中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

2009年09月

パレスチナ間問題(エジプトの仲介)

ハマスとファタハの対立に関するエジプトの仲介努力に関するイスラエル紙の論評については昨日この欄で紹介したと思いますが、本日方々の報道で、ハマスの政治部長(この肩書で間違いないのでしょうかね?)でシリア在住のミシャイルが、エジプトの情報機関の長と会談した後、エジプトの仲介努力は進展しており、間もなく両者間の合意ができるだろうと語ったと報じています。
どうせ、アラブの常として何がどう進展しつつあるのかという話は決まってみないと発表されないと思いますが、昨日も書いた通り、皮肉なことにアラブの内情を知るにもイスラエルの新聞の方が早いと言うことは、報道の自由と言う問題で、アラブの抱えた深刻な問題だと思います。
それはさておいて、上記の報道に関して若干時期尚早のコメントをすれば次の通りです。
1、エジプトはガザに隣接しており、その住民および政府の外部との接触に関しては絶大な権力を有しており、ハマスもファタハもエジプトが本気になった圧力には抗せないこと。
2、従って、選挙とかそれまでの治安問題とか当面の両者間の対立問題については、強烈な圧力で、仲介を進めることはできようが、両者の間の根本的な対立点(要するにイスラエルの存在を認めるのか否かと言う点。勿論いかなハマスであろうとも、そのうちには現実を受け入れ、イスラエルを交渉相手として受け入れざるを得ないことは目に見えているが、ファタハでさえイスラエルの存在を受け入れるのには長年と多くの血を流す必要があった)については全く触れられていないと思う。
3、ということは今後肝心な時に合意が壊れる可能性が強い
4、本質的な問題とは関係ないが、ミシャイルと言う名前を聞いて思い出すのが、確か2004年かそこらに彼がアンマン在住の時にイスラエルのモサド要員が彼を暗殺しようとして、彼の耳に毒薬を注ぎ、彼は意識不明になったが、モサド要員が逮捕いされたことから、当時のフセイン国王が激怒してモサド要員の返還と引き換えに、彼に対する解毒剤の提供およびハマスの指導者ヤシーンの釈放を要求し、イスラエル政府としてはこれを飲まざるを得なかったことです。
今回、また彼がエジプトの情報機関の圧力でファタハと和解するとなると、彼がよほど情報機関に魅入られていたのか、それとも中東では情報機関と言う本来闇の世界に属するべき組織の活躍の機会が多いということのどちらなのでしょうか?

パレスチナ問題(エジプトの仲介努力)

27日付のJerusalem Post電子版は、ハマスとファタハの対立に関するエジプトの仲介努力を報じているところ、エジプトがカイロに両者の代表を呼びつけて仲介努力を続けていることよく知られているが、その中身については(さすが独裁国家?だけあって)殆ど表に出てこないだけに、興味があると思われるので、要点のみ次の通り。それにしても、本来このような情報はアラブ筋から流れてくるのが自然で、イスラエルの新聞を通じて知ると言うのも不思議な話ではあります。
確かエジプトの仲介は、大統領の下でその情報機関が担当していると聞きましたが、外務省ではなく大統領府が担当しているとすれば、エジプト政府としては相当の覚悟で臨んでいると言えると思います。
エジプトは2010年前半にパレスチナの議会および大統領選挙を西側諸国及びアラブ諸国の選挙監視の下に行うという案を両者にのませるべく、双方にぎりぎりと圧力を加えている。双方ともに、基本的なところでは合意できるとしているようだが、問題は具体的な内容で、例えば比例代表制と地域代表制の占める割合をどうするかとか、選挙の時期とその性格とかの重要な問題が残っている。
また、選挙までの問題としてはまず双方の治安機関の統一及びファタハが進めている西岸でのハマス要員の逮捕が緊急に手当てを要する重要問題であるが、合わせて選挙までの間の政府をどうするか等の重要な問題がある。
この点に関してエジプト政府は、すべてのパレスチナ人グループからなる委員会が選挙の実施を行うことを考えているようである。

UNESCO事務局長の選挙

日本出身の松浦事務局長の後任を争うUNESCO事務局長選挙で本命と目されていたエジプトの文化大臣Farouk HosniがブルガリアのボコバUNESCO大使に決選投票で敗れたが(注:この選挙について朝日新聞などは共産主義のエリートであった彼女が欧州統合の闘士に変身したなどと書いているが、もしその通りなら、なに彼女は真正の共産主義者ではなく、いわゆるアパラチクであったと思います。勿論それが悪いという意味ではないが)、そのことについて26日付のjerusalem post は、エジプトの新聞はいずれもイスラエル及びユダヤロビーの悪意ある宣伝の犠牲だなどと書いているが、パレスチナ系の新聞のal qodus(アラビア語でエルサレムと言う意味)は、候補者の資質の問題ではなく、要するに独裁国家で文化政策もお粗末なエジプト、さらにはアラブ諸国の体質が国際社会から信用されなかったためと報じており、これが公平なところではないか、とパレスチナ系の新聞をえらく持ち上げています。

