確か再受験を決意したのが4月末で、受験勉強を開始したのがゴールデンウィークころからだったと思う。

正直東大二次試験から、ほとんど勉強をしていなかった。つまり2ヶ月程度のブランクだ。まだ浪人や仮面浪人をする可能性があるなら春休みもある程度勉強しておけばよかったと悔やんだ。

ブランクがあっても元の学力に戻すのはそれほど大変だとは思わなかったが、自分の記憶力が悪いせいか、かなり知識などが欠落し、学力は相当低くなっていた。特に英語などは勘が鈍っていて、毎日の学習が欠かせないものだと実感した。

当時のおれの学力はというと、理科が普通で、数英はカスだった。東大受験においては国語も重要だが、それよりも他の3教科を伸ばすことが優先だと思い、軽視した。本当は毎日少しはやるつもりだったが、結局放置することになってしまった。理科は普通に問題演習をやっていた。数英をどうにか1からやり直すことはできないかと考えたけど、英語はよくわかんなかったのでとりあえずそこらへんの良さそうな問題集を解いたり、単語や例文暗記したりした。とにかく毎日コツコツやるしかないと思った。数学は、自分の1番の苦手科目で、ほんといって数学の苦手克服なしには合格はないとおもっていた。だがどうやっても克服できる気がしなかった。それくらい苦手だった。でもとりあえず定番の、大数1対1の演習を一周やることにした。1対1は、前から良いと聞かされていたが、以前教科書を習ってすぐ解いたあとでは難しかったというか、うまくなじめなかったという経緯があり、あまり印象は良くなかった。だが浪人してからやってみると、素晴らしさに気付いた。今まで分散していた知識や解法が連結した気がした。思うに、教科書と1対1との間にはいくらかのギャップがあり、そのギャップに以前はうまく対応することができなかったと思う。(もちろん頭の良い人なら教科書終わってからすぐでも出来るが。)レベルはそれほど高くないけど、内容が深くて、これを極めればかなり学力がつくと思った。あと、自分の悪い癖として復習を軽視していたということに気付いて、和田秀樹の著書を参考にしつつ、復習にも力を入れた。1対1は計6冊で例題と演習題がセットで400組くらいあるんだけど、それを1日8〜10組ずつ程度問いていき、こまめに復習して2ヶ月程度で1週したら、かなり学力がついて苦手もある程度克服した気がしたのでよかった。

仮面浪人は予備校での浪人に比べて失敗率が高いことが受験界の定説らしいんだが、その原因は主に勉強時間が十分に確保できないこととメンタル面での諸問題が挙げられる。

仮面浪人には籍を置くだけで実際は普通の浪人という場合と、大学の単位を取りながら受験という2種類がある。正直前者に関しては金の無駄としか思えなかったため後者をやることにした。でも考えてみれば受験のみならず大学にも通って単位をとるんだから、受験の失敗率が高くて当然だ。そういう面で前者みたいな受験専念タイプが生まれるんだろう。おれはどうにか大学にも通いつつ、予備校生にもひけをとらないくらいの勉強ができないものかと考えた。仮面をしてみると、やはり普通の浪人に対して不利に思うのは嫌だった。仮に受験に失敗しても、やっぱり普通に浪人しておけばよかったとは思いたくなかった。

大学ではおよそ1日3コマで週15コマ程度入っていたので、仮面をはじめた当初はちゃんと授業に出て、午後3時ころからはずっと受験勉強、というかんじでやっていた。だがこれだとがんばっても8時間程度しか勉強できない。さすがにこれでは予備校生に勝てないと思った。そこでまずやったことは、授業をきることだ。出席する必要がないものを5つくらい切った。でも所属大学が日本で有数に進級に厳しい大学ということで、必修が10コマ以上あり、そのうち8割程度は単位を取らなければ留年なので、やはり週10コマ程度は出なければならなかった。逆に授業さえ出れば進級できると考えていた。進級には厳しいとはいえ、一部の教授以外はやさしい教授陣で、結構単位取得は結構生ぬるいと感じた。限界まで切っても1日2コマは出る必要があり、受験勉強はがんばっても10時間程度しかできなかった。(午前は授業で午後はずっと勉強というスタイルだった。)

1日10時間という勉強時間は、やはり他の浪人生に対して少ないと思えた。普通の浪人生は受験勉強に専念できるとは言え、1日15時間以上を毎日やる人はあまりいないと思えたが、そうはいっても1日12時間程度はやっているだろうと想定していた。当然彼らは受験勉強ばかりやるわけだから、大学の勉強もやるおれより勉強時間が長くて当然だった。そもそもおれの学力は、東大受験生とも呼べないくらい低かったので、そのまま普通に浪人して死ぬほど勉強しても合格が微妙な程度だった。おれには2ヶ月のブランクがあり、しかも浪人生と比べて少ない勉強量しかしていないのなら受かるはずないと思った。また、有名進学校出身者が集う大手予備校の東大コースにおいても、東大合格するのは半分にも到底満たないという話を聞き、浪人の難しさも感じた。だから、なんとしても他の浪人生との勉強量の差を埋めなければ勝てないと思った。

