中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

モロッコ

西サハラ問題と日本

チュニジアで開かれたTICAD(東京アフリカ開発会議東京)へのポリサリオ招待問題を巡って、主催国のチュニジアとモロッコが対立したことは先に報告済みですが、この問題は元の会議提唱国日本も巻き込んで、未だに騒がしいようです・
もっとも、この問題はモロッコとアルジェリア等の間では、大きな問題になっているようですが、それ以外の国にとっては、「両国との関係で考えるべき問題」程度の問題にしか過ぎないと思いますが・・・・

al qods al arabi netは、この問題について、「日本は責任がないとしている」との見出しで、林外相は2日、モロッコ外相に対し電話にて、日本は西サハラ問題については中立で、ポリサリオ代表を招待したりすることには消極的であると語ったと報じています。

西サハラの大部分を実効支配しているモロッコは、この問題を第3国との友好度の尺度にすると意気巻いていますが、日本ではそもそも西サハラがどこかもわからない人が圧倒的多数で、岸田総理がコロナのため出席できなかったことは、ある意味で総理にとっては好都合であったのかもしれません
اليابان "تتبرأ" من دعوة زعيم البوليساريو لـ"تيكا8".. والمعارضة التونسية تنتقد خروج سعيد عن الأعراف الدبلوماسية- (تدوينات) (alquds.co.uk)

アフリカ連合とパレスチナ、西サハラ問題

al qods al arabi net は、アフリカ連合の新しい議長に就任した南アフリカの大統領が、アフリカ連合のパレスチナと西サハラとの連帯を表明し、これらの問題について、大きな爆弾を投げつけたと報じています。
このうちパレスチナ問題はこれまでのアフリカ連合の政策の再確認ですし、西サハラ問題も、これまで種々の経緯はあっても、アフリカ連合の立場が、この問題を大きく動かすとも思われないので、新しい議長の発言が大きな爆弾というのは明らかに誇張した見方かと思いますが、矢張りこの問題は、現在でもモロッコとポリサリオ支持のアルジェリアとの関係ののど元にに刺さった棘の様なものですので、紹介だけしておきます。

幾度か書いたかと思いますが、植民地母国のスペインが撤退したあと、西サハラ問題の領有権はモロッコとアルジェリアの支持するポリサリオとモリタニアが争ってきましたが、その後モリタニアは手を引き、現在ではその大部分をモロッコ軍が支配し、一部をポリサリオが支配しているところ、初めは良く衝突等もあったのですが、最近ではそのような話もなく、「忘れられた戦争」と言われるイエメンよりさらに、忘れられた戦争になっています。
確かこの問題には国連は平和的解決のために関与してきて、歴代米国人だったかの特別代表が任命されてきています。

この問題とアフリカ連合との関係では、アフリカ連合の会議で、西サハラの代表権が争われてきて、アルジェリアの支持を受けたポリサリオが、民族自決ということで連合の議席を与えられました。
このためモロッコは1980年以降、アフリカ連合は一方に変更しているとして、問題への国際的関与は国連だけに限るとして、その後はアフリカ連合の会議をボイコットしてきました。
その後2017年にモロッコはアフリカ連合に復帰し、2018年にはこの問題に対するアフリカ連合の3者委員会が設立されたようですが、大きな変化はなかった模様です。
https://www.alquds.co.uk/%d8%b1%d8%a6%d9%8a%d8%b3-%d8%a7%d9%84%d8%a7%d8%aa%d8%ad%d8%a7%d8%af-%d8%a7%d9%84%d8%a5%d9%81%d8%b1%d9%8a%d9%82%d9%8a-%d9%8a%d9%81%d8%ac%d8%b1-%d9%82%d9%86%d8%a8%d9%84%d8%a9-%d9%85%d9%86-%d8%a7%d9%84/
この問題は、どうやら基本的には眠っていて、時々目を覚ます問題のようで、また中東やアフリカの基本的な情勢にはあまり影響を与えていないので、ほとんど真面目にフォローなどしていませんが、問題自体は歴史も長く、なかなか複雑なところがあるようです、
今後ともリビア問題をめぐるアルジェリアとモロッコの関係などにも影響がある可能性があり、取りあえず一言だけ

因みに、この西サハラからモリタニアにかけての大西洋では、美味い蛸が取れる好漁場のようで、日本も随分漁獲していたと思いますが、現在でもそうでしょうか?

