中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

世界の黒沢

5日付のjerusalem post net は、黒沢はなにをユダヤ人に教えることができるか?と題してユダヤ史研究家の論説を載せています。
el kavon氏はその中で、黒沢監督は日本の映画監督の中でも最も優秀な監督であるが、特に7人の侍とか日本の歴史に題材をとった作品に深い感銘を受けたとして、ユダヤ人監督も多くのイスラエルに関するすぐれた作品を残しているが(シンドラーのリストを例示)、残念ながらユダヤの歴史を題材とした作品はほとんどないところ、黒沢監督に学んでユダヤの歴史に題材をとった優れた作品が多く生まれれば、世界中のイスラエルに対する印象も更に前向きのものに変わってくるだろうと述べています。
黒沢監督が世界の黒沢であるだけに、イスラエルに彼の作品に大きな関心を有する者がいるのは何ら不思議ではないと思うが、黒沢にならって彼を手本としてユダヤ人も作品を作るべきであるという論調が注目されたので、ご紹介しました。

アッバス議長の苦境

パレスチナのアッバス議長の立場はますます苦しくなりつつあるみたいです。
昨日のjazeerah netは米国に裏切られたアッバスという題で、当初イスラエルの入植地の新設、拡大は認められないとしていたオバマ政権がネタニアフの強硬な反対で、立場を翻して、前提条件なしの和平交渉開始をアッバス議長に飲ませようとしています。オバマの支持を当てにして入植活動の凍結がなければ交渉には入れないとしたアッバスが、いまさらその立場を翻せば、パレスチナ人及びアラブ人、イスラム教徒から米国とイスラエルの圧力に屈服したとの非難を受けることは目に見えている。
かと言ってオバマの意向に反すれば、アッバスにとって頼るものはなくなる。
正にアッバス議長は苦境に立っていますが、また10月中には調印されるはずだったエジプトの調停に依るファタハとハマスの和解は今のところ、どうもその目途も立っていないようです。
それでなくても強硬路線のハマスが、入植地の拡大を横目で見ながら和平交渉に応じるとは到底思われず、パレスチナ人同士の和解も更に難しくなったとおもわれ、アッバス議長は正に苦境に陥ったのではないかと思われます。そのうちファタハの中でも強硬派が台頭してくることも懸念されます。

新疆省でのイスラム教徒に対する弾圧と題するal jazeerahの記事

本日のal jazeerah netは新疆省で、中国公安当局が昨年7月の華人とウイグル族との衝突の後、未だに当局に逮捕されていないイスラム教徒に対して逮捕するための新たな強硬措置(iron fist鉄拳政策と説明)を講じたと報じています。
AJが伝える現地紙に依れば、中国の現地公安当局は騒動を起こした者で未だに逃亡している者は断固逮捕する必要があるとして、強硬措置をとる必要を強調しており、公安当局の作戦は2カ月続行する予定とのことです。
「中東の窓」と題したコラムに新疆省の話を載せたのは、なにも同省が中東の一部だと考えている訳ではない(何しろ地理的に遠すぎる)が、普段中国のやることに対して余り批判的な記事を載せない中東のマスコミでも、ことイスラム教徒が弾圧されていることに対しては黙っている訳にはいかないと言うことが興味があったので、ご紹介したものです。
常日頃中国はとにかく中東、アラブ、イスラムの問題については無条件にこれを支持するという立場をとっており、その見返りと言う訳でもないが(むしろこれまでは同じ途上国と言う立場や同じく歴史的に植民地主義者に苦しめられたことに対する共感が大きいと思うが)中国のことについては、殆ど批判的なことを書かない中東のマスコミの記事としては興味があるところです。

