中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

2009年11月

イランの核開発

最近の報道によるとイランの核開発に関し、IAEAは査察に対するイランの協力が不十分との不満を表明し、米国等西側先進国のみならず、今回はロシアも中国もイランの対応ぶりを批判しているとのことですが、本日のal jazeerah電子版に依ると、イランはこのような批判に反発して新たな核濃縮施設10か所の建設を発表したとのことです。
どうやらイランの核をめぐり、国際社会とイランは対決方向に進んでいるようですが(BBC等は本件イランの国内政治問題化しており、イラン政府としても対外的な弱腰は見せられないと報じていますが)、そうなると不気味なのは先日紹介したイスラエルの軍事力です。
なにしろ、イスラエルは過去にアラブの核施設を攻撃した前科持ちです。
まず1981年に仏がイラクに供与したオシラクという原子炉をF15とF16の編隊で攻撃して破壊しています。
更には、(確か一昨年でしたか?昨年でしたか?)シリアのダマスカスの北にある施設を核開発施設として爆撃して破壊しています。シリア政府の否定にもかかわらず、その後からは放射能が検出されたようで、IAEAが査察することになっていたと思いますが、どうなったのかは知りません。
尤もイランの核については、施設が方々に分散されており、中には地下に造られているものもあり、国土もイランなどに比しはるかに広く、1回の攻撃で関連施設を全滅させることは極めて困難のようですし(1回の攻撃で破壊できない分を再度攻撃することは国際世論の手前難しいのではないか?)、またオバマ政権もイスラエルの攻撃には未だgoサインは出していないようなので、そう簡単にはイスラエルの軍事力行使はないと思われます。
しかし、これまでの歴史に鑑みれば、イスラエルが自己の安全保障上危険と判断すれば、国際世論など無視して軍事力を行使することは当然あり得ると考えざるを得ず、今後のイラン情勢いかんでは中東はまた極めて緊張した情勢を迎えることも予測されます。

女性に対する鞭打ち刑(スーダン)

本日も中東の女性に関するニュースを一つ紹介します。
29日付の仏le monde電子版は、28日ハルツームで膝までのスカートを履いて歩行していた、キリスト教徒の16歳の少女が「みだらな」服装をしたとして、逮捕され、即決裁判の後50回のむち打ち刑に処されたと報じています。
同紙によると、スーダンでは原理主義者に支持された軍部クーデターの後1991年に採択された刑法第152条では、如何なるものもみだらな服装で公衆の面前に出た場合には40回のむち打ち刑を受ける、と規定している由にて、これに関する有名な事件では今年の7月に同じくスーダンの新聞記者Loubna Husseinがスカートで歩行して、逮捕され200ドルの罰金刑に処された(ただし彼女は支払いを拒否して現在仏に滞在中の由)事件があるとのことです。
(注)昨日はシリアでイスラム的服装が女性の間で盛んになりつつあるというニュースを紹介しましたが、このような道徳問題に当局が厳罰をもって、ある特定の解釈を押し付けることがイスラム社会外の人間にとっては、如何にも非合理で人権無視に映ることは否定できないことかと思われます。
女性の服装に対する規制の先進国?サウディアラビアでは昔スカートで歩いていて、宗教警察からマジックインクで肢に大きくばってんを書かれた欧州女性がいました。最近は外国人女性も現地事情に敬意を払い?アバヤという黒い布で体を覆うようになりました。
現在ではエジプト一の大学のカイロ大学の女子学生も、暑い日でも何やらレインコートみたいな布切れで体を覆っていますが、その昔ミニスカートの女子学生がキャンパスを闊歩していたことが懐かしく思い出されます。

