クラシック音楽とアート

クラシック音楽やアートについて語るブログです

Welcome to Classical Music & Art|Table of Contents

クラシック音楽とアート・コンテンツ一覧
最新記事は二番目のコラムから

音楽関連の記事


美術関連の記事 












エリザベート王妃国際音楽コンクール2021で阪田知樹と務川慧悟がファイナイル進出

 ベルギー・ブリュッセルで開催中の「エリザベート王妃国際音楽コンクール」のピアノ部門で、日本の阪田知樹と務川慧悟がファイナルに進出しました。同コンクールは、チャイコフスキー国際コンクールとショパン国際ピアノコンクールと並ぶ世界三大コンクールで、ピアノ部門の他に、ヴァイオリン、チェロ、声楽の各部門があり、それぞれ異なる年に開催されます。ピアノ部門は、昨年が本来の開催年でしたが、新型コロナによって今年に延期されていました。今年のコンペティソンもパンデミックの影響を受け、ファイナル進出は通常より少ない6人で競う形になっています。

 
ヴィターリ・スタリコフ(Vitaly Starikov, 26歳, ロシア)
阪田知樹(27歳, 日本)
務川慧悟(28歳, 日本)
セルゲイ・レーディキン(Sergei Redkin,29歳, ロシア)
ドミトリー・シン(Dmitry Sin, 26歳, ロシア)
ジョナサン・フルネル(Jonathan Fournel, 27歳, フランス)


 阪田は2016年フランツ・リスト国際ピアノコンクールで優勝するなどの実績があり、務川は2012年の第81回日本音楽コンクールで反田恭平と一位を分け合って以降反田の盟友で 、昨年から反田と共に2台ピアノ・コンサート ツアーを行っています。

 コンクールはビデオ審査を通過した58人の参加者により行われ、リサイタル形式のファースト・ラウンドを通過した12人(平時は24人が進出)がセミ・ファイナルに進出、セミ・ファイナルではリサイタルとオーケストラとのコンサートに分けて審査を行い、その中から上の6名がファイナリストとなりました。日本からは7名が参加し、その他の主要国からは、フランスが7人、ロシアが11人、そして韓国は15人ものピアニストを送り込んでいます。



◇ エリザベート王妃国際音楽コンクール2021セミファイナル 阪田知樹


◇ リザベート王妃国際音楽コンクール2021セミファイナル 務川慧悟

 阪田は、シュアなタッチでドビュッシーの瞑想と煌めきを表し、リストでは圧巻の技巧で堅固なピアニズムを誇示しました。一方、務川は、ラフマニノフの抒情と華麗な変奏に、ただ単に技巧をひけらかすのではない、繊細な感性を織り込んでいます。

 ファイナル・ラウンドは、5月24日(月)から29日(日)の期間で開催され、各出場者とヒュー・ウルフ/ベルギー国立管弦楽団によるコンサートを行います。フランスの現代音楽作曲家ブルーノ・マントヴァーニ(Bruno Mantovani, 1974年-)の新作《妖精の庭から(D'un jardin féérique》と、各出場者が選曲した協奏曲を演奏してファースト・プライズを競います。坂田は5月25日(火)(JST5月26日(水)3:00)、務川は26日(水)(JST5月27日(木)3:00)に登場します。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
務川慧悟

Two Pianos
反田恭平、務川慧悟(Pfs) 形式: CD

第10回浜松国際ピアノコンクール2018
AD by amazon


カラヤン×バーンスタイン よみがえる伝説の名演奏|on クラシック音楽館

 昨晩のクラシック音楽館では、20世紀の二大巨匠カラヤン&バーンスタインの演奏記録を、NHKが8Kにリマスタリングしたものを2Kにダウンコンバートして放映されました。それぞれの巨匠の十八番ともいえるチャイコフスキーとマーラーです。


