漁業法勉強会報告

漁業法・水協法等について不定期に行っている勉強会の報告を掲載しています。

漁業法勉強回第4回

        「臼杵市埋立免許取消事件−漁業権の放棄と関係地区組合員の同意」
             福岡高等裁判所昭和48年10月19日判決(判タ300号151頁ほか)

                                                  


【事案の概要】
 大分県臼杵市は、昭和43年に産業の振興を図るべく工場誘致計画を立て、その一つとして大阪セメントを誘致することを決定した。昭和45年3月21日、工場建設予定地の海面に第一種ないし第三種共同漁業権を有する臼杵市共同漁業組合は、臨時総会を開き賛成多数をもって漁業権一部放棄を決定したうえ、大分県知事に漁業権変更免許を申請し、同年5月20日申請どおり変更免許された。続いて、大分県知事は、大阪セメントの申請に基づき、旧公有水面埋立法4条の趣旨により本件公有水面には権利を有するものがないことを前提として、昭和45年12月25日同会社に埋立免許を与えた。 原告らは、臼杵市漁協の組合員である漁業者であり、右組合の漁業権行使規則によって該漁区で漁業を営む権利(=「行使権」)を有する者であるが、上記漁業権放棄には漁業法8条3項が準用され、関係地区組合員の3分の2以上の書面による同意が必要であるのに、本件ではそのような同意がないので放棄は効力を生じないなどと主張し、大分県を被告として、埋立免許の取消を請求した。

*当該漁区で現に漁業を営む者で当該漁業の関係地区内に住所を有する者は原告らを含む129名、組合の正組合員は726名であった。


【事案の概要の補足〜臼杵市風成(かざなし)闘争とは。】

 臼杵市の中心部から東に4キロメートルほど行くと小さな集落があります。そこが臼杵市大字風成で、かつては突きん棒漁(船の上から、先端に銛をつけた長い棒で泳いでいるカジキやマグロなどを突いて仕留める漁法)で有名な漁村でした。昭和40年代に、その風成地区の目と鼻の先の海(日比浦。現上浦(うわうら)小学校の前の入江)を埋め立て、セメント工場を建設しようとする計画が持ち上がりました。それを知った風成の住民たちが身を挺してセメント工場建設を阻止しようとした住民運動が風成闘争です。
昭和45年2月、市議会で工場誘致が決定し、漁業権を持つ臼杵市漁協も日比浦の埋め立てに同意しました。ところが誘致工場に隣接する風成地区から、粉じん公害を受けるとして強い反対運動が起こり、この動きは全市に広がりました。賛否両論がうずまく中、誘致の是非をめぐり臼杵市は大いに混乱します。同年4月7日、去る3月21日に開いた臼杵市漁協の臨時総会の漁業権放棄の決議は「無効だ」として、風成地区漁民56人が漁協組合長と市長を相手取り、漁業権確認の訴えを大分地裁に起こしました。しかし12月25日、水産庁の認可をうけた大分県はセメント会社に対して埋め立てを認可しました。昭和46年1月6日、セメント会社は測量を開始します。これを知った風成地区反対派の住民たちは激しい抗議行動を展開します。とりわけ主婦たちの活躍はめざましく、厳寒の降りしきる雨の中、実力排除に備えて雨カッパの上から腰に荒縄を巻き付けて、数十人もの人が作業イカダの上に座り込むなど必死の抵抗行動をとり続けました。一方、風成漁民の漁業権確認請求訴訟(いわゆる風成訴訟)は地域開発か、公害予防か全国の注視を浴びる中、昭和48年10月福岡高裁で結審し漁民方の勝訴となりました。セメント工場の建設は断念せざるをえませんでした。風成闘争は日本の公害予防運動史上きわめて大きな意義をもつ闘争といわれています。
                                             (インターネット記事より引用)


【争点】
  共同漁業組合が有する漁業権を放棄する場合、水協法50条4号(総組合員の過半数が出席してその議決権の3分の2以上の多数決)の適用に加え、漁業法8条5項(現在の7項、以下同じ。)、3項(当該漁業権に係る地元地区内に住所を有する者の3分の2以上の書面による同意)が類推適用されるか。


【争点の意味】
  漁業法は、漁業権の帰属と組合員の漁業を営む権利とを明確に区別しており(同法14条8項、8条1項)、水協法においても、組合総会の特別決議事項として、漁業権自体の得喪変更と行使規則の制定変更を分けて規定している(同法50条4号、5号)。そして、漁業法8条5項、3項は行使規則の変更についてのみ関係地区組合員の3分の2以上の書面による同意を加重的手続として要求している。
  したがって、少なくとも文理上は、漁業権の一部放棄については、組合総会における特別決議のみが要件であると解される。
  それにもかかわらず、漁業法8条5項、3項がなぜ類推適用され得るのか。


【本件以前の学説・判例】
  特に議論されておらず、わずかに高松地判昭和45年4月28日(判例集末登載)が、えむし漁業権の消滅について行使権者の特別な同意は必要でない旨を判事するのみであったとされている。
  *「えむし」・・・餌虫のことで、本虫やゴカイなどを指す。


