中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

2009年08月

ファタハ第6次総会の混乱

第6回ファタハ総会はベツレヘムで開かれ、アブルアッバスが指導者に選ばれたと報じられていた所、10日付のal jazeerah 電子版は、次のような事件を報じて、総会が平穏無事であったのではなく、相当の混乱があったことを示唆しています。これがファタハ総会の通常の無秩序(アラブ流民主主義?)なのか、アブルアッバスの指導力の陰りを示すものか、必ずしも明確ではないが、今後の中東和平の難しさを示唆するものとして、次の通り紹介します。
その一は、かってのガザ地区のファタハ指導者で、治安警察の責任者で、アラファトの弟とその指導権を争ったムハンマド・ダハランが、公然とファタハがガザを失った責任はアブルアッバスにあると非難し、右をめぐり激しい議論があったとの事です。
その2は総会の進め方等を不満として多数のファタハ指導者が責任者ポストの選挙から身を引いたとの報道です。
第3は、今は懐かしいPDFLPのハエワトメ議長(なにしろPDFLPと言うかハワトメと言えば、PFLPのハバシュと並んで共産主義者として有名で、その組織は派手なテロ活動でこれまた有名だったものですが、ソ連の崩壊後ほとんどその名前を聞くこともなかった)が、アラブ諸国のパレスチナ問題への政治的介入を非難して、それらの国の資金がパレスチナ、アラブ陣営の分裂をもたらしていると攻撃したとかいう話です。
以上それぞれの話がどう関連しているのか(または関連していないのか)、またその攻撃の意味は、その支持の大きさは等々全く不明で、これだけの材料でファタハ総会を論評することは極めて危険と思いますが、少なくとも表向きの一枚岩とは全く異なるファタハがあるということだけは言えるかもしれません。

先にお断りした通り明日から8月末まで山籠りのためブログの更新はお休みです。済みません。

チュニジア大統領親族のスキャンダル

本日のal jazeerah 電子版は、チュニジアのベンアリ大統領の親族(アラビア語では結婚に依る親族となっている)トラブルシ兄弟が、2006年に仏のコルシカ島でのヨット盗難事件に関連して起訴されたと報じています。
このニュースが政治的に大きな意味があるか否かはにわかに判断しがたいが(何しろチュニジアでは大統領が絶対権力者で、この種のスキャンダルがあっても、彼の地位に傷がつくとは思えない。もし仮にこの事件がそちらの方向へ向かったら、大統領の権威がそもそも揺らいでいたことの証左と思われます。他方、昔から彼の政治的地位に傷がつくとすれば、奥さんの一族の汚職がらみではないかと噂されていたことも事実です)AJでも事件の概要は詳しく報じていないので省きますが、トラブルシと聞くと誠に懐かしく、ある意味で矢張り、というか一種の感慨を覚えます。
トラブルシと言うのは大統領夫人の親族名で、大統領が現在の夫人と結婚してからその一族がのし上がって来て、いろいろと利権漁りをしたりと悪い噂には事欠きませんでした。
勿論一族の中にはまともな連中もいて、皆が皆大金持ちで、利権漁りをしていたわけではありませんが、中にはそういうことをしていたか否かは知らないが、とにかく金が唸るようにあり、しょっちゅう豪華パーティを開いていることで有名な男もいました。そういうパーティに行くと通常のチュニスの生活とはまたtく無縁な豪華な社交の場でいつも驚いていたものです。
従って、おそらくチュニジアでもいわゆる事情通はこの話を聞いても、驚かないと思いいますが、おそらく報道では流れず、もっぱら口コミで流れる噂と言う性格になるのではないかと観測しています。
いや全く懐かしい名前にあったものです。

京都も本格的に暑くなってきましたので、秋田犬のハチ(米国製忠犬ハチ物語が近く封切られるらしいが、その前宣伝を見た人が、お前の家のハチの方が格好良いぞとか言っていました。親馬鹿ならぬ犬バカです)がもうばてていますので、3週間ほど浅間山の麓に行ってきます。あちらには電話が通じてないので、しばらくはメール、ブログもお休みになります。

イスラエルの戦略的必要性と題するJP紙論文

5日付のJerusalem Post紙は表記の題でNY大の国際関係論教授Ben-Meir(ユダヤ人ですよね)の論文を載せています。、若干長くなりますが、現在のイスラエル良識派(おそらく世論的にも多数派と言えるのではないか?)の意見を代弁していると思われるので、下記紹介します。
但し同じ日のal Jazeerag電子版では、ムバラクがエジプトは外国基地は認めないと語ったこと及び同じエジプトの外相がエジプトは米国の中東における防衛的傘の下には入らないと語ったことを報じており、彼らの発言の趣旨は解らないが、早くも中東でこの問題が現実化してきた(したがってアラブの国は建前上は米国から距離を置く姿勢をとる)ことを示しているのか、興味のあるところです。
中東ではオバマ政権が包括的中東和平を推進する断固たる方針を示した(最近のミッチェル特使、ゲイツ国防長官その他高官の相次ぐ訪問、特にミッチェルのイスラエル、パレスチナ、シリア、エジプト訪問が包括的和平を推進するとの固い決意の表れと評価)が、この米政権の方針とイランの核開発疑惑が相まって、イスラエル、および中東諸国にとって、中東和平実現のみならず、イスラエルとアラブの戦略的同盟と言う新たな可能性が生じてきた。
中央和平のためにはイスラエルはアラブ占領地から撤退しなければならないが、占領を安全保障と結びゆける議論は、新しい戦略的現実の前に、信ぴょう性を失っており、イスラエルにとって米国からの断固たる安全保障確約があれば領土に固執する理由はなくなる。いずれにしてもオバマが真剣にこの問題に取り組もうとしている時に、イスラエルにとって協力しないという選択はありえない。
中東の安全保障という観点からは米・イスラエルの安全保障協定とより広いアラブ諸国への米国の安全保障の傘はイランの核への欲求に水をかけるものである。
サウディ、エジプト、ヨルダン、モロッコはイランの核の可能性から大きな脅威を感じているが、イスラエルがアラブ領土を占領している間は、イスラエルと安全保障面で協力することには否定的で、その意味からもイスラエルは占領地から撤退する必要がある。
また国際的にも、イスラエルの強硬姿勢に嫌気がさす国が増えており、特に欧州連合はそうで、最近欧州連合はイスラエルーEU 関係をassocoation agreement に格上げすることを棚上げした。
今やイランの核と言う可能性に直面して、新しい戦略的現実が生じてきており、長年的であったイスラエルがアラブの戦略的同盟国となる可能性が生まれている。
オバマ政権が包括的和平に最大の外交的重点を置いて努力している時に、イスラエルがこれと協力しないという選択は最大の誤りであろう。

