2015年03月

2015年03月16日

山口小夜子さんと「交換様式D」/A.K.I.PRODUCTIONS

山口小夜子さんと「交換様式D」

 岡崎京子さんの「そういった意味で、私は世界が終わってしまうといった世紀末の終末感より、むしろ“世界が終わらないこと”の方が怖い。終わらない、この日常をジタバタ生きていくことのほうが恐ろしい」というご発言は、柄谷行人さんのおっしゃる「交換様式A、B、C」からの抜け道である「交換様式D」がなかなか見当たらない、ということだと思いました。
 「交換様式D」は、ヤン富田さんのおっしゃる「必然性のある偶然」、あるいは、小沢健二さんのおっしゃる「神様」、といったものであると思いますし、時に、それは「岡崎京子さんの作品そのもの」であったりもしました。

 あれは、「DUB」に関するドキュメンタリーのDVDを観ていた時だったでしょうか?
 正確なことは覚えていないのですが、とあるDUBSTEPのアーティストが、「DUBSTEPは、何をやってもいいんだ。但し、ドラムとベースさえあればね」と発言されていました。
 これは、(うっかりお名前を失念してしまいましたが)その発言をされた方の主観、あるいはある種の一般論として語られたのでしょうか。
 それが、「絶対的な決まり事」なのかどうかは、僕には分かりません。
 それが前提の上で、僕はこう思いました。
 そのルールが窮屈に感じない人にとっては、それは素晴らしいルールであり、素晴らしい環境でしょう、と。
 実際、僕自身、そうしたDUBSTEPの音楽は、聴いてみると、好きなものが多いです。
 しかし、その一方、「ラッパー」から音楽のキャリアを始めた僕自身としては、ビートに縛られていることにかなりの窮屈さを感じていました。
 1998年にリリースされた、ヤン富田さんの3枚のCDと1枚のCD-ROM、という4枚組の作品『MUSIC FOR LIVING SOUND』を体験してからというもの、それは、特に強まりました。

 小夜子さんとの出会いは、2004年のある日、僕がエキソニモのライヴを観に行っていた時のことでした。
 彼らがサンプラーから、AC/DCの「BACK IN BLACK」のブレイク・ビーツのループを鳴らし出し、急に、僕にマイクを渡して来たので、「飛び入り」の状態で、僕はそのトラックに合わせて、不意にモーニング娘。の「I WISH」という曲を歌ったのですが、小夜子さんは、それを観て笑いながら、その場にあった照明器具を使い、僕らのライヴを、即興でライトを当てて演出してくださったのが最初の出会いだったのでした。
 ライヴが終わった後、A.K.I.PRODUCTIONSが初めて「交換様式D」的なライヴが出来たと自負出来る、2003年の9月に「西麻布SUPER DELUXE」で行ったライヴを収めたCD-Rを小夜子さんに渡し、それがキッカケで2005年から2006年にかけて数回、2人でライヴを行うようになりました。
 そして、その小夜子さんとのライヴでは、その「2003年のSUPER DELUXE」でのライヴが「遠い過去」に思えるくらいに、さらに、ビートも使うけれどもビートに縛られない、しかし、ビートはなくてもグルーヴがある、といった感じのライヴをすることが出来ました。

 特にこれといったキャリアのない僕にとっては、小夜子さんのアイディアを受け入れ、共作、コラボレーションすることは、プラスこそあれ、マイナス要素は、一つもありませんでした。
 でも、小夜子さんにとってはどうだったのでしょう? 小夜子さんは、とっくに確固たるご自身の地位を築いてらっしゃっていましたし、敢えて「交換様式D」を目指さなくても、むしろ「いつも通りの山口小夜子」の反復をしていく方が、(失礼を承知ながら、極めて俗な言い方をすれば)遥かに「安全パイ」だったと思うのです。
 でも、しかし。小夜子さんは、単に「反復」する人ではなく、常に「創造的に(且つ、無意識に!)反復」していく方だったのです。
 僕は、小夜子さんとの出会いがなければ、もしかしたら、グレゴリー・ベイトソンも柄谷行人も最後までチンプンカンプンで、何を語っているのか解らなかった気がします。
 つまり、他者、突然変異に出会うことの大切さ、どんな難題が降り掛かって、自分のペースやバランスを崩されても、笑える抜け道を見付けて、ギリギリのバランスを持ち直す、というミスがミスにならない柔軟性、などなど。
 小夜子さんの姿勢から、いつの間にか刷り込まれていた大事なことの数々。
 いくら感謝してもしきれない程です。

 小夜子さんについては、いつかまたどこかで書くか、あるいはお話させていただくつもりです。

 不意に思い立ち書いてみました。

 小夜子さん、本当にありがとう!

2015年3月16日(月曜日) A.K.I. (A.K.I.PRODUCTIONS / 倫理B-BOY RECORDS / G&A.K.I.PRODUCTIONS)



【関連URL】
『山口小夜子  未来を着る人』での宇川直弘氏の映像作品で、30分ほどのA.K.I.PRODUCTIONSのDOMMUNEスタジオライヴが観れます。@MOT

 
東京都現代美術館『山口小夜子  未来を着る人』

http://blog.livedoor.jp/a_k_i_productions/archives/52400570.html
http://blog.livedoor.jp/a_k_i_productions/archives/51815928.html

世田谷文学館『岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ』



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