2006年12月20日
「自転車の安全利用の促進に関する提言」を読み解く:第5回 第1 自転車利用の現状と交通事故の状況 P6〜
どうにも間隔が空いてしまいます。土日が空けばいいのですが、さすがにそうも言ってられません。また、月、火も忙しい。
また、提言を何度も読み返すたびに突っ込みどころが増えていくのもその原因の一つでもあります。全くもう。
つまらぬ愚痴を申しました。それでは続きです。
提言の本文を全文知りたい方はこちらからどうぞ。
紙の節約のために2ページ印刷をすると読みやすくてよいですよ。数字は一部読みにくくなりますが。
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P6図7から。
図7 年齢別自転車関連交通事故
本文で指摘のあるとおり、「13〜19歳の者が当事者である事故が、全自転車関連事故の22.7%を占め、最も多くなっている。」のであるが、これに12歳以下と自動車運転免許を所有していない大学生クラスまで含めると、1/3を超えるであろう。いかに教育が行届いていないかが分かると同時に、現在あちこちで行われている安全教育が実をあげていない結果でもあろう。
また、ここには示されてはいないものの、この年齢別表示に自動車運転免許保有率まで記載できたら、さらに多くのことが分かると思う。全くの推論ではあるが、運転免許保有者はかなり少ないはずである。
自転車乗用車の通行目的別の記述に関しては省略(P6下段)
前述したが、通行目的を記載する意味がわからない。比率の変化は当然あると予測されるが、自動車の利用目的も多様性を持つという意味においては全く自転車と変わらない。
自転車関連事故における自転車乗用者の法令違反別比率(P7上段)
信号無視や一時停止不履行はある意味車に轢かれても仕方が無いが、ほとんどが、安全運転義務違反であり、いわゆる微罪に近いものが多い。すなわち、運転免許を持たなければ知りえないクラスの違反、もしくは持っていたとしても通常あまり気にしていないレベルの違反であることが分かる。(自転車が歩行者を轢くのは論外ではあるが。)
また、違反なしが59264件(比率31.5%!!この比率を記載しないことに強烈な悪意を感じる。)であり、自転車対歩行者の事故は必ず自転車に違反が取られることを考えれば、無実で自転車が自動車に轢かれる比率がおよそ1/3であることが分かる。
自転車乗用中の事故死者の損傷部位別の比率(P7下段)
これについては全く異論が無い。人間は、頭を強く打ち付ければ死ぬのだ。また、自転車を何らかの理由で強力に止められたら、人間は自転車から放り出されて、一番重い頭を下にして地面に激突するのは、物理のモーメントを学ばなくても容易に理解できる。だからこそ、ヘルメットはかぶるべきである。これこそが自動車におけるエアバッグの役割を果たす。
表4 自転車の進行経路別事故件数(自転車対車両の事故で自転車運転者が死亡した事故)(P8)
ほとんどの事故が前述の図解で説明できる。
再掲すると、これらの事故の原因のほとんどが
・自動車が、自転車のスピードを正しく理解していない
・自動車から自転車が見えていない
・自転車は、自動車から自分がどう見えているか(もしくは見えていないか)を正しく認識していない
ことによる。
また、13.3%を占める「単路・車道・横断」のほとんどは、自転車側の士道不覚悟ならぬ「車道不覚悟」であろう。安全確認・後方確認をせずにいきなり横断すれば、車に轢かれるのは当然である。歩道の感覚で自転車に乗るからそういうことになる。
表5 自転車の進行経路別事故件数(自転車対歩行者の事故で歩行者が重傷または死亡した事故)
5割近くが歩道で生起している。当然である。歩行者の聖域たる歩道に自転車が乗り入れているわけだから。逆に、車道で起きている自転車対歩行者の事故は、単路だけで26%。歩行者も、自転車の速度を誤認しているのであろうか?
