いよいよ私がライフワークの一つと思い定めている曲集に取りかかりました。
ナルシス・ブースケ:36のエチュード(1851)独奏アルトリコーダーのための
Narcisse Bousquet : 36 Etudes (1851) fur Altblockflote solo
ブースケ作品については、これまでに、
《6つのレクリエーション》
《6つのエチュード》
《12のグラン・カプリース》
《20のデュエット》
を取り上げ、演奏&録音してきました。《36のエチュード》は、スケールの大きさといい、高い難易度といい、これらの集大成ともいうべき練習曲集です。
演奏困難とはいえ、今やらなければ、だんだん指や舌が回らなくなってきます。だから、思いきって取りかかることにしました。
多少の、いえ、かなりの傷があっても公開してしまえるのは、アマチュアの特権だと思っています。その特権をフルに活かします。
私がブースケの作品群に取り組みたいと思ったのは、彼の作品が、19世紀的な歌心と遊び心と技巧に満ちていてまことに魅力的である、にもかかわらず、プロのリコーダー奏者もアマチュアの愛好家も、ほとんど全く取り上げない「不遇の作曲家」だから、ということが大きいです。
誰もやらないなら私がやろう、と。
《36のエチュード》は、12曲ずつ1冊にまとめられて全3冊で出版されています。このブログ・エントリーでは、はじめの12曲すなわち Vol.1 に収録された曲を紹介します。
もともとはフラジオレットという楽器のために書かれたもののようで、私はMoeck社から出版されているアルトリコーダー用の楽譜を使用しています(Hugo Reyne 編)。YouTubeには、何曲かをトランペットで吹いている動画も上がっているので、トランペット用にも編曲されているのかも知れません。
気長に、温かい目で(耳で)、最後までお付き合いいただければ幸いです。
3/4拍子。変ロ長調。
シリーズ開幕にふさわしい明るく楽しい曲。吹いていても楽しい。スタッカート中心のフレーズと、スラー中心のフレーズのメリハリを出したいものだと思います。
映像のテーマは「1月」です。つまり「January」で検索した画像から、なんとなく曲に合いそうなものを選びました。
2/4拍子。イ短調。
跳躍音程の練習だと思います。冒頭から10度(1オクターヴ+3度)の跳躍があり、しかもスラーがついています。以降もスラー付き10度音程が頻出。これをあたかも3度のように吹くことが目標です。終わり近くのスラー付き10度6連発が最難関で、ここは軽くタンギングを入れるやり方もあるとは思いますが、意地でタンギング無しでやりました。ほかにもスラーが付いたり付かなかったりで、6度、7度、8度、9度が出てきます。もちろんブースケらしい歌心も大切にしたい。
映像のテーマは「2月」、「February」で検索した中から選びました。最後のピンクのワインはヴァレンタインデーですね。
6/8拍子。ヘ長調。
爽やかに明るい曲。6拍子だけどワルツっぽい。
この曲集としては比較的吹きやすい曲です。とはいえ、アルペジオが多く、音域は広いし、旋律はニュアンスに富むので、簡単かと言われれば全然簡単ではありません。
吹いても、聞いても、楽しい曲。
2/4拍子。ニ短調。
短調ですが、暗い感じはあまりなく、どちらかといえば爽やかな気分に満ちています。ただ、手放しの爽やかさではなく、どこかに憂いを含んでいるというか、言ってみれば、涙を乗り越えた爽やかさ、でしょうか。誰も共感しないかも知れないけど。
冒頭は付点16分音符と32分音符の付点音型です。つまり、1拍に付点音型が2組入る(タッタタッタで1拍)。これを1拍と感じることができるかどうかが一つのポイントです。こういうリズムはバロック音楽でも出てきます。例えば、フランス風序曲のはじめに出てくるグラーヴェなどで頻出します。
もう一つは、3連符(6連符)との吹き分けですね。いうまでもなく付点音型は音価が3:1ですが、これが3連符音型の途中や前後に出てくると、つい2:1になりがちです。場合によっては2:1にならしてしまう解釈が成り立つこともありますが、まずはきちんと吹き訳ができること。難しいですけど。
