『名作挿絵全集(全10巻)』(1979-1981年、平凡社)を買った。嬉しい!
明治から昭和戦後までの挿絵の名作を集大成したもの。昭和54年から56年にかけて出版された。
パラパラと頁をめくっているだけでも楽しい。時間を忘れる。
全10巻の内容は次の通り。
1 明治篇
2 大正・時代小説篇
3 大正・現代小説篇
4 昭和戦前・少年少女篇
5 昭和戦前・時代小説篇
6 昭和戦前・現代小説篇
7 昭和戦前・戦争小説篇
8 昭和戦後・時代小説篇
9 昭和戦後・現代小説篇
いつ頃からだろうか、挿絵がイラストという語に代わって、ほとんど重視されなくなったのは。しかし、少なくとも昭和のある時期までの小説等にとって、挿絵は重要な役割を果たしていた。例えば、永井荷風『濹東奇譚』において木村荘八の挿絵が果たした役割はとても大きかったはずだ。
綺羅星のごとくいた挿絵画家たちは、腕達者が多く、また個性が光っていた。伊藤彦造の怪しい魅力、蕗谷紅児の大正モダニズム的抒情、高畠華宵の写実的抒情、少年小説の世界を彩った斎藤五百枝、竹中英太郎の幻想世界、まだまだ…。
吉川英治の作品のほとんどは文庫本で読めるが、つい置き場所に困る箱入りの『吉川英治全集』(講談社)で欲しくなってしまうのは、挿絵が入っているからだ。ある作品が大規模な文学全集の一巻として収録されると、挿絵はカットされてしまうことが多い。例えば、先ほどの『濹東奇譚』は各社の文学全集に収録されているものには挿絵がない。岩波文庫版には収録されているから、どうしても岩波文庫で読むことになる。
なろうことなら、もう一度挿絵の魅力について考え直したいものだ。近いうちに、この全集を通読するのをとても楽しみにしている。
第一巻明治篇より鏑木清方の頁