中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

2009年10月

エジプトの大統領選挙

エジプトでは近く任期を迎えるムバラクの後継(尤も彼がなんと6期目を目指して選挙に出る可能性もあり、後継と言うのは誤解を生むが)者の選挙が注目を集めています。
特に最近は元エジプト外相でアラブ連盟の事務総長のアムル・ムサが出馬の可能性をほのめかしたことがアラブ世界のわだいになっていますが、何といっても最大の話題はムバラクの息子のガマルが後継者として出てくるか否かのようです。本人はそのような野心を否定しているようですが、アラブ世界や西側の報道では、ムバラク大統領が慎重に息子を後継者として育成してきたとして、アラブ最大の共和国で世襲制大統領が実現するのではないかと疑う評論が増えています。
ご存じの通り、シリアのアサドは前の大統領の息子ですし、リビアのカッダーフィの息子も最近ますますその影が大きくなってきたし、サッダムフセインが没落しなければ、ウダイかクサイのどちらかが大統領となったことはまず間違いなく、今やアラブ世界の共和国が軒並み北朝鮮並みの世襲制の影に悩まされている状況です。
ムバラクが疑われる最大の理由は彼がこれまで多くの要人の助言にもかかわらず、頑として政権のNo2を作らなかったことです。自分自身の独裁を強めたいと言うのが最大の理由でしょうが、世襲制を考えていなかったと言えば嘘になるのではないでしょうか?
勿論このような動きに対しては強い反発もありますが、イスラエルの論調などによると、どうも一つの鍵を握っているのがムスリム同胞団のようで、世俗主義の権化のムバラクも、親子の情愛のためにイスラム原理主義にひざを屈したなどと言うことにならないことを願っています。

「テンプルはへロドの建築物」というJP紙の論説

jerusalem post netは27日付のJP紙のEisenmanによる標記の記事を載せているところ、ユダヤ人にとって最も神聖なはずのテンプルに関して、このような記事が載せられた真意は不明ですが、いずれにしてもこのような記事が公開で書かれること自体に興味があるので、要点のみ下記ご紹介します。
現在毎日イスラエルとパレスチナ人の緊張が伝えられているテンプルは実はへロド王によって建てられたものであることに留意すべきである。
へロドはユダヤ人ではない。彼の母親はペトラのアラブ人だし、彼の祖父はアポロに仕えるアラブ・ギリシャ人であった。彼の父親がローマ人によってユダヤ王に任命されたが、これはいわばローマの収税官であってユダヤ人である必要はない。
彼の10人の妻の中にはユダヤ女もいたが、その中のマカベアの王女は彼女が生んだ彼の子供たちと一緒に彼の手で処刑された(理由は彼女があまりに人気があったので彼が危険に感じたこと) 。
へロドはサッダムフセインとサウディの王達を合わせたような、悪逆な独裁者で好色な君主であった。
現在ユダヤ人にとって最も神聖な場所とされている嘆きの壁は、へロドがユダヤ人のご機嫌を取り結ぶために建てた壮大な建築の一部にすぎない。と言うことはユダヤ人はそもそもユダヤ人でもなく、ユダヤ人をローマ人に売り渡した男の建物の一部で毎日お祈りをしていると言うことになる。

西岸とガザは分離して和平を進めるべしとのJP紙論説

jerusalem post net 版は27日付のyossi Alpherの論説を載せているところ、これまであまりだれもが問題視しなかったことではあるが、意外と本質を突いた鋭い意見かと思われるので、要点のみ紹介します。その中で、オバマ政権もパレスチナ和解に関するエジプトの斡旋の危険性に気がついて、和解を進めないよう勧告したと言っているが、その真偽は不明です。
ハマスとファタハの和解は、少なくとも短期的には中東和平にとって逆効果である。ハマスと和解したファタハはその強硬意見に配慮しない訳にはいかず、さらには和平の結果選挙となれば過激派のレトリックが支配するに決まっている。
こんな明らかなことに誰も気がつかずに、エジプトの和解努力を良しとしているが、エジプトを含めて和解を進める理由は2しかない。一つは誰も和解を本気で信じている訳ではないが建前として芝居をしているだけというもの。もう一つはこれまでの立場もあり、だれもガザ抜きの西岸だけのパレスチナ国家の可能性を考えたことがないこと。
このうち後者に関しては、その認識は間違っていて、ガザ抜きの西岸パレスチナ国家は国家として十分やっていける。問題は残されたガザをだれが世話しようと言うのかである。イスラエルもエジプトもそんなそんな役割を引き受けるつもりはない。
しかし、西岸がパレスチナ国家として立派にやっていけることを見れば、ガザの連中も考えを変えて、現実的な考え方をするようになると思われ、その意味でガザ抜きの和平と言うのが当面最も現実的な可能性である。

