2005年07月

2005年07月27日

モーニング娘。の巻。(本文)

「さて、モーニング娘。の話ですね!」「そう。議題は、いっぱいあるよ。「坂口安吾と安倍なつみ」あるいは「小川麻琴と堕落論」とか、「ヤン富田とつんく♂の違い」とか「糞曲と名曲? 「涙が止まらない放課後」を糞曲と断定する者がブッシュを支持する?」とか、「ハロプロと統制的理念」とかね」「なんだか分かんないですね!」「そうかもね(笑)。ねぇところで、最近、「ハロモニ。」は観てる?」「うん。でも、「ハロプロワイド」のピーマコ小川の降板は残念だったね」「エリザベス亀井(キャメイ)もいいけど、ピーマコ良かったよね!」「現在、坂口安吾の「堕落論」を読むなら、ピーマコを観ろ! ってぐらい、毎回超リラックスしたまことが観れたからね!」「そうそう。「空気を読めないやつ(と周りから思われてるやつ)」が、自分で自分の緊張感を解いてリラックスしちゃうと「その場の空気を一瞬にしてよりよい空気に変えるやつ」=「実はいいものを持っているやつ」になる、っていうかね。その場に解放感をもたらすんだよ。場の空気を読んでみんなとなぁなぁで合わせる共同体的な指向をやめて、そこから堕ちたことが、小川の勝因だね。別に小川は空気が読めないわけじゃなくって、少し臆病だったから、場に波風を立てるのを躊躇してただけだった、ってことが証明されたよね。お安い一体感よりも、爆発的な解放感を取った小川は最強だよ」「決められた枠の中で輝こうとしない順に輝くのが娘。だからね。つんく♂が、娘。のことをロックだって言うのはよく解る」「娘。がテレビに出てるのを観て面白かった時って、必ず、その場の空気を一瞬で変えるような発言や珍回答やリアクションがいっぱい出た時でしょ? そこから「ケメ子」(保田圭)や「ガキさん」(新垣里沙)というキャラクターも出て来た。その解放感はとても音楽的なんだ。所謂タレントさんとしての技術的に巧いリアクションなんて何の魅力も感じられないからね。こと娘。に関してはね」「そういう解放感に満ちた娘。達が、つんく♂の作るああいう歌(後述)を、一生懸命歌うからこそ、グっとくるんだよね。やっぱ、モーニング娘。の魅力は、そこに尽きる」「小川のハロモニ。話に戻るとさ、「ピーマコ小川」の前に、「オガ板六郎」があったでしょ?」「あの「北の国から」の五郎さんのパロディーをやらされたんだよね。あそこで、小川はスタッフに「もっとリラックスしていいんだよ」と背中を押されたんだよね、きっと。それまで、あんな「おじさんメイクの小川」なんてあり得なかったからね」「あれは大きかったんじゃない? 去年('03年)の初夏頃だったよね? ミュージカル出演中に腰を痛めて公演の最後の方欠場したでしょ? あの直後くらいでさ、プッチモニも開店休業状態で、しかも、これから新メンバーが入ってくるってのにキャラが全く立ってなくって、テレビで何か話を振られても優等生的に上手く応えようとしてるせいか逆に上手く応えられない、みたいな状況だったんだよね」「ダンスは上手い、って定評はあったけどね。保田圭ちゃんが卒業する時の「うたばん」でも、保田から小川へのメッセージで「小川には私と同じにおいを感じるよ」って云ってたからね」「圭ちゃんも「ケメ子」キャラが立つまで時間がかかったからねー」「そんな状態だったのが、「ピーマコ小川」をキッカケに大化けしたんだよね」「そう、ハロプロの最新情報を告知するコーナーのキャスター役でね。殆どカンペを追う目線そのままでカメラに映って、台詞は噛み放題(笑)。司会の中澤姉さんに対する切り返しもゆるゆるでバカ過ぎて本当に可愛かった!」「まことのあのノリは、ピーマコ小川降板以降も継続してて、テレビに出てなんかやってるのを観てるとどうにも楽しそうでいいね!」「ハロプロ内で、現在松浦亜弥と拮抗出来る思想をもった娘。は、まことかもね。なんたって安吾だから(笑)」「あはは。でも、確かに現在のあややの大ブレイクの根拠は、あの思想性だしね。それ(思想性)があっての結果だから。