【訴訟経過】
  第一審大分地裁判決(昭和46年7月20日)は、原告らの請求をほぼ全面的に認めたため、被告(大分県)が控訴した。


【判旨】
  控訴棄却

 (共同漁業権の性格について)
  共同漁業権は、現行漁業法により、関係漁民による漁場管理の方法で認められたものであるとはいえ、・・・沿革及び漁場利用形態の特質(いわゆる地先水面の共同利用)に鑑みれば、関係漁民総有の入会漁場としての性格を帯有するものと解するのが相当である。

 (漁業法8条1項の定める、組合員の「漁業を営む権利」の性格について)
  漁業協同組合または漁業協同連合会の保有する漁業権または入漁権に基盤をおく権利として、物権的性格を有し、具体的には、その権利内容実現のための、いわゆる物上請求権の派生せしめる権利(財産権)として把握するのが相当であって、控訴人の主張するごとく、漁業権の帰属主体である漁業協同組合の組合員たる資格に由来する、いわゆる社員権的な権利として観念することはできない。

 (漁業法8条5項、3項の類推適用の可否について)
  漁業協同組合がその保有する漁業権(第一種共同漁業を内容とする共同漁業権または特定区画漁業権)を放棄(一部放棄を含む。)する場合であっても、同条項の類推適用があるものと解するのが相当である。けだし、漁業権行使規則の変更または廃止は、当該行使規則によって定められた、「漁業を営む権利」を有する者の資格や当該漁業を営む場合の区域、期間及び漁法等に変動を生ぜしめることを目的とするものであるから、現に漁業を営んでいる者について、当該「漁業を営む権利」を失われるに至る場合のほか、その漁業従事の態様に影響を及ぼすにとどまる場合も存するのに、そのいずれの場合にあっても、現に漁業を営む者の地位を保護するために、漁業法8条5項、3項の手続を履践すべきことが要求されているところ、漁業協同組合が漁業権を放棄・・・する場合にあっては、その当然の帰結として、常に、漁業権行使規則で規定する資格に該当する者の「漁業を営む権利」が失われ、現に漁業を営む者もその例外ではあり得ないのであるから、むしろ、現に漁業を営む者の利益保護についてより慎重な配慮を必要ということはできても、この配慮を欠いても良いとすべき合理的な理由は何もみあたらないからである。


【判決の検討−共同漁業権の性格(総有説VS社員権説)と本件との関係】

1.本判決は、漁業権の放棄に漁業法8条5項、3項が類推適用されるとの結論を導く直接の理由としては、上記のとおり、漁業法8条5項、3項の趣旨は当該漁業に従事しない組合員の意思のみにより現に当該漁業を営む者の地位が不当に脅かされることのないように配慮した点にあり、そうであれば、漁業権放棄の場合にも、漁業権行使規則で規定する資格に該当する者の漁業を営む権利が失われる以上、同じく同条項の趣旨が妥当するという点を挙げている。
  この結論および理由と、共同漁業権あるいは組合員の「漁業を営む権利」に関する性格を論じた上記判旨とはどのように結びつくのだろうか。
2.一審を含む本件での裁判所の判断には、賛成する説(阿部泰隆・本件批判・判評152号123頁等)と反対する説(桜田誉「臼杵市における漁業権確認訴訟・大分地裁判決等について」ひろば1971年11月号28頁等)があるが、宮川勝之・別冊ジュリスト43号184頁は、このような賛否の対立の根底には、組合管理の漁業権と組合員の行使権の関係をいかに解するか、つまり、行使権利者の総有的帰属形態であって行使権者は対外的権利の主張もできるとみるか(総有説)、それとも漁業権は組合に帰属し行使権は組合員としての地位によって派生する対組合的権利に過ぎないとみるか(社員権説)という難問題が横たわっているとする。そして、総有説からすれば、本来行使権者が漁業権放棄に特別の発言権を有するのは当然であると考えるから、本件判決に賛成することになり、社員権説からすれば、漁業権はあくまで組合に帰属するのであるから、漁業権放棄には組合としての特別決議があればそれで十分であり、他に行使権者の意思を特別に顧慮することは、対内的にはともかく対外的には必要ないと考え、本判決に反対することになる旨を示唆する。
3.しかし、少なくとも本件に関する限り、総有説と社員権説とが論理必然的に反対の結論を導くことにはならないと思われる。端的に言えば、漁業権を社員権説的にとらえたとしても、本件判決と同様の結論に至る余地は十分にあると考えられる。
  なぜなら、組合員の行使権が漁業法に具体化され(8条1項)、一定の要件のもとで一定の保護が与えられている(8条5項、3項)以上、他の法条の形式的適用(水協法50条4号)により保護の態様に不均衡が生じれば、これを是正するため、基本となる条文を類推適用することが許されるのは当然で、それは漁業法にとどまらない法解釈一般に通じるあり方と思われるし、本件で問題となっているのは、漁業権放棄に際し対内関係においてどのような手続きの履践が必要かという点であるから、漁業権は組合に帰属し行使権は組合員としての地位によって派生する対組合的権利に過ぎないと考える社員権説からしても、組合内での多数決のあり方に関する漁業法8条5項、3項の類推を認めることに論理的な問題があるとも思えない。更に、社員権説といえども、対内関係の瑕疵を組合と第三者との間の法律関係に一切及ぼしてはならないとまでは主張してはいないはずであるから、本件原告らが、対内関係の手続きの瑕疵を理由として組合の漁業権放棄及びそれから派生した埋立免許付与の瑕疵を主張することもまた、社員権説と必ずしも矛盾するものではないと思われるからである。
4.漁業権の性格を巡る総有説と社員権説の対立は、漁業権の沿革と絡んで極めて重要な争点であることは確かであるが、どちらの説をとるかによって漁業法等の個別条項の解釈の細部までが論理必然的に決まるとか、個別の解釈問題について常に反対の解決を導くとか考えるのはいきすぎであると思われる(宮川・別冊ジュリストの分析もそのような趣旨ではないと思う)。