チャイコフスキー: 交響曲第6番《悲愴》
ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニカ―

マーラー: 交響曲第5番 
レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニカ―


 ̄ ̄ ̄

 カラヤンの演奏は、晩年のウィーン・フィルと演奏したものが、この大指揮者の集大成として残っていて、チャイコフスキーの後期交響曲、ドヴォルザークの8番と9番、ブルックナーの7番と8番、ヴェルディの《レクイエム》などが不朽の名演奏です。カラヤンの曲に対する解釈は一貫しており、オーケストラがベルリン・フィルであっても根本的な内容に変化はありません。しかし、絶対君主的なカリスマとして君臨した当時のベルリン・フィルと、常任を置かずにウィーンの伝統に根差した自主性を重んじるウィーン・フィルとの演奏では微妙な違いがあり、総じてウィーン・フィルとの演奏の方が自然で暖かみのある響きになっています。一方で、ベルリン・フィルとの演奏では、細部にこだわった美麗さが際立ち、シュアな響きが劇的な緊張感を生み出しています。
 今回放映されたベルリン・フィルとの演奏は、カラヤンが60歳代の最盛期に録音したベルリン・フィルとの記録として貴重なものです。第一楽章では、ギラギラした劇的な展開で他に類を見ない激しさを誇示し、その反面、チャイコフスキー特有の病的とも言える哀愁の濃厚な表現も際立ちます。第二楽章のワルツは、例によってベルリン・フィルの華麗な音色で舞い、圧巻の劇的展開を繰り広げる第三楽章へと繋ぎます。そして、終楽章に秘められた哀歌をたっぷりと歌い、怒涛の第三楽章との著しいコントラストを際立たせ、やがて深閑とした静寂へと沈みゆきます。

 バーンスタインが、ニューヨーク・フィルのシェフの地位にあった頃、当時、まだ今日のようにメジャーではなかったマーラーの交響曲を取り上げて、CBS(現ソニー・クラシカル)に録音を残しました。このことが、後に世界的なマーラーの受容につながったことは間違いありません。作曲活動に時間を割きたいという理由でNYフィルを退任した後のバーンスタインは、フリーの指揮者として活動し、欧州のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(現ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団)やウィーン・フィルでの客演で、欧州の聴衆を魅了しました。
 マーラーゆかりのウィーン・フィルを振っての今回の第5番は、ウィーン・フィルの柔らかくも重厚な音色で、マーラーのロマンティシズムをたっぷりと歌っています。ウィーン・フィルが奏でるアダージェットは隔世の美を有し、その蕩けるような官能美が聴く者を陶酔へと導き、続く終楽章では、希望に満ちた情熱的なコーダで締めくくります。
 バーンスタインのマーラーは、若い頃のニューヨーク・フィルとのより古い録音にも捨てがたいものがあります。もちろん、ウィーン・フィルの芳醇な音色に比べたら、ニーヨーク・フィルの音は薄っぺらく聴こえてしまうのですが、単刀直入な鮮烈さが際立っていて、その意味では、マーラーの本質をついていると言えるでしょう。


 半世紀近く前の古い録音だけあって、音質そのものは必ずしも良いとは言えませんが、NHKの優れた技術によって補われ、カラヤンとバーンスタインが成し遂げた、時代によらない普遍的な演奏芸術を鮮やかに蘇らせていました。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヘルベルト・フォン・カラヤン

チャイコフスキー:交響曲全集
ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニカ― 形式: CD

ドヴォルザーク:交響曲第8番&第9番《新世界より》(SHM-CD)
ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニカ― 形式: CD
AD by amazon


アーティゾン美術館、太田記念美術館、山種美術館等が再開|STEPS AHEAD@アーティゾン美術館

 東京都の緊急事態宣言延長に伴い、公立美術館が軒並み休館を続ける中、一部の美術館で再開の動きがあります。太田記念美術館や山種美術館、アーティゾン美術館が、制限付きながら、昨日15日よりリオープンしました。前の二美術館は、開館時間を通常より短縮しての再開で、完全予約制のアーティゾン美術館は、予約受付数を制限しているようです。

 アーティゾンの企画展は、当初はこの時期に「クロード・モネ —風景への問いかけ オルセー美術館・オランジュリー美術館特別企画」という企画展を予定していましたが、パンデミックの影響を受けて秋に延期されていて、その代わりに、二月から開催されていた新規収蔵品展の「STEPS AHEAD」の会期を延長して開催中です。同館は、ビルの建て替えによる休館期間を経てブリヂストン美術館から名称変更をしましたが、5年に渡る休館期間中にコレクションを増やし、近代日本画と印象派を中心とした石橋コレクションに加えて近現代の作品を充実させています。「STEPS AHEAD」では、その豊富な新規コレクションを展示するもので、その充実ぶりには驚くべきものがあります。

