音系ダイアリ

Random Note for The Sound & Noise of Daily Life by Nobuo Yamada (abh)

April 2008

17a7a6a2.JPG(すでに承知の方もいると思われますが)池尻にひっそりと狂い咲く孤高の実験音楽ショップ「OMEGA POINT」:Ibe氏と、最近そのオメガの商品リストでもデビューCDが紹介されているアナログカセット・コラージュニスト(←そんな言葉ないと思う/笑)「Burried Machine」:Rockatansky氏による"実験レコード演奏会"なるものが5/7(wed)千駄ヶ谷「Loopline」にて行なわれます。おそらく何やら得体の知れない音源が淡々と流れていくような、そんな予測があります。僕も都合がついたら顔出そうかと思います。

e94205b6.JPG● "Live in Brighton Winter 2004" (Heavy Conversation/CDR)

僕がDouble Leopardsを初めて知ったのは「NO FUN FEST」(2004)のライブDVDだった。その後、何となく機会があったら音盤を買ったりして4枚程集まった。あくまでこの範囲で感じるのはスタジオ作品よりもライブ音源の方が個人的には好みで、彼等の音像の特色であるくぐもった"スモッグ・ミュージック"の度合いがライブ・エア音源でより増幅されている。

特に(以前たまたまユニオンで買った)"Live in Brighton Winter 2004"での30分弱の音像は、相変わらず何処行くワケでもなく、何かが突出していくワケでもなく、ただただ、ここ、もしくはせいぜい数メートルの範囲内で「停滞したまま」淀んでいる、低温度でスローに進行していく(うごめいている)音楽。ノイズとアンビエントの融合とも言えるけれど、このグループの場合、もうちょっと違ったニュアンスがあり、人を癒すワケでも高揚させるワケでもなく、天から何かが降りてくるワケでもなく、地面の方で無為に淡々と停滞したままの音楽。その距離感と温度感が時々耳に丁度いい時がある。/余談だけど、彼等の地べたにしゃがんで演奏するライブスタイルも好み。その辺の姿勢も(音と)絡んでトータルな印象が出来てくる。

http://www.myrecordcollection.org/artists/doubleleopards/dlpage.html

c542fa96.JPG■ ...30センチほどの高さの陶器で出来た花ビンの中にたまたまマイク入れてみたら、外気の音の響きが花ビン内に残響として「モア-...」とこもったエコーになって、その花ビンの持っている物質特有の「響きのトーン(例えば鳴らす物によって必ず音の高低域があるように)」がキーとなって醸し出すドローン状の持続音が生まれた。わかりやすい例えで言うなら(サザエなどの)貝殻を耳にあてれば「ゴー」という外音のドローンが響く、あれと同じですね。...いくつかあった花ビンや壷で試した中では最初の花ビンの響きが一番だったので、まずは部屋の中、そしてベランダに出してしばし(鑑賞しつつ)録音。なんでもない日常音が陶器という空間フィルターを通す事によって生まれる「異形の日常」をしばし味わう。...夕方、早速「応用編を...」というワケで車を出し、近所の大きな街道沿いに停めて、そこで花ビン・ドローンをREC。...行き交う車やバイクの通加音が溶けるように重なり合う。その後、「人ゴミの音はどーなるか」...という興味のままに吉祥寺パルコ横に移動してしばしREC...。「そーいえば...」と、家にあった(サウンドアーチスト)藤本由紀夫氏の音源を聴き直してみる。氏のは屋上に設置されたパイプを使って外音をドローン状に変換させているのもので、今回の僕のアイデア(思い付き)とほぼ似ていたので...。けど、さすが氏の音源はパイプ特有のドローン効果がより強調されてていい感じ。僕が試した花ビン・ドローンはやや規模がチープではあるけれど悪くはないので、これも今後試作を繰り返して作品化を考えたい。/(diary: 2003, 4-1)

