10日のシリアでは政府軍による市民の殺害が31名に上りましたが(その大部分はダマス、ダマス郊外、ホムスの由)、矢張り最大の事件は昨夜お伝えしたダマスの2件の自動車爆弾事件(自爆テロの模様)でしょう。
昨夜の時点では爆発の場所も軍の施設の前らしいとか被害者の数も数十名か、といった程度の情報でしたが、本日はal jazeera net 等もシリア政府の数字として死者55名、負傷者372名と報じています。
また爆発は軍情報部の前とのことで、アサド政権の弾圧の重要な拠点(反政府派を連行し、尋問、拷問を行う場所の由)が狙われた訳です。
犯行声明は出されていませんが、政府、反政府ともに相手がやったと非難し合っているとのことです。これまでの爆破事件の時と同じ現象です。
今回は国連監視団の活動中と言うこともあり、また規模が極めて大きかったこともあり、国連事務総長他各国が事件を非難しています。
監視団団長も現場を訪れ、事件を非難するとともに、停戦の早期実現を訴えたと言うことです。

取りあえずの事件の概況は以上で、未だ実態もよく解らないところで、何か知ったかぶりをするのは危険ですが、取りあえずのコメントをしておけば次のようんところで、このブログで前から書いてきたように、シリアの情勢はイラク戦争後のイラクの状況(テロと政府軍の暴力の応酬の拡大と治安の悪化)に近づきつつある感じがします。
若干悲観的過ぎるでしょうか?

・犯行声明はないが、政府の自作自演にしては重要拠点を破壊し過ぎており、また手口がアルカイダ等のテロ組織のやり口であるところを見ると、政府でも自由シリア軍でもなく、イラク等から潜入してきているイスラム原理主義組織の可能性が強いのではないか?
・ダマスカスやアレッポ等でも、これまでも同様の手口の爆破事件は相当数起きており、特にダマスの場合これまでも空軍情報部とかの重要拠点が狙われており、それらも原理主義者(今回と同じ組織か否かは不明)の犯行とすると
   それらの組織は犯行を行うための要員(実行犯、偵察犯、情報担当等も含め)、爆発物、輸送車両等のイ 
   ンフラを有している
   情報能力も高い(一部内部に通報者を有する可能性も高い)
   かなりの資金も有している
   シリア国内でもそれらの組織を支持、支援する相当の後方要員がいる
   シリア政府の情報網をしても、首都その他でこの種事件を未然に防ぐことは困難
   この種事件は抑えられるどころか、むしろ回数、規模ともに拡大の方向にあるのではないか
と言うことが言えるのではないか?
・今のところ自由シリア軍等がこの種テロに関係していると言う証拠はないが、今後とも政府軍の圧力が強く、正統的軍事抵抗では効果もなく、犠牲ばかり多いと言うことになれば、離反兵士等の中からテロに参加する者が出てくる可能性も強い。また、反政府の民衆の間でも、政府軍の暴虐に対するやむを得ぬ対抗措置として、テロを容認する空気が出てくることも十分考えられる。
・テロ、特に自爆テロを阻止することが極めて困難なことは、イラクやアフガニスタンの経験が証明している。特に一般民衆の間にテロリストに対する同感、または同情の意識が強い時にはそうである。
・と言うことは今後、全般的な政府軍の軍事的優勢と言う状況の下で、これに対する対抗手段としてテロの激化と言うのが、シリアの今後として考えられる一つのシナリオではなかろうか?
・このような状況を内戦と呼べば、アナンとか多くのものが警告している内戦となる可能性が非常に強いが、軍隊または武装勢力同士が戦う、と言う意味での内戦は力の差があり過ぎて、少なくとも当面その可能性は少ないと思われる。
・このような状況に対して、今のところ国連、アラブ連盟も含めて、国際社会は打つ手を有していない。