展覧会特設ページ: STEPS AHEAD 

 展覧会の第三章「カンディンスキーとクレー」では、共にバウハウスで教鞭をとったカンディンスキーとクレーのコレクションを紹介しており、絵画の他に「バウハウス叢書 全14巻(初版)」なども展示されています。このバウハウスの初代校長ヴァルター・グロピウスとアルマ・マーラーとの間に生まれた可憐な少女マノン・グロピウスの早世に関しては、彼女をたいそう可愛がっていたパウル・クレーとアルバン・ベルクが作品を残していることで有名です。

関連記事:
ベルクとマノン、そしてパウル・クレー《グラス・ファサード》の謎解き
アルバン・ベルクとアルマ・マーラーの娘 「ある天使の思い出に」

 マノンが隠されていた《グラスファザード》を頂点に、クレーの作品には謎めいたものが多く、観者の想像力をあおります。今回アーティゾン美術館がコレクションに加えたのは相当な数に上り、おそらく日本でも有数のクレー・コレクションだと思われます。


パウル・クレー 牛飼い
◇ パウル・クレー: 牛飼い 1929年 油彩/合板に貼られたカンヴァス 60.0×70.0 cm

 人物や動物などのモチーフを線で表すのは、クレー特有の表現で、ここでは茫漠とした空間に牛と牛飼いが描かれています。この牛飼いのポーズは、新約聖書の「良き牛飼い」のエピソードに由来すると考えられているそうです。


パウル・クレー  庭の幻影
◇ パウル・クレー: パウル・クレー : 庭の幻影 1925年 油彩/木枠に貼られた厚紙 24.0×30.0 cm

 ここでは、樹木が線で象徴的に描かれています。太陽と思しき上部の赤い円は、しかしながら庭の中央しか照らしておらず、周囲の情景ははグラデーションで闇に沈み、昼とも夜ともつかない幻想的な雰囲気を醸し出しています。

 先の見えないパンデミックのさ中に、敢えて謎多きクレー作品に身を投じるのも一興でしょうか。


画像出典: 筆者撮影

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
パウル・クレー

パウル・クレー 絵画のたくらみ – 2007/1/24
前田 富士男 (著), 宮下 誠 (著), いしいしんじ (著)

日々はひとつの響き: ヴァルザー=クレー詩画集 – 2018/11/9
AD by amazon


欧州各地で演奏活動が再開|ウィーン・フィル、ミラノ・スカラ座、バイエルン国立歌劇場

 英国に続いて欧州大陸でもワクチン接種が進みつつあり、演奏活動も徐々に再開し始めました。ウィーン・フィルは、5月9日にラヴェンナ音楽祭で二つのコンサートを行いました。指揮は、今年のニューイヤーコンサートを振ったムーティで、ンデルスゾーンの序曲《静かな海と楽しい航海》にシューマンの交響曲第4番とブラームスの交響曲第2番を組み合わせた二つのプログラムでした。そして、アンコールには、J.シュトラウスⅡ世の《皇帝円舞曲》が演奏され、初夏のラヴェンナにウィーンの風を吹き込みました。
 ムーティ/ウィーン・フィルは11日に、スカラ座でリオープニングのコンサートを行う計画も報道されましたが、実際にはレジデントのスカラ座管弦楽団がリオープニングコンサートを行いました。指揮は音楽監督のリッカルド・シャイーで、ヴェルディ、パーセル、ワーグナー、R.シュトラウスの楽曲が演奏されました。

 ドイツでは、5月13日にバイエルン国立歌劇場がドイツ国内の先陣を切って、聴衆を入れての公演を開始しました。演目は、ワーグナーの《ワルキューレ》第一幕で、指揮はイスラエルのアッシャー・フィッシュ。歌手陣は、ジークリンデにリセ・ダヴィドセン、ジークムントにヨナス・カウフマン、フンディングにゲオルク・ツェッペンフェルトという豪華布陣です。

バイエルン国立歌劇場webpage: Willkommen zurück! Unser neues Programm im Mai

 同歌劇場では、その後、5月23日からは、ドイツの現代作曲家アリベルト・ライマンの《リア王》のプレミエが上演される予定です。このオペラは、往年の名バリトン、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウの起案によって制作され、初演ではフィッシャー=ディースカウがリア王を演じたライマンの代表作です。今回タイトルロールを歌うのは、何度か来日しているドイツのバスバリトン、クリスティアン・ゲルハーヘルで、指揮はユッカ=ペッカ・サラステです。



