子どもを取り戻す方法としては、大きく分けて家庭裁判所に申し立てる方法と、地方裁判所に申し立てる方法があります。
 まず、家庭裁判所に対しては、「子どもの監護に関する処分」として子どもの引渡しを相手に請求する調停を申し立てる方法があります。調停で解決できない場合は審判となります。調停においては、双方の意見を聞いて子どもの幸福のために双方が納得できる解決方法を探ることになりますが、場合によっては家庭裁判所調査官が子どもの意見を聴くこともあります。
 なお、連れ去った親の監護状況が悪く、至急連れ戻さないと子どもの発育や情緒に悪影響を及ぼすおそれがあるような緊急性がある場合は、家庭裁判所に対して調停前の仮処分申立をして引き渡し勧告をしてもらう方法や、審判申立とともに審判前の保全処分を求める方法があります。地方裁判所に対するものとしては、人身保護請求により子どもの引き渡しを実現する方法があり、1週間以内に審問期日が開かれ、拘束者が出頭命令に従わない場合は勾引・勾留することもできる等、迅速性、実効性に優れています。
 しかし、人身保護請求が認められるための要件は、「拘束が権限なしになされまたは法令の定める方式・手続に著しく違反していることが顕著であること」、「他の救済方法では目的を達することができないこと」とかなり厳格です。別居中の夫婦間における請求については、判例においても容易には認められない傾向にあります。