中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

ヒズボッラ

IDFのゴラン高原での大規模演習

y net news とal jazeera net は、イスラエル軍が10日からゴラン高原で大規模な演習を始めたと報じています。
この演習には予告なしでの予備役数千名の招集も含まれている由。
演習は約1週間ほど続く予定とのことです。
この演習が注目されるのは、先週7日に北部、南部戦線を対象にした、大規模な空軍の演習(要するに両面作戦に対する演習)が泡ったばかりの時点で、予備役数千名を動員しての大規模演習高ということのようですが、al jazeera net は更に先週だったかにヒズボッラーのナスラッラ―書記長がゴラン高地からのヒズボッラーの撤退を拒否する発言をしたばかりだとも報じています。
http://www.alquds.co.uk/
https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5283298,00.html

ガザ情勢は取りあえず沈静化した模様で、イスラエルとしては、演習を利用して直後に軍事作戦を計画してはいない模様ですが、この夏はイラン問題、それに絡むシリア、イラク、湾岸情勢等もあり、中東が全体としてきな臭い感じが抜けきらず、そのさなかのIDFの陸空における大規模演習の連続というのは何処か気になるところです。





ヒズボッラー武器庫?の空爆(シリア)

アラビア語メディア及びy net news 等は、24日ホムスのal dabaa軍事空港がロケット攻撃を受けたと報じています。

シリア政府系の通信社は国籍不明機により、同空港と周辺が空爆を受けたが、アサド軍防空部隊がこれらミサイルを捕捉したと報じている由。
これに対して、シリア人権網は、レバノン方面から飛来した、イスラエル機と思われる航空機が同空港及び周辺のヒズボッラーの武器庫を6発のミサイルで攻撃したとしているとのことです。

また地域の住民は、レバノンから航空機が飛来し、何度かの爆発音があったが、レバノン上空では国籍不明機が未だ旋回していると語っている由。
記事は更に、イスラエル機はこれまでもレバノン領空からシリアを攻撃したことが度々あったとして、イスラエル機の仕業であることを暗示しています。

また米国は同国機の関与を否定した由。
死傷者の有無や現地の損害等については不明。

http://www.alquds.co.uk/?p=940867
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/syria/2018/05/25/مطار-الضبعة-ضربات-مجهولة-تدك-مستودعات-لحزب-الله.html
https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5269982,00.html

取り敢えずのところは以上で、状況証拠からするとイスラエル機である可能性が非常に強いと思われます。
またこの辺になるとロシア軍基地とも近く、米軍機がロシアとの遭遇の危険を冒してまで、現時点でこのあたりで活動する理由もなさそうです。
ということはおそらく、先日のイラン軍(革命防衛隊)の拠点に対する大規模攻撃に引き続き、イスラエルは今度は在シリアのヒズボッラーの武器の削減に努めていると見るのが、最も自然かと思われます。イラン(ヒズボッラーを含む)とイスラエルの予備的衝突が既に始まっているということなのでしょうか?
何かきな臭い話なので、断片的な話ながら、取りあえず。

レバノンの総選挙結果

昨日はチュニジア地方選挙の結果を報告しましたが、同日行われたレバノン総選挙の結果は、日本のマスコミも報じている通り、取りあえずの第1次結果では、ヒズボッラーとその同盟者が議員の過半数を獲得した模様です。
レバノンの選挙は、多数の政党や勢力が入り乱れ、その間の連立があって、複雑で、それぞれの党または勢力の獲得議席を羅列していっても、あまり意味はなさそうです。
こちらも、これまでレバノン政治は、大統領選出が数十回も流れたりしたので、正直言ってシリア問題との関連等位でしかフォローしていませんでしたので、それらの数字をまとめて解説する力もないので、取りあえずアラビア語メディアやイスラエル・メディアからの数字等を紹介しておきます。