【本判決の先例価値】
1.最高裁は、共同漁業権放棄対価としての補償金の配分手続きに関する事案(最判平成元年7月13日。第2回勉強会)において、共同漁業権について「社員権説の立場をとることを明らかにした」(判タ708号157頁のコメント)。よって、本件判決の共同漁業権の性格についての前記判示部分は、最高裁により否定されたことになる。
2.平成13年の漁業法改正により、漁業共同組合が共同漁業権を放棄しようとする場合には8条3項が適用されることになり(31条)、立法的な解決が図られている(田中克哲・最新・漁業権読本265頁)。
3.公害運動としての成果については、前記インターネット記事を参照。


【本件におけるその他の争点】
  本件控訴審では、上記に検討した点の他、以下の点についても争われたが、本勉強会の趣旨からは若干外れるため、紹介、検討を割愛した。

○漁業権一部放棄の場合になされた漁業権変更免許の効力
(判旨:漁業権の一部放棄に対してなされた漁場を縮小する旨の漁業権変更免許は、漁業共同組合の漁業権一部放棄の届出に対する受理の効果を生ぜしめるものにすぎず、右変更免許によって公有水面における漁業権消滅という権利変動を形成するものではないと解すべき)

○公有水面埋立法4条1号の同意と表見代理の成否
(判旨:公有水面埋立法における埋立免許は、埋立免許者たる都道府県知事の意思表示によって、埋立出願者に対し法律上有効な埋立権を設定する行政行為であり、かつ、出願者の意思に拘束されないいわゆる公法上の単独行為と解すべきものであるから、私法上の取引原理である表見代理の法意が適用または類推適用されるべきではない)
                                                       以上

参考文献
別冊ジュリスト43号184頁
田中克哲「最新・漁業権読本」264頁      
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漁業法勉強会第3回

◎「区画漁業権放棄の対価として漁業協同組合が取得した補償金の同組合所属の各組合員に対する配分に関して、組合員の理事らに対する損害賠償責任が否定された事例」(平成17年5月12日福岡高等裁判所第5民事部判決)

【事案の概要】
 A漁業協同組合(以下「A組合」という。)所属の組合員ら222名が港湾環境整備事業(中津港廃棄物埋立護岸工事)実施に伴う区画漁業権の一部放棄の対価として取得した補償金を、甲組合理事Yらが、区画漁業権利の一部放棄により現実に損失を被っていない組合員(漁協乙支所)にも配分するという不公平な配分が行ったため、現実に損失を被った組合員Xらの損失が填補されないまま残ったと主張し、組合員Xら(漁協甲支所)が、理事Yらに対し損害賠償請求をなした。
原審は、水産業協同組合法(以下「水協法」という。)37条3項(改正前。改正後39条の6第8項)の理事の第三者に対する責任を根拠に、補償金配分前の組合員Xらが有する期待権侵害があるとして、一部損害賠償請求を認めた。

【条文】
 水協法39条の6第8項
「役員がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、
 当該役員は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。」

【前提事項】
1 区画漁業権とは
  一定の区域内において石、かわら、竹、木等を敷設し、又はこれらの物ないしその他の物によって囲まれた一定区域内において営む養殖業である漁業を営む権利(判旨より)
 * 本件では、共同漁業権については、A組合員全員が有していた。
 * 区画漁業権については、のり、あさり、はまぐり養殖業を内容とした区画漁業権については、漁協甲支所の組合員が有していた。

2 共同漁業権(第1回参照)
 共同漁業権とは、一定の水面を共同に利用して営む漁業権であり、第一種から第五種に分類されている(田中後掲著・21頁以下)。
 漁協組合等で一定の条件を備えるものが免許について適格性を有する。組合そのものが漁業を営むこともできるが、一般には、その組合員である個々の漁民が、共同漁業権の範囲内において各自漁業を営む権利を有する。

【本件の争点】
(1)本件配分行為の違法性の有無(理事としての任務懈怠の前提として)
(2)被控訴人らの期待権に対する侵害の有無及び程度
(3)控訴人らの責任(’ぬ学菎佞紡个垢覦意又は重過失の有無及び期待権侵害に対する故意又は過失の有無)

【原審】大分地裁中津支部 平成10年11月27日判決
 水協法37条3項の理事の第三者に対する責任に基づき損害の一部について原告組合員Xらの賠償請求を認めた。以下、要旨。
   (篏金の配分は総会の特別決議によるべきであるところ、これを経ておらず、本件配分手続は実質的にみてもこれに当たらないから、本件配分手続は違法であり、無効である。
  ◆仝狭霑塙膂らは、行使権を有する漁業権につき、排他的に補償金配分を受ける権利を有するが、これは総会の特別決議によって具体的に発生するものである。
   被告理事らが当該漁業権につき行使権を有していない者に対する補償金の配分を容認、実行したことは漁業協同組合の理事としての忠実義務に違反する。
  ぁ〜躄颪瞭段矛莎弔魴个毒枴されるべき補償金を当該漁業権につき行使権を有しない者に配分したことは、その部分について特別決議を行う機会を消滅させたものであり、条件成就の妨害に当たるとして、期待権侵害による損害賠償請求権が認められる。
  ァ〃誅澄補償金配分前の組合員Xらが有する期待権侵害があるとして、一部損害賠償請求を認めた。

