中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

湾岸

湾岸諸国に対する米国からの請求書(風刺画)

02qpt777[1]トランプがサウディ国王に対して、彼の王国を守ってやっている代償を要求したという話は日本でも有名ですが、この風刺画の題は「アラブ政権の安全保障に対する米国からの請求書」です。

絵では、トランプからの付けを見た湾岸の何処かの指導者が、(あまりの巨額のために?)目が飛び出ているところの様です
そのうち日本もトランプ様の請求書を受け取ることになりそうですね!!

http://www.alquds.co.uk/?p=1025986

パトリオットの湾岸からの撤去とトランプ演説

昨日イスラエル紙が、米WSJだったかを引用して、米軍によると、米は今後中東の戦乱から、戦略的重点を中国、ロシア、イランからの脅威に対応する方向に転換し、そのためクウェイトから2基、バハレン、ヨルダンから各1基のパトリオット・ミサイルを撤去すると報じたことはお伝えしたところです。

この問題について、本日のアラビア語メディアはいずれも、同じような調子でミサイルの撤去を報じていますが、内容的には特に新しいことはないように思われます。

ただ、このニュースとトランプの国連演説がほゞ同時に伝えられたところ、この新戦略はこのトランプ演説で表明された米外交戦略の早速の具体化であるように見受けられます。

要するにトランプは、国連総会の演説で彼の2年間の功績を大いに吹聴し(ここで歴代大統領がだれもできなかったことを2年間で実現したとしたので、各国代表の失笑を買ったとか。米大統領が各国代表から失笑を買うなどと前代未聞の珍事ではないか?)、米第1主義 America First!! 政策を何度も強調し、グローバリズムや自由貿易主義や国際協力主義を攻撃して、米国は今後何の見返りもなしに、特に富裕国のための防衛に金を使うことはしないと宣言した由。

富裕国とは、欧州、日、韓国と並んで湾岸産油国が上げられた模様。

このためか、午前中にちらりと見た、アラビア語メディアのいくつかは、「米は指導的な国家ではなく傭兵国家になる」などのコメントをしていたように思いますが、流石に露骨すぎると思ったのか、午後見直したところ(午前中は野暮用があって記事が書けなかった)そのような表現は消えていましたが、al jazeeranet は、別の記事で、トランプはOPEC諸国について「彼らの防衛のために我々・・・米国・・・は多大の努力をしているが、彼らは何も支払わずに利益を受けている」と言ったと報じています。

トランプが、これまでの彼の主張を覆すかの如く、パレスチナ問題は2国間方式で解決などと口走ったことは先に報告しましたが、どうやらこのトランプ大統領の下では、米政策はコロコロと変わり、(何しろこれまで最大限に褒めちぎっていた中国の習近平も「友人ではないかもしれない」などと口走る始末)、何が本当の米戦略であるのか、更には大統領の国内的人気取り政策以上に何かあるのか?という問題はすぐ浮かんでくるところで、なにも湾岸諸国に限らず、我々極東でも、この大統領には、悩まされ続けることになりそうです。

因みに、すでに書いたところではありますが、米新戦略が中国、ロシア、イランの脅威に対処するのものであるならば、クウェイトやバハレンやヨルダンからパトリオットを引き上げるどころか、むしろ増強するのがまともなやり方だろうと思います。

イラン情勢(軍事パレードへの攻撃等)

どうもイランの方もきな臭くなってきました。

・イラン海軍と革命防衛隊は、確か15日からホルムズ海峡近辺のペルシャ湾で、海軍の演習を始めていますが(演習には大小600隻の艦艇が参加している由)、イラン空軍も21日からF4戦闘機ファントムやミラージュやスホイ22戦闘機等が参加した演習を開始したとのことです。

・イラン軍及び革命防衛隊は、前からイランの原油輸出が阻止されるような場合には、イランはホルムズ海峡を封鎖し、湾岸諸国の原油の輸出も阻止するであろうとしていますが、イランの政府系メディアはこの空軍演習は、イランに対して敵対行為があった場合にイランが断固たる姿勢をとることを示したものであるとしている由。

・このようなイランの強硬姿勢に対して、米国務長官等は、ホルムズ海峡の自由航行は国際社会の権利であるとして、米国は断固その権利を守る用意があり、米海軍等にはそのための十分な能力があるとして、イランをけん制している由。

・このイランの大規模な、海上演習は名目上はイラン・イラク戦争(1980〜1988年)の記念日の定例行事とされているようですが、これを記念してのイラン南西部のフゼスタン州のアフワズでの軍事パレードが22日攻撃され、複数の死傷者が出たとのことです。

イランTV等現地メディアによると、2名の男が発砲し、VIP席等を狙い、複数名が死亡したが、現地の革命防衛隊の司令官の護衛官が死亡した由。
攻撃者は2名で銃撃をしたとの目撃者談があるが、彼らは反撃されて負傷した模様とのこと。
(この事件に関する報道は速報ベースのようで、それ以上は不明で、現在犯行声明が出ているか否か等は不明です)

取りあえず。

サウディ皇太子に対する批判的な英米紙(誌)報道

サウディの皇太子は世界中があっと驚くような素早さで、サウディのほぼ全権を掌握したかに見えますが(英のthe economist などは、女性解放をはじめ、彼がサウディの偉大な改革者であると喧伝さえしたように思われた)、このところ彼は裸の王様で、彼は真の改革者ではなく、彼の独断専行がサウディ王室の安泰を害しつつあるとの論調が見られるようになってきました。

勿論世界でも最も秘密主義のベールに覆われたサウディ王室内の話ですから、何が事実で何が噂に過ぎないのか、判断するのは容易ではありませんが、本日のal qods al arabi net とal jazeera net は、彼の政策に極めて批判的なthe news week とthe timesの記事をそれぞれ紹介しています。