・投票率は49・2%で、前回(9年前?)の時の54%からかなり下がった
・最も躍進したのはヒズボッラーとアマル(ベッリ・ナビだったかと思うがが率いるシーア派組織、ヒズボッラーと異なり穏健)のシーア派連合を含む連立で全体の議席128のうち67の過半数を制した。
但し、そのうちヒズボッラーは12、アマルは15議席の模様
・議席を失ったのは、ハリリ首相率いるスンニ派等の連合で、20議席失い16議席。それにもかかわらずスンニ派では1位。
・大統領(ヒズボッラー支持のミシェル・アウン)支持派も36から20議席に下がった
・レバノンでは大統領はキリスト教徒、首相はスンニ派、国会議長はシーア派から選出されることに憲法で規定されているので、再びハリリが首相となる可能性が強い
・いずれにしても今後かなり長い間、政府の役職の割り振り等を巡って、各派閥の駆け引き、取引が続く可能性が強い
https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5253447,00.html
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2018/05/08/بالأسماء-تضاريس-الخريطة-النيابية-الجديدة-في-لبنان.html
http://www.alquds.co.uk/?p=930565





米国務長官の中東訪問

現在米国長官が、トルコに滞在していますが、どうも私も今回の国務長官の中東訪問を、トルコとの対立解消の観点からのみ注目していましたが、長官はトルコによる前に、エジプト、ヨルダンレバノンに立ち寄り、レバノンでは大統領、国会議長、首相等と個別に会談し、ヒズボッラー問題について米国の懸念を伝達したようです。
その前のエジプトでは、シーシ政権に対する米国の支持を確認したとのことで、トルコでは15日エルドアン大統領と会談し、米筋によると、「実りある、かつ率直な意見交換ができた」ということですから、双方の意見は相当隔たっていたのでしょう。
いずれにせよ、トルコでは16日あらためて外相との会談があり、その後共同記者会見があるとのことですから、トルコでの結果については明日以降少しづつ漏れ出してくると思います。

ということで、取りあえずはレバノン訪問について・・・
・アラビア語メディアはいずれも、大統領との会談で、国務長官は大統領が表れるまで数分間待たされたが(これは国際外交慣習に反する)、これは意図的であったのか否か、などという記事から始めています。
当然、レバノン大統領府も意図的であったことは否定していますが、何しろ長官の訪問の目的が、レバノン政府に対してヒズボッラーから距離を置くように求めることで、またアウン大統領がヒズボッラーの支持を得た男であることを考えると、矢張り意図的な嫌がらせ、というか牽制の姿勢を示したと考えたくなりますね。

・大統領との会談(ほかの会談も同じと思われるが)国務長官は、米国はレバノンの友人で、レバノンを支持しているが、ヒズボッラーの問題を避けて通るわけにはいかないとして、米国は20年間もヒズボッラーをテロ組織と考えてきており、その軍事組織と政治組織を分けて考えることはできないと指摘した由
・またヒズボッラーの活動に対しては、米国のみならずレバノン市民も深刻な懸念を有しているとして、ヒズボッラーは外国への介入をやめるべきで、特にシリアでの流血を中止すべきであるとした由。
・長官は、レバノンの責任ある立場にある者は、域内の紛争への介入から身を引くべきで、中立を守るべきであるとした由
(ということでレバノン政治へのヒズボッラーの介入を非難したが、同時に米国は現実的でもあるとして、レバノンの政治的プロセスは尊重するとして由)
・他方長官は、米国としてはレバノン国軍が唯一レバノンの統一を守っているとして、これに対する支持を表明するとともに、レバノン内の国際軍(国連PKO)に対する支持も表明した由
・またレバノンとイスラエルの間の関係改善のために努力する意向であると伝えた由
http://www.alquds.co.uk/?p=880987
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/american-elections-2016/2018/02/15/تيلرسون-يصل-بيروت-في-زيارة-تهدف-للتصدي-لنفوذ-حزب-الله.html
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2018/2/15/تيلرسون-انتظر-عون-وعرض-التوسط-بين-لبنان-وإسرائيل
ということで、国務長官としては健かにはならないギリギリの線で、レバノン大統領以下に、ヒズボッラーから距離を置くようにもとめたということでしょうか?
長官訪問の波及がレバノン内政であるかも知れません。

ハリリの辞任撤回

どうも、イエメン情勢の急展開等に紛れて、記事にするのをすっかり忘れていましたが、確か先にサウディで辞任を表明し、大きな話題となったレバノンのハリリ首相は、5日彼のレバノン帰国後の初閣議のあと、辞表を撤回しました。
(このことは勿論アラビア語メディアでも報じられていましたが、若干旧聞に属するためか、本日のネット記事には見当たらない(それはそうだろう。トランプのエルサレム問題決定で、もちきりで、こんな古い話を報じている余裕はなさそう!)ので、取りあえず見つけた、ynet news の記事からですが、それによると、ハリリは、閣議が「レバノンは他のアラブ諸国の戦闘や内政には中立で、干渉しない」と決定したことを受けて、辞表を撤回したとのことです。
しかし、同ネットもこの意味は必ずしも明確ではない、としているように、おそらくは親ヒズボッラー(シリア)グループと反ヒズボッラーグループの妥協の産物で、これでレバノンの政策が大きく変わるということではなさそうです。
https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5052361,00.html