【控訴審】福岡高裁 平成17年5月12日第5民事部判決
  被控訴人組合員Xらの請求をいずれも棄却した。以下、要旨。
   ゞζ欝業権も、区画漁業権も法人としての漁業組合に帰属し、その消滅の対価である補償金も同様である。
  ◆(篏金に対する各組合員の権利は、配分に関する組合の総会の特別決議によって具体的に発生するものであるが、特別決議の前であっても期待権が認められる余地がある。
   補償金の配分に関する特別決議は、漁業補償の場合、漁業権行使の状況ないし操業の実態、組合員等の被る損失の程度、内容等の事情を総合的に勘案した上で、組合員が自治的に配分方法を決すべきものであるから、その配分には種々の要素が関わり合い、かつ場合にはよっては、組合の財務内容の改善、漁港の整備、加工場建設などの組合員の共同の利益のために各組合員への配分以外の形でこれらの補償金を使用することもあり得るなど不確定な要素を多く含んだものである。
  ぁー損椶気譴診枴行為の内容が、恣意的ないし著しく不公平と評価される程度に至っており、配分行為のやり直しも不能となった場合には、特別決議によっても奪うことのできない各組合員に認められた固有の利益を奪うものとして、期待権の侵害となるものというべきである。
  ァ)楫鑛篏金の対象となっている本件各漁業権は、それぞれその行使権
者が異なっているから、本件各漁業権の一部消滅等に伴って各組合員が被る不利益にも違いがあることになる。
    そうすると、実質的公平の観点からすると、本件各漁業権ごとの影響の程度が、本件補償金の配分基準を決めるに当たっては重要な要素となると考えられる。
    本件においては、各漁業権の一部消滅等により各組合員が被る不利益に
応じて配分されるか否かが重要な要素になるというべきである。
  Αゝ甸囘には、本件配分基準の合理性には問題が在ることは否定できない。
    しかし、実施された配分行為の内容が、恣意的ないし著しく不公平と評価される程度に至っているとまではいえず、期待権を侵害したとまではいえない。
  А)楫鑁枴基準が特別決議によらずに決定され、これに基づき本件配分行為が実施されたことについては、本件補償金の配分に当たり、水産業共同組合法が求める適法な手続を踏んでいないことになるから、この点を看過し、配分委員会の決議のみによって本件配分基準を決定することについて異議を述べず、配分行為を実施した理事Yらには、客観的に任務違背があるといわざるをえない。
  ─。疏塙腓砲ける配分事例においては、いずれも配分委員会ないし理事会の決議のみで決定されており、総会の特別決議を経た例はなかった。
    また、本件配分がされたのは(昭和62年12月5日)、共同漁業権放棄の対価としての補償金の配分を総会の特別決議によって行うべきであるとする最高裁判決(前回研究会で検討*後掲)が出される前のことであり、当時は本件と同様に配分委員会を組織して配分を決定することが一般的であったこと、配分基準の内容や決定に至る審議の経過等に照らし、理事Yらには任務懈怠につき悪意、重過失は認められないし、権利侵害に対する故意・過失も認められない。

【研究分析】
(1)本裁判例における論点
   ’ぬ学菎佞醗意重過失 → 共同漁業権消滅補償金の配分手続
               → 平成元年最判で解決
  ◆ヾ待権侵害と故意過失 → 漁業補償金の配分基準の合理性

(2),砲弔い董並茖臆鷸仮函
 (ア) 共同漁業権の法的性質
   〜輙説
     共同漁業権は、その実質が明治以前の入会漁業と同じ性質の権利であり、共同漁業権が漁業共同組合に帰属する場合にも、組合は単なる形式的権利主体として管理権能を有するにすぎず、その収益権能は組合員に総有的に帰属する。(この結果、管理権能は組合に、収益権能は組合員にそれぞれ権能が分属することとなる。)
   ◆ー勸権説
     共同漁業権が法人としての漁業共同組合に帰属するのは、一般に法人が物を所有するのとまったく同一の所有形態であり、組合員の漁業を営む権利は、漁業共同組合の構成員としての地位に基づき、組合の制定する漁業権行使規則の定めるところに従って行使できる社員権的権利である(管理権能、収益権能の分属を認めない)。

