クラシック音楽とアート

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HIMARIと山田和樹がベルリン・フィルにデビュー|2024/2025年シーズン

 ベルリン・フィルの2024/2025年シーズンのスケジュールが発表され、ヴァイオリニストのHIMARIさんと山田和樹が2025年にベルリン・フィル・デビューすることが明らかになりました。

ベルリン・フィル webpage: Calender from 8/23/2024

 ブルックナー・イヤーの2024年を記念して、首席指揮者・芸術監督のK.ペトレンコによるブルックナーの交響曲第5番で幕をあけ、ニュルンベルクからベルリンに移ったヨアナ・マルヴィッツの初登場やチョ・ソンジンのアーティスト・イン・レジデンスが話題になる中、日本からは注目の天才ヴァイオリニストHIMARIさんと山田和樹が初登場します。
 HIMARIさんは、来年(2025年)3月20に、ズービン・メータ指揮の定期で、ヘンリク・ヴィエニヤフスキのヴァイオリン協奏曲第1番を弾いてデヴューを飾ります。
 山田は、同6月12日に、レスピーギの《ローマの噴水》、武満徹の《ウォーター・ドリーミング》(w/エマニュエル・パユ!)、そして、サン=サーンスの交響曲第3番《オルガン付き》(w/セバスチャン・ハインドル)を指揮して、デビューします。ベルリン・フィル首席の名手パユ(Fl)との武満、若手の注目株ハインドル(Org)とのサン=サーンスと、聴きどころ満載のプログラムです。

  HIMARIさん(吉村妃鞠, 2011年生れ)は、2021年の「第15回リピンスキ・ヴィエニヤフスキ国際ヴァイオリンコンクール」において、史上最年少で、第一位より上位に位置する特賞グランプリを受賞しました。同コンクールのジュニア部門は、マキシム・ヴェンゲーロフ(1位)、樫本大進(3位)、庄司紗矢香さん(1位)木嶋真優さん(2位)、服部百音さん(1位)を輩出してきたジュニアの登竜門です。天才との呼び声が高いHIMARIさんは、それまでに出場したコンクール全てで第1位を獲得しているそうで、ヴェンゲーロフや樫本、木島さんを育てたザハール・ブロンをして「並外れた才能と信じられないほど高い技術はもちろん、彼女は様々な音色を表情豊かに演奏し、聴衆全てに感動を与えた。」と言わしめた才能の持ち主です。
 以下のパガニーニでは、極めて正確な音程で奏でる芳醇で美しい重音は、確かな技巧に支えられており、細やかなニュアンスによる豊かな表情には、類まれな音楽的センスが感じられます。



◇ パガニーニ: ヴァイオリン協奏曲 第1番 HIMARI(Vn)、ケリ-リン・ウィルソン/NHK交響楽団

 山田の方は、予定通り実現すれば、ベルリン・フィルを指揮した二人目の現役日本人指揮者となります。ちなみに、これまで同楽団を指揮した日本人指揮者は、佐渡裕、小澤征爾、朝比奈隆、大町陽一郎、若杉弘、渡辺暁雄他、ごく少数の指揮者しかいません。山田は、その他にも、スイス・ロマンド管弦楽団やトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団、ローマのサンタチェチーリア国立アカデミー管弦楽団等、欧州の主要オーケストラに客演しているうえに、来月はシカゴ交響楽団にデビューする予定であり、来年(2025年)にはクリーヴランド管弦楽団にもデビューすることが発表されていました。現在、モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督兼芸術監督及びバーミンガム市交響楽団の首席指揮者を務めており、欧州での定位置も確保していることから、世界的指揮者として、今後、さらなる活躍が期待されます。

関連記事:
1. 山田和樹がシカゴ交響楽団にデビュー|ムーティ退任後の2023/2024年シーズン
2. 山田和樹、トーマス・グガイスらがクリーヴランド管弦楽団にデビュー|2024/2025年シーズン