◇ アリベルト・ライマン: 歌劇《リア王》 preview

 この公演は、歌劇場webpageで、ストリーミング配信される予定です。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
バイエルン国立歌劇場

J.シュトラウス:喜歌劇「こうもり」全曲
ヘルマン・ プライ(Br)ユリア・ヴァラディ(S) 他,
カルロス・クライバー/バイエルン国立歌劇場 形式: CD

R.シュトラウス:楽劇《ばらの騎士》 [DVD]
ギネス・ジョーンズ(S)、ルチア・ポップ(S)、ビルギッテ・ファスベンダー(Ms)
カルロス・クライバー/バイエルン国立歌劇場 形式: DVD
AD by amazon


小村雪岱: 碧鳥|小村雪岱スタイル

 小村雪岱の展覧会「小村雪岱スタイル―江戸の粋から東京モダンへ」での展示作品に、《碧鳥》というタイトルの絵がありました。

前回記事: 小村雪岱: 雪の朝|小村雪岱スタイル


小村雪岱 碧鳥
◇ 小村雪岱: 碧鳥 1933年頃 紙本着色 32.7×41.1 cm

 5羽の小鳥が一様に同じ方向を向いていて、その間には松の葉がこれもまた一定間隔で散りばめられています。この描き方は、先の《落葉》に見られる落ち葉のそれと同じコンセプトで、また、わかもと製薬の販促用団扇の下絵《月》での松の葉とも類似していて、雪岱が好んで用いた表現のようです。このような実際にはありそうもない不思議な配置をどこから思いついたのか知る由もありませんが、伝統的な日本画の流れからすれば、琳派に代表される装飾的な意匠性の延長線上にあると考えられます。しかし、一方で、意外なところに物を配置するデペイズマンとまではいかないまでも、それに近い手法と言えるかもしれません。実際、この画面からは、装飾性よりも、小鳥と松の葉がつくりだすどこか不思議な空気の方が強く感じられます。どことなく深閑としていて、現実の情景というよりは、玩具の小鳥が床に並べられているようでもあり、見方によっては、ちょっとユーモラスにも思えてきます。シンプルな画面で一見ありがちな情景なのに、観者の感覚を擽り、その印象を定まらせない多面性があります。

 三井記念の展示では、これに類似した《春雨》という版画が展示されていました。こちらでは、松の代わりにタイトルの雨が描かれ、小鳥の数が11羽に増えていて、左から5番目の1羽だけが何故か緑色をしています。


小村雪岱 春雨
◇ 春雨 木版多色刷 25.2×38.2 cm
 
 碧鳥の読みを調べると、「ヘキチョウ」という名前の鳥がでてきます。この鳥は、タイやマレーシアに生息する外来種のようで、詳しいことは知りませんが、日本にはめったに飛来しないようです。雪岱の小鳥はこのヘキチョウを描いたのではなく、形としてはシジュウカラに近いようにも見えますが、「碧」が示す深い青色をしているので色が異なります。なので、単に青い鳥という意味で《碧鳥》と題したのかもしれません。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

小村雪岱作品集(普及版) – 2018/1/20

小村雪岱随筆集 – 2018/1/24
AD by amazon


ザクセン州がティーレマンとの契約を更新せず2023/2024年シーズンまでと発表

 ドイツ・ザクセン州政府のクレプシュ文化相は、2012年からドレスデン・シュターツカペレの首席指揮者を務めるクリスティアン・ティーレマンとの契約を2023/2024年シーズンまでとする旨を発表しました。同楽団は、ザクセン州政府が運営する州立歌劇場(ゼンパー・オーパー)の専属オーケストラです。いたるところで衝突を起こす、いわゆる「俺様」キャラのティーレマンは、この本拠地でも今年の2月に、総監督のペーター・タイラーと新型コロナ対応を巡って対立していました。