表6 事故要因別事故件数(自転車対車両の事故で自転車運転者が死亡した事故)
安全確認不履行は、前述のとおり。自転車が車からどう見えているかを認識していない。自転車の信号無視や一時停止不履行は、相手が自動車であった場合、大きなつけが自分の生命に回ってくることになる。
表7 事故要因別事故件数(自転車対歩行者の事故で歩行者が重傷または死亡した事故)
自転車側による発見の遅れが75.9%を占めるが、そもそも車道を走ることを習慣としていれば、基本的に交差点以外で歩行者を気にする必要はない。また、脇見もできないし、漫然と運転もできない。
さて、P8の資料に関しても多くのことが分かるが、この資料に関しては自転車が歩道を走ってはならない大きな根拠がある。自転車対歩行者の事故の半分が歩道で起きていることだ。しかも、このことが本文中において全く言及されていない。
そろそろ気がついても良いであろう。この提言は、「自転車の車道通行禁止」のために都合の良いようにしか解釈していないし、資料も提示していないし、本文もそのようにしか書いていない。
これらの資料からは、もっと多くのことが分かるのだ。交通事故件数を減らしうる抜本的な対策を打ち立てるのに必要なことが概ね揃っているのだ。それなのに、そのことには全く言及されていない。全くもってもったいない。
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改めていいますが、私はドライバーでも歩行者でもありますが、自転車乗りです。基本的に自転車に対して同情的な論が目立つことでしょう。しかし、交通事故が減るのであれば、自転車が「正規のルール」によって制限を受けることに関しては、やぶさかではありません。
それを、「正規ではない、曲がったルールや認識」を以って自転車を制限したりすることに関しては、断固として反対します。ましてや、その「曲がったルール」によって、実は事故件数が増加するのではないか…という疑念が生じるのであれば、なおのことです。
以下次号!
また、提言を何度も読み返すたびに突っ込みどころが増えていくのもその原因の一つでもあります。全くもう。
つまらぬ愚痴を申しました。それでは続きです。
提言の本文を全文知りたい方はこちらからどうぞ。
紙の節約のために2ページ印刷をすると読みやすくてよいですよ。数字は一部読みにくくなりますが。
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P6図7から。
図7 年齢別自転車関連交通事故
本文で指摘のあるとおり、「13〜19歳の者が当事者である事故が、全自転車関連事故の22.7%を占め、最も多くなっている。」のであるが、これに12歳以下と自動車運転免許を所有していない大学生クラスまで含めると、1/3を超えるであろう。いかに教育が行届いていないかが分かると同時に、現在あちこちで行われている安全教育が実をあげていない結果でもあろう。
また、ここには示されてはいないものの、この年齢別表示に自動車運転免許保有率まで記載できたら、さらに多くのことが分かると思う。全くの推論ではあるが、運転免許保有者はかなり少ないはずである。
自転車乗用車の通行目的別の記述に関しては省略(P6下段)
前述したが、通行目的を記載する意味がわからない。比率の変化は当然あると予測されるが、自動車の利用目的も多様性を持つという意味においては全く自転車と変わらない。
自転車関連事故における自転車乗用者の法令違反別比率(P7上段)
信号無視や一時停止不履行はある意味車に轢かれても仕方が無いが、ほとんどが、安全運転義務違反であり、いわゆる微罪に近いものが多い。すなわち、運転免許を持たなければ知りえないクラスの違反、もしくは持っていたとしても通常あまり気にしていないレベルの違反であることが分かる。(自転車が歩行者を轢くのは論外ではあるが。)
また、違反なしが59264件(比率31.5%!!この比率を記載しないことに強烈な悪意を感じる。)であり、自転車対歩行者の事故は必ず自転車に違反が取られることを考えれば、無実で自転車が自動車に轢かれる比率がおよそ1/3であることが分かる。
自転車乗用中の事故死者の損傷部位別の比率(P7下段)
これについては全く異論が無い。人間は、頭を強く打ち付ければ死ぬのだ。また、自転車を何らかの理由で強力に止められたら、人間は自転車から放り出されて、一番重い頭を下にして地面に激突するのは、物理のモーメントを学ばなくても容易に理解できる。だからこそ、ヘルメットはかぶるべきである。これこそが自動車におけるエアバッグの役割を果たす。
表4 自転車の進行経路別事故件数(自転車対車両の事故で自転車運転者が死亡した事故)(P8)
ほとんどの事故が前述の図解で説明できる。
再掲すると、これらの事故の原因のほとんどが
・自動車が、自転車のスピードを正しく理解していない
・自動車から自転車が見えていない
・自転車は、自動車から自分がどう見えているか(もしくは見えていないか)を正しく認識していない
ことによる。
また、13.3%を占める「単路・車道・横断」のほとんどは、自転車側の士道不覚悟ならぬ「車道不覚悟」であろう。安全確認・後方確認をせずにいきなり横断すれば、車に轢かれるのは当然である。歩道の感覚で自転車に乗るからそういうことになる。
表5 自転車の進行経路別事故件数(自転車対歩行者の事故で歩行者が重傷または死亡した事故)
5割近くが歩道で生起している。当然である。歩行者の聖域たる歩道に自転車が乗り入れているわけだから。逆に、車道で起きている自転車対歩行者の事故は、単路だけで26%。歩行者も、自転車の速度を誤認しているのであろうか?