■ ...前に道路沿いで「花瓶ドローン」を録ってた時に手前をバイクが通り過ぎる時の花瓶内の響き音がナイスだったので、友人に頼んで中型バイクの後ろに乗せてもらってバイク音を録音。...メットを被って後ろにまたがって、そしてイヤホンしてマイクを仕込んだ花瓶の壷を股に挟んで桜の咲く春の道をしばし走る。当然、かなり気持ちのいい爽快感。でもハタから見たら...いい大人がバイクの後ろで花瓶を抱えているサマ...というのは「ホラ、春だからこーいう人も出てくるわねぇ...」的ないでたちと映ってる事でしょう(笑)。...肝心の音の方は、これもけっこう面白く、特に花瓶の口をテキトーに手でふさいだり開けたりの加減をしていくと、まるでウェーブの様に音の響きがシャープからモコモコへ波打つ(これはまた試したい音)。/(diary: 2003, 4-7)

■ ...もう1作は花ビンにマイクを入れて、周囲の音が中で共鳴し合って発生するドローン効果を収集した「Vase Echoes」(仮題)。大まかには「WP3」と似たような「現象モノ」ではあるけれど、マイクを仕込んだ花ビンから聴こえる持続音の発見から、去年、色々な場所へ行っては試した記録をまとめる。...大通り/バイクで走る/デパートの屋上/水を垂らす...など、全体の作品の輪郭を考えていくと、もうちょっとだけ素材が欲しかった。....で、昨日は(その素材を補う為に)久しぶりにフラフラと楽しき独り遊び=「音収集行動」へ。

何となく前から頭にあったのは「空港近くに行って、時折り上空を通過するジェット機の音がナイスなアクセントになるのでは?」...というアイデアで、思い立ったら実行するべく、昨日、羽田空港に一番近い公園(環八の果て)へ向かう。以前に来た場所とは違っていたけれど、湾岸のちょっと寂れたロケーション。さすがに海風が強い。トラッックやタクシーが休憩・点在している中、花ビンを片手に海沿いのベンチに座りフィールドREC。打ち付ける風の連続性が花ビンの中でそこそこナイスな倍音ドローンを醸し出す。そして5分に1回位の割合で飛行機が着陸する。でも、期待してた程は「飛行機ノイズ」は(距離的な条件もあるのか)モストなインパクトまでは行かなかった(離陸の時の方がよりノイジーだと思う...でも、地元空港騒音反対住民からしたらお気楽な発言)。...結局3テイクほど収集して、その録音風景(花ビン+海+遠くで飛行機)フォトをパチリ。まあまあの雰囲気。/これで今後まだちょっと足りなかったら補い収集を追加するにしても基本ラインは揃ってきた。/(diary: 2004, 5-14)

■ ...「Vase Echoes」は、その名の通り、「花瓶を使った音響」作品。...単純に花瓶の中にマイク仕込んで、その花瓶に何かしらの干渉(風や水や車などの環境音)を与える事で生じる花瓶内の「ドローン・エコー」をいくつか試したものを収録。...イヤホン越しに聴こえてくるそれらのドローンはその特性上、外気から一膜こもった「容器内音響」の表情を見せる(サザエなどに耳を当てて聴こえるあの現象と原理は同じ)。それぞれパート別に...路上/(羽田)空港そば/バイクに乗って/水を垂らして/デパートの屋上...と分けた。それらの「状況の違い」が通して聴くとまあまあバランス取れてるかな...と思う。(前の「WP3」が割と騒がしいのに対して)こっちは全体的にやや落ち着いた印象になった分、より「鑑賞度」は高くなったかと思う。/(diary: 2004, 6-18)

8a64de2d.JPGDisc 1「Metalic Rain」に関して、その「料理した」結果、感じたのは...同音をオーバーダブする事で、単純に雨音(+打ち付ける金属パーツ音)の数が倍になる事で、その音響の「スピード感」が出たという事。加えて、ランダムに打ち付ける雨音というのはある意味、フリー即興的な雰囲気も持っていて、それが倍の「手数」になる事でも、よりホットな(雨音による)フリー即興演奏に仕上がる。「レインドロップ」という「バチ」で金属パーツという「タイコ」を打ち続けるパーカッシヴな「現象即興」。...なものだから、音響の感触としては「雨音」...という叙情的な雰囲気は一切なく、金属的。...仮焼きマスター盤を(いつもやるように)寝る時にイヤホンで聴きながら寝に入るワケだけど、今回に限ってはやたらやかましくて眠れやしない!(笑)...途中でスイッチ切って寝た。