参考記事: ティーレマンがコロナ対応を巡って経営陣と対立|ドレスデン・ゼンパーオーパー

 しかし、クレプシュはタイラーの契約も更新しないとしており、2024年以降には旧来の歌劇場の在り方を見直し、伝統的な演目に加えて新境地を目指すとしていて、新体制は決まっていないようです。現代的な歌劇場の運営に移行するとなると、確かにティーレマンは厄介な存在となりそうなので、事前に手を打ったものと思われます。ドレスデンには、当時の首席ファビオ・ルイージに断りなくティーレマンにクリスマス・マチネの指揮を依頼したことが原因でルイージが辞任した過去があります。その後、ドレスデンを率いて勢いづいたティーレマンは、ベルリン・フィルに代わってザルツブルクの復活祭音楽祭のレジデントを務めるようになりましたが、こちらも、新しい総監督のニコラウス・バッハラーと衝突し、2023年以降の退陣が決まっています。
 一方で、ティーレマンは、最近、ウィーン・フィルに登場してブルックナーを演奏するなどしており、また、バイエルン放送交響楽団にもデビューしています。しかし、ウィーン・フィルは首席指揮者や常任指揮者は置かない楽団だし、その母体となるウィーン国立歌劇場は、ボグダン・ロシュチッチとフィリップ・ジョルダン体制が始まったばかりです。また、バイエルンRSOはラトルがシェフに就任することになっています。今後の、ティーレマンの去就が注目されます。



◇ ブルックナー: 交響曲第5番より第一楽章コーダ ティーレマン/ドレスデン・シュターツカペレ

 ワーグナーゆかりのドレスデン・シュターツカペレは、ドイツの伝統とされる重厚さと同時に繊細な美しさもあり、歌劇場を母体とするオーケストラとしては、ウィーン・フィルに次ぐ高い水準を有します。ティーレマン後に、どのような方向に舵をきるのか、また、指揮者として誰が登場するのかが注目されます。新機軸を求めるのなら、クルレンツィスなど面白いでしょうが、個人的には、天才の呼び声が高いクラウス・マケラの登用に期待してしまいます。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ドレスデン・シュターツカペレ

ブルックナー交響曲全集 (第1~9番)
クリスティアン・ティーレマン/シュターツカペレ・ドレスデン
[9Blu-ray] [Import] [日本語帯・解説付き] [Live]

UHQCD DENON Classics BEST
モーツァルト:交響曲第40番&第41番「ジュピター」
プロムシュテット/ドレスデン・シュターツカペレ 形式: CD
AD by amazon


RAI国立交響楽団がファビオ・ルイージを名誉指揮者、ロバート・トレヴィーノを首席客演指揮者に迎えると発表

 イタリアのRAI国立交響楽団は、ファビオ・ルイージを名誉指揮者に、ロバート・トレヴィーノを首席客演指揮者に迎えると発表しました。

RAI国立交響楽団webpage:
FABIO LUISI DIRETTORE EMERITO E ROBERT TREVINO DIRETTORE OSPITE PRINCIPALE DELL’ORCHESTRA RAI

 RAIは、トリノを拠点とする放送交響楽団で、日本でもお馴染みのエリアフ・インバルも名誉指揮者として名を連ね、客演指揮者にはジャナンドレア・ノセダの名前もあります。1994年に、ローマ・ミラノ・トリノ・ナポリにあったRAI(イタリア国営放送)所属のオーケストラが統合されて現在の形になっていて、それ以前の各オーケストラには、フルトヴェングラー、カラヤン、ストラヴィンスキー、ストコフスキー、チェリビダッケ、カルロ・マリア・ジュリーニ、マゼール、メータ、サヴァリッシュ等、名だたる巨匠が客演しています。

 N響の次期首席指揮者に就任することが決まっているルイージは、このところ、欧州、アメリカ、日本の楽壇で頻繁に名前が挙がり、先の記事では4月に演奏したマーラー室内管弦楽団とのシューベルトを紹介しましたが、今月は、母国イタリアに戻り、RAIとチャイコフスキーを演奏したもようです。60歳を過ぎてから徐々に登場機会が減っていき、忘れられがちな指揮者が居る中で、ルイージの活躍ぶりには目を見張るものがあり、N響との活動に早くも期待感満開です。

