「十九文店」「四文屋」について少し調べたので、資料をまとめてみた。

■現代の出版物
 まずは手元にある以下の3点の資料から出発した。

○北嶋廣敏『図説 大江戸おもしろ商売』(2006年、学習研究社)
 「十九文店」「四文屋」について、各2頁を使い、図版入りで丁寧にわかりやすく紹介している。

○三谷一馬『江戸商売図絵』(1995年、中公文庫)
 「十九文店」「三十八文店」について2頁で紹介。図版入り。

○三谷一馬『彩色江戸物売図絵』(1996年、中公文庫)
 「十九文店」について2頁で紹介。図版入り。

 次にこれらに引用紹介されている原典を探してみた。

■十九文見世

○『我衣』加藤曳尾庵
 所収:『燕石十種 第一巻』昭和54年、中央公論社。
 江戸に住んでいた医師の日記。文化年間の刊行。
> 享保八九年の頃、櫛、笄、三ツ櫛、其外女子小道具品々を、現金掛直(ママ)なし安売、代十九文にて、目つきによりどらせ売る商人あり、殊の外はやりて、後には、町々辻々にて上物をも並べをき、三十八文一通品々、十九文一通品々、或は十三文一通品々数多並べ、小刀、はさみ、糸類、将棋駒、三味線道具、鼻紙入、緒〆、盆塗物、きせる、鏡、剃刀、人形、墨、筆の類に至るまで、右の価に売て、少々も利に成るものは、何にても置きて売ゆへ、見物の人多く、珍しきゆへ調る人多く、いよいよ繁昌したり
 なお、この記述の直後に「現金安売掛直なし」の越後屋の話が書かれている。越後屋八郎左衛門がこれを始めたのは元禄年間のことであるという。

○『式亭雑記』式亭三馬
 所収:『続燕石十種 第一巻』昭和55年、中央公論社。
 文化7〜8年の日記。
> 去年の歳暮より此春へかけて、三十八文見せといふ商人、大に行はれり、小間物類しなじなをほしみせに並べ置、価をば三十八文に定めて商ふ事也、或は、あぶりこ、櫛、かんざし、茶ほうじ、小児の手遊道具類、何彼と差別なく仕込置て、四ツ辻、橋詰などに、むしろ敷たる店を構へて、売声すぐれていさぎよく、神事、法会の場には、両側のきを並べて、三十八文と呼ぶ、ことし夏にいたりてもいまだ流行して、町々の辻々に、絶ず此見せあり、彼商人が呼声にいわく、
 ♪なんでもかでも、よりどつて三十八文、あぶりこでも、かな網でも三十八文、ほうろくに茶ほうじ添て三十八文、銀のかんざしに小まくらつけて三十八文、はじからはじまで、よりどつて三十八文、京伝でも三馬でも、よりどつて三十八文云々、

○『誹風柳多留』
 所収:『誹風柳多留(二)』岩波文庫、九・32、P.37。
> 十九文見世にいなかゞ五六人
 『柳多留』の句を解説した『誹風柳多留 九篇』(現代教養文庫)にはこう書かれている(P.221)。
> なんでも十九文均一の店(十九文見世)に田舎から都会に出てきた人が五・六人入っている。安い土産物を物色しているのであろう。

○合巻『絵看板子持山姥』歌川豊国(文化12年)
 「四文屋」の絵を掲載。まだ原典に当たっていない。
 北嶋『大江戸おもしろ商売』に転載され、三谷『江戸商売図絵』には三谷によりリライトされた絵が掲載されている。

○合巻『二枚続吾嬬錦絵』歌川国貞(文化10年)
 「十九文店」の絵を掲載。まだ原典に当たっていない。
 三谷『彩色江戸物売図絵』に三谷のリライトによる絵(カラー)が掲載されている。

○川柳?
 三谷『彩色江戸物売図絵』で紹介されている川柳だが、不明。
> ひらきます十九文やが見せる宮(塵手水)
 とあるのだが、「塵手水」は作者の名なのか本の名なのか…。
 恥ずかしながら意味もよくわからない。
 『誹風柳多留』『初代川柳選句集』『誹風柳多留拾遺』(いずれも岩波文庫)を探してみたが見つからなかった。

■四文屋

○『飛鳥川』柴村盛方(源左衛門)
 所収:『新燕石十種 第一巻』昭和55年、中央公論社。
 文化7年刊行。「享保より文化に至る江戸の風俗を主として記したるもの」。
> 昔、くだりぎやうせん、小き桶に入、提て歩行く、其後、家台見世の様にして、けづりぎやうせんと云、右の家台、其後は、煮肴、にしめ、菓子の類、四文屋とて、両国は一面、柳原より芝までつゞき、大造なる事也、其外、煮売茶屋、両国ばかりに何軒といふ数をしらず、王子、堀の内、牛島辺へも、美肴おほく仕込めば、自ら諸色高直になり、軽き者無益に遣ひ過し、不益なる事なり、(P.18)
 「ぎやうせん」とは「凝煎」のことのようだ。
> ぎょうせん【凝煎】汁飴。くだり。安永四年・物類称呼「畿内にて、しるあめといふ(略)関東にて、水あめ又ぎやうせんと云、水あめは、ぎやうせんよりもゆるし(略)江戸にては、下りともいふ」(前田勇編『江戸語の辞典』講談社学術文庫)

○『近世職人尽絵詞』
 「四文屋」の絵。まだ原典に当たっていない。
 北嶋『大江戸おもしろ商売』に転載されている。

○『正直清兵衛』河竹黙阿弥(安政4年)
 「四文屋」が登場すると、北嶋『大江戸おもしろ商売』にある。
 まだ原典に当たっていない。