「オリーブの木は少なくなる」というEconomist誌の記事

economist電子版は表記の題で下記のように西岸の状況を伝えていますが、日ごろ米、イスラエルに同情的な同誌の記事としては珍しく、明確にイスラエルの右派の暴挙を非難しています。これはそれほど西岸情勢はイスラエルの暴挙がまかり通り、パレスチナ人の権利が脅かされている状況と言うことを如実に物語っていると思います。尤も、これもある意味では国際政治の力学を理解しようとせずに、肝心な時に内部分裂をしてユダヤ人に付け入られてきたパレスチナ人自身がもたらした災害と言う面も無視できないと思います。
最近西岸ではパレスチナ人のオリーブ畑の被害が後を絶たない。多くの場合夜間に乗じて、オリーブの木を根元から切り倒すと言う手法だが、その下手人は近くにある非合法入植地のユダヤ人過激派である。
尤も国際法上はすべての入植地が非合法であるが、これら所謂非合法入植地と言うのは、イスラエルの法律で認められた入植地以外の非合法な入植地のことで、そこに住むのは右翼の過激派ユダヤ人たちである。
彼らが夜間パレスチナ人のオリーブの木を切るのは、その様な嫌がらせ、経済的圧迫でパレスチナ人を追い出して自分たちのテリトリーを拡大するためである。
イスラエル陸軍はこのような不法行為を取り締まるべき立場にあるが、彼ら過激派はパレスチナ人との間にわざと大々的なもめ事を巻き起こして、軍隊をも巻き込み、結果的に軍隊がパレスチナ人の側に立って彼らユダヤ人過激派を取り締まらないように策謀し、これが多くの場合成功を収めている。
彼らのこのような策謀はネタニアフ右翼政権の成立で大いに力づけられ、前よりも大っぴらに行われている。

不安定化する中東

中東地域はもともと不安定と言うイメージがあるだけに、この表題にはピンとこない人も多いかと思います。
しかし最近の中東情勢をみるに、地域全体が「本当に」不安定化しつつあるのではないかという危惧を捨て切れずに、あえてこのような表題を選んだ次第です。
昨日だったかバグダッドでは中央官庁の建ち並ぶすぐ近くで2台の車の自爆テロがあり、150名以上が死亡したと伝えられています(そのほか連日多くのテロが続いている)。他方パレスチナではパレスチナ人の間のファタハとハマスの和解がとん挫しているところに、東エルサレムの聖地を巡ってパレスチナ人の若者とイスラエル警察との間の衝突が続いています。
またアフガニスタンでは大統領選挙がやり直されることになりましたが、国内の治安が悪化して、選挙どころの話ではないと言う状況が見られます。
そのほかイランの核問題も大きな進展を見せておらず、政権内部で対立があるように見えるし、エジプトなどでもムバラク大統領の長年の支配に停滞感が相当極限まで来ていると言われているし、チュニジアのベンアリは大統領選に5戦連続当選したが、あの選挙が極めて公正かつ透明性が高いとは信用されていない。
レバノンの内政も不透明だし、シリアもアサドパパから譲り受けたアサドジュニアの政権が必ずしも安定しているようではなさそうです。
勿論ドバイなどの湾岸諸国は世界同時不況から立ち直りつつあるように、一部には明るい状況も見られます。
しかし、日本から中東を見ていると、どうしてもイラクとかアフガニスタンとかの不安定な情勢とアラブ穏健派の「世襲共和制」の矛盾と停滞かが目について、中東全体がずるずるとさらなる不安定化の道を辿っているような気がしてなりません。
このような状況で、オバマ大統領の中東和平イニシアチブが大きな成果を上げると期待する人は、かなりの夢想家ではないかと言う気すらしています。
小生最近中東の現場の空気に接していないので、つい欧米経由のマスコミに影響されるところが大きいのではないかと自省しているのですが、どなたかこのような悲観的見方を払しょくしてくれる人はいないでしょうか?
期待しています。
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