前回のその1では、花子くん、しくれみ、クズ悪役、でこぼこ魔女、MFゴースト、SHY、わたおし、とあるおっさん、せまつか、聖女の魔力2、Helck、イケナイ教、陰実2、アリル2、おじょばん、攻略うぉんてっど、ゴブスレ2、カノかの2、まついぬについて書きました。
今回のその2では、オトナプリ、パラディン2、パイファミ3、ド先輩、帰還者、ティアムーン、ポーション頼り、ミリオンライブ、100カノ、ダギャ、星テレ、ウマ娘3、16bit、Sランク娘、レヱル2、ひきこまり、ぼくあめ、豚レバーについて書きました。
全体でショートアニメ含み38本、30分アニメでは32本、24冬への継続は4本(シャンフロ、ゼーガ、クリプトニンジャ、フリーレン)+α(追いつけばアンデラとラグナ)となっています。
いつもの評価システムはこちら。
○作品名
公式サイトへのリンク
途中評価:4回に分けて(それぞれ放送開始前、10月末、11月末、最終話終了後)、4段階で(S:非常に面白い、A:面白い、B:普通、C:つまらない)、録画を溜めてしまっていた場合は「-」
続編:続編を期待するかどうか
シナリオ:/45 最終話:/15 キャラクター:/20 映像:/10 アニソン:/10 合計:/100
では早速書いていきましょう。
○キボウノチカラ~オトナプリキュア'23~
途中評価:B→C→C→C
続編:不要
シナリオ:10/45 最終話:5/15 キャラクター:8/20 映像:7/10 アニソン:6/10 合計:36/100
僕はどうやら通年でやっているタイプのアニメを視聴する筋肉を完全に失ってしまっており、かつてのようにアイカツを追っていたときとは筋肉の構成が変わってしまったんだなあと思わずにはいられません。少し逸れましたが、プリキュアは1作品も完走したことがないんですよねという話で、当然この作品の元作品も完走していません。というか多分1話も観ていない頃なのかな?
そんなわけでよくわからないまま視聴したのがいけなかった可能性もあるにはありますが、なんというか非常に凡庸な作品だったなと言わざるを得ないかなと思います。当然ながら「プリキュア自身が大人になること」というのをテーマにしているはずなのですが、結局のところ大人になってもプリキュアとして戦う気持ちがあれば戦うってだけだったように感じます。それぞれが前半でぶつかっていた仕事/生活の悩みってのもまあプリキュアになった大人の悩みというよりはただの大人の悩みで、それらもなんかプリキュアになって敵を吹き飛ばしているうちにメンタルが改善されてふわっと回り始めたようにしか受け取ることができませんでした。
多分、この企画で本当にやりたいという気持ちが制作側にあったのってのぞみさんとココナッツさんの恋愛だけなんですよね。1クールという制約もありながらそれをある程度しっかりやるために、本来物語の為に用意されているべき説得力が削られていった結果だったんじゃないかと思います。異種族間の遠距離恋愛をゴールまで描く、そこだけは真実の力がそそがれていたように感じます。
○最果てのパラディン 鉄錆の山の王
途中評価:A→S→S→S
続編:あれば観たいですが、あの引きだと難しそうかも。
シナリオ:40/45 最終話:15/15 キャラクター:19/20 映像:8/10 アニソン:8/10 合計:90/100
第1期は結構地味な作品だった印象の本作ですが、その空気感は継続しつつも、確実に力を増していったなという印象の第2期でした。第1期の頃に感じられたエピソードごとの面白さのムラみたいなものがなくなっており、一本筋の通った面白さがありました。
この作品において、とにもかくにも一番強いものはいつだって「言葉」です。戦時に状況を変えていく魔法の詠唱も、平時にひ人の心を動かす会話も、本質的に口から発せられて世界に作用するものとしての言葉を最大の武器として描くことが第1期から一貫していて、このルールを理解できているだけでかなりすっと頭に入ってくる作品ではないでしょうか。
今回の第2期は全編を使って副題にもなっている鉄錆の山の話をしていました。かつてそこにあったドワーフの王国の再興という意味での「王」と、現在の山の支配者としての「王」が当然ながら二重にかかっているわけですが、どちらの話も面白く、そしてがっしりと組み合っていました。
ウィル、メネル、レイストフという第1期からのメンバーに加え、ドワーフの一族を代表して今回のメンバー入りをしたルゥとゲルレイズの二人がまたすごく良かったと思います。この5人パーティー、男しかいなくてメネル君がお嫁さんフェイス係を担っているくらいなのに、本当に居心地がいいんですよね……。でも、鉄錆の山の件が片付けばドワーフたちはきっとウィルの街を去っていくわけで、時限のパーティーだからこその儚さもありました。
それから欠かせないのが敵である邪龍ヴァラキアカ、そして不死神スタグネイトでしょう。強大な敵として登場する彼らもまた、ウィル君たちと同様に言葉を最大の武器としつつ、もちろん言葉以外の武力においても圧倒的な存在です。そして、何よりも格が高い。ここ数年、キャラクターの格みたいなものを意識してしまうようになったのですが、彼らは本当に格が高いと言わざるを得ません。やっぱり神話の世界の住人には、敵であってもこう気高くというか誇り高く一貫性を持っていてほしいんですよね。そこら辺の盗賊とはわけが違うんですから。そこを間違えないのが本作の良いところだと思います。
最終話、これまでのすべてが結実する大満足の戦闘が終了したあと、街に戻って来たウィル君に真っ先にビィさんが抱き着くのがこんなに嬉しいとは正直思わなかったんですよね。なんか普通にメインヒロインの格が出てきつつあるんじゃないか……? そして、特殊EDとしてビィさんが一晩で作り上げた竜殺しの英雄の歌が流れるのもまさにこの作品らしかったなと思います。先ほどから繰り返しているようにこの作品において一番強いのは言葉なので、彼らの偉業を称える英雄譚はまさしく作品の〆にふさわしいんですよ。
アニソンについて、OPは第1期から継続してやなぎなぎさん。命火、いい曲だなあ……。EDはKOTOKOさん。いやKOTOKO?! となりますが、こういうしっとりKOTOKOさんとは存外相性がいいんだなということがわかりましたね。どちらかというと力強かったり元気な曲の印象の方でしたが。
○SPY×FAMILY Season2
途中評価:A→A→B→B
続編:正直ぼちぼちもういいんじゃないかの気持ちも芽生えつつありますが……。
シナリオ:30/45 最終話:11/15 キャラクター:14/20 映像:7/10 アニソン:7/10 合計:69/100