トリルも結構難しいです。ソーファーミーという音型の、それぞれの音に後打音付きトリルが指定されています。ここは音楽上、均質なトリルが望ましいところです(できれば音程も良いほうが良い)。が、アルトリコーダーをやった人ならわかると思いますが、これがなかなか難しい。
3/4拍子。ニ長調。
Mouvement de valse とは、ワルツのテンポで、の意味。
アルペジオ風の音型の中にメロディーが浮かび上がります。跳躍音型がなかなかです。
2/4拍子。ト長調。
第1巻(第1〜12番)の中で最も華麗な曲にして、難曲ではないかと思います。なにしろトリルが沢山出てきて、跳躍はある、吹きにくい装飾音はある、速い指使いはある、高音ファ#まであるという。
でも、吹いていて楽しいし、聞いても楽しい曲でもあります。
3/4拍子。ヘ長調。
これはもう楽しい曲。高音域クロスフィンガリングでのスラーなど、多少の難所はあるものの、表情のつけ方に迷うところがなく、楽しく吹ける。
6/8拍子。ニ短調。
憂いを含んだ表情ながら、どこか熱を帯びています。美しいですね。
技術的には、高音ファ#が二度出てきます。跳躍も多く、あまりそうは感じられないかも知れませんが、実は上から下まで動き回っています。三度、高音ソからド#への12度(1オクターヴ+減5度)の跳躍が出てきますが、ここは慣れればそれほど難しくはないかな。
2/2拍子。変ロ長調。
聞いて楽しい曲なのですが、吹くのは結構苦労しました。まず冒頭1拍目、付点四分音符と八分音符で、付点四分音符にトリルと後打音がついています。はじめはどう吹いていいかわかりませんでした。が、何度もやっているうちに正解がわかってきました。勉強になりました。また、音域外高音ラが二度出てきます。一度は三連符の速い動きの中に出てくるので、なかなか大変でした。結果的には概ね思った通りの演奏になったので、満足です。
つづきます。
ナルシス・ブースケ:36のエチュード(1851)独奏アルトリコーダーのための
Narcisse Bousquet : 36 Etudes (1851) fur Altblockflote solo
ブースケ作品については、これまでに、
《6つのレクリエーション》
《6つのエチュード》
《12のグラン・カプリース》
《20のデュエット》
を取り上げ、演奏&録音してきました。《36のエチュード》は、スケールの大きさといい、高い難易度といい、これらの集大成ともいうべき練習曲集です。
演奏困難とはいえ、今やらなければ、だんだん指や舌が回らなくなってきます。だから、思いきって取りかかることにしました。
多少の、いえ、かなりの傷があっても公開してしまえるのは、アマチュアの特権だと思っています。その特権をフルに活かします。
私がブースケの作品群に取り組みたいと思ったのは、彼の作品が、19世紀的な歌心と遊び心と技巧に満ちていてまことに魅力的である、にもかかわらず、プロのリコーダー奏者もアマチュアの愛好家も、ほとんど全く取り上げない「不遇の作曲家」だから、ということが大きいです。
誰もやらないなら私がやろう、と。
《36のエチュード》は、12曲ずつ1冊にまとめられて全3冊で出版されています。このブログ・エントリーでは、はじめの12曲すなわち Vol.1 に収録された曲を紹介します。
もともとはフラジオレットという楽器のために書かれたもののようで、私はMoeck社から出版されているアルトリコーダー用の楽譜を使用しています(Hugo Reyne 編)。YouTubeには、何曲かをトランペットで吹いている動画も上がっているので、トランペット用にも編曲されているのかも知れません。
気長に、温かい目で(耳で)、最後までお付き合いいただければ幸いです。
【01】エチュード第1番 アレグロ・モデラート
3/4拍子。変ロ長調。
シリーズ開幕にふさわしい明るく楽しい曲。吹いていても楽しい。スタッカート中心のフレーズと、スラー中心のフレーズのメリハリを出したいものだと思います。
映像のテーマは「1月」です。つまり「January」で検索した画像から、なんとなく曲に合いそうなものを選びました。
【02】エチュード第2番 アレグレット
2/4拍子。イ短調。
