中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

2009年05月

中東と米国

オバマ大統領の中東の要人との一連の会談を通じて米新政権の中東の関心のありかがかなり明確になってきたと思います。
一つは勿論中東紛争で、その焦点はこれまでも最大の和平の障害であったユダヤ入植地の扱いで、オバマがこれ以上の入植地の拡大を阻止できるか否かが大きな争点となりそうです。
それと合わせて、基本的な問題としてハマスの扱いがあり、ハマスを対話路線に加えずに和平が進められるのか、いつまでもハマスをテロ組織として相手にしないということでいけるのか、という問題が出てくるでしょう。
もう一つはイランですが、イスラエルのイラン核開発に対する執念は理解できるが、問題はイラン問題は核開発にとどまらない点です。
今後のイラク情勢、レバノン、シリア問題の今後にも大きな影響力を有しており、同国を無視して上手く中東をマネージできるとは思われない。イスラエルの強硬派をいかに抑えながらイランと意味のある対話ができるか、イランの次期大統領が誰になるかも絡むが、実質的に米国にとっては中東で最重要の問題ではなかろうか?
もう一つは勿論イラク政策で、果たしてこのままでイラク情勢が不安定の中でも安定し、米軍撤退を実現できるか否か、イランの出方も関係して来る。
それから、ブッシュがご執心であった中東民主化、あの若干誇大妄想狂的な構想は棚上げになったと思うし、現実派のオバマがそんな呑気なことにかまっている暇はないと思うが、どんなものでしょうね。なにしろ、米国人はこの種のおせっかいが大好きなので。

イスラエルのスパイ  2

別にイスラエルがスパイ国家ということを強調したいわけではないが(同国の情報機関が規模に比して世界的にも有数の優秀かつruthlessな情報機関であることは定評がある)、本日のBBC電子版にはまたイスラエルのスパイについて(今度は米国内で)報じているので、日本ではあまり知られていない情報戦争について一言。
記事の内容は、米軍に雇われていた文民のKadishとかいう男が、イスラエルのために、核、航空機等米軍の機密を渡してきたとして有罪判決を受けたが、その年齢(85歳)を考慮して、刑務所行きは免除されたが多額の罰金を科せられたというもので、またこの裁判の担当の判事がFBI(米国ではFBIが対諜報担当)が23年もこの事件を放置しておいたのか不思議だと語ったと報じています。
要するに米国が如何にイスラエルには甘いかということだと思いますが、少し前に同じくBBCがイスラエルのスパイとして刑務所にいるPollardが仮釈放を申請して、拒否されたという話も報じていました。
なぜこのPollard事件を取り上げたかと言うと、彼は確か米海軍の情報部に属し、イスラエルの科学技術担当の情報機関に機密情報を提供していたとして終身刑を受けたものですが、当初イスラエル政府は彼がイスラエルのスパイであることを否定し、その釈放のために米国ユダヤ人等をつかって、大キャンペーンを張ったが、その後彼がスパイであったことを認めた後も、彼の釈放を求めて歴代の米大統領に圧力を鍬続けてきたからです。
この事件の教訓は、優秀な情報機関は自分のスパイを守るために恥も外聞もなく友好国に圧力をかけること、友好国(イスラエルにとって米国以上の友好国はない)同士でも情報戦争というのはすさまじいものがある、そういう事実を知ろうとしない日本人は幸せな国民だね、という3点くらいでしょうか?

イスラエルスパイの逮捕

本日夕方のBBCによれば、最近レバノンでイスラエルのスパイ容疑で約40名が逮捕された由です。彼らは主として2006年のイスラエルのヒズボラ攻撃の際にヒズボラ関係の情報を流していたが、最近の技術の進歩で一人の足がつき、そこから芋づる式に逮捕者が広がった由で、BBCはこれらの逮捕者が本当にスパイなら、イスラエルは次のヒズボラとの対決の際に重要な情報源を失ったことになるとコメントしていました。
勿論、彼らが本当にイスラエルのスパイなのか否か(イスラエルは今のところコメントしていない由)不明で、なぜ今頃になって(技術の進歩と言うが何があったのか不明)これだけ多くのスパイが摘発されたのか解りません(通常スパイなどというものは一人が捕まっても他に影響がないように、細胞的に管理されているはず)。但し、イスラエルがアラブ人のスパイを広範に使っている(特にモサドとシンベト)ということは周知の事実で、彼らの情報に基づいてパレスチナ要人の暗殺などしてきた訳で、その点からすれば極めてありうる話という気もします。
John le Carreの小説にThe little drummer girl というパレスチナを舞台にしたものがあり、その中では英国人の3流の舞台女優がイスラエルのスパイとして、パレスチナテロの中枢に送り込まれる話があるが、中東、特にレバノンは今でも劇的です。無責任な言い方をすれば、スパイの似合う所です。  