なんかあんまりよくわかっていないけれども気付けば世間的娯楽大作ですよみたいな顔付きになりはじめた本作も、第2期(累積3クール目)ということらしいです。相変わらず1話に複数エピソード入っているときはテンポよく気持ちいいアニメが出てくる可能性が高いのですが、反面長編エピソードは首をかしげざるを得ないような話だったというのも継続した傾向でしょうか。
エンターテインメントに振るにしては、ちょっとヨルさん周りが黒すぎるんですよね。もうちょっと最初から完全なるギャグに流すとかした方がいいと思います。だって今回豪華客船から大量に死体投棄された何十人もの殺し屋たちにだって家族がいるかもってことを完全に無視しているわけですから。
良かったエピソードとしては、2話目のダミアン君のエピソードでしょう。賢くも愚かにも誇張されていない小学1年生の知性と、それに向き合う教師たちの在り方が示されるいい話だったと思います。
映像について、相変わらず潤沢な予算を感じる画面ですが、そこは動かす意味があった?みたいな不要なリッチさを感じる瞬間もありましたかね。まあ天邪鬼の僻みの範疇ですが。
アニソンについて、OPの曲は微妙でしたが、映像の狂い具合はなかなかでした。湯浅監督ですからねぇ。ティーカップと紅茶というツールを使いながら派手な動きを強調していく技巧が素晴らしかったと思います。EDは、とりあえずこの作品ならこういう雰囲気を出しておけば間違いないよなというのがそのまま出るような映像でした。こういうところは潤沢な予算の使いどころだと思いますし、実際上手く使うことができていたように感じます。
○新しい上司はど天然
途中評価:B→C→C→C
続編:不要
シナリオ:17/45 最終話:9/15 キャラクター:8/20 映像:6/10 アニソン:6/10 合計:46/100
ド先輩。いや本当にひどい略称だということは理解しているのですが色々と不幸な事故が重なってしまったことと、この作品にそういったひどい略称をはねのけるだけの輝きがなかったこととにより、残念ながら僕の中で定着してしまいました。
オフィスBLラブコメとしてはまあまあ仕事に向き合っていた方だと思いますし、そこは評価しています。ですが、それ以上に問題のある味付けが多すぎたんですよね……。白桃はしゃべらない方がいいし、いつまでもライン越えの元パワハラ上司のパワーで回さない方がいいし、課長は控えめに言ってもいい上司ではないし、同棲は普通しないし、同棲からご近所付き合いに発展的解消もしないので。
映像的な話としては、全体的にパワハラの話をしているせいで結構重くなる場面が多いところを、色使いをわざとらしいくらいパステル調にして相殺しているのが隠れ技巧派だったかなという気がしています。気のせいかも。
アニソンについて、OPはフジファブリックさん。フジファブリックさん、本当にこの作品を背負って全国ツアーをしてくれたのが信じられないところはありますが……。EDは許せませんね。名作の映画を全て観尽くせるわけがないし最近のものはすべてつまらないわけがないから。
○帰還者の魔法は特別です
途中評価:A→B→B→B
続編:やるならそう遠くないうちにやってほしいものですが、いつなんでしょうね。
シナリオ:14/45 最終話:7/15 キャラクター:7/20 映像:6/10 アニソン:8/10 合計:42/100
韓国ウェブトゥーン産アニメ……なんでしたっけ。ウェブ小説だったかな。放送開始前はMr.マリックとのコラボで謎の存在感を出そうとしていたりしましたが、まあそういう飛び道具がないととてもじゃないが話題にはならない作品だったなというのがちょっと辛辣ですが総評になります。
一度世界の滅亡を経験した主人公がなぜか時を遡ったためにやり直しを図るという基本構造があり、ドヨルにやり直しアニメが3本あるというアバレだったわけですが、やり直しをしている理由が世界滅亡という絶望的なもので、自分自身もそれを止められなかった無力な側であるはずなのに、デジールという主人公が完全に天空目線でその他の同級生たちを俺が育ててやるぞ~~という顔をしているのがずっと気に入らなかったんですよね。お前がまずは強くなる努力を欠かさないべきだろと思ってしまって。当然、訓練はしていたのだと思いますが、その描写がないとね……。しかも中盤からかなりの時間をかけて学園内での身分差別と戦うみたいな話をしていましたけれども、そんなん世界の危機に比べればどうでも良くないですかってのもずっと気になっていました。アゼストさんを仲間に入れるためにするべき努力って、ランキング戦で勝つことじゃなくても良かったと思うんですよね。決闘とかで普通に良さそう。
そうやってちんたら尺を消化した結果として、終盤で2話ほど謎のエピソードをやったかと思えば重要そうなところをダイジェストにしたりみたいなちぐはぐさが生じてしまっていたのもいかんともしがたいなと思います。聞いたところによると最終話で戦っていた岩おじさんって原作だと瞬殺される敵らしいですよ。格がなさすぎるのも頷けるというものですが……。
アニソンについて、EDの「6を撫でる」が一体なんなのかは最後まで掴めないままでしたが、かなりいい曲なのは間違いなかったですね。「君しかいないと思ってたよ君しかいないと思ってたよそんなわけないのにね」が好きです。
○ティアムーン帝国物語~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~
途中評価:A→S→S→S
続編:なくても満足ではありますが、やってくれると嬉しいですね。
シナリオ:42/45 最終話:15/15 キャラクター:19/20 映像:9/10 アニソン:10/10 合計:95/100
ドヨルやり直しアニメその2。そうそう、このくらいの切実さがあるよね……自分が死んでのやり直しってさ、という顔をついしてしまいますがそれはさておき、非常に楽しませてもらったと思います。
本作の面白さを支えているのは間違いなくバランス感覚で、未来の知識を持って無双するミーア姫と、前回から何ら変わらないおばかさで突撃していくミーア姫の出力の仕方が本当に丁度いいんだと思います。それが、物語的に言えば「ご都合主義」らしさを消してコメディチックながらも気持ちのいい展開速度を生み、キャラクター的に言えば憎めない愛らしさを持つミーア姫像を確固たるものにしていると言えるでしょう。単にミーア姫の発言を周囲の立派な人物たちが勝手に解釈していってくれるというだけではなく、実際におばかなりに理解しているミーア姫のひと噛みがあるからこそだと思いますし、一方で周りが有能であればあとはどうとでもなるところにそうは言ってもまだ政治に首を突っ込むことも難しい少女としての彼女の限界も描かれているなと思いました。