跳躍音程の練習だと思います。冒頭から10度(1オクターヴ+3度)の跳躍があり、しかもスラーがついています。以降もスラー付き10度音程が頻出。これをあたかも3度のように吹くことが目標です。終わり近くのスラー付き10度6連発が最難関で、ここは軽くタンギングを入れるやり方もあるとは思いますが、意地でタンギング無しでやりました。ほかにもスラーが付いたり付かなかったりで、6度、7度、8度、9度が出てきます。もちろんブースケらしい歌心も大切にしたい。
映像のテーマは「2月」、「February」で検索した中から選びました。最後のピンクのワインはヴァレンタインデーですね。
【03】エチュード第3番 アレグロ・モデラート
6/8拍子。ヘ長調。
爽やかに明るい曲。6拍子だけどワルツっぽい。
この曲集としては比較的吹きやすい曲です。とはいえ、アルペジオが多く、音域は広いし、旋律はニュアンスに富むので、簡単かと言われれば全然簡単ではありません。
吹いても、聞いても、楽しい曲。
【04】エチュード第4番 モデラート
2/4拍子。ニ短調。
短調ですが、暗い感じはあまりなく、どちらかといえば爽やかな気分に満ちています。ただ、手放しの爽やかさではなく、どこかに憂いを含んでいるというか、言ってみれば、涙を乗り越えた爽やかさ、でしょうか。誰も共感しないかも知れないけど。
冒頭は付点16分音符と32分音符の付点音型です。つまり、1拍に付点音型が2組入る(タッタタッタで1拍)。これを1拍と感じることができるかどうかが一つのポイントです。こういうリズムはバロック音楽でも出てきます。例えば、フランス風序曲のはじめに出てくるグラーヴェなどで頻出します。
もう一つは、3連符(6連符)との吹き分けですね。いうまでもなく付点音型は音価が3:1ですが、これが3連符音型の途中や前後に出てくると、つい2:1になりがちです。場合によっては2:1にならしてしまう解釈が成り立つこともありますが、まずはきちんと吹き訳ができること。難しいですけど。
トリルも結構難しいです。ソーファーミーという音型の、それぞれの音に後打音付きトリルが指定されています。ここは音楽上、均質なトリルが望ましいところです(できれば音程も良いほうが良い)。が、アルトリコーダーをやった人ならわかると思いますが、これがなかなか難しい。
【05】エチュード第5番 ムーヴマン・ドゥ・ヴァルス
3/4拍子。ニ長調。
Mouvement de valse とは、ワルツのテンポで、の意味。
アルペジオ風の音型の中にメロディーが浮かび上がります。跳躍音型がなかなかです。
【06】エチュード第6番 モデラート
2/4拍子。ト長調。
第1巻(第1〜12番)の中で最も華麗な曲にして、難曲ではないかと思います。なにしろトリルが沢山出てきて、跳躍はある、吹きにくい装飾音はある、速い指使いはある、高音ファ#まであるという。
でも、吹いていて楽しいし、聞いても楽しい曲でもあります。
【07】エチュード第7番 ムーヴマン・ド・ヴァルス
3/4拍子。ヘ長調。
これはもう楽しい曲。高音域クロスフィンガリングでのスラーなど、多少の難所はあるものの、表情のつけ方に迷うところがなく、楽しく吹ける。
【08】エチュード第8番 アレグロ・モデラート
6/8拍子。ニ短調。
憂いを含んだ表情ながら、どこか熱を帯びています。美しいですね。
技術的には、高音ファ#が二度出てきます。跳躍も多く、あまりそうは感じられないかも知れませんが、実は上から下まで動き回っています。三度、高音ソからド#への12度(1オクターヴ+減5度)の跳躍が出てきますが、ここは慣れればそれほど難しくはないかな。
【09】エチュード第9番 ムーヴマン・ド・マルシュ
2/2拍子。変ロ長調。
聞いて楽しい曲なのですが、吹くのは結構苦労しました。まず冒頭1拍目、付点四分音符と八分音符で、付点四分音符にトリルと後打音がついています。はじめはどう吹いていいかわかりませんでした。が、何度もやっているうちに正解がわかってきました。勉強になりました。また、音域外高音ラが二度出てきます。一度は三連符の速い動きの中に出てくるので、なかなか大変でした。結果的には概ね思った通りの演奏になったので、満足です。
つづきます。
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