前回記事: ザ・グレート|ファビオ・ルイージ/マーラー室内管弦楽団がベルク&シューベルトを演奏

 一方、首席客演に迎えられるロバート・トレヴィーノ(Robert Trevino; 1984年-)は、メキシコ系アメリカ人の若手指揮者で、現在、スウェーデンのマルメ交響楽団とスペインのバスク国立管弦楽団のシェフを務めています。
 極東の日本から見ると最果てのスウェーデン・マルメとは言え、ストックホルム、エーテボリに次ぐ第三の都市で、エーレ海峡を挟んで向こう側のコペンハーゲンとは道路で繋がっています。マルメ交響楽団は、その街の交響楽団なだけに、それなりに高いレベルにあるようです。トレヴィーノは、2019年に首席指揮者に就任し、昨年のベートーヴェン・アニヴァーサリー・イヤーに交響曲全集の録音を行うなど、積極的な活動を展開しています。
 以下は、トレヴィーノが指揮したヴェルディの《レクイエム》とマーラーの交響曲第5番の動画で、ラテン系アメリカ人のノリでしょうか、大編成オーケストラを派手に鳴らす一方で、マーラーのアダージェットではピアニッシモで極端に音量を絞るなど、やや演出過多のように思います。



◇ ヴェルディ: レクイエム 怒りの日より  ロバート・トレヴィーノ/マルメ交響楽団


◇ マーラー: 交響曲第5番 ロバート・トレヴィーノ/マルメ交響楽団


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ロバート・トレヴィーノ

9 Symphonies -Sacd-
ロバート・トレヴィーノ/マルメ交響楽団

Bruch: Symphonies Nos. 1-3 & Overtures
Bamberger Symphoniker feat. Robert Trevino
AD by amazon


都内の美術館は休館・コンサートホールは再開の不思議|渡辺省亭: 藤に小禽図 (花鳥魚鰕画冊より)

 緊急事態宣言の延長により、都内の美術館は、引き続き休館を余儀なくされることになり、一方で、幸いにもコンサートホールは、中止や延期の公演はあるものの、聴衆を入れての公演が可能になっています。しかし、一定時間同じ座席に居座るコンサートに対して美術館では人が流れるし、予約制などの導入で入館人数も制御できるので、相対的にみて、コンサートよりリスクは低いと思われます。都は、いったいどういう基準で休業要請を決めているのか、理解できないものがあります。

 ともあれ、都の理不尽な決定により、東京藝術大学美術館で開催中だった渡辺省亭初の大規模な回顧展は、終了となることが決定的となりました。この展覧会は5月29日から愛知・岡崎市美術博物館に巡回することになっていて、愛知では開催の見通しです。ただ、展示構成は異なり、残念ながら、藝大美術館で展示されていたドガの所蔵品だった《鳥図》など一部作品の展示が無いようです。それでも、これだけまとまった省亭の作品を観れるまたとない機会なので見逃せません。

前回記事: 渡辺省亭: 鳥図|ドガを驚愕させた画家|渡辺省亭 欧米を魅了した花鳥画
岡崎市美術博物館webpage: 開館25周年記念「渡辺省亭―欧米を魅了した花鳥画」

 藝大展示では、地下二階の第二会場で展示されていた《花鳥魚鰕画冊》からの作品群が、一つの見どころでした。花鳥画が多い省亭の作品に魚や海老は珍しく、また、絹本着色のものは掛け軸タイプのものが大半を占める中で、この画冊は掛け軸ではありません。従って、こじんまりとした画面ではあるものの、そこに描かれているモチーフたちは実に精緻な写実で描かれています。一方で、その背景となる樹木の枝などは、日本古来の付け立て技法を用いており、西洋的な写実と日本的な素早い筆致が折衷的に用いられ、省亭らしい空気をもたらしています。


渡辺省亭 藤に小禽図
◇ 花鳥魚鰕画冊之内藤に小禽図 絹本着色 36.0×27.6 cm

 この《藤に小禽図》も、小鳥は丁寧な写実なのに対して、藤の花や葉、枝は素早い筆致で描いています。通常、省亭の鳥は、自然の造形そのものを描き出すため、常に生命の危険にさらされている野性の生き物の緊張感がありますが、ここでは、こちらを向く小鳥が、少し可愛らしい表情をしているのが印象的です。小鳥が時折こういう表情を見せるのを覚えていて、その一瞬を描いたのでしょう。

 なお、本展覧会の初回記事に掲載した《百舌鳥に蜘蛛図》も《花鳥魚鰕画冊》からの一品です。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
渡辺省亭