最終話前に円盤購入を決定するくらいには面白かったですし、そうやって予約した円盤を最終話後もキャンセルしなかったくらいには良かったですが、それでもやはり第1エピソードである第8話まで(ミーア姫の断頭台が回避?されて日記帳が消えるまで)と第2エピソードでは第1エピソードの方が数段面白かったなとは思います。新キャラクターが出てきてはいい塩梅に転がっていく気持ち良さの原動力って、やっぱりミーア姫の切実な「自分の死を回避したい」という気持ちなんでしょうね。そうやって築いた第1エピソードでの人間関係があって、第2エピソードではそれを守るために行動し始めるという点で新たな原動力を得ているわけではありますが、第2エピソードのミーア姫は完全にただの恋する乙女なので、十分面白いとしてもやはり周りの人にその深遠な意図を誤解させるだけの力はなく、そんなにゴロゴロしていかないんですよ。しょうがないんですけど。その時にも革命された国の王族の末路がどのようなものかを一番理解しているのは間違いなくミーア姫で、それを理解しているがゆえの切実さはあるのですが……。だからこそ、ぽやぽや状態で流されていたミーア姫が見た目が怖いアベル王子の部下ににらまれて急に第1エピソードの時のような動きをし始めた途端にゴロゴロ誤解が転がり始めるのが気持ち良かったのも事実ではあります。そういう意味で、第2エピソードも最終話まで観てから振り返る分には非常に満足殿高いものになりました。
映像について、これでもかというくらいにぷについているミーア姫が可愛くて可愛くて、そう思わせるようにできているとはいえ、見事だったなと思います。あとはやっぱりコメディタッチなところで入る断頭台君の動きとか、意識してこの動きはコメディの動きですよ~~ってアピールしている動かし方が出来ていたように思いますね。それから、ミーア姫に救われる側のビジョンとしてミーア姫を描く時には気持ち輪郭線をしゅっとさせていたように思います。そういうのが、アニメーションなんだよな~。
アニソンについて、問答無用で爆上がりできるOPが最高でした。上坂さんとの折り合いは正直あんまりよくなかったのですが、本作はかなりハマっていたように思いますし、作品にもマッチしたいい曲でした。断頭台の下にどや顔で腰かけているところのミーア姫が一番好きです。EDはカノエラナさん。ED映像でも明らかなように、20歳のミーア姫目線で描かれた歌詞がいいですね。この作品の肝となっているのが、ダメダメな姫であったミーア姫が唯一最後まで持つことを許され、そして起きたことを記してきた日記なので、そこに着目できるのは流石だなと思います。「祈りをささげるよりも自分の足でもう一度だけ」のところでだんだん歌い方にも力が入っていくのが特に好きです。
○ポーション頼みで生き延びます
途中評価:A→C→C→C
続編:絶対にやらないでほしい
シナリオ:0/45 最終話:0/15 キャラクター:0/20 映像:6/10 アニソン:6/10 合計:12/100
僕はこの感想記事を書くにあたって、視聴した日の感想文を読み直してから書くようにしているのですが……毎週短文でキレているだけだったので全然参考になりませんでした。
このアニメ相手に言葉を選ぶ必要はないと思うのではっきり言いますが、面白い/面白くないの軸ではなくて、許せる/許せないの軸で視聴してしまうのは相当ですよ。当然許せたためしがありませんが……。
まず本当に原作に人気があるんですか? これ。原作者であるFUNA氏の作品はこれでアニメが3作品目ですが、時代的には一番古い作品らしく、言われて納得の隠し切れないえぐみと匂いが異常で、とてもじゃないですが可食部はないと思います。
ポーションとその容器を自由自在に生成できるって能力の話は正直どうでも良くって、カオルという主人公がフォローの余地が1ミリも入らないほどにカスなのが諸悪の根源でしょう。ミツハ殿は本当に可愛げがあったなあと思わずにはいられませんでした。
アニソンについて、EDを歌っているharmoeさんたちを呪いから解放してくださいという気持ちでいっぱいです。カオル殿の一体どこにLoveがあるんだよ。
○アイドルマスターミリオンライブ!
途中評価:S→-→-→S
続編:また観たいですね
シナリオ:39/45 最終話:14/15 キャラクター:18/20 映像:8/10 アニソン:8/10 合計:87/100
ここ数年で僕とかかわりができた方は知らない人もいるかもしれませんが、アイドルマスターミリオンライブは、僕にとって割と長い期間ホームグラウンドだったコンテンツになります。大体4年半くらいでしょうか。周年ライブで言うと2nd~4thあたりは現場にも行っていました。
僕の記憶が間違っていなければ、確かアニメ化決定の報は4th武道館だったような気がします。そこから……何年だ? なんかすごい間を置いて、なんなら他界して(これは僕がスマホのリズムゲーに適応できなかったことによるものですが)からさらに数年経過して、まさか今になって再開するとは思ってもいませんでした。
そんな「お久しぶりです」のアニメだったわけですが、なつかしさ補正を抜きにしても、多分当時コンテンツの中にいた僕が期待していたとおりのアニメだったように思います。50人(+2人)は流石に1クールアニメには多い人数だよな~やっぱり信号機の3人に絞るのかな~~でもこのワチャワチャごった返しているのがミリオンなんだよな~~と思っていたことは間違いなくて、そして、まさにワチャワチャごった返しの「ミリオン」がそのままアニメになっていたと言えるでしょう。
もちろん、ASの13人はレジェンド枠出演でしたし、ある程度目線は信号機+追加戦士2人のユニットに絞られてはいました。でも、全員にスポットライトをそれなりに当てながらやっていこうという気概は間違いなくあったと思います。そのせいで一見さんはかなりお断り感が出ていたんじゃないかなという気もしますが……こればっかりは僕がメインターゲット層に含まれていて良かったな~としか言いようがありません。
アイドルモノとしてはかなりオールドスタイルというか、良くも悪くもコテコテで、一発芸みたいに尖ったアイドル(もちろん色々知って行けばそれだけではないのですが)とそうはならんやろみたいなトラブル、それらをつなぎ合わせるトンチンカンな解決方法って感じの懐かしい構成だったのではないでしょうか。今では割と廃れてしまって、どちらかというとアイドルモノにおいてはキャラクターの心理やあるいは展開のリアルさ(芸能界の闇!)が好まれるようになってきている気はしますが、こういうちょっとオイオイとなるような回もあるくらいのノリでやっているアニメの懐かしさを味わったともいえるかもしれません。