ハロプロとGIRL POPと総称される音楽の圧倒的な違いもそこ、思想性の有無にある。ボンボンブランコとかそこそこ曲がいいけど、思想性は皆無だからね。メインボーカルの子以外の4人がパーカッションっていうのも謎だし(笑)。まぁ、たまたまボンブラを例に出したけど大体J-POPって、1つ何かが当たると、あとはその繰り返しなんだよね。快感の幅を限定してその範囲内での価値観のものを次々にリリースしていく。だから、変化はないけど、ある程度、前に味わった快感と同じような快感を味わえる。それは、ボンブラでもサザンでも浜崎でも同じでしょ?」「だから、それは悪い音楽である、と?」「いや、そんなことはないよ。今言ってるのは、単にヤン富田氏云うところのポップスとポップの違い、というヤツですよ。これらの音楽はポップスであってポップではないということ」「じゃあ、ハロプロは、ポップの部類だって言うの?」「いや、つんく♂の作る音楽はポップスでしょ。ただ、独創と張れるものがあるよ。新曲を出すと、2ちゃんなんかで必ず糞曲と叩かれるのがその根拠。大体、いま売れてる音楽を作ってる人で一聴して糞曲、と言われるような曲をリリースする人はつんく♂以外は皆無だからね」「でも、糞だったらダメじゃない(笑)」「そう、でも、糞曲と最初に言われた曲がしばらく時間をおくと大概その曲が、結構いい曲だねとか、名曲! と言われるようになる」「つまり、快感の幅を限定せず広げてる、と?」「まぁ、それが本当なら、つんく♂はポップスではなくポップ、といえるんだけど、音楽界全体が余りにも保守的だからハロプロがポップに一瞬視えてしまう、といった感じかな。結局、ポップをやって作品として残せているのは、殆どヤンさん1人だしね。こうやって音楽の話をしてると、ヤンさんを除くと他は全部システムを論じるための材料にしかならなかったりするし。だから、ヤンさんを褒めると、「要するに俺の悪口なんじゃないか?」と誤解するミュージシャンが出てくるのは想像出来るな。まぁ、僕もこんなこと云ってて、なんというか夜道は気をつけなきゃ、だけど(笑)」「でも、ポップスに価値はない、って言ってるわけじゃないよね?」「そう、ポップスはポップスでいいじゃない? でも、僕なんかは、その中でも思想性のあるハロプロが好きだな、ってことでね。ここ最近の娘。のシングルのリリース傾向って、傾向がないでしょ? 前作と全く違う傾向/曲調の作品がリリースされてる。順番が安吾云う所のファルス的なんだ。尚且つ、テーマは一貫している。それに比べると、他は、何枚リリースされても大体前と同じだからね。テーマが一貫してるというよりワンパターン」「といっても、本当の意味でファルス的な並びで作品を発表してるのも、殆どヤンさん1人なんだけどね」「まぁね。凄くキレイなコーラスの入ったムーディーな曲の次に、クーラーが作動してる音が数分入って、次にロボットがずっと笑っててそれを観てる観客もずっと笑ってる、って曲が入ったアルバムを作るわけだからね(笑)。あれこそ正にファルス的だね。それをCD-ROM含む4枚組でリリースしたヤンさんは、やっぱ最高面白い。オーディオヴィジュアルな表現には最早可能性はない、と言い切る人達には、是非「MUSIC FOR LIVING SOUND」をチェックしてもらいたいね」「まぁ、球界で云うと、ナベツネに代表される人達(J-POP)とライヴドアの堀江(ハロプロとヤンさん)くらい違う、と(笑)」「ハロプロとヤンさんは絶対に一緒には括れないけど、相対的にはつんく♂はヤンさんに近い思想性を持ってると思うよ。まぁ、この対立項は、ブッシュとケリーとかでもいいんだけどね」「それが、「糞曲と名曲?「涙が止まらない放課後」を糞曲と断定する者がブッシュを支持する?」ですね(笑)」「そうそう、忘れてた(笑)。みんな(ブッシュ側は)変化を好まないんだよ。ヒップホップの世界で「ステイ・リアル」って言葉が流行った頃から、ヒップホップって本格的に「どれ聴いても同じ」みたいな状態になったでしょ? リアルポリティックスって言葉があるけど、リアルと言う奴らが最もアンリアルなんだよ」「ヒップホップの人ってみんなブッシュ支持なの?」