 (イ)共同漁業権放棄の対価としての補償金の配分手続
    〜輙説の場合
     補償金は、組合員を構成員とする入会集団に帰属する収益権能の喪失に対する補償として、入会集団に総有的に帰属することとなり、その配分は、原則として組合員の全員一致の協議によるべきであり、協議が成立しない場合、協議によることができない場合は、裁判上の分割(民法258条1項)によることとなる。
   ◆ー勸権説の場合
     補償金は、法人としての漁業共同組合に帰属し、その組合員への配分は、組合の総会決議によるべきこととなる。そこで、この場合の総会決議が水産業協同組合法48条6号による通常決議をもって足りるか(富山地裁高岡支部 昭43.5.8 判例時報554号64頁)、同法48条1項9号、50条4号の趣旨に照らして、総会の特別決議が必要となるかのいずかとなる。 
     最高裁は、共同漁業権及び組合員の漁業を営む権利の法的性質について、総有説の考え方を排して社員権説の立場をとることを明らかにした上、漁業権消滅補償金の配分手続について、共同漁業権の帰属主体である当該漁業組合協同組合の総会の特別決議によるべきことを明らかにしたものである。
     すなわち、本判決では、共同漁業権が、沿革的には、入会的権利と解されていた地元専用漁業権ないし慣行専用漁業権にその淵源を有することは疑いがないとしつつも、昭和37年の漁業法改正により、共同漁業権は、古来の入会漁業権とはその性質を全く異にするものであるとする。

 (ウ)最高裁判旨(平成元年7月13日最判(前回資料、木原先生レジュメを引用))
 「共同漁業権は、古来の入会漁業権とはその性質を全く異にするものであって、法人たる漁業協同組合が管理権を、組合員を構成員とする入会集団が収益権能を分有する関係にあるとは到底解することができず、共同漁業権が法人としての漁業協同組合に帰属するのは、法人が物を所有する場合と全く同一であり、組合員の漁業を営む権利は、漁業協同組合という団体の構成員としての地位に基づき、組合の制定する漁業権行使規則の定めるところに従つて行使することのできる権利であると解するのが相当である。そして、漁業協同組合がその有する漁業権を放棄した場合に漁業権消滅の対価として支払われる補償金は、法人としての漁業協同組合に帰属するものというべきであるが、現実に漁業を営むことができなくなることによつて損失を被る組合員に配分されるべきものであり、その方法について法律に明文の規定はないが、漁業権の放棄について総会の特別決議を要するものとする前記水産業協同組合法の規定の趣旨に照らし、右補償金の配分は、総会の特別決議によつてこれを行うべきものと解するのが相当である。」

 (エ)本裁判例
 本件では総会の特別決議を経ておらず任務違背はあるが、最高裁判決前であり、当時は本件と同様に配分委員会を組織して配分を決定することが一般的であったこと、配分基準の内容や決定に至る審議の経過等に照らし、理事Yらには任務懈怠につき悪意、重過失は認められないとした。

(3)△砲弔い撞業補償金の配分基準の合理性
 (ア)本裁判例の枠組
  (あ)補償金に対する各組合員の権利そのものは総会の特別決議によって具体的に発生するが、特別決議の前であっても期待権が認められ、実施された配分行為の内容が、」鶲嫖ないし著しく不公平と評価される程度に至っており、配分行為のやり直しも不能となった場合には、特別決議によっても奪うことのできない各組合員に認められた固有の期待権を侵害するものとなる。
  (い)客観的には、本件配分基準の合理性には問題が在ることは否定できない。
     しかし、実施された配分行為の内容が、」鶲嫖ないし著しく不公平
と評価される程度に至っているとまではいえず、期待権を侵害したとま
ではいえない。

 (イ)分析
    配分基準が合理的でなくとも、恣意的ないし著しく不公平と評価される
程度に至っていなければ、期待権侵害は発生しない。

 (ウ)問題点
    「恣意的ないし著しく不公平」と評価される場合は、どのような場合か?
  期待権侵害が生じうる場合が極めて限定されており、ほとんど生じ得ない
 ように思われる。
    また、どのように配分基準の合理性を確保する態勢を整えるべきか?

  (あ)指導通達「漁業補償金の配分について」
    (昭和45年11月21日、45―8161 水産庁漁政部長)
     この通達は、漁業補償金の適正な配分がなされ、漁業協同組合の運営が円滑に行われている漁業協同組合の漁業補償金の配分事例を調査した結果、漁業協同組合に理事会とは別に漁業補償金の配分に関する委員会等(配分委員会)を設置して、その配分委員会を中心にして漁業補償金の配分を行っているものが多いことから、漁業補償金の配分においては、配分委員会を中心としてまず明瞭な配分の基準を決め、そして、この配分の基準に基づき個々の配分対象者の配分額を決定し、支払いを行うのが適切な方法の一つであるとして、配分委員会を設置する事により公平かつ適正な配分を行うように指導している(最新・漁業権読本 228頁)。
    *問題点
     配分委員会の構成メンバーの選出方法が不明確であり、指導が抽象的である。
     前回の研究対象判例の原審が配分手続きに全員一致を求めていた背景に、
     漁協における前近代性の残存があるとした場合、配分委員会の構成そのものが「恣意的ないし著しく不公平」である場合がありうる。
  

  (い)参考裁判例
   (顱傍楮蠱郎枴神7年3月31日判決(確定)
      昭和56年に受領した新港建設及び空港拡張のための漁業権補償金を、漁協が組合員に配分するにあたり、具体的な配分方法が組合員の委任の趣旨に反しないかが争われた事案であり、そこには多様な利害が絡んでいるので、配分委員が選任された以上、配分委員に合理的な裁量権が与えられているとした。
      その上で、新港建設による補償金の配分については合理性がないとは言えないとした。