結局全部が「愛おしさ」に収束するんですよね。こういうコンテンツだったな~こういうアニメもあったな~この曲懐かしいな~このキャラクター好きだったなあ、そんな感情との再会を抱きしめるようなアニメ体験でした。結構同じ体験をした人は多いみたいなので、狙った形の体験をさせてもらったんだろうなと思っています。まあだからといってリズムゲーはやらないけど……。
キャラクターについて、僕はかつて、いわゆる「担当」としては馬場このみさん担当だったわけですが、しっかりと美味しい使い方をしてもらえていて、あまつさえ1話分の主役までもらっていて、信号機+2人以外のメンバーとしてはかなり好待遇な方で大満足でした。桃子パイセンとの組み合わせ、いいよね。
映像について、3Dモデルの出来がどんなもんかいなとPV時点では結構疑っていましたが、動かしても全然気にならないし、かなりよくできていたんじゃないでしょうか。というか今この項目を書こうとして、僕って3Dモデルを使ったアニメの撮影とか構図とか全然わかってないなと気付きましたね。
アニソンについて。OPはオーディションの歌であり始まりの歌でした。言わずもがなのTh@nk Youから始まるコンテンツが、今こうして「夢の扉を叩く」というところまで戻ってきたのはかなり感慨深いものがあります。EDはアイドルマスター系統のアニメ恒例の当番制なので特定の1曲というものはなし。これはまあしょうがないですね。
○君のことが大大大大大好きな100人の彼女
途中評価:S→S→S→S
続編:第2期決まっているの、素直に嬉しい……。
シナリオ40/45 最終話:14/15 キャラクター:18/20 映像:9/10 アニソン:9/10 合計:90/100
まあなんというか、23秋で一番狂っていたアニメは何ですかと聞かれたら僕は「100カノだよ」と答えるだろうな~というアニメでした。頭がおかしい。
タイトルのとおり、作品の大前提としてあるのが主人公の恋太郎君が100人の彼女を作るという設定で、もちろんこれは友達100人できるかなに着想を得ていることはわかるんですが、だからって普通は押し通さない類の前提だと思います。それを大真面目に「運命の人が100人いる。運命の人と結ばれなかった人は死んでしまう。」という設定に変換して、そして15年間で100回告白するくらい惚れっぽい恋太郎君という設定もあって……常識的に考えれば当然100人の彼女を作る話なんて成立しないだろうと思うので、タイトルではこう打ち上げていても100を小さくしていく方向に前提条件が変換されていくのだと思うのですが、このアニメのすごいところはずっとイコールの変換を続けることだと思います。
3人目の彼女を作るところでもう、早くも「運命の人と結ばれなかった人は死んでしまう、だから恋人になる」などという不義理を恋太郎君は否定します。全員平等に大好きなんだ……すごすぎます。本当にすごすぎる。その言葉に、ヒロインはもちろん、僕ら視聴者も疑いを抱かないようになっているのがまたすごい。
今この文章を書いていて気付いたのですが、12年間で100回告白した(=100回本気で誰かを好きになった)恋太郎君なので、同じペースで好きになって行けば普通に社会人になるかならないかくらいで100人の彼女ができてしまうんですよね。えっ……全然現実味があるな……。現実味、あるか?
実は原作を第1巻だけ読んだことがありまして、その時はあんまりハマらなかったのですが、それは多分原作からしてかなり過剰演出気味で、なおかつメタな発言もモリモリだったからだと思います。それがアニメになるにあたって、あんまり気にならなくなっていました。これはアニメナイズされた部分があるというのも否定はしませんが、多分それ以上にアニメに向いているノリだったんだろうなと思います。
話をアニメに戻すと、4人目の彼女ができた後の第6話で「みんな大好き水着回」というサブタイトルがあったのですが、これがかなり技ありで好きでした。先述のとおり本作で多用されるメタネタでもありつつ、恋太郎君が全彼女を平等にとてつもなく愛しているという本作の根幹も示していて、すばらしいサブタイトルだと思います。
そこから展開としては5人目の彼女とキスゾンビをやって(キスゾンビってなんだよ)、6人目の彼女と親子丼をやって(親子丼は……わかるな)、第1期は終わりとなりました。ぶっちゃけもう無敵なんですよね。楠莉先輩の薬品と羽々里さんの財力があれば、もう全部の展開が可能になっていると言っても過言ではありません。本当に全然過言じゃないんだよな……。このぶっ壊れた作品においてリアリティラインをぶっ壊す存在がかなり初期で揃ってしまったら、何も恐れるものはないですからね。
そんな状態だからこそ、最終話でいつもどおりのバカ騒ぎをやりきって、そしてEDとしてOPを流しながらまだ見ぬ彼女たちがちょっとずつ映っていくのが、もう完全に想像していたとおりの最高の最終話だったと言えるでしょう。
キャラクターについて。お前は100カノで誰が一番好きなんだよ。僕は……院田唐音さん! 恋太郎君は? 全員? 了解! はい解散。
画面について。バイブリーという制作会社について正直良い印象は全くと言っていいほどないのですが、先述のとおりかなりアニメ向きの設定とスタイルを原作からして持っている本作とは、会社の強みであるうざったいくらいのノリが噛み合っていたように思います。運命の作品に、出会っちゃったかもね……。輪郭線やわからめ、キャラクター濃いめ、萌え多めのバランスがグッドでした。
アニソンについて。まあまずはOPですよね。馬鹿すぎるだろお前と言いたくなるような曲と映像でしたが、このアニメを表現するにはこれほど適切な曲もないだろうなという感じでした。恋太郎君が凄い勢いで餌付けされて、缶のお茶を缶ごとのみ込むところが好きです。狂っていて。EDは一転してかわいらしい映像と曲調でいいね~と思っていましたが、これって羽香里さんの家だったんですね。第11話特殊EDは……アバレすぎ。作中のキャラクターがお金の力でEDを特殊にするアニメと言えば、帰宅部活動記録ですよね?
○ダークギャザリング
途中評価:A→S→S→S→S→S→S
続編:かなり俺たたエンドだったので、そのうちやってほしいところですが……。
シナリオ:41/45 最終話:12/15 キャラクター:17/20 映像:9/10 アニソン:8/10 合計:87/100
夏クールから2クールかけて、じっくりと王道のホラーアニメをやってくれた作品でした。この作品を観たことで、僕のホラーアニメ観が結構形になってきたように思います。そういう意味でも有意義な視聴でしたね。夏クールにかけたアニメコインも、たんまり帰って来たぜ!