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山田和樹
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エクトル・ベルリオーズ : 幻想交響曲
[CD] [Import] [日本語帯・解説付]
山田和樹/モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団
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カリンニコフ:交響曲第1番、グラズノフ:交響曲第5番 ハチャトゥリアン:組曲「仮面舞踏会」
山田和樹/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
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ロンドンの連作 -チャリング・クロス橋、ウォータールー橋、国会議事堂|モネ -連作の情景

 大阪中之島美術館で開催中の展覧会「モネ 連作の情景」の第4章は、「連作の画家」と題された同展の主題となる章です。

連載記事: モネ 連作の情景
展覧会特設ページ: モネ 連作の情景
大阪中之島美術館・公式サイト: モネ 連作の情景
 
 モネは、1899年の秋と1900年の2月、そして1901年の2月から4月にかけてロンドンに渡り、テムズ川によって発生する「霧の効果」を描きました。これらの連作の対象となったのは、チャリング・クロス橋とウォータールー橋、それに国会議事堂(ウェストミンスター宮殿)でした。有名なサヴォイ・ホテルに滞在して、そこから見た上記二つの橋の連作を描き、国会議事堂は、聖トーマス病院からの景観を描きました。全部で100点ほど写生した後にフランスへ戻り、仕上げはジヴェルニーのアトリエで行い、それらは、1904年に画商ポール・デュラン=リュエルの画廊で展示されました。


モネ チャリング・クロス橋、テムズ川
◇ チャリング・クロス橋、テムズ川 1903年     油彩/カンヴァス 73.4×100.3 cm

 この《チャリング・クロス橋、テムズ川》は、テムズ川の霧による青紫の大気に佇む橋と、霧のヴェールの向こうから射し込む陽の光が川面に反射する幻想的な情景を描いています。


モネ ウォータールー橋、ロンドン、日没
◇ ウォータールー橋、ロンドン、日没 1904年 油彩/カンヴァス 65.5 92.76 cm

モネ ウォータールー橋、ロンドン、夕暮れ
◇ ウォータールー橋、ロンドン、夕暮れ 1904年 油彩/カンヴァス 65.7×101.6 cm

 このウォータールー橋を描いた二点は、日没から夕暮れにかけての変化を描いています。日没時には、まだ残る淡い陽の光が橋脚を照射しているにの対し、日没後の夕暮れでは、その橋脚の色彩は紫色に変化しています。


モネ 国会議事堂、バラ色のシンフォニー
◇ 国会議事堂、バラ色のシンフォニー 1900年 油彩/カンヴァス 82.0×92.6 cm

 ここでの国会議事堂は逆光で描かれており、タイトルとなっている対象物はデフォルメされています。

 これら全ての作品に共通するのは、筆触分割・視覚混合をねらったハイ・コントラストな彩色とは異なり、画面全体が淡い色調で覆われているため、もともと印象派の粗い筆致は造形が不確かですが、それにも増して対象物の造形がぼやけて見えます。つまり、ここでのモネの眼は、対象となる造形に向けられているのではなく、霧が織りなす光の彩、すなわち光そのものであり、極論すれば、対象となる造形は、それを描き出すためのものであって、作品の主題ではないのです。


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クロード・モネ
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クロード・モネ 旅のための作品集 大型本 – 2024/3/25
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もっと知りたいモネ 改訂版 – 2022/9/17
高橋明也 (監修), 安井裕雄 (著)
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フルシャ×ズーカーマン in ザルツブルク復活祭音楽祭|ベルリオーズ&マルティヌー

 今年のザルツブルク復活祭音楽祭は、ローマのサンタチェチーリア国立アカデミー管弦楽団がレジデント・オーケストラを務めました。コンサートjは、現在同管弦楽団の音楽監督を務めるアントニオ・パッパーノと首席客演指揮者を務めるヤクブ・フルシャが指揮を担当し、3月26日のコンサートでは、フルシャの指揮で、ベルリオーズとマルティヌーの楽曲によるコンサートが開催されました。曲は、全てイタリアに関連する楽曲で構成されているイタリアン・プログラムです。





