森美術館で開催中の「六本木クロッシング」は、同館が3年に一度開催してきた日本の現代アートを展示する展覧会です。2004年以来、7回目となる今回は、1940年代~1990年代生まれの日本の作家の作品作品約120点が展示されています。「クロッシング」とは多分「六本木交差点」から来ていると思われますが、幅広い年代の作家さん達による「創作活動の交差点」を意味するといいます。さらに、今回のサブタイトルの「往来オーライ!」には、「歴史上、異文化との交流や人の往来が繰り返され、複雑な過去を経て、現在の日本には多様な人・文化が共存しているという事実を再認識しつつ、コロナ禍で途絶えてしまった人々の往来を再び取り戻したい」という思いが込められている(展覧会webpageより引用)といいます。

展覧会webpage: 六本木クロッシング -往来オーライ!-

 展示には章立てはありませんが、展覧会全般を通して、パンデミックがもたらした社会現象、生活環境等の身近な事象や、その中から見出される日本文化の多様性を、幅広い年代の作家による作品を通して再認識しようというテーマを掲げています。


O JUN ⼭のあなた
◇ 山のあなた 2022年 顔料/板 91×91 cm

O JUN 林檎図
◇ 林檎図 2022年 油彩/板 91×91 cm

 O JUN(1956年-)は、身近な出来事から事件などの社会現象といった事象を題材とし、それらの断片を想像させるような素朴で記号化されたような図像と明るい彩色を特徴としますが、その筆致は、作品毎に様々に変容します。《山のあなた》は、赤く塗られた山と手前の湖(池?)が補色系の鮮やかな対比を成し、何故かそこに松(たぶん)が添えられています。鮮やかな色彩もあって、吉祥の絵にも見えます。赤い山の後ろに描かれている、デフォルメされた水色の山は、輪郭線だけの記号化された三角形の図像になっています。これが「あなた=観者」なのでしょうか。一方、林檎図では、色彩によって林檎の成熟過程を描きわけていると同時に、その配置を俯瞰すると笑顔に見えます。どちらの絵も、2022年に描かれた新作で、前者は、付け立て風の素早い筆触で描かれ、後者は、油彩で筆跡を目立たせていません。しかし、簡素化された図像と余白は共通しており、そこには和のテイストが感じられます。


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森美術館

未来と芸術 Future and the Arts – 2020/1/17
森美術館 (監修)

STARS:現代美術のスターたち―日本から世界へ – 2020/10/2
森美術館 (編集)
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