2009年05月

2009年05月30日

UJT著『ブレイクタイム manga meets music』

『ブレイクタイム manga meets music』
著者:UJT
発行:イースト・プレス
版型:四六判/ソフトカバー/240ページ
定価:1,500円(本体1,429円+税5%)
ISBN:978-4-7816-0164-9 C0979
発売: 2009年5月30日

【参照URL(amazon.co.jp)】
http://www.amazon.co.jp/ブレイクタイム―manga-meets-music-UJT/dp/4781601642/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1243583920&sr=8-1

【関連URL】
http://www.eastpress.co.jp/
http://www.mangatronix.com/ujt/
http://ujt.jugem.jp/

*ご縁のある作品なので。素晴らしい内容です。是非。


2009年05月13日

小夜子さんへの手紙’09

山口小夜子様

 小夜子さん、お久しぶりです! 御陰様で、A.K.I.PRODUCTIONSの久々のアルバム『DO MY BEST』を無事リリースすることが出来ました!
 アルバムには「山口小夜子に捧ぐ」というクレジットを英語で入れたのですが、そのことが、今になって重要な意味を持ってきたことに気が付いたので、こうして今手紙を書いています。こんなことを思いついた時、真っ先に電話が出来る相手というのも、小夜子さんが亡くなられて、また1人減ってしまいました。残念でもありますが、そのことによって、僕は、より自分で考える時間を与えられたような気もしています。その時間がなくては完成しなかったアルバムだとも思えます。小夜子さんの死を出来るだけポジティヴに捉えて、今はそう思っています。小夜子さんの死によって、悟らされたものがあると思うのです。だから、僕は、本当に小夜子さんに感謝しています。『DO MY BEST』が、ある種の恩返しになっていればよいのですが。

 小夜子さんは、以前の僕とのライヴの時に、ブルース・リーの言葉、「水のように」というフレーズを使ってましたよね。当時の僕は、その意味がよく判っていませんでした。しかし、今回のアルバム『DO MY BEST』で僕は、水になれていました。自分の初期衝動に忠実に曲を仕上げていったので、アルバムを通しての決まった型というものがないのです。自分の思い、自分の気持ち、という器の形に合わせて、どんどんと水のように楽曲の形が変わっていく感じ。思えば、小夜子さんとのライヴもそのようなものでしたし、初めて小夜子さんにお会いした時に手渡した僕のライヴCD-R『Live at Super Deluxe '03/09/29』の内容もそんな風なものでした。
 山口小夜子&A.K.I.PRODUCTIONS、というのもユニット名ですらなく、僕達がライヴをする時に、ただ単に2人の名前を連ねただけのもので、ライヴの内容も、お互いのアイディアがそのまんま盛り込まれた、一見デタラメなものにも視えるような、お互いの気持ちが、型通りにソフィスケートされぬまま、ダイナミックに並列に並んでいるような、そんな、水のようにフレキシブルなものになっていたと思います。でも、ユニット名すらなかったのに、僕にとってはバンド以上にバンドのような感じ。いつもそんな気持ちでライヴをしていました。

 僕は、ある時、友達と話している時についウッカリ「小夜子さんのような人と組むことは、もう今後はないんだろうなぁ」と漏らして、しばらくボンヤリとして黙り込んでしまったことがありました。どうしてその時、そんなことを思ってボンヤリとしてしまったのか、今になって判りました。僕と一緒になって、興味の趣くままに、水のように変化しながら、夢中になって遊んでくれる相手なんて、そうはいないからです。僕達の音楽の作り方は、まさにそんな感じでしたよね? これからまた、志を持ってやっていけば、また、そんな相手とも巡り会えるのかもしれません。しかし、その時には、なんだかそんなことを考えて呆然としてしまったのです。

 思えば、今までも僕が感動したものは、水のようになれる人達の表現ばかりでした。
 印象深いものとしては、ヤン富田さんが、イン&ヤン富田名義で発表された『MUSIC FOR LIVING SOUND』というCD-ROM1枚とCD3枚の4枚組のアルバムがありました。しかも、なんとジャケットには、タオのマークが入っています。イン&ヤン、という名義通りのデザインです。無難にソフィスケートされた所のない、初期衝動の爆発の連続のような作品でした。98年にこの作品に出会えたことが、僕にとって非常に大きなターニングポイントとなりました。      
 僕達のライヴでも、この作品に収められていたカヴァー曲「TALE TO ME」を、小夜子さんの書いた日本語の詞をのせて、僕がチップマンクス声で歌うという形態で、カヴァーをしましたよね。この作品にインスパイアされた出し物だったことを考慮してのカヴァーだったので、カヴァーのカヴァーといった感じでの演奏でした。
 ヤンさんの作品はどれも凄いのですが、最近では、2枚のDVDと本とポスターで構成された『SUMMER WORKSHOP』、特にそのDVD に収録されている「Urima Co. CM」が凄かったです。ヤンさんの長いキャリアを以てして、このフレッシュな作品。正しく、水のように、という言葉を思い起こす素晴らしいものでした。

