下村議員の後援会である博友会に対する「加計学園」のパーテイ券の購入を巡る法律について解説する


週間文春(2017年7月2日号)が衆議院議員下村博文(東京11区選出)の後援会である「博友会」の「パーテイー券入金状況」と題する文書を入手した。その文書には、

➀2013年「9月23日 学校 加計学園 1,000,000」

➁2014年「10月10日 学校 山中一郎 加計学園 1,000,000」

との記載があるようである。しかし「博友会」の収支報告書にはその旨の記載がないことから「加計学園から闇献金200万円」と報道した。

これに対して、下村博文議員は「2013年も2014年も合計11の個人及び企業(1社)から加計学園の秘書室長が事務所を訪問して各20万円以下のパーテイー券代を預かったので現金を持参しただけであり、加計学園がパー券を購入したものではない。従って「加計学園から闇献金200万円」は事実に反すると反論した。

(1) 政治資金パーテイーの定義

「政治資金パーティーとは対価を徴収して行われる催物で、当該催物の対価に係る収入の金額から当該催物に要する経費の金額を差し引いた残額を当該催物を開催した者又はその者以外の者の政治活動に関し支出することとされているもの」と定義されている(法8条の二)寄付金は無償の対価の交付であるのに対して、パー券の購入は何らかの「債務の履行である」ある点で区別されている。(法4条3行)

(2)20万を超える対価の支払は収支報告書への記載義務がある

 一の政治資金パーティーの対価に係る収入が同一の者からの政治資金パーティーの対価の支払で、その金額の合計額が20万円を超えるものについては、その年における対価の支払について、当該対価の支払をした者の氏名、住所及び職業並びに当該対価の支払に係る収入の金額及び年月日を収支報告書に記載する義務がある

 もし加計学園が対価をはらったのに、それを収支報告書に記載していないとすれば、文春の指摘の通り闇献金に該当するし違法である。
○ この記載義務は一つの政治資金パーテーに関して20万円を超える場合であって、一つの政治資金パーテイーで20万円以下であれば記載義務がない。この点は政治資金規正法がザル法といわれる所以。
(3)あっせんについて

一の政治資金パーティーの対価に係る収入のうち、同一の者によつて対価の支払のあつせんをされたもので、その金額の合計額が20万円を超えるものについては、その年における対価の支払のあつせんについて、当該対価の支払のあつせんをした者の氏名、住所及び職業並びに当該対価の支払のあつせんに係る収入の金額、これを集めた期間及びこれが当該政治団体に提供された年月日を記載する義務がある。

「あっせん」については第10条第3項で「特定の政治団体のために政治資金パーティーの対価として支払われる金銭等を集めて、これを当該政治団体に提供することをいう」と定義している

単に何名かのパーテイ券の対価を政治団体に届けるだけの場合は「使者」であってあっせんに該当しないが、「パーテイ券の購入の依頼、仲介した者」が依頼、仲介した者の代金を集めて、持参した場合は規正法のあっせんに明らかに該当する。


○ 下村議員の「記者会見での説明」では家計学園の関係者がこのあっせん者に該当することを自白しているようなもの。これもアウト。

(4)パー券の購入についての不記載又は虚偽記入に関しての罰則について

20万円を超えるパーティーの購入した者がいるのに、それを記載しなかった者(法25条2項)又は20万円を購入した者の氏名、職業、金額、住所等に関して「虚偽」の記載した者(法25条3項)も5年以下の禁固刑又は100万円以下の罰金に処せられる。20万円を超えるパー券のあっせん行為をしているのにそれを記載しない場合も同罪になる。

 

(5)20万円を超える場合はもちろん、20万円以下でも会計帳簿には記載義務がある。

第九条  政治団体の会計責任者は、会計帳簿を備え、これに当該政治団体に係る次に掲げる事項を記載しなければならない。

○政治資金パーティーの対価に係る収入については、政治資金パーティーごとに、その名称、開催年月日、開催場所及び対価に係る収入の金額並びに対価の支払をした者の氏名、住所及び職業(対価の支払をした者が団体である場合には、その名称、主たる事務所の所在地及び代表者の氏名。)並びに当該対価の支払に係る収入の金額及び年月日(政治資金パーティーの対価を払った者の氏名、住所、職業、金額、日時を記載する義務がある。金額が20万以下でも全て記載することが要求されている。あっせんを受けて支払った者の氏名、住所、職業、金額、日時も記載が要求される)
○ 政治資金パーティーの対価に係る収入のうち対価の支払のあつせんをされたものについては、政治資金パーティーごとに、当該対価の支払のあつせんをした者の氏名、住所及び職業並びに当該対価の支払のあつせんに係る収入の金額、これを集めた期間及びこれが当該政治団体に提供された年月日(あっせん者についての氏名、住所、職業、金額等を会計帳簿に記載する義務があることを規定している)