モロッコの太陽光発電一大プロジェクト

Jan13484(モロッコ フェズにて)
本日は若干趣向を変えて、政治向きの話ではなく、意外も意外、中東が環境問題で先端を切ろうかと言う話を紹介します
本日のal jazeerah net に依ると、モロッコは太陽光発電に関する大プロジェクトを有していて、近くムハンマッド6世国王がヒラリー国務長官とともにサハラ砂漠の建設現場を訪れ、プロジェクトを開始する予定だそうです。
そのプロジェクトはサハラ砂漠に5か所、他に数ヶ所で延1万ヘクタールを占める広大な地域に太陽光発電パネルを敷き詰め、2020年の完成の時には現在のモロッコの電力需要の30数%に当たる発電を行い、これは年100万トンの石油に換算され、これによりモロッコは年間5億ドルの外貨を節約できるのだそうです。
確かにモロッコは北アフリカで唯一石油の産出しない国で(チュニジアでさえ、確か年間1万B/Dの原油を産出しているはずです)、そのために原油の輸入のための外貨手当てに苦労してきただけに、太陽光発電と言うのはなるほどと思わされますが、確かにモロッコから北アフリカの南部に広がるサハラ砂漠では今後このような大規模プロジェクトが進む可能性もあり、その意味で注目すべきニュースと思われます。

最近驚いたこと


Dec19399(サナアの料理店にて 息子とともに)
本日何気なくNHKのBS放送をつけたら、アジアロードとかいう番組で、その中でアジア各国の料理を紹介するところがあり、なんとイエメンのサルタと言う料理の作り方を紹介していました。
イエメンの料理については随分前にも書いたと思いますが、あの国に2年間居ながらついぞサルタの作り方など考えたこともなかったし、まさかこの日本でふつうの番組で、レシピから始まってその料理の仕方を説明する番組があるとは全く驚いてしまいました。
そこで念のためにネットで検索してみたら、サルタとだけではアルゼンチンの話か何かが出てくるだけですが、サルタ イエメン料理としたら、あるわあるわその料理法から始まって、イエメンでの体験談とか、随分多くの人がイエメンを訪れてこのサルタ料理を食べていることに驚きました。
詳しくはネットを開けば写真入りの詳しい作り方も出てきますので、そちらに譲るとして番組でも紹介していた通り、石鍋(黒っぽい固い石をくりぬいて作る)料理で、香辛料もきいており、これからの寒い季節にはなかなかおつな料理かと思われます(因みに石鍋も日本の土鍋も発想は同じはずで、土鍋でも十分楽しめると思います)。
尤も、番組の中ではワインなどと一緒にお洒落に、と言う所がありましたが、いくらなんでもイエメンでワイン付きのサルタはありませんし、またあれは要するに家庭料理と言うか余り気取った料理ではないので、お洒落にと言うよりは気楽にと言った方が良いだろうと思います。
因みにイエメンは気候のせいで非常に多くの(品種も驚くほど多い)ブドウができますが(その中でも人気のある種類の一つはビズルルビント・・乙女の乳首・・と言うそれこそ洒落た名前のブドウですが、戒律の厳しいイスラムの国ですから残念ながらワインは製造していません。もしワインを作れば極めて良質の白ワインができること確実と思います。罰あたりの所為か極めて残念に思う所です。

オバマのチョンボ?

