中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

2016年04月

トブルク議会議長と新統一政府との確執

リビア情勢につきアラビア語メディアから取りまとめたところ次の通りですが、このような状況は新統一政府が事実上地位を固めていると見るべきか、政治的確執がますます深刻になりつつあると見るべきでしょうか?
何時も同じことを書きますが、リビア情勢は良く解りません。

・昨日確か新統一政府首相が、シルトとのISの戦いのための準備をするように、各地のリビア軍に指令したと語ったと書いたかと思いますが、本日のal jazeera net は、大統領評議会議長のセラージが28日夕、リビア国民にたいして、シルト解放のための戦闘のために、総ての軍組織と連絡することを決定したと発表したと報じています。
セラージ首相は、新政府の国防相と調整し、リビアの東、西、南の総ての司令部、参謀本部と接触するとし、また解放作戦のために合同作戦本部を設置するとしたよし。
接触の理由は、これらのリビア軍の軍事的、経済的その他必要を知ることで、この作戦はリビア独自のもので、外国には頼らないとしたよし。
但し、作戦開始の時期や合同本部の場所等は不明
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2016/4/29/السراج-يعلن-بدء-التحضير-لتحرير-سرت
・これに対して、トブルク議会議長は、セラージ首相の声明を非難し、これは軍に対する裏切りで、外国の介入を招き入れるものだとした由。
彼はまた、軍御総司令部と総司令官を支持する(要するにhaftars将軍の支持という意味)とし、新統一政府の声明はこれまでの総ての政治的解決の努力を無にするものであると非難した由。
議長はさらに国連のリビア特別代表は、リビアの内政に干渉しており、彼が職務を遂行することは不適当であるとしたよし
https://www.alarabiya.net/ar/north-africa/libya/2016/04/30/ليبيا-عقيلة-صالح-ينتقد-المجلس-الرئاسي-ويؤكد-دعمه-للجيش.html
確か、このトブルク議長は政治解決を阻害する一人として、EU等の制裁の対象となっていたかと思います。
上記を見るに、リビアの情勢はますます混沌として、新統一政府が、法的なトブルク議会の承認を待たずに、実質的に文字通り「統一政府」となっていくのか、トブルク議会等の抵抗で、またもや混沌に逆戻りするのか、気になるところです

イエメン情勢

イエメンでは何とか和平協議が始まり、双方の代表団の入った会議も開かれ、取り敢えずは順調に動き出したかにみられましたが、今度は政府代表団が出席凍結を警告しました(これまでは、hothy−サーレハ代表団が出席を遅らせたり、議題について注文を付けたり、会議を遅らせてきたのはこちらの方でした)
政府代表団は国連特別代表とイエメン問題関連の18か国大使に書簡を送り、度重なるhothy連合の停戦違反が継続すれば、政府代表団は、協議への出席を凍結すると警告した由。
特にタエズでは28日夕刻にもhothy側の砲撃で、市民28名が負傷したとのことで、29日には市民がhothy連合非難のデモを行った由。
http://www.alquds.co.uk/?p=524475
なお、al arabira net は、hothy 側がタエズで950、ジャウフで1447の停戦違反を行ったと報じています。
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/yemen/2016/04/29/الميليشيات-ترتكب-1447-انتهاكا-في-محافظة-الجوف-اليمنية.html
他方、政府軍及びアラブ連合軍は、ハドラマウトの県都マカッラからのアルカイダの駆逐に引き続き、南部イエメンでの過激派掃討作戦を続けており、現在アデンとタエズの中間の戦略的に重要なラハジェでの掃討作戦に注力している由。
特にラハジェの県都al houta でのアルカイダの拠点に対して、アパッチヘリ等を使用して攻撃を加えている由。
また周辺地域でも掃討作戦が進められている由。
これに対して、過激派も反撃?のテロを行っており、アデンでは19日金曜礼拝から帰る途次の、アデン交通局長が暗殺された由。
犯行声明は出ていないが、状況からアルカイダの犯行と見られている由
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/yemen/2016/04/29/اليمن-التحالف-والجيش-يلاحقان-القاعدة-في-لحج.html

シリア停戦問題

シリアの停戦が崩壊寸前という危機感が流れていましたが、これを受け、米国とロシアの外相が停戦の再活性化に合意し、シリア政府がラタキアとダマス周辺で停戦すると発表した模様です。
この停戦問題は日本のマスコミでも大きく取り上げられている模様ですが、アラビア語メディアを読んでいると、停戦の中身についてかなり異なった理解があるようです。

米ロの合意については、米大統領府の発表では、特に停戦の地域は限定されてないように見えます。
他方国連の停戦監視委員会及びロシアのスプートニクは、停戦はラタキアの北とダマス周辺だと特定しており(要するに最大の問題地域のアレッポは除外されている)、スプートニクは停戦は29日夕から始まり、ラタキアで72時間、ダマス周辺で24時間続くとしている由(単に、72時間とか24時間の停戦と言うのであれば、大騒ぎをして停戦合意、などと喧伝する価値はないと思うのですが・・・)
これに対して、スプートニクは、反政府派は米ロの合意は両地域のほかにアレッポも含むと語ったと報じています(このニュースのソースがスプートニクと言うところが不思議だが・・)

