山種美術館で開催中の川合玉堂展は、入館してすぐ右手に《写生画巻》が二点、展示されています。巻物状の紙の上に、絵のモチーフとなる自然の対象物を写生したもので、巻かれている部分もあって、全て観ることはできませんでしたが、素晴らしく精緻で、それでいてさらりとした筆致は、時間をかけてみっちりと描いた様子を見せないある種の洒脱さがあります。玉堂の初期の時代のものであることから、円山四条派の色合いが濃い写生で、明らかに応挙が残した写生を意識したものだと思われます。


川合玉堂 写生画巻2
◇ 川合玉堂 写生画巻

川合玉堂 写生画巻1
◇ 川合玉堂 写生画巻

 応挙の場合は、自身の作品に使用するための他に、工房の弟子たちが描くときのための見本として、様々な対象の写生を記録したものと考えられます。玉堂の場合は、工房を構えていたわけではないので、習作的位置づけなのでしょうが、その味わい深さは、単なる写生の域を超えています。画像では判り難いですが、鮎の肌のきめ細かい表情は、そのぬめぬめとした触感が伝わってくるほどに超写実的である一方、たらし込みを巧みに用いた葡萄の色彩は薄っすらと透けて見えるように品が良く、日本画の繊細な情感が見事に表現されています。そこには、単なる写実に加えて、日本的な装飾美をも織り込まれていて、極めて美麗なモチーフ達の描写となっています。すなわち、それぞれが一つの作品として成り立っていると言ってよいでしょう。

 会期中、展示替えするかもしれず、筆者が観た時は隠れていた他のモチーフを観ることが出来るかもしれません。


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川合玉堂

川合玉堂の画手本
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