◇ ザルツブルク復活祭音楽祭演奏会 (配信期間: ~2024年4月28日CET)

ベルリオーズ: 序曲《ローマの謝肉祭》 Op.9
マルティヌー: ピエロ・デラ・フランチェスカのフレスコ画


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ベルリオーズ: イタリアのハロルド Op.16*
パラディス: シシリエンヌ(Ec)*

ピンカス・ズーカーマン(Va)*
サンタチェチーリア国立アカデミー管弦楽団
ヤクブ・フルシャ(Cond)
(2024年3月26日@@ザルツブルク祝祭大劇場)


 《ローマの謝肉祭》は、ベルリオーズが1838年に作曲した歌劇《ベンヴェヌート・チェッリーニ》からモチーフを引用した演奏会用序曲で、華々しい曲想が演奏会前半の曲として頻繁に演奏されるポピュラー曲になっています。フルシャは、オーケストラの明るい音色を活かして祝祭色を演出しています。

 二曲目の《ピエロ・デラ・フランチェスカのフレスコ画》は、フルシャが得意とするマルティヌーの曲で、ピエロ・デラ・フランチェスカ(Piero della Francesca, 1412 - 1492年)のフレスコ画に触発されて作曲された管弦楽曲です。マルティヌーは、1954年にイタリアのアレッツォを訪れて、ピエロ・デラ・フランチェスカのフレスコ画、《聖十字架伝説》を見たといい、曲は翌1955年に作曲され、1956年8月26日に、20世紀チェコを代表する名指揮者ラファエル・クーベリック(Rafael Kubelík1914 - 1996年)指揮のウィーン・フィルによって、ザルツブルク音楽祭で初演されました。曲は、クーベリックに献呈されています。
 ピエロ・デラ・フランチェスカは初期ルネサンスの画家で、《聖十字架伝説》は、アレッツォのサン・フランチェスコ聖堂の壁面に描かれたフランチェスカの最高傑作の一つとされます。


ピエロ・デラ・フランチェスカ 聖木を礼拝するシバの女王とソロモン王の会見
◇ ピエロ・デラ・フランチェスカ: 《聖十字架伝説》より《聖木を礼拝するシバの女王とソロモン王の会見》 1452-1466年 336×747cm 

 曲は三楽章形式で、第一楽章は、上掲の障壁画《聖木を礼拝するシバの女王とソロモン王の会見》に取材したもので、第二楽章は、《コンスタンティヌスの夢》の場面によるもの、そして第三楽章は、《聖十字架伝説》全体を総括した楽章となっています。第一楽章は、シバの女王が聖木から作られた橋を崇拝し、将来それが救世主キリストを磔刑に処し、ユダヤの王国に終わりが訪れるだろうとソロモンに伝える場面で、第二楽章は、皇帝コンスタンティヌスが、天国の十字架を示す天使の夢を見る場面です。フルシャは、国際マルティヌー協会会長を務めており、マルティヌー演奏の第一人者だけあって、フレスコ画のドラマティックな世界観を雄大な音響で描き出しています。

 後半の《イタリアのハロルド》は、英国の私人ジョージ・ゴードン・バイロン(George Gordon Byron,  1788-1824年)の長編詩「チャイルド・ハロルドの巡礼」に取材したもので、4楽章からなるヴィオラ独奏付きの標題交響曲です。

第1楽章 山におけるハロルド、憂愁、幸福と歓喜の場面
第2楽章 夕べの祈祷を歌う巡礼の行列
第3楽章 アブルッチの山人が、その愛人によせるセレナード
第4楽章 山賊の饗宴、前後の追想

