中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

中東の窓 最近の中東情勢

トランプ大統領は関税政策を梃子に、america first政策の下、国際情勢に大きな変化をもたらそうとしているようですが、中東も例外ではなく、この1年間程度でも中東情勢は大変革しつつあるように感じます。

このところ、当方体調を崩しており、中東情勢も十分にフォローしていないので、はなはだ心もとないところではありますが、最近の中東情勢につき、次のようにその基本的構造が変化しつつあるような気がしてなりませんが、皆さんどう感じられますか?
  • この1年くらいの間、中東ではイランとその傘下のグループ対米イスラエル勢力の対峙というパターンが続いてきたが、米の支援を受けるイスラエルの積極的な軍事、情報作戦を受け、イランは効果的な対応策もとれず、口先での強硬姿勢と実際の行動との乖離が目立ってきている。
  • イランとイスラエル、米等は大規模なミサイル、ドローン戦闘を2回にわたり行ったが、イランは対空防衛、特にレーダー網等に深刻な打撃を受け、2回目のミサイル攻撃に対する反撃を、いまだに実施しえないでいる。
  • その後イランはロシアとの接近を強め、ミサイル戦能力の強化を図っているようだが、現状でイランが第3次ミサイル戦争にでも出れば、イスラエル等は、むしろこれを好機として、イラン本土の核関連施設を含む重要軍事インフラに対する攻撃をするのではないかとみられ、ごく近い将来、そのような攻撃に出る兆候はみられないようである。
  • イランに関しては、ミサイルがだめなら配下のゲリラによるゲリラ戦もあるとされてきたが、これもIDF(イスラエル国防軍)がヒズボッラー等をパレスチ、レバノン等で痛めつけ、またイランからの武器支援も締め付けていて、むしろIDFは南部レバノンやパレスチナ等での戦闘再開を期待している可能性さえ見られる。
  • イランの配下で、最も強力な勢力であったシリアは、アサドのアラウィ政権が崩壊したが、今のところ、不安定なポストアサド情勢が続いているも、イランやロシアの勢力低下もあり、近い将来の親イラン勢力復活の可能性はみられない。
  • シリアについては、むしろ同国が今後の東アラブの不安定化の動因となることが懸念される。
  • さらに言えば、イラン内部でも、女性のヒジャブ着用の仕方についての政権の強硬政策が後退を余儀なくされる等、政権の弱体化も見られる。
  • エジプト、カタール等が米とともに進めてきたガザの停戦と人質等の交換は、米大横領まで巻き込んで、ようやく第2次交換まで(だったか?)動いたが、ここにきてトランプは今後、ガザ再建のため、パレスチナ人をとりあえず、近隣諸国に暫時移駐させ、その間のガザは米(軍?)が管理するとのアイディアをしめした。
  • これについては、パレスチナ人を臨時的に受け入れる先と目されているエジプトやヨルダンが猛反対している他、すべてのアラブ諸国も反対を表明し、国連も事務総長以下「国際法違反」として反対しており、トランプと言えどもどこまで無理が通るか注目されている。
(個人的な見解だがこれだけアラブ社会等が一致して反対している問題を無理して強行すればで、現場に派遣される米兵等がテロの標的になることは半ば必然ではないか?という気さえする)

最近中東情勢のフォローさえ十分にできていないので、当てにならない見方とは思うも、とりあえず。

中東の窓 イエメンをめぐる攻撃

イエメンに対するイスラエル国防軍(IDF)の攻撃については、先にお伝えしましたが、al qods al arabi は、IDF攻撃の2日後、米英空軍がイエメンの首都サナア及びホデイダ等のhothy軍拠点を空爆したと伝えています。

これはhothy系のTV局が報じたところを報じたものとのことですが、サナアの攻撃は、その南西部でhothyがミサイル等の格納に使用している拠点を攻撃したものの由。

ただし爆撃の成果については不明。

hothyグループは、これはガザにおけるIDF の大量殺戮に対する報復で、今後とも航海、イエメン近海、バーブルマンデブ、アデン湾等で、米英等の艦船に対数攻撃は、ガザでの殺りくが続く限りつづけられると声明している。