渡辺省亭 花鳥画の孤高なる輝き – 2017/2/1
岡部 昌幸 (監修), 植田 彩芳子

渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画- 展覧会公式図録 – 2021/3/25
AD by amazon


いま聴きたい世界の指揮者たち |天才クラウス・マケラを聴く|on クラシック音楽館

 昨夜のクラシック音楽館は、「世界の指揮者たち」と題して、今注目される5人の指揮者の演奏を聴く内容でした。登場したのは、クラウス・マケラ、オクサーナ・リーニフ、アンドリス・ネルソンス、キリル・ペトレンコ、グスターボ・ドゥダメル。ネルソンス以降はすでにお馴染みの指揮者ですが、先に音楽の友が行った「あなたが決めるクラシック音楽ベストテン」の指揮者編では、ネルソンスもK.ペトレンコもベスト20にすら入っておらず、まだ日本のクラシック音楽愛好家での受容は進んでいないようです。ちなみに、ドゥダメルはランクインしましたが、それでも、ぎりぎり20位です。

関連記事: 好きなクラシック音楽ベスト10|指揮者・ピアニスト・ヴァイオリニスト・オーケストラ|in 音楽の友

 最初に登場したクラウス・マケラ(Klaus Mäkelä, 1996年-)は、フィンランドの若手で、天才との呼び声も高い、今最も注目される指揮者です。20歳代半ばの若さで、名門パリ管弦楽団の音楽監督に就任することが決まっています。

クラウス・マケラの記事:
パリ管の次期音楽監督にクラウス・マケラ|指揮者の宝庫フィンランドから
デッカ・クラシックスがフィンランドの指揮者クラウス・マケラと専属契約を締結
クラウス・マケラ/パリ管演奏会|ラヴェル・バルトーク・ブルックナー

 また、ウクライナ出身のオクサーナ・リーニフ(Oksana Lyniv, 1978年-)は、近年活躍が目覚ましい女性指揮者の一人で、今夏に《さまよえるオランダ人》を振ってバイロイト・デビューを飾る予定の注目株です。バイエルン国立歌劇場でキリル・ペトレンコの助手を務めており、世界最高峰のベルリン・フィルのシェフの薫陶を受けた指揮者です。

オクサーナ・リーニフの記事:
バイエルン放送交響楽団の2020/2021シーズン・プログラム|女性指揮者二人が初登場
バイロイト2021の《さまよえるオランダ人》の指揮者にオクサーナ・リーニフ|初の女性指揮者
バイロイト音楽祭2021は新型コロナ仕様で開催|新制作は女性指揮者リーニフによる《オランダ人》


いま聴きたい世界の指揮者たち

ドビュッシー: 交響詩《海》
クラウス・マケラ/ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団

ハイドン: 交響曲第96番
オクサーナ・リーニフ/ミュンヘン・フィルハーモニカ―

スクリャービン: プロメテウス火の詩
アンドリス・ネルソンス/ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団

リムスキー・コルサコフ: スペイン奇想曲
キリル・ペトレンコ/ベルリン・フィルハーモニカ―

ストラヴィンスキー: バレエ組曲《火の鳥》
グスターボ・ドゥダメル/ロサンゼルス・フィルハーモニック


 ̄ ̄ ̄

クラウス・マケラ

 クラウス・マケラ/ロイヤルコンセルトヘボウのドビュッシーは、次期N響首席のファビオ・ルイージが振る予定だったクリスマス・マチネの演奏会からでした。ルイージのコロナ感染によって、急遽マケラが代役を務めた演奏会です。


 確かなバトン・テクニックはもとより、その柔らかな所作には25歳の若者とは思えない落ち着きと信念のようなものがあります。ドビュッシーがイメージした「印象」を伝え得る何かが、この指揮者の動きや表情から見てとれ、世界屈指の手練れのオーケストラですら納得させてしまう見えない力を感じさせます。結果、この交響詩に内在する「海」の情景が、まるで絵画の如き鮮やかな音響となって響き、体に染み入ります。


オクサーナ・リーニフ

 オクサーナ・リーニフは、今シーズン、バイエルン放送交響楽団にもデビューを飾っており、ミュンヘンで互いにしのぎを削る二つのオーケストラに登場すること自体、この指揮者の実力のほどが知れるというものです。曲目は、古典のハイドンですが、K.ペトレンコ譲りの激しい動きから、きびきびとした劇的な音像を構築しながらも、ピリオド風味も交えた清澄な響きを引き出していました。


