BSプレミアムで時々やっているポアロ物やミス・マープル物のテレビドラマが好きでよく見ているのだが、見るたびに「クリスティーをじっくり読んでみたい」と思っていた。で、早川書房から出ている《クリスティー文庫》を少しずつ読んでいくことにした。順序は原著の出版順。

●アガサ・クリスティー『スタイルズ荘の怪事件』(矢沢聖子訳、原著1920年→2003年、クリスティー文庫1)

 アガサ・クリスティーの処女作。ポアロ物の第一作でもある。とても面白かった。謎解き場面の切れ味の良さはさすが。
 
 スタイルズ荘は、カヴェンディッシュ家のものだが、現在はカヴェンディッシュの後妻であるエミリー・イングルソープが女主人である。エミリーはアルフレッド・イングルソープと再婚している。ジョン・カヴェンディッシュとローレンス・カヴェンディッシュはエミリーの義理の息子になる。ある時、エミリーが毒殺された。
 
 登場人物を整理しておく。
 
 エミリー・イングルソープ:現在のスタイルズ荘の女主人。
 アルフレッド・イングルソープ:エミリーの再婚相手。
 ジョン・カヴェンディッシュ:エミリーの義理の息子。
 メアリ・カヴェンディッシュ:ジョンの妻。
 ローレンス・カヴェンディッシュ:エミリーの義理の息子で、ジョンの弟。
 エヴリン・ハワード:エミリーの友人。
 シンシア・マードック:エミリーの旧友の娘で薬剤師。
 
 以下、再読する時のためのメモ。結末を割る(このブログでは予告なくネタバレを書くことがあるのでご注意)。
 
 犯人はアルフレッド。最も疑われやすい人間が一周回ってやっぱり犯人という形。
 アルフレッドを憎んでいたかに見えたエヴリンは、共犯。アルフレッドとはいとこ同士だった。

 余談。エヴリン・ハワードは「まるで電文のような省略した話し方」をする、とある。こんな訳文になっている。

> 「雑草があとからあとから生える。とても追いつかない。あなたを当てにしていいかしら。ご用心を!」(P.17)

 旧訳(田村隆一訳、ハヤカワミステリ文庫)はどうなっているのか、気になって調べてみた。

> すぐに気づいたことだが、彼女の話し方は、電報形式で言い表されるのだった。
「雑草が火事みたいにひろがります、手伝わせるかもしれませんよ。用心なさい!」まあこんな調子だ。(P.12)

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