またhothyグループは同じく21日もイスラエル中部に対してミサイル攻撃を行い、数名が負傷した由。
とりあえず。

الحوثيون: عدوان جوي أمريكي بريطاني على صنعاء- (فيديو)

中東の窓 IDFのイエメン攻撃

英米空軍のイエメンのhothyグループ攻撃については先に報告しましたが、イスラエルのメディアは、ハマス、ヒズボッラが大きな打撃を受けた後、アサド政権も崩壊し、現在残るイラン傘下の反イスラエル勢力は、イエメンのhothyグループだけだとして、ネタニアフ首相が、同グループが今後ともイスラエルに対する攻撃を続ければ、手ひどい教訓を受けるだろうと警告したと報じています。

jerusalem post net等によれば、イスラエル国防軍(IDF)は19日早朝、20機の戦爆撃機が2000kmの距離を、空中給油機に伴われ飛行して、首都サナアの他ホデイダ等を攻撃し、60発の爆弾を、燃料タンク、8隻のタグボート、発電所等に投下して大きな損害を与えたとのことです。(hothy側は、損害は軽微としている模様)

これらメディアは、米英空軍はこれまでも紅海の水運に対するhothy軍の攻撃に対する報復として、ホデイダ等を空爆してきたが、これらの攻撃は発射準備のできた地対地ミサイル等を狙う等のもので、あまり大きな打撃は与えていないとしている。

また今回の攻撃に関してイスラエルは米軍等には事前通告はしていない由。

とりあえずのところ以上だが、IDFもhothy軍もこれまでのところ、停戦に関心は示してない模様で、いわゆる抵抗の枢軸(または悪の枢軸)で唯一戦力を維持しているhothyとイスラエルの戦闘は今後も続き、紅海の通行に対する危険は続きそうです。

とりあえず。

https://www.jpost.com/israel-news/article-834187

中東の窓 イスラエルとhothyグループ

昨日親イラン派のグループで、イエメンのhothyグループだけが今もって意気軒高だと報告しましたが、y netnews は、同グループがミサイルやドローンを発射しました。

これらの飛翔体はイスラエル国防軍(IDF)により捕捉され、イスラエル人の死傷者はなかった由なるも、対象地域ではベングリオン空港が1時間にわたり離発着を停止する等の影響が出た由。

この攻撃に対してIDFはhothyグループが攻撃を続ければ、IDFは容赦ない反撃を行うと警告し,他方hothy側でも、今後ともパレスチナ友人と連帯してイスラエルを攻撃するとしている由。

またYnet newsは、ミサイルと比べ、ドローンは低空を飛行し、また飛行経路も複雑になりうるので、捕捉はより困難としています。

今後ともhothyグループが攻撃を続けるかは不明なるもとりあえず。

Israel weighs response to Yemen as escalating Houthi attacks test its patience
 Missile from Yemen intercepted over central Israel; 'Houthis will pay a heavy price'

中東の窓 米英のホデイダ空爆

イスラエル国防軍(IDF)や米軍にやられ、意気のあがらないイラン派勢力の中で、パレスチナから遠いイエメンの hothy勢力だけは、依然として元気な模様です。

al jazeera netは、親イラン勢力のhothyグループによれば、米英空軍が15日、久しぶりにイエメンのホデイダを空爆したと報じています。

ホデイダは紅海に面した首都サナアの外港で、イエメンの多くの人間にとって最重要の補給基地ですが、イエメン内戦後親イラン派のhothy勢力に制圧され、その後、そこを根拠地として、紅海を航行する国際通商を攻撃する港として使用され、米等はこれまでも幾度か空爆をしてきましたが、あまり効果はないようで、依然として国際海運の大動脈たる紅海からスエズ運河経由の欧州航路の脅威となっています。

ただし、今回の米英の空爆の成果?は不明の由で、アラビア語メディアが大きく報じるほどの効果はなかったのかもしれません。

 الأول منذ 15 يوما.. قصف أميركي بريطاني يستهدف الحديدة باليمن | أخبار | الجزيرة نت