政府側も停戦はラタキア地域とダマス周辺に限られるとしており、今回の停戦違反では特に大規模な攻撃、攻勢を進めているのが、政府軍であること、さらにアレッポについてはむしろ砲爆撃が強化されていることを考えると、停戦が2地域に限られ最大の焦点であったアレッポは除外されていると思われます。
なぜこの2地域に限り、停戦するかとの問題は、特別の説明もなさそうで、良く解りませんが、ラタキアはアサドのアラウィ派の本拠地に近いこともあり、政府側がダマスでの停戦とラタキアの停戦を取引した可能性もありそうです。
いずれにしても、政府軍がアレッポの完全制圧を目指して、大軍を集結させているとの報道もあり、アレッポの反政府軍地域に対する猛烈な攻撃が報道の通りであれば、アレッポに対する攻略作戦の準備作戦ではないか、と思われ、アレッポでは、遺憾ながら、今後とも人道的悲劇は続き、また戦闘がさらに激しくなる可能性が強そうで、とにかく要注意です。
もしかすると、アレッポの状況がシリア内戦の大きな転機となる可能性が出てきたかもしれません。
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2016/4/29/تهدئة-بريفي-دمشق-واللاذقية-تستثني-حلب
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/syria/2016/04/29/اتفاق-أميركي-روسي-على-هدنة-في-سوريا-تشمل-حلب.html
http://www.alquds.co.uk/?p=524533

シリアの人道危機(国連等の懸念表明)

シリアではアレッポ等で依然激しい砲爆撃が続いている他、ダマスの周辺でも人道援助が十分届けられていない模様で、国連の人道援助関係者及び国際赤十字は重大な懸念を表明しています。
記事の要点は次の通りですが、アレッポでの民間人の被害について、シリア人権網は、政府軍機及びロシア軍機による反政府支配地域に対する過去1週間の空爆での死者は123名(うち18名は児童)に上り、反政府軍の政府軍支配地域に対する砲撃での死者が71名に上り、うち13名が児童と発表しました。


国連はシリアにおける人道危機は深刻で、停戦違反の戦闘が続いていれば、数十万人のシリア住民が緊急援助を受け取れないと警告した。
これは国連の人道援助グループの責任者が明らかにしたもので、人道援助の車列が攻撃され、このままでは人道援助を継続することは困難になると警告した由。
彼は人道援助の車列がホムスで臼砲で攻撃され、アレッポでは人道援助要員2名が死亡したと語った。
更に、現在35の町が包囲されていて、そこには90万5000人が緊急援助を待っているとしたが、特にダマス近郊でduma,ダリア、ザバダニ、ザマルカ、アラベイン等の状況が深刻であるとした。
しかし、2015年には、これらの住民の5%にしか人道援助を届けられなかったのが、現在では52%まで届けられ、5月中には100%としたいと希望を表明した由。

また国際赤十字は、アレッポでは戦闘及び病院に対する爆撃のために、人道危機に直面していると警告した。
反政府軍地域にあるエルサレム病院は政府軍機によりほぼ完全に破壊された由。
アラビア語メディアの現地特派員によれば、これらの地域はロシア軍機及び政府軍機にょる、クラスター爆弾、真空爆弾の攻撃を受けている由。
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2016/4/28/الأمم-المتحدة-تحذر-من-خطورة-الوضع-الإنساني-بسوريا
http://www.alquds.co.uk/?p=524320

カタールのトルコ軍基地

al qods al arabi net は、トルコ首相がドーハ(カタールの首都)を訪問するのに合わせて、トルコはカタールに軍事基地を開いたと報じています。
これは、2014年に署名、批准された両国間の協力協定に基づくものとのことですが、トルコにとっては中東における最初の軍事基地とのことです。
トルコ首相は、カタール大学で、学生たちに対して、カタールとトルコの安全は一体であるとして、基地の重要性を指摘したが、駐留する兵員の数等については触れなかった由。
しかし、トルコ大使は昨年12月のロイター電とのインタビューで、駐留する兵員は3000名で、陸軍の他海空軍も駐留し、訓練要員や特殊部隊も含まれると語った由。
http://www.alquds.co.uk/?p=524023
トルコとカタールは、シリアの反政府派を支持しているのみならず、エジプトのムスリム同胞団の強固な支持者(更に確か両者ともリビアのトリポリ政府を支持していたと思う。反対にGCCの中でもサウディやUAEは同胞団に反対で、特にUAEは強固な反対者)で、その意味では多くの点で共通の外交政策を有しています。
しかし、ここにきてトルコがカタールに基地を開いた本音は今一つ明確ではありません。
一般論として、カタールやGCC諸国の安全保障が害された時のため、と言っても、そのために3000もの兵員を通常からカタールに置いておく真意が何か(トルコも財政は厳しいが、おそらく必要経費の相当分はカタールが負担するのでしょう)今一つ良く解りません。
矢張り、サウディのイエメン介入と同じように、イランの動きに対する大きな警戒感、米国に対する信頼感の低下があるのでしょうか?
何はともあれ、取り敢えず
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