そこで次に講じる策とすれば、授業をきるわけにはいかなかったので、授業中に内職することだ。授業中の内職というのは高校時代から慣れ親しんだことであって、仮面中もやろうと思った。だが、出来なかった。なぜなら大学で運良く出来た友達と一緒に授業を受けていたから。甘ったれた話だけど、友達に仮面浪人だとバレることは是が非でも避けねば友情は崩れると思っていた。そこら辺が普通の浪人生にはない仮面の難しさだった。もちろん仮面浪人だと打ち明けて存分に内職することもできたし、友達と距離を置いてずっと1人で生活することもできた。でも適切ではないと思った。なぜなら仮面浪人は、ただ進級しつつ受験に合格すればいいっていう単純なものではないと思ったから。受験での失敗率の高さを考えると、<留年+不合格>という最悪な状況は避けられても、<進級+不合格>という場合はかなりの確率で生じるはずだった。その場合、同一の大学であと3年以上は過ごす可能性が大いにある。その場合、受験のためサークルに入っていなかったおれが、もし友達を失ったら、悲惨な大学生活しか待っていない。それでは1年の失敗が残り3年に多大な影響を与えるし、下手すれば一生後悔することになる。仮面浪人はある意味、浪人より失敗したら損害を被る可能性を秘めた行為なのだ。そんなリスクを負うなら仮面などやるべきではないと思った。そういった悲惨な末路へのプレッシャーがメンタル面での悪化にもつながると思った。それを自覚していたので、どうしても同じ学科内では友達を失うわけにはいかなかった。そうすればもし受験で失敗してもそこそこはいきていけると思った。

そんなわけで、授業中の内職は無理だった。もっとも、進級のためには大学の勉強もある程度必要なので、それを授業中にこなすと考えれば、無駄ともいえなかった。大学の授業は残念ながら大学受験にはあまり役に立たない内容だったし、やはり普通の浪人生に比べて、勉強量で不利な点は解消できなかった。

そこでおれは考えた。

そもそも勉強量というのは、<勉強時間×集中力>であって、時間だけではない。とはいっても、おれの体力や集中力を考えると人より高い集中力で勉強に臨むことは死ぬ気でやっても不可能に思えた。ではどうするのかというと、他の浪人生のことをよく考えたら答えは出た。浪人生は、仮面からすれば受験勉強ばかりが出来てうらやましいけど、逆にいえば受験勉強しかすることがすることが許されないといってもいい。それはかなり息詰まる生活であり、だからこそ浪人は大変なのだ。一方、自分は大学にも通える。大学に通うのは受験にとっては無駄が多いけど、予備校に通うよりかなりリフレッシュは出来るはずだ。また、仮面も精神的につらいが浪人生はそれ以上につらい。勉強の能率や集中力は理想よりかなり落ちるだろう。(もちろん息抜きなどを有効に使ってうまくやる人も多いとは思うが。

つまり、仮面浪人はプレッシャーが少なくリフレッシュが出来る分、集中力が上がり、浪人生と比べて同じ勉強時間でも有効な勉強ができると思った。1日10時間しか勉強できなくとも、普通の浪人生における12時間程度の勉強をしたのと同じ効果が望めると思い込むことが可能だった。つまり、予備校生に比べて受験面での不利があまりないと結論づけることができた(かなり無理やりだが)。ましてや精神的にものすごくつらい宅浪よりは有利だと思えた。

これはくだらないことかもしれないが、結構重要なことだった。これによって、無駄な大学の授業や勉強をする行為における罪悪感を減らすことが出来たし、大学生活を楽しむことが受験の成功につながるとわかり、生活にハリが出た。何より受験に失敗しても、仮面浪人なんてバカなことをしたから受験に失敗したんだと思わなくて済むかもしれないというのが救いだった。そういったことがメンタル面での改善につながった。

そんなことを考えてやっていたら、結構仮面浪人というものも良いものだなと思い込めた。前期に関しては結構メリハリのある生活ができて、充実していた。人より2倍濃密な生活ができるんだから、当然だ。

充実した生活を送っていたと思っていたせいか、5月、6月ころは『まだ受験まで相当時間あるな』なんて感じて、時間が流れるのがゆっくりだった。

でもそれが過ぎると7月には期末テストが控えていて、東大模試もはじまる。

そう、ここまでは結構順調にいっていた。

ここまでは・・・・・・・・・・・・・・・


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