中東の窓 ゴラン高原  

イスラエルの占領下のゴラン高原等シリアの占領地は、これまでパレスチナのようには歴史的にイスラエルの一部であったことはなく、バラク首相等がパレスチナ問題の包括的、最終的解決を目指していたころには、パレスチナ問題で行き詰った時にはシリア・オプションとして、その返還問題が浮上したものですが(彼の時には一時イスラエルとシリアがゴラン高地からの撤退の幅で、ほとんど合意を見たという報道さえあった)、どうやらイスラエル国防軍(IDF)の優越的地位とイスラエルにとっての北部戦線の重要性の向上から、syria option は消えつつある模様です。

jerusalem post net は、ネタニアフが、イスラエル閣議は15日、全会一致でゴラン高地へのユダヤ人人口の増大を全会一致で可決したと語ったと報じています。

またネタニアフはヘルモン山のシリア側を視察した後、素晴らしい景色だとして、満足の意を示した由。

記事はさらにイスラエル北部地域への住民帰還に問題があることから、ネタニアフ等はゴラン高地へのユダヤ人の入植増大に期待しているとしています。

Netanyahu government approves plan to expand Golan settlments - Israel News - The Jerusalem Post 

中東の窓 アサド弟の行方

独裁者が倒れるときには、それまで実権を握ってきた取り巻きがどうなるのかが、その後の情勢に大きな影響があったりして、大きな注目を集めるものですが、シリアのアサド政権崩壊に際しても、これまでその弟として、またエリート師団の第4師団(確か部隊員はほぼ全員がアラウィ派だったと思う)の師団長として、反政府グループの弾圧に力のあったマーヘルの所在が気になっていました。

この点に関し、14日付のal jazeera netは、関係者の語るところとして、マーヘルはダマス近辺からイラン革命防衛隊員等に伴われ、イラクとの国境方面に脱出し、今後はイランかロシアに向かうとみられていると報じています。

大統領に続いてマーヘルも国外逃亡となれば、さしも長かった「アサド王朝」も没落したことは確実でしょうね。

また、ヒズボッラーや麻薬密売人等と関係の深かった、アサドの2人の従弟はレバノン国境方面で車で走行中待ち伏せ攻撃に会い、1名が死亡したらしいが、未確認とのことです。

そもそもこの記事がどこまで事実なのかも不明ですが、とりあえず。

 يوم فر الرئيس من أخيه.. معلومات للجزيرة نت عن مصير ماهر الأسد | أخبار | الجزيرة نت

中東の窓 ポストアサドの中東

アサド政権崩壊後の中東では、その後もイスラエル国防軍(IDF)がシリア各地の政府軍拠点を攻撃し、シリア旧政府軍の弱体化が進み、合わせて2回のイランのイスラエル攻撃(4月及び10月だったか?)に対するIDFの報復攻撃でイランの対空防衛網が大幅に破壊され(特にレーダーの破壊等)、合わせてヒズボッラがIDFの攻撃で多数の幹部要員を喪失大規模な戦闘を行う能力を失う等いわゆる抵抗の戦線がIDFに対する戦闘能力を失った模様で、中東では、これまでの戦力図とは全く異なった新しい戦力バランスが現出した模様です。

この中で、特に有力な地位を占めるに立ったのはイスラエルですが、そのほかではトルコも漁夫の利を獲得したようです(アラビア語メディア等によると、トルコは12日、早速情報局長等からなる使節団をダマスに派遣した模様・・・その中には外相も加わっているとの報道もあるが、トルコ政府はこれを否定している模様)。

他方、立場が大きく損なわれたのは、イランのほかロシアですが、ロシアは地中海の基地タルトゥスとハミーミームの維持のために新シリア政府と交渉している由。

抵抗の戦線で、依然として意気軒高なのはイエメンのhothyグループくらいで、彼らは12日だったかにイスラエル向けにミサイルを発射したとのことですが、3発のみで、しかも1発も目標に接近できなかった様子。

またシリアと長い国境線を有するヨルダンは国民の半数がパレスチナ人あることからも、最近の情勢から政情不安定の可能性など、大きな脅威を受けている模様。

イスラエル紙等によると、IDFは旧政府軍の有するロシア機スホイ22及び同27を全機破壊し、また新型の対空ミサイルSU22およびSU24の95%を破壊し、その他の防空も80%近く破壊した由で、IDFはすでに目標を達成したとして爆撃は中止し(最後の48時間で500回も空爆した模様)、シリア政府もアレッポ、ダマス両空港の修復を含め、再開に向けて動いている由。

