨董商。裏物も扱う。

 ネタを割ってます。

●アガサ・クリスティー『ビッグ4』(中村妙子訳、2004年、クリスティー文庫)

 原著は1927年。ポアロ物にして冒険物というか国際謀略物でもある。
 
 ポアロとヘイスティングズが「ビッグ4」と名乗る一大犯罪組織と戦う。

 12の短編をつなげて長編にしたもの、と聞くと納得できるような構成。連作短編集のような。
 
 ビッグ4の、ナンバー1はリー・チャン・イェンという中国人。ナンバー2はエイブ・ライランドというアメリカの富豪。ナンバー3はマダム・オリヴィエというフランスの科学者。変装の名人であり殺し屋でもあるナンバー4は、クロード・ダレルというイギリス人の俳優である。
 
 後半でポアロの双子の兄が登場する。兄の存在はヘイスティングズも知らなかった。だが、どうも兄自身がポアロの創作であるらしい。
 
 ロサコフ伯爵夫人が敵方として登場する。ロサコフ伯爵夫人は他の作品にも登場。どうやらポアロは伯爵夫人に惚れているらしい。

 ネタを割ってます。

●アガサ・クリスティー『アクロイド殺し』(羽田詩津子訳、2003年、クリスティー文庫)

 原著は2006年出版。クリスティーの代表作の一つにして、問題作。

 舞台はキングズ・アボット村。小説全体が、この村に住む医師ジェームズ・シェパードの手記という形になっている。キングズ・アボット村に住む裕福な未亡人フェラーズ夫人が、ヴェロナールを飲んで自殺した。村のもう一人の富豪であるロジャー・アクロイドは、フェラーズ夫人との結婚が噂されていたが、そのアクロイドもまた刺殺された。たまたま村に引っ越してきていたエルキュール・ポアロが捜査に乗り出す。

 ロジャー・アクロイド:キングズ・アボット村の富豪。ファンリー・パークに住む。
 ラルフ・ペイトン:ロジャーの義理の息子(亡妻の連れ子)。フローラ・アクロイドと婚約する。が、実はアクロイド家の小間使いのアーシュラと結婚していた。
 セシル・アクロイド夫人:ロジャーの義妹(弟の妻)。
 フローラ・アクロイド:セシルの娘。ラルフ・ペイトンと婚約するが、実はヘクター・ブラント少佐を愛している。
 ジェフリー・レイモンド:ロジャーの秘書。
 ジョン・パーカー:ロジャーの執事。
 ミス・ラッセル:アクロイド家の家政婦。一時期ロジャーと結婚するのではないかといわれていた。がセシル・アクロイド夫人がやってくることでその可能性はなくなった。ロジャー殺害当日、ファンリー・パークにいたらしい謎の男チャールズ・ケントの母。
 アーシュラ・ボーン:アクロイド家の小間使い。ラルフ・ペイトンと愛し合い、秘かに結婚していた。
 ヘクター・ブラント少佐:ロジャーの旧友。秘かにフローラ・アクロイドを愛している。
 ジェームズ・シェパード:キングズ・アボット村に住む医師。アクロイド殺しの犯人。手記を書き終え、ヴェロナールを飲んで自殺することを暗示して、物語は終わる。
 キャロライン:シェパードの姉。

 とても面白かった。
 語り手が犯人であるということで、この小説は賛否両論の大議論を巻き起こした。反則ではないかというのである。

> 第一次大戦後、とりわけ一九二〇年代は、探偵小説の形式化がラディカルに推し進められた時代である。(P.442)

 と解説の笠井潔は述べている。つまり、形式が整いつつある時期にもうすでに反則的作品が生まれているのである。こういうことはどのジャンルでもあるような気がする。
 この手法を批判するとしても、いずれこういう作品は出てきたはずである。それをたまたまアガサが書いたということにすぎないのではないか。しかも傑作を書いたのだから、これでいいのだと思う。
 見方を変えて、形式化はなぜ起きたのか、という論点のほうが興味深い。どうもそこには歴史的、思想的な意味がありそうである。

 ネタを割ってます。

●アガサ・クリスティー『チムニーズ館の秘密』(高橋豊訳、2004年、クリスティー文庫)

 原著は1925年出版。
 登場人物が多くて、前半やや読みにくかったが、半ばほどからは面白さが発酵してきた。
 読み終えてからすでに時間が経ってしまったので、細かいところはほとんど忘れた(笑)。人物や設定を全部把握した上でもう一度読み直したいものだ。
 