Jan06916昨日からクリントン国務長官がイスラエルを訪問して停滞している中東和平を動かそうとしたが失敗したと報じられています。
要するにアッバスは入植地の凍結がなければ話には入れない、と言うのに対してネタニアフは前提条件なしの話し合いと言いながら、交渉の対象になるものを始めから前提とするのは認められないと強硬な態度であったようです。
何故ここでネタニアフの方に「強硬な」という形容詞をつけたかと言うと、そもそも国際社会、パレスチナにとって入植地の凍結は和平の必要条件でしたが、ネタニアフという強硬派が首相になって、これではとても和平は動かないと誰もが考えていたところに、オバマ政権が実現し、入植地の凍結を唱えたので、これはもしかすると米国は本気でイスラエルに圧力をかけようとしているのかなと皆が思った次第です。ところがネタニアフがクリントンの前で平然と交渉開始前の凍結は受け入れられない、と発言したものですから「強硬な」とした訳です。
いずれにしても、ネタニアフが凍結に必死で抵抗することは目に見えていたので、問題はどうしてオバマが彼を封じ込めるかであったのですが、少なくとも日本から見える限りでは彼が真剣に何かをしたとは思えません。
何かをしたとは、と言うのは所詮外交は最後は力で押さえつけるか飴で買うかのどちらで、オバマの格好良い演説で動くのはこの種の深刻な問題ではありません。
飴はさておいて、圧力としては、例えば入植地を凍結しなければイスラエル非難の国連決議に賛成しないまでも棄権するとか脅す手はいくらでもあるはずで、最近では例のガザ侵攻に関する国際法違反の報告書を使えたはずです。勿論、余りあからさまに脅かすと、ネタニアフは米国のユダヤ人ロビーを使って大反撃をするでしょうから、「ネタニアフが入植地の凍結に同意してくれれば、あの報告書の採択は和平を動かすのに障害になるとして反対できる」という論理で、公然とネタニアフに挑戦すべきだったと思いますが、それもしなかった。そのほか何かの関係でネタニアフを脅しあげたなどと言う話は聞きません。
飴の方としては、いくらなんでもイランの核問題でイスラエルの強硬姿勢に同調することはできないでしょうが、共同軍事演習(どうせ前からやっている)とか民衆制圧に使われないような武器の供与とか、どうしても軍事的面に偏ってくるので、今でも強すぎるイスラエル軍を考えると好ましくないことも明らかです。
いずれにしても、中東和平を動かすのなら、強硬派のネタニアフとどこかで激突してこれを抑え込まない限り、なにも動かないのは明らかなのに、今回のように「クリントン長官が何も持たずに手ぶらで」現地訪問するなどと言うことは最低のやり方だと思います。

エジプトの大統領選挙

エジプトでは近く任期を迎えるムバラクの後継(尤も彼がなんと6期目を目指して選挙に出る可能性もあり、後継と言うのは誤解を生むが)者の選挙が注目を集めています。
特に最近は元エジプト外相でアラブ連盟の事務総長のアムル・ムサが出馬の可能性をほのめかしたことがアラブ世界のわだいになっていますが、何といっても最大の話題はムバラクの息子のガマルが後継者として出てくるか否かのようです。本人はそのような野心を否定しているようですが、アラブ世界や西側の報道では、ムバラク大統領が慎重に息子を後継者として育成してきたとして、アラブ最大の共和国で世襲制大統領が実現するのではないかと疑う評論が増えています。
ご存じの通り、シリアのアサドは前の大統領の息子ですし、リビアのカッダーフィの息子も最近ますますその影が大きくなってきたし、サッダムフセインが没落しなければ、ウダイかクサイのどちらかが大統領となったことはまず間違いなく、今やアラブ世界の共和国が軒並み北朝鮮並みの世襲制の影に悩まされている状況です。
ムバラクが疑われる最大の理由は彼がこれまで多くの要人の助言にもかかわらず、頑として政権のNo2を作らなかったことです。自分自身の独裁を強めたいと言うのが最大の理由でしょうが、世襲制を考えていなかったと言えば嘘になるのではないでしょうか?
勿論このような動きに対しては強い反発もありますが、イスラエルの論調などによると、どうも一つの鍵を握っているのがムスリム同胞団のようで、世俗主義の権化のムバラクも、親子の情愛のためにイスラム原理主義にひざを屈したなどと言うことにならないことを願っています。

「テンプルはへロドの建築物」というJP紙の論説

jerusalem post netは27日付のJP紙のEisenmanによる標記の記事を載せているところ、ユダヤ人にとって最も神聖なはずのテンプルに関して、このような記事が載せられた真意は不明ですが、いずれにしてもこのような記事が公開で書かれること自体に興味があるので、要点のみ下記ご紹介します。
現在毎日イスラエルとパレスチナ人の緊張が伝えられているテンプルは実はへロド王によって建てられたものであることに留意すべきである。
へロドはユダヤ人ではない。彼の母親はペトラのアラブ人だし、彼の祖父はアポロに仕えるアラブ・ギリシャ人であった。彼の父親がローマ人によってユダヤ王に任命されたが、これはいわばローマの収税官であってユダヤ人である必要はない。
彼の10人の妻の中にはユダヤ女もいたが、その中のマカベアの王女は彼女が生んだ彼の子供たちと一緒に彼の手で処刑された(理由は彼女があまりに人気があったので彼が危険に感じたこと) 。
へロドはサッダムフセインとサウディの王達を合わせたような、悪逆な独裁者で好色な君主であった。
現在ユダヤ人にとって最も神聖な場所とされている嘆きの壁は、へロドがユダヤ人のご機嫌を取り結ぶために建てた壮大な建築の一部にすぎない。と言うことはユダヤ人はそもそもユダヤ人でもなく、ユダヤ人をローマ人に売り渡した男の建物の一部で毎日お祈りをしていると言うことになる。