「なわきゃーないでしょ? キミも柄谷行人とか読んでるんならそんなつまんない揚げ足取るんじゃないの!」「オレ、柄谷行人なんか読んでないよ!(笑)」「じゃ、「今ここへ」読め!」「わかりやしたー(笑)」「まぁ、でも、そういう「リアル」に比べてハロプロは、歌詞も統制的理念を歌ってるものが多くて、カント的な意味でリアルで良いね。「今すぐじゃ なくっても/そのうちでいい」とか「桃色の片想い してるけど/両想い 目指すけど/昨日より 近ずいた」とか「結果を急ぐのも 悲しいよ/すぐじゃないかもしれない けれども」とか、いろいろとね(笑)」「リアルだねー(笑)」「ハロプロは全盛期より売り上げが落ちてるって話もあるけど、この姿勢がある限りは絶対に大丈夫だね」「今現在、売れてる、ってことだけが存在理由の音楽には余裕で勝てるよね」「ところで、「ヤン富田とつんく♂の違い」ってのをもう少し詳しく訊きたいんだけど?」「だから、つんく♂は「天才」で、ヤンさんは「使徒」ってことでしょ? 「使徒」ってのは馴染みが薄い言葉だけど、なんつーかいつでも逆説的で、絶対共同体の枠に収まらない感じ。で、「天才」ってのは、結局は共同体に受け入れられてしまう、ってこと。内在的なのよ。これが、ヤンさんとつんく♂の違いだね」「やけに、あっさりしてるねー。でもなんかこの話、詳しく訊くとややこしそうだから、この辺にしときましょうか(笑)」「逃げたな(笑)」「いやいや、だからこういう話は、各自本でも読めばいいじゃないですか(笑)」「所詮、流行歌の話だからね。でも、所詮流行歌だからこそ、これくらい余裕を持った視点で視た方がその面白さを存分に享受出来るよ、ってことでさ」「でも、余裕のない視点から生まれる、つまんない抑圧があってこそ、小川的なものが輝くってのもあるけどね(笑)」「なんか小川が偉大な人に視えて来たよ(笑)」「いや、実際、現在娘。のエースでしょ(笑)。辻加護卒業後のツアーでもかなり歌うパート増やされてたしね。件の新曲(「涙が止まらない放課後」)ではバックダンサーだったけど、妙に輝いてたし(笑)」「あの曲は、紺野・道重・石川っていう「歌えない」3人をフィーチャーした所につんく♂のいうロックを感じたね! でも、みんないい歌歌うんだよね。下手な分、一生懸命歌うから歌としてはいい、っていう言い方は「うたばん」で槇原敬之が、SMAPの中居くんの歌をさして云った褒め言葉だけど、そういう感じ。これは、娘。の音楽の基本だけどね」「そういえば、「坂口安吾と安倍なつみ」っていうのは、何なの?」「あ、これねー、文字数足らなくなっちゃった(笑)。またいずれ話すよ。それにしても、ハロプロみたいな「芸能界」の話で、こんな豊かな話が出来るなんて不思議だね!」「やっぱ、娘。ひいてはハロプロってロックなんだよ! 精神的な意味でね。この感じが続く以上は、今後も僕はハロプロをチェックし続けると思うよ」「陳腐なまとめ、ですな」「まぁ、いいじゃない、所詮は流行歌(J-POP)の話だし、余裕持っていきましょうよ(笑)」 *'04年11月頃に執筆。『SPECTATOR』2005 SPRING ISSUEに掲載されたものに加筆・訂正を加えたものです。

【関連URL】
http://loveshop-record.com/?p=730
http://tower.jp/item/2512964/DO-MY-BEST
http://www.jetsetrecords.net/jp/product/812003463922
http://www.jymandrecords.com//?pid=12135024
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アーティスト:A.K.I.PRODUCTIONS
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