アンドリス・ネルソンス

 コロナ以前には、世界一忙しい指揮者と言われたネルソンスについては、改めて詳細を記す必要はないでしょう。ベルリン・フィルのシェフの有力候補でしたが、K.ペトレンコにその座を譲ってからは、ウィーン・フィルとの関係を強めていて、相性も悪くなく、2020年のニュー・イヤーコンサートにも登場しました。ただ、今回は、以前、BSプレミアムで放映されたロイヤルコンセルトヘボウとのスクリャービンの演奏会でした。ウィーン・フィルは音楽監督を置かないオーケストラですが、コンセルトヘボウのシェフの座は、ダニエレ・ガッディの解任以降空席になっていて、ネルソンスに白羽の矢が立つ可能性もあります。



キリル・ペトレンコ

 ベルリン・フィルのシェフに君臨するK.ペトレンコ(ロシアには、もう一人の有望な指揮者ヴァシリー・ペトレンコも居る)についても、改めて記す必要はないでしょう。今回のリムスキー・コルサコフは、昨年末のベルリン・フィルのジルヴェスター・コンサートからの抜粋でした。この指揮者の特徴は、緊張感溢れる密度の濃い音作りで、歌劇場で鍛えられた劇的な表現が音楽に生命力を与えます。



グスターボ・ドゥダメル

 ドゥダメルは、まだ彼が40歳だったとは意外に思えるほど、若い頃から世界的な名声を得た指揮者です。今回の《火の鳥》は、ロス・フィルの100周年記念演奏会でのもので、かつての若き俊英指揮者もいつのまにか白髪が増えて、年齢以上に老け込んだように見えました。この演奏会は、最初に登場したのが1960年代から70年代にかけてシェフを務め、ロスの音楽愛好者にとっては伝説となっているズービン・メータで、彼がステージに登場すると、当時を知っていると思しき老齢の聴衆がスタンディング・オベーションで迎えていたのが印象的でした。次に前シェフのエサ=ペッカ・サロネンが登場し、その後に、現在のドゥダメルが《火の鳥》を指揮しました。かつて、メータがロス・フィルを振って録音した同じストラヴィンスキーの《春の祭典》の強烈なインパクトを知る筆者にとっては、ドゥダメルの《火の鳥》は、ややインパクトに欠ける演奏で、先に聴いた作曲者自身の指揮によるN響との同じ曲のコーダを比べると、若干平凡に聴こえてしまいました。



 ̄ ̄ ̄

 今回登場した指揮者のうち、ネルソンス以降の指揮者達は、すでに実績も知名度もある指揮者で、今後も楽壇の中枢を成す指揮者でしょう。しかし、マケラには、彼らを凌駕する可能性を限りなく感じました。すでに、フランスの名門パリ管や、老舗レーベルのデッカ・クラシックスが、その才能を見越して動きをかけていますが、彼らだけでなく、今後、楽壇が総力を挙げてこの有望な若者を育てようという動きをかけるのではないでしょうか。パリ管での地位に安住する才能ではないはずで、歌劇場でのキャリアを積めば、今後数十年間、楽壇に君臨する可能性を秘めた逸材だと思います。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
キリル・ペトレンコ

キリル・ペトレンコ・ファースト・エディション
ベートーヴェン、チャイコフスキー、シュミット、シュテファン
[5CD+2Blu-ray] [Import] [Live] [日本語帯・解説付]
キリル・ペトレンコ/ベルリン・フィルハーモニカ― 形式: CD

チャイコフスキー : 交響曲第6番 ロ短調≪悲愴≫
キリル・ペトレンコ/ベルリン・フィルハーモニカー
[SACD Hybrid] [Import] [日本語帯・解説付]
AD by amazon


記事検索
プロフィール

Alex Del Piero

クラシック音楽とアート、サッカーが趣味。
好きな作曲家はワーグナー、ブルックナー、マーラー・・・
演奏家は、カラヤン、クライバー、クナッパーツブッシュ・・・
美術家は、ダリ、デ・キリコ、若冲、広重、会田誠・・・


最新記事
amazon商品検索
カテゴリー
amazon商品検索
タグクラウド
メッセージ

名前
メール
本文
広告
広告
  • ライブドアブログ