共同執筆

                            

取締役等の会社役員は株式会社に対し善管注意義務を負っており、従業員等の不正行為によって会社に損害が発生したときには任務懈怠により会社に対し損害賠償責任を負う。

仮に不正行為によって発生した損害額をそのまま負うとすれば、取締役等は巨額の賠償責任を負担する危険にさらされることになる。

そこで、裁判例は「割合的因果関係の理論」、あるいは「過失相殺(民法418条)の類推適用」によって取締役等の負担する損害賠償額の減額をはかっている。いずれの構成についても採用することについて異論はあり得る(議論の状況については、中村信男「取締役の対会社責任と過失相殺法理による責任減額の可否」早稲田商学第38899118頁及び判タ1251221~223頁が大変参考になる。)。

なお、近時の注目すべき裁判例としては平成18228日青森地裁(事件番号平成14年(ワ)第128号事件・判例タイムズ1251号)がある。裁判所は、専務理事の善管注意義務違反と因果関係を有する損害賠償額を14億円超としながらも、責任割合を2%と認定し、大幅に専務理事の損害賠償責任を軽減した。

もっとも、具体的な事例ごとに責任割合は変化する性質を持つため、弁護士が事件処理を担当する際には、上記のような先例があることを十分に認識した上で、当該事案毎の特性を適切に把握することが必要であると考えられる。

                                    以 上