 今はキャッスル旅行者に勤めているアンソニー・ケイドは、アフリカはジンバブエのブラワーヨで久しぶりに会った友人のジェイムズ・マグラスから意外なことを頼まれる。ヘルツォスロバキアのスティルプティッチ伯爵が書いた回顧録を、十月十三日までにロンドンのある出版社に届ければ、一千ポンドという大金をくれるというのだ。ケイドはマグラスになりすましてロンドンへ向かう。
 
 アンソニー・ケイド:キャッスル旅行者の社員。友人のマグラスから、スティルプティッチ伯爵の回顧録をロンドンの出版社まで届けるように頼まれる。最後の最後で、ケイドがヘルツォスロバキアの王位継承者ニコラス・オボロヴィッチだということが明かされる。
 ジェイムズ・マグラス:ケイドの友人。
 ケイタラム卿:チムニーズ館の所有者。
 アイリーン(バンドル):ケイタラム卿の娘。
 ブラン:ケイタラム家の家庭教師。
 スティルプティッチ伯爵:ヘルツォスロバキアの元首相。暗殺された。回顧録を執筆。
 ミカエル・オボロヴィッチ:ヘルツォスロバキアの王子。
 ボリス・アンチューコフ:ミカエル王子の付き人。
 アンドラーシ大尉:ミカエル王子の侍従武官。
 ロロプレッティジル男爵:ヘルツォスロバキアの王政擁護派の代表。
 ジョージ・ロマックス;イギリス外務省の高官。
 ヴァージニア・レヴェル:ロマックスのいとこで美貌の女性。最後にはケイドと結婚する。
 ビル・エヴァズレー:ロマックスの秘書。
 ハーマン・アイザックスタイン:全英シンジケートの代表。
 ハイラム・P・フィッシュ:チムニーズ館の客。
 キング・ヴィクター:フランスの宝石泥棒。正体不明。実はルモワーヌになりすましていた。
 バトル:ロンドン警視庁の警視。
 ルモワーヌ:パリ警視庁の刑事。

●アガサ・クリスティー『ポアロ登場』(真崎義博訳、2004年、クリスティー文庫)
●アガサ・クリスティー『ポワロの事件簿1』(厚木淳訳、1980年、創元推理文庫)

 ポアロ物の短編集。両者は同じ原作の翻訳。ただし、『ポワロの事件簿1』は1924年にイギリスで出版されたもの、『ポアロ登場』は1925年にアメリカで出版されたもので、後者のほうが三編多く収録されている。
 
 私は二冊を同時平行的に読んだ。寝床で『ポアロ登場』を、電車の中などで『ポワロの事件簿1』を読んだのだ。作品によって『ポアロ登場』を先に読んだものもあれば、『ポワロの事件簿1』を先に読んだものもある。いずれにしても完全に全ページを読み直した。
 
 異なる翻訳で二度読むことで、はじめに読んだときに意味があいまいだったところがはっきりしたり、翻訳の違いに気づいたりもして、なかなか面白い体験だった。
 
 このほか
●『ポアロ登場』(小倉多加志訳、1978年、ハヤカワ・ミステリ文庫)
も持っているが、今回は目を通していない。
 
 両者のタイトルを併記しておこう。

『ポワロの事件簿1』
 1.西洋の星の事件
 2.マースドン荘園の悲劇
 3.安いマンションの事件
 4.ハンター荘の謎
 5.百万ドル公債の盗難
 6.エジプト王の墳墓の事件
 7.グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件
 8.誘拐された総理大臣
 9.ダヴンハイム氏の失踪
 10.イタリア貴族の事件
 11.遺言書の謎

『ポアロ登場』 
 1.<西洋の星>盗難事件
 2.マースドン荘の悲劇
 3.安アパート事件
 4.狩人荘の怪事件
 5.百万ドル債券盗難事件
 6.エジプト墳墓の謎
 7.グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件
 8.首相誘拐事件
 9.ミスタ・ダヴンハイムの失踪
 10.イタリア貴族殺害事件
 11.謎の遺言書
 12.ヴェールをかけた女
 13.消えた廃坑
 14.チョコレートの箱