   (髻吠_高裁平成8年4月19日判決
     (顱砲汎韻幻共事業の損失補償の配分であるが、異なる漁協が被告とされている。
      原審は、新港建設による補償金の配分については合理性がないとは言えないとし、一方で、空港拡張に伴う補償金の配分については、依存度割合を新港建設の際の基準より小さくしたことは委任の趣旨、内容の範囲を逸脱していると認め、請求を一部認容した。
      控訴審は、新港建設による補償金の配分のみならず、空港拡張に伴う補
償金の配分についても、一連の交渉経過を踏まえ、漁業の実態に則し、全
組合員の利害を調整して配分したもので合理性があり、相当であるとして
控訴を棄却した。
                                 以 上

<参考文献>
 判例タイムズ癸隠隠坑検複横娃娃.3.1) 273頁以下
 田中克哲著「最新・漁業権読本」

漁業法勉強会第2回

【事案の概要】
Y漁業協同組合がその有する共同漁業権の一部を放棄したことの対価として取得した補償金について、Yの総会において、当該補償金を一定の基準に基づき組合員に配分することとし、同基準に基づく各組合員への具体的配分額の決定を執行部役員に一任する旨の決議が多数決により成立したが、同決議を不満とする組合員が決議の無効確認を求め提起したものである。

【争点】
・共同漁業権の法的性質及び組合員の漁業を営む権利との関係
・漁業権消滅補償金の配分手続

1 共同漁業権の法的性質(前回の報告参照)
 ・総有説
  共同漁業権は、その実質が明治以前の入会漁業と同じ性質の権利であり、共同漁業権が漁業協同組合に帰属する場合にも、組合は単なる形式的権利主体として管理権能を有するにすぎず、その収益権能は組合員に総有的に帰属する。(この結果、管理権能は組合に、収益権能は組合員にそれぞれ権能が分属することとなる。)
 ・社員権説
  共同漁業権が法人としての漁業協同組合に帰属するのは、一般に法人が物を所有するのとまったく同一の所有形態であり、組合員の漁業を営む権利は、漁業協同組合の構成員としての地位に基づき、組合の制定する漁業権行使規則の定めるところに従って行使できる社員権的権利である(管理権能、収益権能の分属を認めない)。

2 共同漁業権放棄の対価としての補償金の配分手続
 ・総有説の場合
  補償金は、組合員を構成員とする入会集団に帰属する収益権能の喪失に対する補償として、入会集団に総有的に帰属することとなり、その配分は、原則として組合員の全員一致の協議によるべきであり、協議が成立しない場合、協議によることができない場合は、裁判上の分割(民法258条1項)によることとなる。

 ・社員権説の場合
  補償金は、法人としての漁業協同組合に帰属し、その組合員への配分は、組合の総会決議によるべきこととなる。そこで、この場合の総会決議が水産業協同組合法48条6号による通常決議をもって足りるか(富山地裁高岡支部 昭43.5.8 判例時報554号64頁)、同法48条1項9号、50条4号の趣旨に照らして、総会の特別決議が必要となるかのいずかとなる。 

【最高裁判旨】
「共同漁業権は、古来の入会漁業権とはその性質を全く異にするものであって、法人たる漁業協同組合が管理権を、組合員を構成員とする入会集団が収益権能を分有する関係にあるとは到底解することができず、共同漁業権が法人としての漁業協同組合に帰属するのは、法人が物を所有する場合と全く同一であり、組合員の業を営む権利は、漁業協同組合という団体の構成員としての地位に基づき、組合の制定する漁業権行使規則の定めるところに従つて行使することのできる権利であると解するのが相当である。そして、漁業協同組合がその有する漁業権を放棄した場合に漁業権消滅の対価として支払われる補償金は、法人としての漁業協同組合に帰属するものというべきであるが、現実に漁業を営むことができなくなることによつて損失を被る組合員に配分されるべきものであり、その方法について法律に明文の規定はないが、漁業権の放棄について総会の特別決議を要するものとする前記水産業協同組合法の規定の趣旨に照らし、右補償金の配分は、総会の特別決議によつてこれを行うべきものと解するのが相当である。」

【解説】
1 第一審(昭和57年9月6日 大分地方裁判所)
  共同漁業権が入会的権利であること、漁業補償金が総有の財産であることしつつ、総有財産の配分にあたっては、構成員の全員の一致を要するものではなく、多数決決議によるとの慣習が成立していることから、多数決決議による本件総会決議は有効である判断した。

2 原審(昭和60年3月20日 福岡高等裁判所)
  現行漁業法における共同漁業権は、入会的権利であり法人たる漁業協同組合が管理権を組合員を構成員とする入会集団が収益権能を分有する関係にあると認められるところ、本件補償金は、右収益権能喪失によ損失の補償を目的とするものであるから、Yの組合員を構成員とする入会集団に総有的に帰属し、構成員たる個々の漁民への分割は、特段の事情のない限り、構成員全員一致の協議によるのを原則とし、右協議が成立しないときは、民法258条1項を準用するほかないとして、全員一致を欠く本件総会決議を無効とした。