...そんな感じで次のDisc 2「Water Pipe Vibration」...も同様の過程を踏む。...このカテゴリーは(Metalic Rainと同時期の)去年録り溜めた素材の中から「台所の水道」を使って様々な「容器」に細く垂らした水の「振動」を物に与えた時に生じる音響を収録したもの。...これもそれぞれ...プラスティック・コップ/ジュース缶/鍋のフタ/陶器など...で試した。ここではさらに「水」という質感から変容したメタリック・ノイジーな現象を醸し出す。幼稚なまでに色々試した結果、「Metalic Rain」よりはバラエティに富んでいる仕上がり。

今回の3CDR「WP3(water point 3)」は、「水」という素材をあくまで「音が発生する為の動力原理」...として捉えている為に、通常の「水的作品」とは印象が別の物になっていると思うし、そここそが(面白い)ポイント。...ナチュラル系素材を使っても、僕の場合、出口はいつも「メタルジャンク」になってしまう。/ちょっと一息付いたら、次は残りのDisc 3「Shower Jamboree」(シャワーの水滴音響シリーズ)の編集作業へ...。/(diary: 2004, 6-8)

567e6014.JPG■ ...土曜日は激しい雨音で目が覚めた。僕のベッドは窓際ビッタリなので、けっこう外部の音で起こされる事が多い。この日もベランダに置いてある金属製パイプなどが「ティンコン」...と鳴っていて、しかし耳から脳の指令はすかさず「雨音バリエーション」の音収集モードに切り替わる... /まずは最近試してきている「花瓶」を使ったバージョン。花瓶の中にマイク入れて急いで窓を閉める(そーしないとジャンジャン雨が部屋まで吹き込んできて窓際ビッタリのベッドの枕元が濡れてしまう...っていうか、すでに濡れている)。花瓶内で回る「モアー」とした外音のエコーに加えて花瓶陶器の表面を強い雨が叩く時に「ピン!」という高い音がアクセントになっている。...そーなると僕の中の何かがスイッチオン。...部屋の中を見渡して雨に打たれる事によって面白く展開しそうな素材アイテムを見つけては次々にベッドサイドの窓を開けては閉めてイヤホンで聴いてREC、しては部屋に戻して次のアイテムを...という繰り返しで昼まで数時間。おかげで枕元はビチャビチャに。/そんな「雨音(変換)バリエーション」作業の中で他に面白かったのは...シンバル、アルミのダストBOX、ペイント缶...などの、やはり金属素材。...細かい雨の反復音が背景に薄く下地として響いて、時折り(電線や屋根から)落ちる大粒の雨の強いアタック音が耳にいい感じの金属的刺激。...これらもある種の世界感があったので、「雨音モノ」として作品化したい。/(diary: 2003, 4-7)

■ ...でも今回、自分にとって個人的に一番共感出来た作品は...ブライオン・ガイシンという50's ビートニクの作家の、50's末から60's初頭にかけて南フランスのプールで録音されたという音源がナイスだった。水/風などの環境音がプールというエコー・フィルターを通して鈍く響いて、数人で演奏される音楽以前の奇妙なくぐもった音世界。音質の悪さも手伝って、こもったエコーが逆に日常が反転された奇妙な白昼夢を感じさせた。/...そんな音世界にその場でちょっと感化されて、夜中、水を使って出来上がる現象モノでしばし遊び実験...。まずは花瓶の中にマイク入れて、フロ場に置いて、水を花瓶の3分の1程入れた所で逆に水を抜いていく過程の音の流れ/次からは台所で...水道の水を微妙に細く調節して、下にコップや缶やナベのフタ、ノコギリなどを当てる。その、当たるポイントも調節して、不思議な響きになるポイントを探す。...そんなこんなで、水の落ちる音とはいえ、けっこうモノ(作用)によっては出来上がる音は、まるでエレクトリック・ドローンな感触になったりする所が面白い。ポイントは水がモノに当たる接点で、細く出ている水が、(微妙な調節によって)下の方で微妙に振動している時があって、その「水の震え」の部分にポイントを当てると前途したようなサウンドになる(...気が付いたらMD1本終わってました)。/(diary: 2003, 5-20)