 12〜14が『ポアロ登場』にのみ収録されている。

 以下、気分によって粗密があるが、簡単なメモ。ネタバレあり。表題はクリスティー文庫版によった。
 
1.<西洋の星>盗難事件
  メアリー・マーヴェル:女優
  グレゴリー・ロルフ:俳優。メアリーとグレゴリーは夫婦。宝石「西洋の星」を所有。
  ヤードリー卿:宝石「東洋の星」を所有。
  ヤードリー夫人:ヤードリー卿の妻。
 二つのダイヤは中国のある神像の右目と左目であった。満月の夜に二つのダイヤを盗むという予告があった。
 真相は…。グレゴリーは三年前、ヤードリー夫人と良い仲になったことがあり、ヤードリー卿のもつダイヤを偽物にすり替えさせた。最近になってヤードリー卿は金に困り、ダイヤを売ろうと考えるようになった。事が露見することを恐れたグレゴリーは、ヤードリー夫人にダイヤ(東)が盗まれた芝居をさせ、自らも中国人に扮してダイヤ(西)を盗んだ。真実を見破ったポアロは、グレゴリーからダイヤを取り戻し、ヤードリー卿に渡した。
 余談。ヤードリー卿が金に困り自分の所有地を映画撮影のために貸すという話が出ているが、本音をいえば貸したくないという理由を述べる場面。真崎訳ではこうなっている。

> 本当は嫌なんです──大勢の映画関係の人間が猟場をうろうろするかと思うとゾッとします──でも、仕方がないのかもしれません。(P.29)

 この部分、厚木訳ではこうなっている。

> わしは、それを受けたくない──自分の猟場の中に、河原乞食が群がってくるなどとは、考えるだけでもまっぴらだ──だが、そうしなければならぬかもしれぬ、(P.26)

 真崎訳をはじめに読んだときには普通に読み流したのだが、後で厚木訳を読んだときに、意識に引っかかって来たのだ。厚木訳では「河原乞食」という語を使って映画関係者に対する差別的意識が読み取れるが、真崎訳では感じられない。ついでに小倉多加志訳も調べてみた。

> わたしはそうしたくない……あの猟場を映画関係のものが大勢してうろちょろするのかと思うといやになる……が、仕方がないのかもしれん。(P.26)

 真崎訳に近い。わかりやすさでいえば、厚木訳のほうがわかりやすく、スッと胸に落ちてくる。当時のイギリス(「<西洋の星>盗難事件」の初出は1923年)で、映画人に対する河原者(=差別)意識があったのかどうか、とても興味深い。

2.マースドン荘の悲劇
 マルトラヴァーズが死亡するが、妻を受取人として多額の保険金がかけられていた。保険会社からの依頼でポアロが調べることに。医師は内出血だという。しかし、ポアロは真実を見抜いた。カラス用ライフルを口につっこんで発射すると弾丸が突き抜けず頭部にとどまり、内出血だと誤診される。そのことを聞き及んだマルトラヴァーズ夫人は、夫に「形だけでもしてみせて」と言い、隙をみて引き金を引いたのだった。
 ポアロがブラック大尉に自由連想法を試す場面がある。
 真崎訳では「マースドン荘」、厚木訳では「マースドン荘園」。荘と荘園ではずいぶん印象が違う。

3.安アパート事件
 ロビンスン夫妻が、格安のマンションに入ることができた、という話から、ポアロは国際的な謀略を発見していく。
 半年前、ルイジ・ヴァルダルノが海軍の機密書類を盗んだが、後に死体で発見された。時を同じくしてヴァルダルノと親しくしていた歌手、実は国際スパイのミス・エルザ・ハートが姿を消した。
 逃亡したエルザはロビンスン夫妻としてマンションに移り住んだ。彼女はヴァルダーノの組織から命を狙われていることを知り、同じロビンスンという名の夫婦にマンションを又貸しして身代わりにしようとしたのだった。

4.狩人荘の怪事件
 ダービシャーにある狩人荘で、ロジャー・ヘイヴァリングの叔父が殺された。狩人荘へ来てほしいというヘイヴァリングの依頼だったが、ポアロはインフルエンザで動くことはできなかった。そこで、ヘイスティングズを派遣し、彼からの報告だけで事件を解決する。
 ロジャーとその妻ゾーイが叔父の財産を狙って拳銃で撃ったのだった。アリバイを証明した家政婦はゾーイの変装だった。

 うーん。読んでから少し時間が経ってしまったので、簡単なメモを書くだけでも読み直すのに近い作業が必要になってしまう。なので以下省略。やっぱり一編か二編読んだ時点でメモをしておかないとダメだなあ。

このページのトップヘ