 当初は、当時のカリスマ的ヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニの依頼により協奏的作品として作曲を始めましたが、パガニーニを満足させるような技巧的な曲想を得られなかったため、「4部からなるヴィオラ独奏付き交響曲」として完成させた経緯があります。
 この日のヴィオラ独奏は、名手ピンカス・ズーカーマンが弾いていおり、音域的に目立ち難いヴィオラながら、ベルリオーズの雄弁なオーケストレーションに負けない存在感を示しています。第一楽章は、ハロルドの憂愁からはじまり、後半の快活な気分までをオーケストラと共に描き出します。緩徐楽章となる第二楽章は、賛歌を歌う巡礼の一行を描いており、オーケストラが奏でる柔らかいメロディーを深みのある音色でヴィオラが装飾し、穏やかな安らぎをたたえています。第三楽章は、快活で舞踏的な楽想で始まり、穏やかな中間部では、ヴィオラが舞い、そしてセレナードを歌います。終楽章は、山賊の饗宴に交じって、それまでの楽章が回想されます。山賊によって命を取られてしまうハロルド、つまりヴィオラの存在感は次第に薄くなり、最後は荒々しい山賊のテーマによって締めくくります。フルシャは、名手ぞろいのサンタチェチーリアの各パート、特に金管を明快に鳴らした大音響によって、劇的なフィナーレを演出しました。

 アンコールはオーストリアの女性ピアニスト・歌手・作曲家、マリア・テレジア・フォン・パラディス(Maria Theresia von Paradis/1759-1824年)による《シシリアーノ》で、そのロマンティックなメロディーが、《ハロルド》で熱した興奮を優しく冷ましてくれました。

 この演奏会の配信期間は2024年4月28日までです。


画像出典: wikimedia commons
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ヤクブ・フルシャ
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ハンス・ロット:交響曲第1番 他 (UHQCD/MQA)
ヤクブ・フルシャ/バンベルク交響楽団 形式: CD
ピンカス・ズーカーマン
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ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第7番「大公」他


訃報: アンドルー・デイヴィス|英国の指揮者

 英国を代表する重鎮指揮者、アンドルー・デイヴィス(Sir Andrew Frank Davis)が亡くなりました。享年80歳。
 1989年にBBC交響楽団の首席指揮者に就任し、BBCプロムスのラスト・ナイトに出演するなど英国の第一線で活躍、その後、シカゴ・リリック・オペラ、メルボルン交響楽団の首席指揮者を歴任しました。また、英国夏の風物詩、グラインドボーン音楽祭の音楽監督を務め、バイロイト音楽祭にも登場しています。レパートリーはバロックから近現代の音楽まで幅広い指揮者でしたが、特にヴォーン・ウィリアムズやエルガー、ディーリアスなど、近代イギリス音楽を得意としました。

ご冥福をお祈りいたします。


哀悼
◇ カルロ・ドルチ: 悲しみの聖母 1655年頃 (国立西洋美術館)



◇ レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ: トマス・タリスの主題による幻想曲 アンドルー・デイヴィス/BBC交響楽団


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チャイコフスキー:歌劇《エフゲニー・オネーギン》 [DVD]

トゥガン・ソヒエフのウィーン古典派プログラム|on クラシック音楽館

 昨夜のクラシック音楽館は、トゥガン・ソヒエフ指揮の最終回で、王道のウィーン古典派音楽でした。


第2003回 定期公演

モーツァルト: ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K.364*
モーツァルト: ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 第2番 変ロ長調 K.424 ― 第3楽章「主題と変奏」(Ec)*

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ベートーヴェン: 交響曲 第3番 変ホ長調 Op.55《英雄》

郷古廉(Vn)*
村上淳一郎(Va)*
NHK交響楽団
トゥガン・ソヒエフ(Cond)
(2024年1月24日@サントリーホール)