ファタハのcongress開催

現在ベツレヘムでファタハのcongress(日本語で言えば代議員大会か全人代表会議かその辺でしょう)が開かれていますが、ガザ在住の代議員200名(BBCによる、JPに依れば50名)がハマスに依り会議への出席を差し止められた由。
前に書いた通り、米国が中東和平交渉の再開に当たり、最大の障害と考えているのがイスラエル政府の強硬政策と、パレスチナ側のファタハとハマスの分裂で、その修復にはエジプト大統領の力が必要として、特使のミッチェル氏がムバラク大統領と会談したことは前に書いた通りですが、どうも両者の関係はしかく簡単なものではなさそうです。
この辺の事は本日の日本の朝刊が、ファタハの中で若い世代の台頭が目立つという点とともに詳しく報じていますが、また今朝の新聞はイランの体制側の分裂と言うか混迷ぶりもかなり詳しく報道していました。
なぜ、このような日本の新聞を読めばもっと詳しく書いてあることをわざわざ取り上げたかと言うと、その昔は中東に関して余りまともな報道もなかった日本の新聞も、流石に中東和平、イラン情勢、イラク情勢等については相当詳しくかつかなり立ち入って報道するようになってきたことについて大きな感慨を覚えたからです。
但し、次の2点に鑑みても、日本の報道はまだまだ問題があり、このようなささやかなブログも少しは皆様のお役にたてるかなと思っているところです。
第1点は中東の場合、上に挙げた3つの問題以外の事はほとんど報じられない、という点です。東はイラン、アフガニスタンから西はモロッコまで、北はトルコから南はスーダンまでと言うこの広い中東は、この3点だけの地域ではありません。他にも色々と知るべき事柄、面白いことが沢山あります。
第2点は、筆者の僻み目の所為か、例えば中東紛争については、はじめからイスラエル悪、パレスチナ善、イラクに関しては米国悪という図式があるようで(イランに関しては割かし中立公平な感じがします)、その辺若干の偏りを感ぜずにはいれないからです。
基本的にこの2〜30年大体和平を妨害して来たのがイスラエルと言う図式は、若干の例外を除けばそう間違いではないと思いますが、国際政治は道徳の競争ではなく、国益をかけた真剣勝負の世界です。報道する際に初めから、どちらが良いの悪いのと言う予断を持って報道することが、客観的で公正な報道に資するとは思えません。
そんな理由で、今しばらくは「中東の窓」と言うことで、細々と中東に関する話をお伝えしていきたいと思っています。

チュニジアについて

カルタゴ旧軍港
カルタゴの旧軍港にて。ローマ軍が徹底的に破壊したため、カルタゴの遺跡はほとんど残っていない。写真ではよく解らないが当時のハイテク軍港跡。

これまで何度かチュニジアについて書いたが、大統領選挙の不透明さとか人権無視の警察のやり方とか新聞検閲とか、かなり恐ろしい国と言う印象を与えたかと思います。
わが国ではチュニジアと言うと観光案内の通り、地中海に面した小奇麗な風光明媚の良い国で、人々は親日的でもあり非常に親切という、要するに「陽の当たった面」しか知られていないと思います。
勿論、そういう面はその通りで、事実チュニジア位小奇麗で人々が温和で親切で(何しろマグレブではチュニジアの男は「乙女」と言われる位アルジェリアとかモロッコの男に比べたら温和です)治安もよいし、飯も美味いし、とにかく観光旅行で行くには良い所です。
但し、物事には「陽のあたる面」があれば、当然「陰の面」もある訳で、それが警察国家であったり、大統領の独裁であったりと言う訳ですが、こちらの方は一般の日本人にはほとんど知られていない一面です。
そんなことで、このブログの印象として筆者がチュニジア嫌いとか反感を抱いているというイメージがあるかもしれませんが、それは誤解です。要するに世の中天国なんてないよ、良いこともあれば悪いこともあるよと言うことをお伝えしたかっただけの事です。
筆者は若干右寄りの性格の所為か、誤解を恐れずに言えば、少々の行きすぎがあっても、テロリストが抑え込まれていて、大量殺りくなどのない国の方が、逆の国に比べたら100倍も立派だと思っています。
その意味で、チュニジアは大変好きな国ですが、これでもう少し「まともな国」になってくれて、大統領の権力がもう少し下がり、周囲の腐敗がもう少しヘリ、警察国家的色彩がもう少し減ったら、素晴らしい国になると信じています。
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