西岸とガザは分離して和平を進めるべしとのJP紙論説

jerusalem post net 版は27日付のyossi Alpherの論説を載せているところ、これまであまりだれもが問題視しなかったことではあるが、意外と本質を突いた鋭い意見かと思われるので、要点のみ紹介します。その中で、オバマ政権もパレスチナ和解に関するエジプトの斡旋の危険性に気がついて、和解を進めないよう勧告したと言っているが、その真偽は不明です。
ハマスとファタハの和解は、少なくとも短期的には中東和平にとって逆効果である。ハマスと和解したファタハはその強硬意見に配慮しない訳にはいかず、さらには和平の結果選挙となれば過激派のレトリックが支配するに決まっている。
こんな明らかなことに誰も気がつかずに、エジプトの和解努力を良しとしているが、エジプトを含めて和解を進める理由は2しかない。一つは誰も和解を本気で信じている訳ではないが建前として芝居をしているだけというもの。もう一つはこれまでの立場もあり、だれもガザ抜きの西岸だけのパレスチナ国家の可能性を考えたことがないこと。
このうち後者に関しては、その認識は間違っていて、ガザ抜きの西岸パレスチナ国家は国家として十分やっていける。問題は残されたガザをだれが世話しようと言うのかである。イスラエルもエジプトもそんなそんな役割を引き受けるつもりはない。
しかし、西岸がパレスチナ国家として立派にやっていけることを見れば、ガザの連中も考えを変えて、現実的な考え方をするようになると思われ、その意味でガザ抜きの和平と言うのが当面最も現実的な可能性である。

「オリーブの木は少なくなる」というEconomist誌の記事

economist電子版は表記の題で下記のように西岸の状況を伝えていますが、日ごろ米、イスラエルに同情的な同誌の記事としては珍しく、明確にイスラエルの右派の暴挙を非難しています。これはそれほど西岸情勢はイスラエルの暴挙がまかり通り、パレスチナ人の権利が脅かされている状況と言うことを如実に物語っていると思います。尤も、これもある意味では国際政治の力学を理解しようとせずに、肝心な時に内部分裂をしてユダヤ人に付け入られてきたパレスチナ人自身がもたらした災害と言う面も無視できないと思います。
最近西岸ではパレスチナ人のオリーブ畑の被害が後を絶たない。多くの場合夜間に乗じて、オリーブの木を根元から切り倒すと言う手法だが、その下手人は近くにある非合法入植地のユダヤ人過激派である。
尤も国際法上はすべての入植地が非合法であるが、これら所謂非合法入植地と言うのは、イスラエルの法律で認められた入植地以外の非合法な入植地のことで、そこに住むのは右翼の過激派ユダヤ人たちである。
彼らが夜間パレスチナ人のオリーブの木を切るのは、その様な嫌がらせ、経済的圧迫でパレスチナ人を追い出して自分たちのテリトリーを拡大するためである。
イスラエル陸軍はこのような不法行為を取り締まるべき立場にあるが、彼ら過激派はパレスチナ人との間にわざと大々的なもめ事を巻き起こして、軍隊をも巻き込み、結果的に軍隊がパレスチナ人の側に立って彼らユダヤ人過激派を取り締まらないように策謀し、これが多くの場合成功を収めている。
彼らのこのような策謀はネタニアフ右翼政権の成立で大いに力づけられ、前よりも大っぴらに行われている。
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