 自分のちょっとした興味、ちょっとした些細な動機を大事にして、それを基にどんどんと自分が拡張していき、本質は変わらないまま、どんどんと形が変化していく。そんな凄く楽しそうな感じ。それが僕にとっての、水のように、というフレーズの解釈です。
 そして、僕もまた、いつのまにか、それを身につけていました。
 実を言えば、もっと昔からそういう姿勢があったのですが、そのことに意味があるのかないのか自分ではよく判っていなくて、それが、こうしていろいろと経験を積み重ねている内に、今になって改めてその感じ、その意味が、自分にしっかりと還って来たのです。結果、やはりこれで良かったのだと思いました。
 でも、気を抜いてしまえば、またすぐにこの姿勢を見失ってしまうのでしょう。なので、今後もまた精進の日々です。気を抜くのではなく、肩の力を抜き、日々是好日といった感じでリラックスするための修行、とでも云えば良いのでしょうか。また、日々いろいろなことに気付いていきたい、とも思っております。
 
 そういえば、その昔、A.K.I.PRODUCTIONSが、まだ僕とILLICIT TSUBOIくんとの2人組だった頃、アクロバット・バンチという素晴らしいバンドとコラボレーションをした時のこと、それは93年のことで、当時、僕はごく普通の意味でのラッパーでしたが、彼らと、朗読とDUBの曲、というか当時はそれとは知らずにやっていたサウンド・ポエトリーのようなものと、自分で作詞作曲した歌ものを録音したことがありました。その初期衝動で作ったような作品の収められたアルバム『玄人はだし』のジャケットにもタオのマークが記されていたことを思い出しました。また、その頃から、既に水のように作品を作っていたことも、自分ではつい忘れてしまったりもしていたのでした。

 小夜子さんとアルバムを作ろうとしていた頃、結局どうしてもそれを作ることが出来なかったのは、その時の僕は、初期衝動を爆発させることよりも、「一度、小夜子さんとライヴで作り上げた作品世界を壊さずに、それをキープしたままアルバムを作る」という執着心に捕らわれていたからだったのだと、最近になって気がつきました。勿論、サンプリングの問題などもありましたが、執着心こそが、その原因だったのでしょう。今だったら、小夜子さんと最高に面白いアルバムを作れる自信があります。しかし、あの時はリラックスしていなかったのですから無理でした。知らず知らずの内に、はっきりとそれ、とは気付かず、また、それ、と意識出来ぬまま、初期衝動よりも現状維持に心が傾いていたのです。世の中から植え付けられたもの、そして、自分自身からの無意識の圧力にがんじがらめにされて、初心を失っていたのでした。でも、そのことで逆に、それ、と気付けない程、何かが自明なものになっている時、何かが当たり前の常態と化してしまっている時には、必ず大事なものを失っているということに、体感をも伴って気付くことが出来ました。そういう時にこそ、決まって、誠実さと勇気を失っているのでした。そこに陥らないようにするためには、常に、率直に自分の好きなものや好きなことに向かい、フレッシュでいなければなりません。そう、つまり、繰り返しになりますが、誠実さと勇気、または、初心。これをキープしていくことこそが、僕にとって最も大事なことなのだと気付くことが出来たのです。

 『DO MY BEST』に収録した「G&A.K.I.’05(’08 MIX)」は、以前、小夜子さんのサイト『蒙古斑革命』のために書かせていただいた文章をそのまんま使っていますが、あの文章は、モーニング娘。のガキさんこと、新垣里沙さんについて書いているようで、かなり自分へのエールだったのだなと今にして思ったりもします。
 ガキさんも先輩メンバーの卒業等を経て、より自分らしく、よりリラックスした感じになった気がします。やはり自転車の補助輪を外すような時期が誰にでもあるのでしょう。でも、そのキッカケが、僕の場合、「先輩の卒業」ではなく「死」だったのが悲しいです。
 とはいえ、結果として、自分の持っているものを全て手放してゼロから作る、という心境に至り、初心に返れたのは、僕にとって物凄く大きなことでした。
 また、この姿勢は、生前の小夜子さんから学んだことでもあります。小夜子さんは、僕から見ると、ご自分の築かれた地位等に対する執着心が全くなく、そんなことには無頓着なまま、常にフレッシュなものへと動いて行った人に視えたのです。いきなり僕のような、世間的には海の物とも山の物とも付かぬような人間と、ライヴCD-Rを1枚聴いただけで、一緒に組むことを決めてくださったことにもとても驚きましたし、しかも、僕とのライヴは、おそらく普段の小夜子さんの表現方法とは全く違ったものだったはずなのに、それをとても楽しんで表現されていたように視えました。僕がお貸しした、僕らのライヴでいつも使っていたカオスパッドのシンセの、小夜子さん流の音の鳴らし方を、ノートまでとって研究してこられる姿勢は、本当にカッコいいと思いました。小夜子さんは、いつも一生懸命でした。そういった姿勢が、小夜子さんを世界に知らしめたのだな、と今にして思います。