またイランの対空網も、レーダーを中心に80%近くが破壊された模様。
さらにヒズボッラに対するイランの補給路だが、これもレバノン・シリア間の主要道路は1本を除き閉鎖された由。

以上の通り、イスラエルは圧倒的に有利な地位を築いたもよう(上記個々の数字は確認できないも、大筋では大きな間違いはないのではないか?)で、今後イスラエルがどのように動いていくのか、シリアの新政権が、旧アルカイダとの関係をどうしていくのか、米のトランプ就任を見据えて、中東でもあわただしい動きが出てくる可能性があろう。

إسرائيل ستقيم سياجاً على الحدود الشرقية لمنع إيران من تهريب أسلحة.. ودعوات متزايدة لضرب مفاعلاتها النووية
Turkey sends intelligence head to Syria in bid to secure country's future

中東の窓 過激派の影

アサド軍を蹴散らかした反政府軍の中の旧アルカイダ系(と言うかヌスラ戦線というか)に関しては、今後テロを通じて、中東のみならず欧州等の脅威にもなるという見方も強いのですが、先ほど見たBSテレビでは、仏放送が、彼らが仏にとり今後重大な脅威になるのではないか?と報じていました。

日本語同時通訳もあり、すでにご覧になった方もいるかと思いますが、かなり長いもので、仏等欧州の懸念を示すものかと思われますので、ご参考までに。

仏では、一つにはアルジェリア等の旧仏領からの移民や多数の北アフリカからの難民等もあり、多数のムスリムを抱え、彼らが経済的な不満やら2等市民として扱われている等の鬱積した感情からか、テロに走ることもあり、これまでもコンサートでの大規模テロや教師殺害等多くのテロが生じ(最近はあまりない模様ですが)、イスラム過激派に対する警戒が強いところ、今般のシリアでのアサド政権崩壊に伴い、反政府軍の中に多数いる仏人の過激派が今後仏等に戻り、テロ活動を続けることが懸念されている由。

仏放送は(皮肉なことに)これまで旧ヌスラ戦線の締め付けが厳しく、仏でのテロ等は差し控えてきたこれら仏人/欧州人の過激派が、欧州に戻り、テロ活動を行うのではないかとの懸念を伝えていた。

実際、中には放送のインタビューに応じる分子もおり、決して根も葉もない話ではなさそうです。(もっともその数や組織等については不明。)

要するに欧州から見た場合のアサドの没落の一つの負の側面かと思われるので、ご参考まで。

また旧ヌスラ戦線には中央アジア等からの過激派もかなりの数が参加していた模様で、ロシアにとっても彼らはテロ要員として脅威の対象であったかと思います。

中東の窓 ポストアサドのシリア

ダマスカスの陥落後、シリアでは民衆の歓喜、という報道が多いようですが、シリアの情勢はなかなか深刻であるようです。

現地紙の報道によれば、
  • ダマスでは、悪名高かったサイイドナー刑務所が解放され、受刑者の家族等が大挙押し掛けたが、いまだ地下の牢獄へ入る通路が見つからず、反政府軍は重機を持ち込んで、ドア等を破壊しようとしている。(アサド時代にシリア中で多数の反政府のものが処刑されたり、拷問されたことはよく知られており、今後その報復や、下手人探しが厳しく行われそう。)
  • イスラエル国防軍(IDF)は政府軍の武器が過激派の手に落ちないように、シリア各地の空軍基地等100ヵ所を空爆している。
  • 空爆の対象は対空ミサイルや対戦車ミサイルから、砲弾等に及んでおり、中にはIDF空軍は250回の空爆をしたとの報道もある。また、攻撃は政府軍のダマス等複数の科学研究所も空爆し、化学兵器(毒ガス等)のストック及び製造設備を破壊しようとしている(アサドが毒ガスを使用したことはよく知られている。)
  • IDFはまたレバノンへ通じる道路上で、100台を超えるヒズボッラの車列を攻撃した
  • さらにIDFはゴラン高地やヘブロン山等の緩衝地帯を占拠した。アラブ諸国はこれを非難している。
إسرائيل تشن أكثر من مئة غارة على مواقع عسكرية في سوريا وتتوغل برا في المنطقة العازلة
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