 前半のモーツァルトは、N響首席奏者(郷古は、4月から第一コンサートマスターに就任)の二人が独奏を務めています。この曲で、モーツアルトは、地味な音色のヴィオラを際立たせるために、調弦を半音高くすることを指示しています。弦の張りが強くなるため、華やかな響きになる効果をねらってのことです。従って、楽譜は変ホ長調の半音下のニ長調で書かれています。
 協奏交響曲は、そのネーミングからもわかるように独奏楽器とオーケストラが渡り合う協奏曲とは異なるとはいえ、やはり独奏のヴァイオリンとヴィオラの響きが際立ちます。二人のソリストによる第一楽章のカデンツァは、その最たるものとして用意されています。第二楽章は、ハ短調で書かれており哀愁に満ちたメロディーではあるものの悲劇的な暗さがないところがモーツァルトたる所以です。村上が語っていたように、天才が時折垣間見せる、天才が故の憂いなのかもしれません。ここでも、モーツァルト自身が書いたカデンツァが、この楽章を象徴します。そして、終楽章は最も協奏交響曲としての色合いが濃い明るさを、N響と共に二人のソリストが鮮やかに歌います。
 アンコールも含めて、ヴァイオリンとヴィオラによる二重奏が楽しめる内容でした。

 《英雄》は、ソヒエフ一流の緻密な音作りとN響伝統の重厚な音色が相乗効果を成し、第一楽章では、張りのある弾力性豊かな音響でまとまっています。ソヒエフは、タクトを持たず、杓子定規に拍を刻まずに、要所で必要な指示を送りつつ、オーケストラの自発性も重んじています。第二楽章は、遅めのテンポでじっくりと葬送の行進を歩みゆきます。そのためか、中間部のクライマックスでは悲劇性の高まりというよりは、分厚い音響が葬送らしい重みを与えています。第三楽章は、一転して明るく快速に展開します。中間部に現れるホルンの三重奏も一糸乱れることはありません。そして、終楽章は、第一楽章と同様に、ソヒエフが紡ぐ緻密な音色と、N響の重厚で張りのある音響が相まって、この曲の希望に満ちた終結へと導きます。


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トゥガン・ソヒエフ
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ショスタコーヴィチ:交響曲第8番
トゥガン・ソヒエフ/トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団
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ショスタコーヴィチ:交響曲第8番
トゥガン・ソヒエフ/トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団
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フランソワ・ロペス=フェレールがゲオルク・ショルティ指揮者アワードを受賞

 ゲオルク・ショルティ財団が2024年のゲオルク・ショルティ指揮者アワードを、スペイン系アメリカ人指揮者 フランソワ・ロペス=フェレール(François López-Ferrer)に授与すると発表しました。

ショルティ財団webpage

 この賞は、アメリカで活躍する38歳以下の若手指揮者を対象に、日頃の指揮活動全般の評価によるもので、これまでに、原田慶太楼(サヴァンナ・フィルハーモニック音楽&芸術監督、東京交響楽団正指揮者)ジェンマ・ニュー(ニュージーランド交響楽団首席指揮者)、カリーナ・カネラキス(オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者)、クリスティアン・マチェラル(WDR交響楽団首席指揮者)らが受賞しており、彼らはすでに第一線で活躍しています。

関連記事: 原田慶太楼がゲオルグ・ショルティ指揮者アワードを受賞

 ロペス=フェレールは、スペインでの活動も盛んに行っており、以下では、RTVE交響楽団(スペイン放送交響楽団)を振った、《ラ・ヴァルス》が聴けます。後半での狂喜乱舞のワルツは、迫力満点です。



◇ ラヴェル: ラ・ヴァルス ロペス=フェレール/RTVE交響楽団

 また、以下では、ヴェルビエの若手たちと溌剌とした演奏を創りあげており、将来性は充分です。


◇ バーンスタイン: 《キャンディード》序曲 ロペス=フェレール/ヴェルビエ祝祭管弦楽団

 サー・ゲオルク・ショルティ(Sir Georg Solti, 1912-1997年)は、カラヤンやバーンスタインと共に20世紀後半の楽壇で活躍したハンガリー出身の名指揮者で、シカゴ交響楽団の音楽監督を務めて黄金期を築きました。ワーグナーを得意とし、ウィーン・フィルと録音した《指環》の全曲録音は、ビルギット・ニルソン(S)をはじめとした名歌手を揃えた記録として、今でもその価値は色あせていません。