イスラエルの軍備強化

25日付のjerusalem post 電子版は、最近のイスラエルの軍備強化について大要次のような解説を載せています。イスラエルの軍備はアラブ各国との関係のみならずイランとの関係でも注目されます。
イスラエル国防軍はミサイル、航空機、潜水艦の分野で確実にその軍事力を強化しつつある。
先ず航空機の分野では米国の最新鋭戦闘機F35を近く購入する予定である。(注:F35はロッキード・マーチン社製の多用途戦闘機で、単発単座のステルス性を有する。因みにさらに高級=高額な戦闘機としてはF22があり、日本の自衛隊はそちらを狙っていたが、米国自身があまりの高額さのためもあり購入機数を大幅に減らし、また輸出は制限したので、自衛隊も結局は次善の策としてこのF35に落ち着く公算が高い。因みに現在の自衛隊主力戦闘機F15を有しているのはサウディアラビアとイスラエルである)
ミサイルの分野では、特にヒズボラの短距離ミサイルの補足能力の増強に力が入れられ、相当の効果をあげている。
潜水艦ではドルフィン級潜水艦一隻の購入が近く予定されており(注:ウィキペデイア等に依ると、この潜水艦は2隻の購入が予定されている模様)、その潜水艦は核兵器を搭載することが可能で(注:この潜水艦は潜水艦搭載弾道弾ミサイル搭載の機能はないと思われるので、おそらく巡航ミサイルに核兵器を搭載すると言うことかと思われる)、現存の3隻の潜水艦と合わせて、強力な潜水艦隊を構成し、特にそのうちの何隻かは必要に応じてインド洋、ペルシャ湾方面に配備され、イランの核兵器に対する強力な抑止力となろう。
(注)ドルフィン級潜水艦とは、もともとはドイツ製の209型潜水艦をベースにイスラエルの要求仕様で大幅に設計変更されたもので、巡航ミサイル発射機能を有すると推測されている。イスラエルは詳しい仕様等は公表していない模様。

女性伝道者とシリアのイスラム回帰

先日イスラエルの女性兵士について書きましたが、本日はシリアの女性伝道師について28日のBBC netに面白い記事が出ていましたので紹介します。
シリアは最近女性の間でのイスラム回帰現象が顕著だが、その象徴がヒジャブという頭を隠すスカーフの着用である。この現象は女性伝道師の活躍に依るところが大きい。
シリアで現在最も影響力のある保守派の女性は70歳になるMnira Qobaisaで、最低でも75000人の信者を有していて、彼女らの中の伝道者はAnsehと呼ばれるが、大部分が裕福で教育を受けた階級である。
シリアのバース党政権は世俗主義を唱え、現在の大統領の父のアサド大統領はムスリム同胞団を激しく弾圧し、その根拠ハマ市の攻撃では3万人もの市民を虐殺したと言われる。
その後アサドは穏健なイスラムを奨励すべく、政府の監督下で多くのモスクと宗教学校を建てたが、それらのモスクが皮肉なことにこれら宗教的な女性の砦となったのである。
大部分のシリア女性はこのような傾向を歓迎しているように見えるが、厳格な世俗主義の女性は危機感を感じているようである。
(注)ハマスにおける虐殺とは、1970年代を通じて、世俗主義のバース党に対してイスラム原理主義のムスリム同胞団の抵抗が激しくなっていき(背景にはバース党の中心がアサド等のアラウィ派によって握られていることに対する厳格なスンニ派のムスリム同胞団の反発もあるとみられる)その根拠地であったハマ市をアサドの弟のリファト・アサドの率いる特殊部隊(その多くの兵士がアラウィ教徒)が包囲攻撃したもので、死者の数は1万から3万の間とみと見積もられている。

サッカーとカッダーフィの仲裁

毎度サッカーの話で申し訳ないが、エジプトとアルジェリアの間のサッカー騒動が政治問題化して、アラブ連盟の事務総長迄乗り出したと言う話は前にしましたが、本日のBBCに依ると、アラブ連盟の要請で、ついにあのカッダーフィ御大が、両国間の仲裁に乗り出したとのことです。
カッダーフィが乗り出したのには、確か彼が今年のアフリカ連合議長か何かであるせいだろうと思いますが、遂に第3国の元首が調停に乗り出すほど、サッカーがアラブ世界の政治問題になるとは、いやはやあきれる以外にはないというのが唯一のコメントです。
尤も勘ぐれば、(アルジェリアの思惑は知らないが)ムバラクについては、最近彼があまりに長期政権化し、おまけに息子を後継者にしようとしているとうとまれ、キファーヤ運動(もういい加減にしてくれ!という意味のアラビア語)が生じるほどの停滞した国内情勢をゴマかす絶好の材料と考えた可能性が強いような気がします。
因みに、アラブのインテリが共同で、両国のマスコミが興奮をあおっているとして、マスコミ報道の自制を求めたが、そもそも両国でもマスコミは政府の言いなりの報道をすることで有名ですから、裏で政府の意向が働いていたことは間違いないと思います。

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