今回一つはっきりしたこととして、ホラーアニメってちょうどいいなということです。ここで重要なのは「ホラー」ではなくて「ホラーアニメ」というところ。それは単なるリアル人間に興味がないみたいな話ではなく、多分心理的に丁度いい距離感を味わうことができるからなんだと思います。僕って実際かなり小心者で、怖い話はそんなに得意じゃないと思ってきたんですが、ホラーアニメだと次元の壁があって、明確にこちら側とは違うあちら側で怖い話が展開するため、心理的安全性を保ったまま恐怖を味わうことができるのかな~と。実写ホラーだと、どうしても自分との連続性を感じてしまって恐怖が娯楽のレベルを超えてしまう気がします。
もう一つ理解できたこととして、ホラーアニメ(これは多分実写ホラーも共通する部分はあるのでしょうが)において重要なのは理不尽さで、理不尽であればあるほど怖くて良いということです。恐怖体験に巻き込まれた人間は、その通常の善悪には一切関係なく、ホラー存在に蹂躙されるべきなのです。勧善懲悪、信賞必罰というのは思いのほか人間に根強くこびりついている発想で、ひとつ意識のレベルをあげないと「まあこいつはいい奴だし死なないだろう」みたいに考えてしまいがちなんですよね。ところがホラー存在というのはそういった人間の理を外れた場所にあるので、もう全然関係なく食える奴から食うみたいなノリでこっちにやってきます。そうやって、無意識の線引きみたいなものを無視される理不尽さこそが気持ちがいいのではないでしょうか。
さて、ホラーアニメ論もほどほどに、そろそろ本作の話に入っていきましょう。先述のとおりホラーアニメにおいて生き残っていくために必要なのは常日頃から善良であることではなく、ホラー存在と対峙した時に的確な行動をとることができるかどうかの一点です。その点で言えば、パーティーメンバーである夜宵さん、螢多朗君、詠子さんという3人はいずれもどこかしら常識のネジが外れていて、その部分のおかげで緊急時にも行動できるキャラクター造形になっていました。芯のあるキャラクターが強いというか、行動にブレがないキャラクターが生き残ると言えるのかもしれません。
第1クールは、「悪霊ポケモンバトル」という原作勢の言葉をどういうことなんだろうと思いながらスタートしたわけですが、なるほどこういうことかと理解していくまでの3か月だったような気がします。第2クールまで視聴し終えてから振り返ると、最初の頃の蟲毒要素って思いのほかあっさりと終わったな~となります。言ってしまえば、卒業生以上の存在になる可能性を秘めたグレイ人形の霊を選抜するためのシステムでしかなかったわけですから。第1クールで収集していた悪霊たちはぶっちゃけ第2クール以降のステージで役に立つレベルではないわけですが、螢多朗君をホラー出来事に慣れさせる役割、グレイ人形を見出す役割、視聴者にこの作品がやろうとしていることを理解させる役割みたいな様々な役割を担っていたのでしょう。
「卒業生」「危険度」「成り代わり」といった本作の独自かつ根幹をなすシステムがありますが、これらを完全に所与のものとして押し付けてくるのも正しかったなと思います。大体がホラーという非常に理解不能でふわふわした存在を取り扱っているのですから、こちら側から提示する概念だってふわふわしていて問題ないというか、「そういうものだよ」という押し付け合いをするくらいで丁度良いのでしょう。
第2クールに入ってからは、そろそろ視聴者も選抜されたよね?と言わんばかりにホラー要素がマシマシになって言った気がします。卒業生クラスになるためにはやはり強いフラストレーションが悪霊になる存在にとっても必要で、そうすると当然胸糞悪い回想を入れざるを得なくなってくるわけですが、そういう人間社会内での理不尽さを受けた者がホラー存在になって人間の範疇を超えた理不尽を振りまくという構図が見事に一貫していました。成り代わり陣営の方がどういうバックボーンを持っているのかはよくわからない状態で終わってしまいましたが、ここから先にそういう話もあるのでしょうね。
第2クール中盤であった卒業生ハウスの話で、かなり悪趣味なエロをやっていて、僕はやってんね~~と結構ニコニコだったのですが、TLを観ていると直球の嫌悪感を表明しているオタクさんもいたりして、多分あの人の反応が真っ当な人間なのだろうなあとしみじみしてしまったのもいい思い出です。エロとグロが隣接した概念なのって、確かによく考えるとまあまあ人間の不思議なところなのかもしれません。でも、そういう悪趣味なエロをやった直後の話で、ラブホテルを前にして螢多朗君と詠子さんが「いつかは自分たちもこういうところに……」みたいな想像とやり取りをしているのはマジで滅茶苦茶健全なエロで飛び跳ねました。このための布石だったと言っても過言ではないくらいでしょう。
最終話が全然話的には終わっていないのは流石に擁護できかねる減点ポイントではありましたが、察するにギリギリ最終話にできるのがここしかなかったんだろうな~とも思います。なので理解はできるんですよね。それに、今までずっと夜宵さんと詠子さんが言っていた「れっつごー! すとー!」を螢多朗君も一緒に言って〆ってのは、悪くない着地点でした。2クールかけて、彼が踏み込む話だったのかもしれません。
映像について、悪霊ポケモンバトルとガチホラーをどっちもやろうとするために必要なのは、かなり緻密なキャラクター(特に悪霊側の)デザインと画面上での描き方なのは間違いなく、あえて怖さだけじゃなくて気持ち悪さと一握りの愛嬌を入れるみたいなことをやり続けなければいけないのが大変そうでした。夜宵さんをはじめ、人間側が終始ぷについた輪郭で描かれていたのもそういうバランスコントロールだったのかなと思います。第2クールになってホラー色が強まってくると、徐々に画面の柔らかさも消されていったような印象がありますね。
アニソンについて。OPは2クール共通でしたが、確かにこの曲があったら2クール戦いたくなるよなというくらい作品にフィットしていたと思います。醸している常ならざる感じとヒロイックさのバランスなんでしょうか。EDはしっとりソングを2曲。こちらはヒロインにスポットライトを当てることが多く、本編がどうしても怖くなりがちなところいい清涼剤になってくれました。第2クールEDの映像はかなり意味深っぽくてドキドキしますが。
○星屑テレパス
途中評価:S→-→-→S
続編:是非ともやってほしいですねえ。
シナリオ:42/45 最終話:14/15 キャラクター:20/20 映像:9/10 アニソン:8/10 合計:93/100