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ショルティ
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The Golden Ring/楽劇『ニーベルングの指環』ハイライツ(ハイブリッドSACD)
サー・ゲオルグ・ショルティ/ウィーン・フィル 形式: CD
61dJgE4icEL._AC_SL1000_ 51fQ3sgLSAL._AC_SL1000_
ワーグナー: 楽劇《ラインの黄金》
サー・ゲオルグ・ショルティ/ウィーン・フィル 形式: CD
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ヤクブ・フルシャ/バンベルク交響楽団のオール・ドイツ・プログラム|on medici,tv

 首席指揮者ヤクブ・フルシャ率いるバンベルク交響楽団は、今月、アイスランド経由のアメリカ・ツアーを行います。それに先立って、ホームのバンベルク・コンツェルトハレで、ツアー・プログラムを用いた演奏会を行いました。ソリストは、フルシャと同郷のチェコ出身のピアニストで、2016年のエリザベート王妃国際音楽コンクール・ピアノ部門で優勝したルーカス・ヴォンドラチェクです。



◇ バンベルク交響楽団演奏会

ワーグナー: 歌劇《ローエングリン》序曲
ブラームス: 交響曲第3番 へ長調 O.90

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シューマン: ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54*
シューマン: アラベスク ハ長調 Op.18(Ec)*
ワーグナー: 歌劇《タンホイザー》序曲
ブラームス: ハンガリー舞曲集 第18番、第21番(Ec)

ルーカス・ヴォンドラチェク(Pf)*
バンベルク交響楽団
ヤクブ・フルシャ(Cond)
(2024年4月15日@コンツェルトハレ/ヨーゼフ・カイルベルト・ザール)

 
 ドイツの楽曲を集めたツアー用のプログラムですが、珍しい楽曲の配置になっています。通常のクラシックコンサートの場合、前半に協奏曲を演奏しますが、フルシャは先に交響曲を演奏し、休息を挟んで、ピアノ協奏曲を後半に置いています。そして、それらの曲をワーグナーの二つのオペラの序曲で挟むという、意味ありげな並びです。ブラームスの3番は、終楽章で静かに締めくくる構成なので、ツアー演奏会の最後を飾るには地味だということもあるでしょうが、それだけではなく、ブラームスとワーグナーは、彼らが活躍した時代には、保守と革新といった対極的な二人で、ブラームス派の評論家ハンス・リックとワーグナー派のフーゴ・ヴォルフが激しく対立していました。しかし、今日となっては、ワーグナーもブラームスも、そしてシューマンもドイツロマン派であり、互いに関係性があると考えることも可能です。例えば、ブラームスの3番では終楽章の最後に第一楽章のモチーフが回想され、シューマンのピアノ協奏曲では、第二楽章で第一楽章の主題が現れる、いわゆる循環形式を用いており、共通性があります。その循環形式を発展させ、ライトモチーフとしてオペラの中の人物や特定の場面を表すのに用いたのは、ワーグナーでした。一見、てんこ盛りのドイツ音楽プログラムですが、伝統的な様式をそれぞれの個性が有効に用いたドイツ・ロマン派音楽の多様性を誇示するプログラムと考えることができるのです。
 
 《ローエングリン》は、フルシャ一流の美音で、この曲の幽玄をしっとりと語りゆき、哀愁に満ちたクライマックスを築いた後に、静寂へと消え入ります。
 ブラームスでは、バンベルクの弦の滑らかな音色が美しく嫋やか。フルシャはさりげなく細やかな強弱のニュアンスを付けて、表情に味わい深さを付加しています。特に、第三楽章では、中間部のしめやかな楽節における,弦の弱音の美しさは筆舌に尽くし難いものがあります。それでいて、ブラームスらしい重厚さが損なわれているわけではなく、力強い構築性をも有します。