3 最高裁判決について
(1)原審に対し、本判決は、共同漁業権及び組合員の漁業を営む権利の法的性質について、総有説の考え方を排して社員権説の立場をとることを明らかにした上、漁業権消滅補償金の配分手続について、共同漁業権の帰属主体である当該漁業組合協同組合の総会の特別決議によるべきことを明らかにしたものである。
  すなわち、本判決では、共同漁業権が、沿革的には、入会的権利と解されていた地元専用漁業権ないし慣行専用漁業権にその淵源を有することは疑いがないとしつつも、昭和37年の漁業法改正により、共同漁業権は、古来の入会漁業権とはその性質を全く異にするものであるとする。

(2)昭和37年改正で、いわゆる組合管理漁業権の規定(漁業法8)の改正が以下のとおり実施された。
  旧漁業法8条
  漁業協同組合の組合員であって漁民(漁業者又は漁業従事者たる個人をいう。以下同じ。)であるものは、定款の定めるところにより、当該漁業協同組合又は当該漁業協同組合を会員とする漁業協同組合連合会の有する共同漁業権、区画漁業権(ひび建養殖業、かき養殖業、内水面における魚類養殖業又は第三種区画漁業たる貝類養殖業を内容とするものに限る。)又は入漁権の範囲において各自漁業を営む権利を有する。
  改正漁業法8条
  漁業協同組合の組合員(漁業者又は漁業従事者であるものに限る。)であって、当該漁業協同組合又は当該漁業協同組合を会員とする漁業協同組合連合会がその有する各特定区画漁業権、若しくは共同漁業権又は入漁権ごとに制定する漁業権行使規則又は入漁行使規則で規定する資格に該当する者は、当該漁業協同組合又は当該漁業協同組合を会員とする漁業協同組合連合会の有する当該特定区画漁業権若しくは共同漁業権又は入漁権の範囲内において漁業を営む権利を有する。

(3)この改正をとらえ、最高裁は、ず、?共同漁業権の免許は、漁業協同組合(又はその連合会)に与えられ、?漁業協同組合の組合員は、当該組合等が共同漁業権ごとに制定する漁業権行使規則で規定する資格に該当する場合に、その有する共同漁業権の範囲内において漁業を営む権利を有し、組合員であっても漁業権行使規則に定める資格要件を充足しない者については、行使権を有さないとされる。この結果、?全組合員の権利という意味での「各自の行使権」は存在しないものとする。
   以上より、このような制度下における共同漁業権は、古来の入会漁業権とは性質を異にするので、原審のように、法人たる漁業協同組合が管理権を有しつつ、組合員を構成員とする入会集団が収益権能をそれぞれ分有する関係にあるとはいえず、組合員は、組合に帰属する共同漁業権を組合の構成員としての地位に基づき、組合の制定する漁業権行使規則の定めるところに従って行使することのできる権利を有するにすぎないと解するのが相当であるとして、共同漁業権の法的性質について社員権説をとることを明らかにした。
   さらに、その分配手続については、補償金が法人としての漁業協同組合に帰属することとなるので、総会決議による分配が必要となるところ、決議の方法としては、水産業協同組合法48条1項9号が「漁業権行使規則若しくは入漁権行使規則又は遊漁規則の制定、変更及び廃止」は総会の通常決議によることを定め、又、同法50条4号「漁業権又はこれに関する物権の設定、得喪又は変更」は、総会の特別決議に加重されている趣旨から、本件補償金の分配にあたっては、総会の特別決議を要するものと判断したものである。

漁業法勉強会第1回

【事案の概要】
Y漁業協同組合が免許を受けた第二種共同漁業権に係る漁場で、組合員XはY組合の制定した漁業権行使規則の定めに従い漁業権管理委員会の許可を得て小型定置漁業を営んでいた。しかし、かねてから漁場における共同漁業権の行使に難色を示していたY組合の他の組合員らと組合員Xとの関係が険悪化し、組合員Xに対して、Y組合においては共同漁業権の行使者の決定権限を総会決議に留保する旨の総会決議が全員一致でされており、Xの漁業権行使は総会の承認決議を経ていなから違法であるとして、Y組合の通常総会において、Xの漁業権行使を禁止する旨の決議がされ、さらに、Xが上記決議に従わなかったとして、臨時総会においてXを除名する決議がされるに至った。そのため、組合員XがY組合に対し、上記各決議の無効確認を求めた訴訟である。

【争点】
共同漁業権行使における行使者の定めにおける漁業権行使規則と総会決議の効力関係

【判旨】
共同漁業権についての法制度にかんがみると、漁業協同組合が、その有する共同漁業権の内容で漁業を営む権利を有する者の資格に関する事項その他の漁業法8条2項に規定する事項について、総会決議により漁業権行使規則の定めと異なった規律を行うことは、たとえ当該決議が水産業共同組合法50条5号に規定する要件を満たすものであったとしても、許されないものと解するのが相当である。

【解説】
1 漁業権の性質
漁業権とは、漁場において一定の漁業を独占的・排他的にすることができる権利である。
◎ 漁業権の種類
 ・定置漁業権
 ・区画漁業権
 ・共同漁業権の3種類がある。
◎ 漁業権の特徴
a) 都道府県知事の免許によって設定され、存続期間の経過により消滅する権利であること
b) 公共の用に供する水面またはこれと隣接して一体をなす公共の用に供した水面の特定の区域における権利であること
c) ある特定の漁業を他人を排斥して営むことができる権利であること
◎ 法律上の性質
(法的性格の詳細につき田中克哲著「最新・漁業権読本」50頁以下)
物権とみなされ、土地に関する規定が準用
但し、物権変動は免許漁業原簿に登録しなければ第三者に対抗できない。他方、移転について制限があり、また抵当権等の規定の適用がない、公益の必要から変更・取消等がなされる、行使方法が海区漁業調整委員会によって規制を受ける、といった、民法の一般の物権と異なる性質も有している。