とてつもなく緊張しながら視聴し続けたアニメでした。やっぱり原作に思い入れが滅茶苦茶ある作品のアニメは緊張しますよ。それが連載開始(もっと言えば作者の前作)から応援しているような作品ならなおさらというものです。
そんな本作ですが、僕はまあご存じのとおり雷門瞬さんのことが大好きで(オタクは全員そう)、だからこそ序盤の雷門さんが登場したあたりで一瞬、ちょっとこのまま進んでいって原作の好きなところを観るのが怖いな~~と思ってしまったのは事実です。そのため、1カ月半くらい再生の手が止まってしまいました。しかし当然いつまでもそうやっているわけにもいかないので、12月に入ってから視聴を再開させたわけです。結果的に、アニメナイズされて少し不満もあったところが(慣れのおかげもあるかもですが)後半には払拭され、思い描いていた理想にかなり近い形でのアニメになったなと思います。
今更シナリオを解釈してどうこうという段に僕の中ではないのでアニメとしての話をしますが、やはり漫画と違うのは音声情報です。もちろん静止画と動画という違いもあるのですが、視覚情報という点ではある程度の連続性があり、基本的には静止画で表現されていたものを動画にどう変換するかという話になる一方、聴覚情報はゼロから付け足されるので。僕は漫画を読むときにいわゆる「脳内CV」みたいなのをそんなに置くタイプではなく、セリフの文字を読み上げるとすればそれは自分の声で読みあげているタイプです。なので、初めてアニメ雷門瞬さんの声を聞いた時に「思ったよりも高いな」と感じた自分にまず滅茶苦茶驚きました。そんなふうに考えていたんだって。もちろん具体的なイメージがあったわけではないのですが、彼女のセリフが纏う空気感というか、とげとげしさ、空々しさ、脆さみたいなものからぼんやりとかなり低い音のイメージがあったようなのです。確かにアニメ雷門瞬さんの声も女性としては決して高い方ではないと思うのですが、それでもイメージよりは高かったみたいです。というよりも、結構柔らかくなった印象を受けたんですよね。
よく考えてみるとこれは別に声の高さに限ったことではなく、音声が付くだけで大なり小なり生じる効果ではあるように思います。同じ文面でも、メールよりも電話をした方がなんとなく棘がないように感じる……というのは労働の場でもたまに経験しますし。いかん労働の話をしてしまった。
そんなわけで、最初は結構僕が好きな原作雷門瞬さんの尖りが丸められてしまうような気がして怖かったのですが、中盤以降の一番大事なところでは、僕の心配は完全に杞憂に終わりました。声優さんって、すげーや。
ずっと雷門瞬さんの話ばかりしていてもアレなので他のキャラクターの話もしますが、小ノ星海果さんの脳内での流暢なしゃべりと実際に発音している時のどもり方も含めたしゃべりとの演じ分けはかなり良かったですね。彼女の言葉が詰まるたびに、僕も彼女ほどではないにせよ言葉をよく詰まらせるので、胸に痛みが走ります。明内ユウさんと宝木遥乃さんの話は正直ここからが本番で、彼女たちはまだ最初の一面が描かれたにすぎません。なのであんまり話をしてもしょうがないかなと思います。
中盤くらいまでは結構、かなり萌えに寄せたアニメになっているという印象だったのですが、第8話くらいからは一気に僕の知っている星テレそのものの空気になり、常に胸の痛みを抱えながら視聴していました。この痛みと向き合う感覚が、一番星テレっぽいと僕は思います。
だからこそ、最終話で完全に「え? おでこパシーは当然性行為だけど……」みたいなノリ前回の映像を叩きつけられると気絶してしまうんですよね。僕は前回まで確かに胸を刺すような痛みと共に儚くも美しい少女たちの青春を垣間見ていたはずなのに……。とはいいつつ、非常に大事な話を最終話でもしているわけですが。今後に繋がる大事な話を。是非ともそこもアニメをやってほしいなあと思います。
アニソンについて。OPは伊藤美来さん。このアニメのOPが伊藤美来さんであることは結構違和感がありましたが、いい曲だったので良しとしましょう。EDはサンドリオンさん。映像がめっちゃ良かった……。ラストの小ノ星海果さん、観ました? ヤバだね。
○ウマ娘プリティーダービー Season3
続編:ぶっちゃけ無限にできますが、うーん
シナリオ:24/45 最終話:10/15 キャラクター:14/20 映像:7/10 アニソン:6/10 合計:61/100
流石に第3期ともなると求められるレベルも高くなるしちょっとな~という点も目立ってくるというのが正直なところだったでしょうか。
競馬という大きなコンテンツ自体が多分かなり史実を重視しているコンテンツ(競馬を予想するときに言われる「データ」って、史実の積み重ねのことですよね。それって本当にそれデータなん?って僕は結構思ってしまうのですが……。)で、ファンも自然とそういう目線が強くなっているのかもしれないなとは思うのですが、にしたってちょっとやりようとか物語の作り方ってもんはあるんじゃないのというのが正直なところです。現状完全に史実が物語を狭める枠にしかなっていないと感じます。
第1期では史実だとレース後に死んでしまったサイレンススズカさんが復活するところが一番の山場になっていて、そこでの解説の言葉に思わず涙してしまったりもしたわけですよ。あの時には史実を超えて物語が展開できたわけじゃないですか。最終話ではお祭り騒ぎ的にドリームレースだってやったわけです。それが第2期になると一気に史実準拠の物語に変わって、とはいってもまだトウカイテイオーさんとメジロマックイーンさんの二人の物語として目線を絞ったからこそ、ライスシャワーさんとかツインターボさんとかの(物語的にはあくまでも)サブキャラも活きていたと思います。直近で非常に出来が良かったRTTTはひと世代の三冠レースを描いたわけですが、3人の世代を代表するウマ娘さんたちをうまくひとまとまりにして描くことができていました。
今回の第3期の割と大きな難しさというのは、そもそも2世代に渡る登場ウマ娘がいて、さらにそれぞれの出場・活躍したレースが必ずしも一致しない中で、2年間というそこそこ長い期間をギュっと絞って1クールのアニメにしているという点です。
僕はリアル競馬にはそんなに詳しくないですが、それでもキタサンブラックさんのGⅠ7勝という記録がすごいことはわかります。ウマ娘化している名馬と呼ばれる競走馬ですらGⅠで複数勝利している馬ばかりってわけではないんだろうなと思います。だからこそ、最終的な着地点がそのGⅠ7勝になるというのならば、もっとそっちにフォーカスした物語にしたって良かったんじゃないかなと思うわけです。