中東紛争 オバマ対ネタニアフ

本日のBBC電子版に標記の件に関していくつかの記事があったが、特に面白いと思われたところだけ拾うと、
1、ネタニアフはオバマ大統領との会談で、米国のイランとの対話の試みの期限が今年一杯との言葉を得たことを評価しているが、ネがパレスチナ問題よりまずイランの核開発問題との問題提起をしたのに対して、オバマはイラン問題をうまくとり進めるためにもパレスチナ問題の公正な解決が重要との立場を明確に示した、
2、クリントン国務長官は、大統領のネとの会談後に記者団に対して、大統領の意向はいかなる入植地の拡大(新設、既存の入植地の拡大を問わない)という点で明確であると米国としては、始めて極めて明確にイスラエル政府の入植地政策に対する反対を表明した、
3、オバマ大統領とネの和平に対する見解は極めて異なっており、このままでいけば大きな摩擦が予想される
と言ったところで、これまでの報道を基本的に変えるものではないが、どうやらオバマは真剣に中東和平を模索していて、そのためにはイスラエルに対する圧力も辞さないというように見えます。
しかし問題は、米国内の親ユダヤ勢力で(ユダヤロビーとは限らない。共和党等の右派にも親イスラエル勢力は強い)、クリントンも和平を動かしたいと思いつつ、ネの巧みな策動と親イスラエル勢力の圧力でほとんど動けなかった経緯があり、オバマがどの程度この圧力を抑え得るか(もしくは耐え得るか)が、今後のポイントと思われます。
その点クリントン長官は旦那がこの問題で苦労したことを熟知しており、彼女がどのように舵をとるかがこれまた一つのポイント思われる。

入植地について

オバマ大統領の対中東紛争政策との関連で、イスラエルとの間で大きな問題となると予測されている入植地について、26日のal jazila(電子版)は二つの動きを報じていますので、ご参考まで。
一つはパレスチナ側の交渉団団長のahmad qurea(オスロ合意の交渉者です)が、現存のイスラエルの入植地は、パレスチナ国家ができた暁には、その主権下で現在のパレスチナ・アラブと同じような権利を認められて、その存続が認められると発言したとのことです。
(注 イスラエルにはとても受け入れられない案でしょうが、国際法的にはある意味で当然の考えです。中東紛争の問題点は国際法の命じるところと現実があまりに違い過ぎることです)
もう一つは、ヨルダンの外相が在アンマンのイスラエル大使を招致して、イスラエル国会でヨルダン川の両側にイスラエル国家とパレスチナ国家を作ることで中東紛争を解決するとの意見が表明されていることに対して、激しく抗議したとのことです。
(注 この考えは昔から一部のイスラエル人が主張するところで、パレスチナという狭いところに2つの国を作る余裕はなく、パレスチナ人は現在のヨルダンをパレスチナ国家として受け入れるべきであるという意見ですが、一目瞭然の通り、この意見は外国であるヨルダンをパレスチナにして、問題解決を図るというもので、人口の半分がパレスチナ人であるヨルダンにとっては国家の存続にもかかわる危険な考えで、激しく抗議する気持ちも解ります。イスラエルの大使は涼しい顔で、あれは議会での議論でイスラエル政府の政策ではないと嘯いたのでしょうね。
またこの考えの最も危険なところは、合わせて西岸に居住しているパレスチナ人の大半をヨルダンに追い出し、その後をユダヤ人の入植地で埋めるという考えが含まれており、ある意味では民族浄化策でもあります。国際法上認められないこと勿論です)
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