最近は中東でもウクライナ戦争が大きな問題となっているようですが、なかでもフィンランドとスウェーデンのNATO加盟問題が、注目の的になっています。
両国ともこれまで、軍事的にはNATO対ロシアの関係ではww2後中立を維持してきましたが、ロシアの「ウクライナ侵略」の影響で、長年の中立政策を捨てて、NATO加盟を求めることとなり、ww2後最大の戦略的変更と言われているようです。

そこで出てきたのがトルコの立場です。
NATOは新規加盟国の承認には全加盟国の一致した同意を必要としますが(なにしろNATO条約では、その1国に対する武力攻撃はNATO全加盟国に対する攻撃として、これに集団安全保障政策を適用することを規定しています・・・・・NATO条約第5条・・・・から、これはある意味では当然の規定でしょう!!)、トルコが両国の加盟申請のある前から、エルドアン大統領以下、彼等の加盟に公然と反対を唱え、その後もトルコはこの立場を維持しています。
エルドアンは米大統領の下記発言と同じころ、トルコの学生たちに対し、トルコの立場はnoであると明言しています。
トルコがこのような欧州の問題で強硬な立場をとるのには、種々の背景があるのでしょうが(中でもキプロス問題、ギリシャとの領土問題、EU加盟問題等)トルコは、加盟反対の理由としては、公にされた限りでは、両国がテロリスト・・・・・要するにクルド勢力のPKKを庇護して、その領域内で自由な活動を許していることを上げています。
これは上記NATO条約との関係から、(ずる)賢い問題設定で、表向きに見れば、トルコが反対する以上、両国の加盟は困難ということになり、そこが両国の加盟問題の最大のネックになっているようです
(NATO加盟国はいずれも加盟を歓迎し、ロシアの強硬な脅しも加盟歓迎に大きな影響は与えていない)

問題はトルコが今後ともこの強硬な立場を維持して、両国の加盟に「拒否権を行使するか」ですが、欧州諸国がいずれも加盟歓迎の意を表している他、最重要加盟国の米は、バイデン大統領がワシントンに両大統領を招待し、バイデンが公に米は両国の加盟を強く支持すると表明しました。
勿論、この問題は今後関係諸国間の交渉マターとなるので、外交交渉に長けた欧州諸国やトルコは何らかの「針の孔」を見つけるのでしょうが、現在の国際情勢で欧米諸国がしゃかりきになっているこの問題で、トルコが最後まで一人反対して、怨嗟の的になるとは考えにくいと思います。
そもそも両国にいるPKK勢力は必ずしも大きくはなく、すでにNATO加盟国であるドイツ等の国の方がはるかに多くのクルド人が存在していて、この問題がトルコにとって死活的に重要な問題かはなはだ疑問で、トルコの政治、社会、経済的利益から考えれば、この問題でトルコが米等と徹底的に対決するとは考えにくい。
また日本で上げられている、トルコのロシア―ウクライナ調停との関係は、動き出す前から不発弾であったと思われる。

結局のところ、この交渉は、言葉は悪いが「バザール商人の駆け引き」の性格で、トルコが黙る代償として、何をどこまで取るのかが問題となるのではないでしょうか?
الانضمام للحلف الأطلسي.. بايدن يدعم طلب السويد وفنلندا ومساع لتبديد "مخاوف" تركيا | أخبار سياسة | الجزيرة نت (aljazeera.net)
こんなことをぶつぶつ言っている間に、ロシア軍がそれこそ崩壊したり、プーチンが翻意する(あまりに楽観主義的見方かと思うが??)可能性もなくはないが、中東的バザール外交の神髄を見せてくれるかもしれませんね