表6 事故要因別事故件数(自転車対車両の事故で自転車運転者が死亡した事故)
安全確認不履行は、前述のとおり。自転車が車からどう見えているかを認識していない。自転車の信号無視や一時停止不履行は、相手が自動車であった場合、大きなつけが自分の生命に回ってくることになる。
表7 事故要因別事故件数(自転車対歩行者の事故で歩行者が重傷または死亡した事故)
自転車側による発見の遅れが75.9%を占めるが、そもそも車道を走ることを習慣としていれば、基本的に交差点以外で歩行者を気にする必要はない。また、脇見もできないし、漫然と運転もできない。
さて、P8の資料に関しても多くのことが分かるが、この資料に関しては自転車が歩道を走ってはならない大きな根拠がある。自転車対歩行者の事故の半分が歩道で起きていることだ。しかも、このことが本文中において全く言及されていない。
そろそろ気がついても良いであろう。この提言は、「自転車の車道通行禁止」のために都合の良いようにしか解釈していないし、資料も提示していないし、本文もそのようにしか書いていない。
これらの資料からは、もっと多くのことが分かるのだ。交通事故件数を減らしうる抜本的な対策を打ち立てるのに必要なことが概ね揃っているのだ。それなのに、そのことには全く言及されていない。全くもってもったいない。
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改めていいますが、私はドライバーでも歩行者でもありますが、自転車乗りです。基本的に自転車に対して同情的な論が目立つことでしょう。しかし、交通事故が減るのであれば、自転車が「正規のルール」によって制限を受けることに関しては、やぶさかではありません。
それを、「正規ではない、曲がったルールや認識」を以って自転車を制限したりすることに関しては、断固として反対します。ましてや、その「曲がったルール」によって、実は事故件数が増加するのではないか…という疑念が生じるのであれば、なおのことです。
以下次号!
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コメント一覧
1. Posted by ミスミ 2006年12月22日 20:31
>表5 自転車の進行経路別事故件数
>(中略)自転車の速度を誤認しているのであろうか?
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自転車の速度を誤認していることも確かにあるでしょうが、
自転車と歩行者の進行方向が同じ場合が大半だろうと思っています。
歩行者が自転車の存在に気づかずに(確かめずに)進路を変更する。自転車がこれを予見せず、安全な距離を取らずに通行する。これらが重なって事故が起こる、と。
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>(中略)自転車の速度を誤認しているのであろうか?
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自転車の速度を誤認していることも確かにあるでしょうが、
自転車と歩行者の進行方向が同じ場合が大半だろうと思っています。
歩行者が自転車の存在に気づかずに(確かめずに)進路を変更する。自転車がこれを予見せず、安全な距離を取らずに通行する。これらが重なって事故が起こる、と。
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2. Posted by ミスミ 2006年12月22日 20:32
>自転車対歩行者の事故の半分が歩道で起きていることだ。
歩道のない道が約100万km、歩道が約7万km。これを考慮すれば歩道での事故が半分も占めているなんて多すぎる、という理由付けはずるいかな。「自転車のほとんどが歩道を通行しているから当然だ」「歩道は人の密度が高いのだから、事故は起こりやすく、事故が多くて当然だ」と言われると苦しいですが。いや、だからこそ歩道を走ってはならない理由になるのか。
歩道のない道が約100万km、歩道が約7万km。これを考慮すれば歩道での事故が半分も占めているなんて多すぎる、という理由付けはずるいかな。「自転車のほとんどが歩道を通行しているから当然だ」「歩道は人の密度が高いのだから、事故は起こりやすく、事故が多くて当然だ」と言われると苦しいですが。いや、だからこそ歩道を走ってはならない理由になるのか。