■ ...今回特にナイスな音に出会ったのは主に2つ...まず、「風呂場の洗面所」。...ここの水道の蛇口をちょっとだけひねって水を出してすぐに止める。その時はシャワーの方にしていてシャワーの口から水が出るか出ないかの頃合いに水を止める。ミニマイクを蛇口の所に置いてイヤホンで聴くと、水のしずくが微妙な(どこに向かったらいいか迷ってるような)動き(逆流?)をしているのか、その微妙な蛇口やホースの空間の中で、まるで水という生き物が...歌っているような、踊っているような、鳴いているような、実に表情豊かな現象が起こる。それらの音の<現象アンサンブル>は、聴き方によってはチュードアっぽくもある(笑)。...これは今後数回に渡って録り溜めて編集すれば一つの作品化として成立しそう。/(diary: 2003, 4-1)

12851215.JPG(Tape Recorder's〜に続いて、以前HPで公開していた製作ノートのテキスト部分を再度掲載します)

■ MONO-TE-OTO の為の制作ノート(from 音系ダイアリ/ '03 11-14)

12月に最終仕上げ予定の2つの新作のうち、一つ目(abh-06/ 3CDR)のマスター盤がちょっと前に出来て、しばらくはリスナーの視点で繰り返し聴きながらOKか判断してた。タイトルは...「mono-te-oto」。...これはそのものズバリの...<「物」をいじって「音」を出す>...という、初歩的な聴覚快楽(感触)を淡々と並列に提示した作品で、全体でいくつかはオーバーダビングものはあるけれど、ほとんどは「鳴らしたまま」の素材感を生かした感じに。(仮)マスター盤をリスナーとして客観的に聴いていくと、当初は意識していなかった、その作品の全体の印象からくるイメージというのも不思議に浮かび上がってくる。(ともすれば物音の素材集的な面もあるけれど)ちょっと自分でも意外だったのはトータルの印象が「淡々としてクール」...という事だった。...それはほとんど余計な演出もしないで、ただ次々に(しかも単純に録音した順番で)音源を並べていった、という結果でそーいうアルバム・イメージになったのかと思う。それはちょっと面白かった。...加えて改めて思ったのは、やはり僕は「音の発生源が形の無いもの」...というのより、まず「物」ありき、という事だった。まず知覚/認識した「物(Object)」があって、それらに対する嗜好(フェチ)感情があって、そこからそれらを「手でいじって(感触)」音を奏でていく...という快楽を探っている。なのでリスナーとしてもまず反応してしまうのは「何かしらの物質が具体的に鳴っている」...というイメージがあるものになる。

3月10日/この日、仕事の打ち合わせでけっこう久しぶりに六本木へ出向く。まず電車で行くのがかなり久々なので(乗り継ぎとか)どーいう経路で行ったらいいか、事前にネットで調べる(笑)。...調べたら大江戸線を使うらしく、もしかしたらこの線が開通してから初めてか(もしくは2回目か、忘れた)...とにかく何となくこの日の行動や行く場所、含めて普段とはちょっと毛色が違うので何となく(いつもの)テレコを持参。

...で、地下深い大江戸線に乗ったら、電車が闇の空洞の中を走り抜ける際に坑内に発生する音響がいっぱしの重層感ある金属系ドローンの趣きがあり、すかさずRecしたままモニタリングして楽しむ。/他には長いエスカレーター...このベルト部分にマイク付けてそのまま昇っていくと音的にはそれなりに面白い(以前にも何度か録音した事があったけれど、この辺はいずれ素材になる)。

このページのトップヘ