〇会計帳簿に記載しない場合又は虚偽の記入をした場合の罰則

第24条  次の各号の一に該当する者(会社、政治団体その他の団体(以下この章において「団体」という。)にあつては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者)は、三年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

 第九条の規定に違反して、・・・・第九条第一項の会計帳簿に記載すべき事項の記載をせず、若しくはこれに虚偽の記入をした者

〇 下村議員は領収書を見てみないとわからないと記者会見で述べているが、会計帳簿に11人の個人、企業を書いていないことを認めている。これもアウトではないか。
 

(6)匿名、第3者名義での購入の禁止及び対価の受領の禁止(22条の8第4項

22条の8第4項(第22条の6第1項(何人も、本人の名義以外の名義又は匿名で、政治資金パーティーの対価の支払に関する寄附をしてはならない。)及び第3項3( 何人も、第一項の規定に違反してされる政治資金パーティーの対価を受けてはならない。)

罰則(第26条の2 3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する)。

 〇実際に起訴され有罪になった事件(平成21年7月17日東京地裁判決)

 西松建設が国会議員の政治資金パーテイーにおいて真実は西松建設会社の支払であるのに本人以外の名義(2つの政治団体名義)でパーテイの対価を平成18年6月に合計180万円及び同年8月に160万円を払った場合は法26条の6違反で有罪になった。

(7)参加予定しないパー券の購入とその対価の受領の違法性

 ○逐条解説「政治資金規正法」(平成11年3月1日3版発行自治省選挙部政治資金課編)において「「債務の履行としてなされるもの以外のものは全て寄付となるので、対価関係にあるものでも対価相当分を越えて金銭、物品その他の財産上の利益の供与、又は交付がある場合はその越える部分は寄付と解される」と上記の解説がなされ「例えば政治資金パーテイー券の購入代は通常はパーテイー出席のための対価と考えられるが、その代金が社会通念上の対価を越えるものである場合は当該越える部分は寄付として取り扱われることになる」と説明されている (55頁)


〇もし50人も参加できないことを承知でパー券を100枚も購入しておれば、博友会のパーテイー券の購入も「寄付」に該当して違法であろう。文春に報道されているリストには「出欠」の有無について調べているからである。

○東京高裁(平成28年7月19日・第一生命株主代表訴訟控訴審判決)参考

「パーティー券の購入代金の支払は,その代金額が政治資金パーティーへの出席のための対価と認められる限り,「寄附」には当たらないが,パーティー券の購入代金の支払実態,当該パーティー券に係る政治資金パーティーの実態,パーティー券の金額と開催される政治資金パーティーの規模,内容との釣り合い等に照らして,社会通念上,それ自体が政治資金パーティー出席のための対価の支払とは評価できない場合にはその支払額全部が,また,その支払額が対価と評価できる額を超過する場合にはその超過部分が「寄附」に当たるというべきである」という原則を述べ),「寄附」をすること及びこれを受けることのいずれも処罰の対象としていることに照らすと,同法は,この犯罪類型を刑法上の必要的共犯のうち対向犯として定めていると解される。そうすると,「寄附」をし,これを受けることは,刑法の賄賂罪(197条以下)における賄賂の供与と収受になぞらえることができるところ,賄賂罪において,公務員が賄賂性を認識していなければ同罪が成立しないのと同様,政治資金パーティーへの出席を予定しないことを認識しながらそのパーティー券を購入したとしても,主催者がこれを認識しておらず,購入されたパーティー券の数に見合った内容の態様で政治資金パーティーを開催した場合には,主催者側においては,出席を予定していない者が支払ったパーティー券の購入代金を含め,当該政治資金パーティーの対価を受けたことにならざるを得ないから,その場合には,出席を予定しないパーティー券購入者が支払った購入代金についても,主催者においては「寄附」に当たるものということはできないと解される。・・・・購入されたパーティー券に出席を予定しないものが含まれていることを主催者が個別的に把握し,その寄附性を認識していない限り,パーティー券購入者についても,「寄附」に当たるものということはできないというほかない」ないと判示した。この判決でもパー券の主催者側に出席が予定されていない認識があれば、本罪が成立する可能性があることを示唆している。