このal qodus と言う新聞は、いわゆるまともな報道精神を有し、独立にいろいろと自分で真実を追いかけると言う、アラブ世界では若干珍しい新聞だと小生も思っていました。

なにしろ、Hosni氏はエジプトと言う中東随一の国の文化大臣で(当然ながら英仏もペラペラ、他にもいくつかの言葉を話すと聞いた)最有力な候補であった(何しろ現職の松浦氏は外務官僚で駐仏大使であったが、小渕総理のお友達であったというだけの事で、かなり国際知名度は低かったと思う)のが、若干ダークホース的なブルガリアの大使に油揚げをさらわれた訳で、エジプトあたりがカリカリしてユダヤロビーを云々する気持ちもわかるが(確かに彼は前にアラブ票を意識してか、かなり反イスラエル的発言もあったようであるが)、それにしてもal qodus の方でも、イスラエル新聞から持ち上げられることは、相当座り心地が悪いように思われます。

いずれにせよ、わが国では神聖視される国連の選挙も突き詰めていけば、極めて泥臭い話であることを思い起こさせるよい機会でした。

アルカイダの新戦術

26日のBBCはずいぶん詳しくアルカイダの新自爆テロ戦術を報じて、もしこれが新しいアルカイダの戦法であれば、殆どの空港での金属探知機は無力になるとして、かなり深刻に報じています。その主な内容は次の通りです。

最近イエメンのアルカイダの根拠地から、サウディ政府に投降したいと連絡したサウディ人のアルカイダメンバーが、サウディ政府の対テロ作戦の司令官ナイフ殿下(内務大臣のナイフ・・国王の異母兄弟・・の息子)の隣で自爆した。彼は、イエメンから殿下の飛行機でサウディまで迎えられ、いくつかのチェックを通ったが、爆発物が見つけられずに、そのまま殿下に引見されていた所で自爆したものだが、その後の調査で彼は爆発物を体内に入れていたことが解り(注:呑み込んでいたのかどこに隠していたかは不明)、それが新しいアルカイダの戦術であれば、事前発見は極めて困難であるとテロ対策者は頭を抱えている。因みにナイフ殿下は奇跡的にかすり傷で助かった。

要旨は以上ですが、中東との関係で注目されることは、依然としてアルカイダ要員の中に相当数のサウディ人が含まれていること(注:9・11事件では実行犯の中に多数のサウディ人が含まれていたため、米政府の圧力もありサ政府はその取り締まりと社会復帰に努力してきた)とイエメンの北部が報道通り、アルカイダ等宗教過激派の隠れ家になっていることが確認されたということでしょう。
日本ではあまり報道されることもないイエメンが今後テロ関係とか内戦とか暗い方面で、しょっちゅう報道に出てくることがないように祈っているばかりです。

NYの3者会談(イスラエル紙の論説)

国連総会の機会にNYでオバマ、アッバス、ネタニアフの3者会談が行われたが、特段の成果がなかったと報じられているところ、25日付のjerusalem post 電子版は、さらに踏み込んで3者会談はアッバスの立場を弱めたと評しています。

今回ミッチェル特使のイスラエル訪問が、入植地の凍結問題で何らの成果もあげなかった直後に、何のために3者首脳会談が開かれたのか全く不思議な話ですが(オバマの自己の説得力に対する過信か、とにかくこれまで声高に中東和平を進めると公言してきただけに、なにもなくとも会談と言う形だけを繕ったかのいずれかでしょうが)、このような会談に出席したアッバスの立場が更に弱くなると言うことは当然予測されていたことですが、イスラエルの有力紙に指摘されると言うのもまたせつないものです。

アッバスは1000回も入植地問題について進展がない限りネタニアフとは会わないと明言してきたが、今回その舌の根も乾かないうちに3者会談でネタニアフと会った。アッバスに近い筋でさえオバマがなぜこのような形でアッバスを貶めるようなことをしたのかいぶかっているが、彼らもアッバスが無条件でネタニアフと会ったことを極めて遺憾と思っている。

特にアッバスがこのような状況ではネタニアフとは会えないと明言した直後に米政府が3者会談を宣言したことについて、アッバスはオバマの強い要請を断れなかったと歯切れの悪い説明をしている。
またこの会談はハマス及びPLO内の強硬派のアッバスに対する立場を強め、彼らはアッバスは米国の操り人形であると公言している。
アラブの消息筋の中にはアッバスとしてはアラブ政府の弱い立場のためオバマに対して強い姿勢が採れなかったとして、中にはネタニアフと会うことを強く勧めた政府もあったとしている。

(注、この政府がどこか書いてないが、先にも書いた通り、アッバスと会談したヨルダン国王は和平を進めることの緊急性を指摘したと報じられており、少なくとも「弱腰のアラブ政府」に一つがヨルダンであることは間違いないかと思われる)
livedoor プロフィール
最新コメント
記事検索
  • ライブドアブログ