ハリリの辞任表明の経緯とその後の進展については、未だに謎が多くて、真相は不明ですが(もっとも、他の中東のより深刻な問題が大きく表面出でてきた現在、レバノン内部の問題など、おそらくは国際社会が大きな関心を払う問題ではなくなったような気がします)。
しかし、所詮あの問題もヒズボッラー(ということは後ろにいるシリアとイラン)対その影響力の拡大に反対するスンイ派勢力の角逐問題である以上、より大きな中東全体の問題にかかわる問題です。
ということで、若干手遅れではありますが、かってな仮説を書いておきます。不十分な情報で書くものですから、御異論を持つ向きは多いと思いますので、是非コメント欄にご意見ください。

・レバノン閣議の決定の意味が何であるかの問題はあるが、あの表現は基本的にはヒズボッラーの他のアラブ諸国への干渉、介入に歯止めをかける性質のもので、(ほかのレバノン政治勢力で、そんな大それたこと?をしようとしたり、そんな力を有する者はない)その意味では、建前上一定の歯止めをかけたことにして、ハリリの辞表撤回に道を開いたもの。
しかし、シリアで数千人を失ったようなヒズボッラーがこんな合意位で、大きく立場を変えるはずはなく、所詮は同床異夢の現状糊塗に過ぎない。
・ハリリがなぜ1週間に2回もサウディを訪れ、2回目の訪問で辞意を表明し、その後2週間だったかサウディに滞在したことで、多くの人が、辞任はサウディに強制されたもので、彼はサウディに軟禁されていたなどと、もっともらしい議論をしていた。
・このような議論は、その後の彼の仏メディア等等に対する発言で払拭されたように思われるが、なぜ彼がこんな行動に出たかは、彼が上記インタビューの中で、彼としては湾岸に済む30万人のレバノン人を犠牲にすることはできないと語ったことに一つの鍵があるように思われる。
・想像の域を出ないが、おそらく最初のサウディ訪問はサウディから呼びつけられ、今後ともヒズボッラーがシリアのみならず、特にイエメンで反スンイ派の行動を続ければ、サウディ等湾岸諸国は在留レバノン人を追放することになると警告(脅迫)されたのではないか?
・そこでハリリは慌ててレバノンに飛んで帰り、サウディ等の脅迫を伝え、ヒズボッラーの活動抑制を訴えた(もちろん舞台裏で!)が、これに反発したヒズボッラーやその支持者が、彼を脅迫し、為に彼は生命の危険さえ感じたのではないか?
・そこで彼は再度サウディに舞い戻り、サウディ皇太子らと協議して、辞任表明という奥の手を使って(彼はサウディ支持者ということで知られていて、ヒズボッラ―の支持を受けているアウン大統領のカウンターバランスとして首相にされているもので、彼が辞任することは、レバノンの勢力バランスを崩し、その政治危機の再燃を意味する)物事を動かそうとしたのではないか?
彼やサウディの目論見通り、彼の辞任を受けて、レバノンでは政治危機再来に対する懸念が高まり、関係者(ということはヒズボッラー)が妥協するようにとの圧力が高まった。
このためアウン大統領等も裏で協議をして、ハリリ復帰の見返りに、上記のようなアラブ政治不干渉の政府決定をすることで、取りあえずの幕引きを図ったのではないか?
・お蔭で、レバノンではハリリの帰国で安堵感が広がっていると伝えられている。
・しかし、この問題は所詮はレバノンを舞台にした、中東、アラブ政治の駆け引き問題なので、今後ともハリリが職にとどまり、レバノンは政治危機を脱したのか否かは、イエメン情勢とかシリア、イラク情勢とかの、アラブ諸国問題、イランお対アラブ政策で決まっていくのではないか?
勿論直接的には、今後ヒズボッラーがどのような路線をとるかが大きな鍵かと思われる










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