2 共同漁業権
共同漁業権とは、一定の水面を共同に利用して営む漁業権であり、第一種から第五種に分類されている。
※ 共同漁業権の種類(田中前掲著・21頁以下)
 ・第1種共同漁業:定着性の水産動植物の採捕を目的とする漁業
 ・第2種共同漁業:小型の定置、固定式刺し網等の漁具を移動ないように敷設して来遊する魚介類を漁獲する漁業
 ・第3種共同漁業:地引き網漁業とこれと性質を同じくする動力船を用いない地こぎ網・船びき網、餌をまいてぶり等を集めて釣り等で漁獲する飼い付け漁業、築磯漁業等
 ・第4種共同漁業:三重県等で行われている特殊な漁法寄魚漁業と広島県等で行われている特殊な漁法の鳥付こぎ釣漁業
 ・第5共同漁業:河川・湖沼の内水面と封鎖性の海面であって、他との入会関係がほとんどない海面(京都府の久美浜湾、与謝海)で行われる漁業で、第1種共同漁業権に該当する漁業以外の漁業を対象とする。(琵琶湖、霞ヶ浦北浦、浜名湖、中海、加茂湖、サロマ湖、風蓮湖、厚岸湖といった大きな湖については海面と同じ扱いとする。)
共同漁業権は、関係地区の漁業協同組合、または漁業協同組合連合会で一定の条件を備えるものが免許についての適格性を有する。
組合そのものが漁業を営むこともできるが、一般には、その組合員である個々の漁民が、共同漁業権の範囲内において各自漁業を営む権利を有する。
組合がどのような方法で組合員にその漁業を営む権利を付するかが重要な問題となる。漁業法はこの点について、免許を付与された漁業協同組合法等が制定する漁業権行使規則で規定する資格に該当する組合員のみが当該共同漁業権の範囲内において漁業を営む権利を有するものとする。

3 漁業行使権・漁業権行使規則
(漁協組織研究編「水協法・漁業法の解説」336〜339頁以下)
 (1)漁業行使権
 漁業行使権とは、組合員の漁業を営む権利をいう。漁業権の範囲内において組合員が漁業を営むもので、漁業権と異なり物権であると規定されていないが物権的性格を有し物権的請求権を派生できる権利とされている。また漁業行使権の侵害は親告罪として刑罰の対象ともなっている。
 (2)漁業権行使規則
 組合管理漁業権における組合とその組合員との関係は、組合が漁業権の管理及び処分の権能を有し、組合員が漁業権の収益の権能を有するものとして、漁業権の質的内容が分解されており、また組合員の個別的な収益権能の上に組合が全体的な権能をもって臨んでいる、ということができる。
 漁業権行使規則は、漁業権者たる漁協または漁連の自主的な内部則で、知事の認可により効力が発生する(制定・改廃とも)。
行使規則の内容は、漁業を営む権利を有する者の「資格」および漁場の管理方法を定めること(行使権者の遵守事項を定めること)である。
資格要件を定める漁業権行使規則が恣意的な運用をされることを防止するためその制定、変更および廃止については、以下の要件が必要とされる。
 ・総組合員の半数以上が出席し、その議決権の3分の2以上の多数による議決を要すること
 ・都道府県知事の認可を受けること
 ・規則制定前に、組合員のうち、当該漁業権に係る漁業の免許の際において、当該漁業権の内容たる漁業を営む者であって、当該漁業権に係る漁業法11条で規定する地元地区(自然的及び社会経済的条件により当該漁業の漁場が属すると認められる地区をいう。)の区域内に住所を有するものの3分の2以上の書面による同意を得ること

4 本件事案における検討
第一審では、総会は組合の総意により組合の意思を決定する必須の機関であり、法令・定款に抵触しない限り組合に関する一切の事項につき議決することができるとし、共漁業権行使者決定の最終的権限は総会が有していたと認め、その総会の決議に反するXの共同漁業権の取得は認められないと判示。第二審は総会決議が共同漁業権行使規則に優先するとして、結論は同様。
これに対して最高裁は、漁業権行使規則の制定手続における都道府県知事の認可着目し、「共同漁業権も漁業権の一種として水面の漁業上の総合利用を図り漁業生産力を維持させるという公益的見地から都道府県知事の免許によって設定されるものであることを考慮して、同規則の制定、変更及び廃止をすべて漁業協同組合等の自治的手続にゆだねてしまうのは相当でないとして、公益的見地から都道府県知事に審査権限を付与する趣旨のもの」と解し、同規則に総会の権限を定めた規定がないことから、同規則と抵触する限度において決議の効力を認めない旨判示した。

<以上の参考資料>
判例時報1617号72頁以下
判例時報1634号190頁以下

<資料説明後の議論における論点>
・漁業権行使規則の定めにおける都道府県知事の裁量の範囲
(以下は次回以降の判例検討に関連して)
・共同漁業権の法的性質論(有説 VS 社員説)
・許可漁業の放棄と補償金
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