全体的に、キタサンブラックさんが勝利するレースと敗北するレースが史実で決まってしまっているからこそ、そこに盛り上がりを置ききることができず、レースまでの過程に描写の中心が置かれ、結果としてなんか本来は偉大なはずのGⅠ7勝という記録の重みが感じられないんですよね。だって7勝のうち3勝か4勝分はダイジェスト勝利とかサイレント勝利とかだったし……。積み重ねは、当たり前ですけれども積み重ねないと味が出ないんですよ。
歴史に物語を見出すことは悪いことではないですし、結果的に歴史のとおりになることはあったとしても、物語にする以上は結論に対して明確な姿勢で描写をしていくべきなんですよね。そういう点で素晴らしかったアニメとしては例えば一昨年の『平家物語』なんかがあると思います。
良くなかった話ばっかりしてもアレなので良かったエピソードの話もしておきますか。第9話はこの第3期の中でも一番良かったと思います。キタサンブラックさんとサトノダイヤモンドさんが久しぶりに二人で小旅行に出かける話で、行き先はなく、ただ方向を決めるために勝負をして、そのたびにキタサンブラックさんは負け続けるのですが、そうやって目的地が負けるたびに代わりながらも到着したその場所で本来の目的を果たす(サトノダイヤモンドさんと真剣なお話をする)ことができればいいというのが、これまでとこれからのキタサンブラックさんに重なっていて見事でした。
アニメーション的な見どころとして、第1期の頃は間違いなくレースそのものの描写というのもありました。モブウマ娘が「む~~り~」と言いながら抜かされていくのは当時かなり嫌いで文句を言っていましたが、今では伝統になっている踏み込みの描写、ゴール前の死に物狂いの顔、キャラクターが纏うオーラみたいな各種演出にも新鮮味がありました。しかし新鮮味は第3期ともなると薄れるわけで、そうした時にそれぞれの演出を過剰にしていく方向に舵を切っているのはいかがなものかと思います。折角ウマ娘さんたちはそれぞれが戦術を考える力を持ち、それを言葉にすることができる存在なのですから、もっとレース中の駆け引きとか戦術時点での勝敗とかそういう切り口に変えていった方がいいんじゃないかと思ったりもします。作中でも各ウマ娘さんたちは戦術があるよ~~みたいなことを言っているんですけど、レース中に入る心理描写ってせいぜい「まだ脚を溜める」「ここで前に出る」「うわあああああああああああ」くらいなんですよね。
アニソンについて。OPEDともにイマイチこう自分の中で噛み合いきらなかったなという感じがします。OPなんかかなり直球で今作のテーマを歌っていたと思うのですが。EDは……第2期であんなに小さくてほっぺたとほっぺたをくっつけて谷間を作っていたキタサンブラックさん(とサトノダイヤモンドさん)が、急に成長して胸の谷間を作りながら走っていることに対する得も言われぬ罪悪感みたいなものはありましたね。
○16bitセンセーション ANOTHER LAYER
途中評価:A→S→S→A
続編:楽しませてもらいましたし、物語的にももう続きはないでしょう。
シナリオ:40/45 最終話:14/15 キャラクター:17/20 映像:8/10 アニソン:8/10 合計:87/100
放送開始前こそどうなるかなあと不安の方が強かった作品でしたが、それは多分直前のオタクそのものを題材にした作品がアレであったことを踏まえた反応で、始まってみればかなり良いアニメだったと思います。もちろん全ての人にとってそうだったかと言われると多分否で、特に後半はエロゲーのシナリオをある程度やったことがある人間にはなじみがあっても、そうじゃない人には結構とっちらかった印象だけで終わってしまうものだったとも思います。
大前提として変わりゆく街としての秋葉原に対して変わりゆく部分を否定していないことがあって、その上で自分が今を過ごしている今の秋葉原が好きというのがコノハさんなんだというのは確認しておきたいところです。タイムリープモノなら当然出てくるタイムパラドックスについては結構早い段階で「未来を変えてでもやりたいことがある」という話として結論を出しているわけで、それは自分が大好きな秋葉原ですら変えてしまうということに他ならないわけです。実際、最終話で戻って来た秋葉原だって第1話の秋葉原とは似て非なるもので、なんせ98が未だに支配的なわけですよ。その変化を良しとしているわけです。キャッチコピーのとおり、美少女は世界を変えるんですよ。美少女になら世界を変えられたって良いんです。
本作は、史実としての美少女ゲーム、もといエロゲーの歴史を大きく根拠としているという点で一つ上に書いたウマ娘とは類似点がある土台をしています。しかしこちらではその史実すらも変えてしまう物語の力というのがやりたいことで、それを当時からコンテンツの内側にいた人たちがやって、さらに業界もバックアップに入っているんですよね。結構対照的な作り方をしていると言えるのかもしれません。こういうオタクそのものの話をする系の作品でありがちなパロディ商品名が大量に出てくるやつもまあ悪くはないのかもしれませんが、ちゃんと許諾を取ってバッチリその名前やビジュアルを出しながらやっておいて、大きく未来が変わってしまった世界の方でパロディ作品っぽい名前を付けたFGOを出したりするのはかなりうまかったなと思います。確かに、「パチモン感」ってすごいですからね。
第7話から第10話あたりまでの展開がかなり良くって、特に異色の第8話とすべてが結実していく様がきもちいい第9話は抜きんでていました。この2話分で描かれた日々のことが、マモル君にとってもコノハさんにとってもしっかりと人生と思想の土台になっていっているのがわかるのが更に良いですね。あとシンプルにLOVEがデカすぎる。渡しそびれたお弁当がどうなったかが気になるのは、流石にLOVE以外の何物でもないよな?
第10話第11話と変わりすぎてしまった現在から再び過去に戻ってもう一本歴史を変えるゲームを作ろうぜという流れになった後、第12話からかなり予想していない方向に話が転がって行ったのも、僕としては懐かしい感覚ではありました。なんか割とエロゲにはあった気がするんですよね。こういう最後に変な転がり方をするシナリオが。まあただそのひいき目を抜きにしても、冬夜さんの話とかは明らかに尺が足りておらず、ノベルゲームならもちろん別シナリオでできるのでしょうが、アニメだとそこは難しいよねとなってしまったところはあります。
でも最終話でコノハさんが作り上げた2本目のゲームによってふたたび世界が変わって、そこからマモル君に再会するまでの流れが非常に美しかったのでまあなんか全部いいかの気持ちになったのもまた事実でした。終わりよければ間にどんだけトンデモ展開してもよし!