 ルーカス・ヴォンドラチェクのピアノは、シューマンのピアノ協奏曲の中に、華麗なだけではないシリアスなロマンティシズムをも見出しています。第一楽章では管弦楽の明るい響きに対して、ピアノはじっくりと語り行き、展開部では、クラリネットとの絡みでしっとりとしたロマンティシズムを香らせます。表情豊かに綴るカデンツァも申し分ありませんが、続く第二楽章が特筆に値します。繊細に制御された粒立ちの良いピアノの音色が、柔らかいバンベルクの弦と絶妙のハーモニーを奏で、そして終楽章では、それまで以上クリアなアーティキュレーションによって、華やぎを添えて鮮やかに締めくくりました。
 アンコールで弾いた《アラベスク》は、シューマンがウィーンに滞在していた時に書かれ、優雅でロマンティックな楽想が散りばめられた楽曲です。ヴォンドラチェクは、ここでも繊細なタッチでしっとりとした抒情を香らせました。
 
 そして《タンホイザー》序曲で、フルシャ/バンベルクは、ワーグナー・ワールドへと誘います。ピアノを片付ける時間が、聴き手にとっては転換のための間となって、ウィーン情緒から荘厳・華美な「巡礼の合唱」モチーフへと入っていけるのです。アレグロの中間部では、華やかなヴェーヌスベルクの情景を描き出し、途中、ヴァイオリンとクラリネットがヴェーヌスの色香を香らせます。そして、冒頭の「巡礼の合唱」のテーマが二分の二拍子で戻ってくると、金管が高らかに鳴り響く壮麗なコーダへと達します。

 そして、ツアー用に用意したアンコールのブラームスでは、ハイテンポで晴れやかに舞って祝祭感を盛り上げて、一夜のコンサートを締めくくりました。


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ヤクブ・フルシャ
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ハンス・ロット:交響曲第1番 他 (UHQCD/MQA)
ヤクブ・フルシャ /バンベルク交響楽団 形式: CD

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スーク:交響曲 第2番 ハ短調「アスラエル」
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ディーヴァ、ネイディーン・シエラ METでもジュリエットを熱唱|本日からMETライブビューイングで上映

 アメリカのソプラノ歌手、ネイディーン・シエラ(Nadine Sierra,  1988年生れ)が、ジュリエット役でブレイクしています。筆者は、この歌手を2018年から注目していましたが、ここ一、二年で、欧米の楽壇及び歌劇場での注目度が上がり、昨年のビルバオ・オペラでグノーの歌劇《ロメオとジュリエット》のジュリエットを歌って大喝采を浴びました。



◇ グノー: 歌劇《ロメオとジュリエット》第4幕より 「愛よ 私を勇気づけて」 ネイディーン・シエラ(S) ビルバオ・オペラ

参考記事:
1. 新進気鋭のソプラノ歌手 ネイディーン・シエラ|ソロ・デビュー・アルバムもリリース (2018年)
2. 熱唱!ネイディーン・シエラのジュリエット|ビルバオ・オペラ (2023年)


 どこまでも伸びていきそうな華やかな高域、どこもまでも届きそうな豊かな声量、それでいて、一糸乱れぬ安定した音程、そして、スマートなプロポーションと豊かな表情による溌剌とした演技など、全てを兼ね備えたディーヴァとしての資質充分です。
 この3月には、同じメトロポリタン歌劇場(MET)で、同じジュリエット役を歌い、USでも絶賛を博したもようです。



◇ グノー: 歌劇《ロメオとジュリエット》第1幕より 「私は夢に生きたい」 ネイディーン・シエラ(S) MET

 METは、かねてから同歌劇場の上演を映画館で上映する「METライブビューイング」を提供しており、このたび、今期の上演から、ヴェルディの《運命の力》とグノーの《ロメオとジュリエット》が日本でも上映されます。注目のシエラは、6月のロイヤル・オペラ・ハウス引っ越し公演でも来日して、《リゴレット》のジルダを歌いますが、チケットは目が飛び出るほど高いので、映画館でシエラのジュリエットを聴くのも一興です。「METライブビューイング」を上映する映画館は以下で、上映期間は本日4月19日(金)から4月25日(木)までです。


