ノーベル平和賞 演説中にわざと拍手せず NATO加盟国ノルウェー首相 

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ICANフィン事務局長(左)とノルウェー首相(右)Photo: Abumi

10日のノーベル平和賞授賞式では、ノルウェー現地のメディアはノルウェー首相の態度に大きく注目していた。

核兵器禁止条約の実現を働きかけてきたICANのベアトリス・フィン事務局長は、演説の一部で核保有国や「核の傘」に入る国を批判。

会場は何度も大きな拍手に包まれていたが、アーナ・ソールバルグ首相(中道右派・保守党)は、微笑みながらも拍手をしないことがあった(NRK)。

筆者は会場の2階バルコニーから撮影をしていたのだが、首相の後ろ姿をカメラのレンズ越しに見ながら、「拍手をしていないように見えるけれど、気のせいだろうか」と一瞬わからなかった。

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前列は首相、国会議長、大臣らが座るのが恒例。ノルウェー首相(右) Photo: Asaki Abumi

そのシーンはノルウェーや隣国スウェーデンでも話題となる。
拍手をしない首相の姿は現地のメディアが大きく報じた。後からニュースを見て、「やっぱり拍手をしていなかったのか」と思った。

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演説するベアトリス・フィン事務局長 Photo: Asaki Abumi


ノルウェーは北大西洋条約機構(NATO)加盟国のため、核兵器禁止条約に署名していない。

  つづく

ソース:https://news.yahoo.co.jp/byline/abumiasaki/20171212-00079195/

平和賞授賞式で、ノルウェー政府関係者がどのようにカメラ前で振る舞うか。

これは今の政府が意識的に注意していることだ。

2010年にノーベル委員会が劉暁波氏に平和賞を授与後、ノルウェーと中国との関係は悪化した。中国側は、ノーベル委員会とノルウェー国会の意志はつながっているものと結論付けた。両国の関係が改善されたのは昨年末。

この「反省」以来、ノルウェーは、委員会と国会の関係は、他国には「誤解」されやすいのだと改めて実感。

だからこそ、最近まで現役議員が委員会入りしそうだった時には、多くの政党が必死に反対した。

ノルウェー王室や政府関係者が一堂にして前列を独占し、笑顔で受賞者を称える授与式の光景は、全世界に中継される。

フィン事務局長が核の抑止力に依存する国々を批判する演説で、ノルウェー首相が拍手をするシーンが流れていたら? ICANの戦略を、ノルウェーが支持していると、誰かが誤解するかもしれない。

誤解されるリスクを減らすために、首相がとった対応だったのだろう。

この日の夜、ノルウェー国営放送局NRKは首相にもちろん直撃。

故意に拍手をしなかったと、首相ははっきりと認めた。

「ほとんどの箇所では拍手をしましたよ。私やノルウェーが明らかに同意できない2か所以外では。拍手は、その発言に対する同意だと私は思うので」。

「NATOを弱体化させるような提案には賛同しない」。

ICANが今年の受賞者だと発表されて以降、首相はノルウェーはNATO加盟国であり、核兵器禁止条約には署名しないことを言い続けてきた。

11日早朝、政府のゲストハウスではノルウェー首相とフィン事務局長の記者会計が開かれた。部屋はノルウェーと日本の報道陣で溢れていた。