弁護士 阿部 鋼
A社製トラックの左前輪タイヤがフロントホイールハブという部品(ハブ)の破損によって走行中に脱落し、歩道上にいた人達を死傷させたという事故に関し、その約2年半前に発生していた類似事故事案(バス事故)の処理に当たってA社内で品質保証業務を担当していた社員2名が、業務上過失致死傷罪に問われた。
最高裁判例(平成24年2月8日第三小法廷決定)は、以前の類似事故事案を処理する時点で、ハブの強度不足のおそれが客観的に認められる状況にあり、そのおそれの強さや、予測される事故の重大性、多発性に加え、同トラックの製造会社が事故関係の情報を一手に把握していたなどの本件事実関係の下では、その時点で同社の品質保証部門の部長又はグループ長の地位にあり品質保証業務を担当していた者には、同種ハブを装備した車両につきリコール等の改善措置の実施のために必要な措置を採り、強度不足に起因するハブの輪切り破損事故が更に発生することを防止すべき業務上の注意義務があったとした。
以上
<参考文献>
矢野直邦「最高裁判所判例解説―平成24年2月8日第三小法廷決定」法曹時報第67巻第4号 245頁 法曹会 2015年