前回紹介した 『Poker´s 1%』 はGTO的なアプローチを提唱しているので、
一見とっつきにくく、実用的でないように感じる方がいるかもしれません。
GTOの概念が出てきたばかりの頃は、GTOはどんな相手にも負けない
理想の戦略だと見る向きもありましたが、最近では 実際のテーブル上では役に立たない
机上の空論に過ぎないと冷遇される風潮もあります。
一体、実際のところはどちらなのか今回と次回の二回にわたって考えてみたいと思います。


GTOとは?


そもそも GTO とはどういったものなのか今一度 確認しましょう。
GTOとは “Game Theory Optimal” の略で、日本語に訳すなら
「ゲーム理論最適」といったところになります。
ホールデムはベット/コール/フォールドのアクションとその額すなわち数値によって
全てを記述することができるので、数学的な均衡点というのが存在します。
それは全てのアクションの頻度が完全にバランスされた状態で、
相手がいかなる戦略で臨んでもつけ入ることができないポイントを指します。

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一番簡単な例を挙げると、じゃんけんにおけるGTOは (そういう言い方はしませんが)
もちろんグー・チョキ・パーを等しい割合でランダムに出すことですね。
ホールデムにおいてもそういった均衡点が理論上は存在するわけです。
実際に数年前にヘッズアップのリミットホールデムは、
長期的にまず人間が勝ち越すことができないほぼ完璧なGTOが
コンピュータによって解明されたという主張も出てきています。



じゃあGTOさえ押さえれば無敵じゃないの?


こうなると、GTOを習得することがホールデムでの
究極にして唯一の目標のような気もしてきます。
しかしながら実際はノーリミットホールデムはずっと複雑で、
ましてやフルリングともなれば解明からは程遠い状態です。
巷に流通しているGTOソフトなどは膨大な統計から帰納的に
「このポジションからこのハンドまではオープンして利益が出る」といった具合で
GTOを模擬的に再現しようとしていますが、それでも当然完璧とはいかないわけです。

となると、GTOを習得しようとする試みには二つの問題が立ちはだかってきます。

1. どこまでいっても GTOの完全再現には至らない

2. 相手もGTOからもれなく乖離しているので、
利益を最大化するためには結局GTOから外れる必要がある

特に2番目のポイントは重要で、オンラインのハイレートキャッシュでもない限り
普段座るテーブルでの相手のプレーは想像よりはるかに大きくGTOから外れています。
我々も我々でそういったテーブルに自然に適応した戦い方になっていますので、
そこにいきなりGTOを持ち込んでも
「なんだこれは、(フィッシュ相手に)トリプルバレルブラフしたり、
(ロック相手に)ライト3bet しても全然利益が出ないじゃないか」となるわけです。

こういったGTOというものに対する当初の認識と実際のテーブルでの有効性とのギャップに
「GTOは机上の空論だ」という主張がしばしば為される原因がありそうです。

次回はそんなGTOを学習することに一体どんなメリットがあるのかを考えていこうと思います。