北海道 札幌シネマフロンティア
宮城 MOVIX仙台
千葉 MOVIX柏の葉
埼玉 MOVIXさいたま
東京 東劇 (*5月2日まで上映)
東京 新宿ピカデリー
東京 MOVIX昭島
東京 109シネマズ二子玉川
東京 T・ジョイPRINCE品川
神奈川 109シネマズ川崎
神奈川 横浜ブルク13
神奈川 109シネマズ湘南
愛知 ミッドランドスクエア シネマ
京都 MOVIX京都
大阪 大阪ステーションシティシネマ
大阪 なんばパークスシネマ
兵庫 kino cinéma 神戸国際
広島 109シネマズ広島
福岡 kino cinéma天神
熊本 熊本ピカデリー
(上映期間: 4月19日-4月25日)


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ネイディーン・シエラ
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メイド・フォー・オペラ
Nadine Sierra (S) 形式: CD
71KCGn3qqiL._AC_SL1200_914qquJlzNL._AC_SL1500_
There's a Place for Us
Sierra, Nadine (S) 形式: CD
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北欧の神秘 ― ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画

 今、東京・新宿のSOMPO美術館では、ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画による展覧会「北欧の神秘」が開催されています。この展覧会は、上記ノルディック三国の国立美術館、すなわち、ノルウェー国立美術館、スウェーデン国立美術館、フィンランド国立アテネウム美術館が収蔵する、19世紀から20世紀初頭の国民的な画家たちの絵画を紹介する企画展です。

展覧会webpage: 北欧の神秘 ― ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画

序章 神秘の源泉 ―― 北欧美術の形成
1章  自然の力
2章  魔力の宿る森 ―― 北欧美術における英雄と妖精
3章  都市 ―― 現実世界を描く

 欧州最北部の特殊な気候と大自然に根差した神話や民話は、19世紀後半頃の北欧の画家達に画題を提供するに充分であり、南欧で沸き起こったロマン主義や象徴主義に触発された彼らは、北欧特有の絵画傾向を形成していきました。序章では、「神秘の源泉」と題して、この時期に始まる北欧美術の黎明期の絵画を展示しています。


アウグスト・マルムストゥルム 踊る妖精たち
◇ アウグスト・マルムストゥルム: 踊る妖精たち 1866年 油彩/カンヴァス 90×149 cm

 アウグスト・マルムストゥルム(August Malmström。1829-1901年)は、スウェーデンの画家で、デュッセルドルフ美術アカデミーで学んだ後、パリでトマ・クチュール(Thomas Couture, 1815-1879年)にも学びました。1859年から1863年の間にはイタリアにも旅をして、欧州絵画の伝統と当時の流れを目にした後、母国に戻り、当時隆盛だったロマン主義絵画に触発されつつ、北欧神話や民話に取材した絵画様式を確立していきました。この《踊る妖精たち》は、朝露が妖精に変容していく幻想的な情景を描いています。スウェーデンの民間伝承によれば、妖精は自然の中に住んでおり、丘や墓丘、山や森の周りで踊る姿が見られたといいます。幻想的で嫋やかに見えますが、言い伝えによると、妖精は厄介な存在で、怒らせると人間を病にしてしまう力があるそうです。

 展示作品の多くは、この作品に始まる北欧の神秘を主題に描かれたもので、ノルウェーのエドヴァルド・ムンクやフィンランドのアクセリ・ガッレン=カッレラらの絵画も展示されており、展覧会に訪れたなら、神秘のヴェールに覆われた幻想の地に誘われることでしょう。

画像出典: wikimedia commons
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エドヴァルド・ムンク
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ムンク伝  – 2007/8/11
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エドヴァルト・ムンク: 自作を語る画文集生のフリーズ 単行本 – 2009/10/1
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