前者は、皇太子の政策がサウディ王室の統治の基盤を失わせつつある、という趣旨のようで、後者は、皇太子の時代は終わりつつある、と題してサウディの国王でさえ、皇太子の政策の失敗に失望しつつあるという趣旨の様です。

勿論サウディ系のal arabiya net はこのような記事には一切触れていません。

このようにサウディ皇太子に極めて批判的な記事2つが、同じ日にアラビア語メディアで紹介されたのが、単なる偶然か、誰かの手によるものかは不明ですが、なかなか興味のある記事のようですので、それぞれの要点のみ(英語の記事のアラビア語メディアによる紹介ですから、どこまで正確なものかは不明)取りあえず、要点のみそれぞれ次の通り。

【The Timesの記事の要点】
英国の歴史学者によれば、サウディ皇太子は改革者でもなければ、協力もなく、彼の時代は終わりつつあるという。
それによると彼の目覚ましい台頭で欧米は彼を改革者として期待したがこれは望みでしかなく、彼の父親の国王でさえ、彼の政策に疑問を抱きつつあるという。
彼の経済政策「2030年」は、国王がARAMCOの株の5%を世界市場で売ることに反対した(その理由は9.11事件の被害者団体が、サウディ政府の関与を裁判で訴えているので、米裁判所がARAMCOの資産を接収する可能性があるための由)ので、その資金繰りは行き詰った。
また外交面でも皇太子の政策は批判を浴びているが、特にイエメン介入については、毎月50〜60億ドルが戦費に費やされていると言う。
また彼のカタール孤立化政策も失敗したという。
記事は皇太子は改革者でもなければ協力もないという、と言うのは国王がその気になればいつでも彼をすげ替えることができるからの由。
何しろサウディの王族の間には、彼に対する不満が増大しつつあり、皇太子は常に厳重な警備下にジェッダにヨットを用意させていると言われている由(亡命用か?)

【Newsweekの記事】
皇太子の指導下で、サウディの体制は緩やかな崩壊の軌跡をたどっているように見える。
2011年のアラブの春の時は、サウディ政府はイスラム主義者(穏健、過激派を問わず)民主化運動家等を弾圧することで、これを乗り切った。
現在、皇太子が一人ピラミッドの上に立っているが、彼の政策のおかげで、サウディは、直接力に訴えることなく、体制の安定を保証してきた多くのものを失ったという。
記事を書いた歴史家によると、これは極めて危険な兆候で、サウディ体制は徐々に崩壊の危険を抱えつつあるという。
まず、皇太子はこれまで長いことサウディ体制の公式イデオロギーとして、その安定を保証してきたワッハービイ主義の影響力を削減した。
皇太子は改革派として批判されることを恐れ、過激な思想であれ、急進的な思想であれ、彼に批判的なものは牢屋にぶち込んだ。すべての彼の批判者が、映画館の開放や女性の運転に反対した訳ではないというのに・・・
このためサウディ社会には空白が拡大し、皇太子はこの隙間を埋めるには、直接力を使う以外にない。
第2に皇太子は経済的改革を通じてサウディを近代化することを目指し、若者たちに、ポスト石油のサウディでは綺麗な都市で、満足できる仕事を有する生活を約束した。
当初はこの約束は若者たちの夢と希望を掻き立てたが、直ぐ失望にとってかわられた。その代表例がARAMCOの株5%の国際市場での上場であった。

若者たちは現在、学校を卒業すると夢の仕事どころか失業が待ち構えていることを感知している。

また2016年に、他の王族を排除して、皇太子一人に権力を集中したことはサウディ王室の意見一致の伝統を、永久になくした可能性がある。この点で、王族等の大量逮捕は、彼らがクーデターを計画することを阻止する予防的措置であったと見るものもいる。
皇太子は余りに多くの敵を作ったために、今後さらに弾圧を強めることなくして、体制の正統性を守れるかの問題が生じている由。

皇太子は外交面では、イランを包囲し、彼らの勢力をアラブ諸国から追放することは「新たな砂漠の勇士」との称号を勝ち得るものと考えた。
確かにTVの中ではサウディ兵は大きな成果を勝ち得ているが、現実は全く異なっていて、戦場は停滞し、多くのミサイルが首都リヤドの近辺にも降り注いだ。

要するに、皇太子は勝利の見込みもなく、脚を抜く戦略もないイエメンの泥沼にサウディを引きずり込んだのである。
イエメンでの殺戮の増大と悲劇に対する国際的な非難の拡大に対して、サウディとしては英米の庇護に頼る以外に道はないのである。

然しながら、このような状況が近い将来のクーデター等体制変化を意味している訳ではない。サウディ体制の弱化と崩壊は長い期間をかけて徐々に進んでいくものと見られている。

ペルシャ湾での演習(イラン)

al qods al arabi net は、イランが近くペルシャ湾からホルムズ海峡、アデン湾にかけて、大々的な演習を行う準備を進めていると報じています。

それによると革命防衛隊は48時間内に演習を始めるようで、演習には100隻の艦艇が集められ、数百名の兵員が参加する模様の由。

米情報筋は、イランが毎年この時期に演習をすることは承知しているが、今年は革命防衛隊がホルムズ海峡封鎖の訓練などをするのではないかと警戒している由。
米中央軍報道官は、米海軍はペルシャ湾地域の(海軍等の)動きを緊密に監視していて、同盟国とともに国際海峡等での航海の自由を守るために必要なことをするつもりであるとコメントした由。

http://www.alquds.co.uk/?p=986306

時節柄、若干きな臭いニュースですが、取り敢えず。
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