キャラクターの話はまあ大体上でやった気はしますが、マモル君がやっぱり一番好きということになってしまいますかねえ。コノハさんはBIG MOE。
映像の話としては、中盤少し画面が苦しそうなところはありましたが、面白くなっていくところに合わせて持ち直していったのがかなり偉かったと思います。ぷについているときのコノハさん、まーじでぷについているんですよね。
アニソンについて。OPはな~~~映像が滅茶苦茶良かった。その分歌っているのが中川翔子さんなのがなあ。彼女が業界的にも意味がないわけではない人選だというのはわかりつつも、なんというか隠しようのない歌声の老化みたいなものを感じさせたり、まああとやっぱり本人のことがそんなに好きじゃなかったりするので、ノイズが入ってしまったのは事実です。EDは懐古心をモリモリにする映像と曲でした。「願いを込めたプログラムの中で君が紡ぐ未来は無限大」とか、終盤になればなるほど味わい深くなる歌詞でしたね。
○冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた
途中評価:A→S→A→A
続編:あれば観たいってくらいですかね。
シナリオ:36/45 最終話:14/15 キャラクター:16/20 映像:8/10 アニソン:8/10 合計:82/100
素朴な味わいが一貫していたアニメでした。大きくハネる展開があったわけではないですが、中だるみのようなエピソードも挟みつつ、安定感のある作品になっていたと思います。アニメコインも無事帰ってきたと言えるでしょう。
構成としては三部構成になっていて、アンジェリンさんが里帰りするまでの第一部、里帰りしてからベルグリフさんと一緒に旅に出かける第二部、再びそれぞれの場所で過ごす第三部というかたちでした。結果的に、第二部はイマイチな部分もありましたが、第一部の良さが再び第三部にもありつつ、第三部は1クールの〆として一ついいおとしどころを見せてくれたと思います。
割と最大の謎であるのが、実際問題ベルグリフさんってどれくらい強いの/なんで強いのという点かと思います。これは最後まで十分には説明されませんでした。最終話でSランク冒険者と手合わせして負けていたので、流石にSランク相当ではないようですが、一方でAAランクの貴族令嬢にはさらっと勝っていましたし、暫定AAAランクということになってしまいます。冒険者をやめた時にはEかDランクだったみたいなことを言っていた気がするので、その伸びはどうやったんだろうと思わずにはいられません。もしかしたらその話はこの後の大事な話なのかもしれませんが。
謎が残っているという点で言えば、こちらはかなり補助線が引かれているとはいえ、アンジェリンさんの出生の秘密についても触れないまま終わりました。終盤でベルグリフさんが拾ってきた魔王がアンジェリンさんに瓜二つなことやビャクさんの発言を踏まえれば答えはもう出ていると言っても過言ではないですが、とはいえ本人が自覚しているわけではないですからね。次にアンジェリンさんが帰省してミトさんとあったら、流石にその話にはなりそうです。
最終話については、どう終わらせるのかな~と思っていたところ、ベルグリフさんは王都にやってきてアンジェリンさんの現在を知り、アンジェリンさんはベルグリフさんの過去を知る人物と会うということで父娘がクロスして、最後には再会するという構成がきれいだったなと思います。その過程で、カシムさんがベルグリフさんと旧知を温めることができたのが本当に良かったなあとほっこりしました。みんなで乾杯して〆ってのも良かったですね。
この作品が纏う古き良き感は何から生まれているのかという話でもしておきますか。僕的には画面の色使いなのかな~と思っていまして、全体的に少しくすんだ色使いがなされていたような気がします。そこに元々素朴な味わいの物語と善良そうなキャラクターたちが重なって、まるで20年前の教育テレビで夕方に放送されているアニメみたいな雰囲気が出ていたのではないでしょうか。
アニソンについて、OPは南條愛乃さん。ちょっとケルト音楽を意識しているのかなみたいなイントロで笑ってしまいますが、いい曲だったのは間違いないでしょう。キャラクターの動かし方が面白い映像になっていましたね。EDはこれまたオールドスタイルな、ミニキャラが走る映像が似合う、素朴な曲でした。まさか一緒になって走っているデブ貴族が普通に殺されるとは思ってもいませんでしたが……。
○レヱル・ロマネスク2
続編:不要
シナリオ:15/45 最終話:5/15 キャラクター:6/20 映像:6/10 アニソン:5/10 合計:37/100
なぜか第2期になって急にASMR作りに真剣になったアニメでした。いや本当になんで? 原作のASMRも売り出しているらしいですけど、それはなんで? とこう何処まで行っても謎は謎のままですが、本当に1クール通してASMR作りに真剣なままやり通したので面白かったですね。
第1期は第1期で、確かレヱルロヲドの皆さんが集まって人吉の商品開発をしていたので、まあコンセプトがよくわからないというのは第1期から共通していると言えばそうなのかもしれません。
ほかにもASMRアニメはいくつかありますが、君耳や俺クンのことを思い出すと、ASMRのエロ目的みたいな部分を切り取った作品だったのに対して、本作は録音環境(というか機材)の話をずっとしていたのが印象的でした。本作がターゲットにしているような鉄オタって、機材の話が好きなのかな。僕は乗り鉄なので車両とかには全然興味がないのですが……。
○ひきこまり吸血姫の悶々
途中評価:A→B→B→B
続編:不要
シナリオ:25/45 最終話:9/15 キャラクター:12/20 映像:6/10 アニソン:6/10 合計:58/100
今期のproject No.9作品その2でした。前評判は結構良かったように思いますし、先行上映イベントにもTLから多くの参戦者がいたという印象でしたが、僕にはどうも最後までかみ合わない作品でした。テラコマリさんが最弱でありながら実は最強ってのはまあいいんですけど、なんらかのトリガーがあって最強になる系の話はどうしても「良いからさっさと最強になろうよ」みたいな気持ちで視聴してしまうところはややあります。特にそのトリガーが(テラコマリさんは気付いていないとはいえ)自分で何とかなるものだと余計にね。
あとはまあ、今期の9番作品は全部そうですけど画面が死にかけだったのが……。その中では一番戦うことができていたのは事実で、終盤の苦しそうなところでも小テク(机の上にクソデカイベッドを置いてキャラクターを見えなくするとか)によって省力したりするのは結構やれていたと思います。あと、どこに力を入れればいいかはわかっていて、水着シーンなんかは他と比べてやれていたのもそうですかね。
キャラクターの話としては、テラコマリさんがタラシなのはいいとして、攻略済のヒロインたちの動きが良かったなと思います。別のヒロインが仲間になるたびに心底いやそうな顔をするヴィルさんとか、急に妹になってくるサクナさんとか、同じく急に姉になってくるネリアさんとか……。あとはやたらガッツのあるいじめっ子だったミリセントさんも。最終話何しに登場したのかは謎でしたが。
アニソンについて、OPは新生fripSideさん。なんか滅茶苦茶ノリノリでテラコマリさんがアイドル歌唱するサビが面白かったです。EDはなんかしっとりした曲。このアニメがEDっぽいしっとりとした雰囲気になったことは結局一度もなかった気はしますが……。
○僕らの雨いろプロトコル
途中評価:B→C→-→C
続編:不要
シナリオ:17/45 最終話:9/15 キャラクター:12/20 映像:7/10 アニソン:6/10 合計:51/100
色々とインパクトはあったけれどもシナリオ自体には全然納得がいかなかったアニメでした。僕自身がそりゃプロゲーマーなんてふわっふわした職業で家族を養おうとするのは無理があるだろと思っているからこそ、作中で行われている議論がどうでも良く感じられたというのはあるかもしれません。ゲームそのものを楽しまないと、という話については、そのゲームが面白そうに描けてから言ってほしいかなという感じですし。全裸で絶対に使っていなさそうな数のモニターを観ながらカレーをストローで飲んでいるのは面白かった。
ラブコメという面では伸びしろはあったと思いますが、結局やりたいところはそこじゃないために微妙な描写のまま終わってしまった感があり、こちらに振り切ってくれていればもうちょっと視聴感も良かったのかもなとは思わないでもないです。
○豚のレバーは加熱しろ
続編:
シナリオ:/45 最終話:/15 キャラクター:/20 映像:/10 アニソン:/10 合計:/100
最終話を視聴したら追記します。