 でも、実は、僕の『DO MY BEST』には、小夜子さんにも参加していただいたような気がしています。
 『娘。物語』という、モーニング娘。のサクセス・ストーリーを漫画で描いた作品があるのですが、その中で、モーニング娘。が、「ふるさと」というシングル曲をリリースする時に、プロデューサーのつんくさんが、その曲を殆どソロ曲に近い感じで歌うことになったメンバー、なっちこと安倍なつみさんに、「ビートルズでは、「YESTERDAY」という曲をライヴで歌う時は、ポール・マッカートニー1人で演奏するのだけれども、それでも、舞台から捌けてステージの袖にいる他の3人のメンバーと一緒に音を出している気持ちで演奏しているから、1人で演奏しても、「YESTERDAY」はビートルズの曲なんだ。だから、そういう気持ちで歌って欲しい」といったようなことを説く場面がありました。正確な発言は忘れてしまいましたが、これは、とても重要なことだと思います。
 ちょっとそれとは時期がズレた話になりますが、僕は、ずっと前からモーニング娘。のことは何となく好きなグループ、芸能人ではありました。でも、ガキさん達、5期メンバーの4人が2001年に新たに加入した時、あまり曲の中で歌ってもいないその4人の新メンバーがその場に加わって後ろで踊っているだけで、何か違う印象のグループに視えたのです。その時から僕は、娘。がより好きになりました。完璧な芸能人の集団の中に、一生懸命で誠実な、初期衝動に溢れた、妙にソフィストケートされたところのない中学生、5期メンバーの4人が入ることで、何か違った空気感や、よりフレッシュな気持ち等が感じられたのです。
 ヤン富田さんは、レコーディングやライヴ等で、特に演奏をしてはいないけれども、その現場に一緒にいた人達のことを「Air Vibes」というクレジットで一緒に音を出した人として扱うことがあります。いや、正確な説明はお訊きしたことはないので、実際には違っているのかもしれません。でも、このことも、やはりつんくさんがなっちに説いた、ビートルズの話と同じ考えなのではないかと、僕には思えました。
 僕が、『DO MY BEST』に、「小夜子さんに捧げる」のクレジットを入れたのも、これらと同じような意味合いだったのだと今にして思います。実際、曲の中で、小夜子さんの好きなブルース・リーの、本のタイトルを読み上げていますし、そこで使ったカオシレーターは、小夜子さんの死が報じられた次の日にネットで知って「小夜子さんが使えばカッコいいのに!」と思った新しい楽器ですし、「KEYAKIZAKA SOUNDSCAPE’05 [shot edit]」は、小夜子さんとのライヴ用にフィールド・レコーディングした素材の一部を切り取ったものでした。そういった意味も含めて、やはり『DO MY BEST』は小夜子さんと一緒に音を出していた部分も確かにあったのだと思います。

 ブックレットを含む、『DO MY BEST』全体で、僕が讃えているのは、水のように表現する人達ばかりです。日々新しく、しかも本質は変わらない人達。FOREVER YOUNGな感じ。実際にお会いしたことのない方々も含めて、その出会いにとても感謝しております。

 小夜子さん、上手く伝わったでしょうか? でも、『DO MY BEST』という作品以上に、この気持ちを伝えるものは実は他にありません。それでも、やった後に気付いた、作った後に気付いた、実際に作品を世に出してみた後に気付いたこのことをどこかに記しておきたくて、誰に頼まれた訳でもなく、ただ単に書いてみました。

 まだまだ、頑張ります。
 持っている物を全て手放せば、またそれが出来ると思います。
 小夜子さん、見守っててくださいね! それでは、また!

2009年5月13日 モーニング娘。の新曲が出た日に。 A.K.I.より

【関連URL】
http://blog.livedoor.jp/a_k_i_productions/archives/51069782.html
http://loveshop-record.com/?p=730
http://tower.jp/item/2512964/DO-MY-BEST
http://www.jetsetrecords.net/jp/product/812003463922
http://www.jymandrecords.com//?pid=12135024
DO MY BESTDO MY BEST
アーティスト:A.K.I.PRODUCTIONS
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