駐UAE・モロッコ大使の召還

先に、モロッコが駐サウディ大使を召還したと報告しましたが、al jazeera net とal qods al arabi net は、モロッコがサウディ駐在大使に引き続き、UAE駐在大使も召喚したと報じています。
この問題について、モロッコ政府は、公式の声明をしていないが、消息筋によれば2人の大使とも、現在ラバト(モロッコの首都)に滞在中の由。
https://www.alquds.co.uk/%d9%85%d9%88%d8%a7%d9%82%d8%b9-%d9%85%d8%ba%d8%b1%d8%a8%d9%8a%d8%a9-%d8%a7%d9%84%d8%b1%d8%a8%d8%a7%d8%b7-%d8%aa%d8%b3%d8%aa%d8%b9%d9%8a-%d8%b3%d9%81%d9%8a%d8%b1%d9%87%d8%a7-%d9%81%d9%8a-%d8%a7%d9%84/
https://www.aljazeera.net/news/politics/2019/2/9/%D8%A7%D9%84%D9%85%D8%BA%D8%B1%D8%A8-%D8%A7%D9%84%D8%A5%D9%85%D8%A7%D8%B1%D8%A7%D8%AA-%D8%A7%D9%84%D8%B3%D8%B9%D9%88%D8%AF%D9%8A%D8%A9

記事によると、モロッコが駐サウディ大使を召還したのは、サウディのal  arabiya衛星放送だったかがポリサリオ(旧スペイン領の西サハラで、モロッコがこの地域は本来自国領だとして、(確か)ほぼ全域を占拠したのに対して、アルジェリアに支援された独立派のポリサリオが争っていて、国連が仲介を図っているが、現在まで解決の兆しがない)に同情的なルポをしたことが原因とされるが、UAEとの関係では、この衛星放送の発信所がドバイに置かれているからとの理由の由
(勿論モロッコ政府の公式の説明はないので、真相はやぶの中)
しかし、如何にモロッコにとって西サハラ問題が重要だとは言え、どうも背景がこれだけということは考えにくくい・
と言うのは有体に言えば、湾岸諸国にとって西サハラがどうなろうと、あまり関心のあるところではないが、従来は王制国で親米、親保守派のモロッコに対して、アルジェリアは共和制でどちらかと言うと中立(またはその昔は親ソ)なので、サウディ等は、どちらかと言うとこの問題でもモロッコに同情的であったかと思います。
それがここにきて、仮にサウディやUAEの立場が逆転したとすれば、それは西サハラを巡る立場が変わったからではなく(要するに上に書いた通り、彼らにとって西サハラなどどうなってもいい問題)、もしかすると、リビア問題に対するモロッコの立場に対する異論であるのか、またはkhasshoggi事件後のサウディ皇太子のアラブ歴訪をモロッコがお断りしたことに対するサウディの報復措置か、とにかく何らか別の理由が背後にありそうです。
それにしても、仮にこの話が事実であれば、これまで地理的には遠く離れていたが、親米王政国家と言うことで、米国を中核として非常に緊密であったサウディとモロッコ間に隙間風が噴き出したわけで、中東全体として、何かが変わりつつある感じを受けます






モロッコのイランとの断交

確か先日、西サハラ問題を巡って、モロッコとアルジェリアの関係が険悪になっているという話を報告したかと思いますが、今度はモロッコとイラン関係の悪化です。

al qods al arabi net とal jazeera net は、モロッコがイランと外交関係を断絶したと報じています。
これはモロッコ外相が1日、イランとの外交関係断絶を大使館の閉鎖を声明したものですが、その理由は西サハラ問題に関連してで、モロッコ大使館がヒズボッラーのポリサリオ(西サハラの独立を求める組織で、アルジェリアが支持していることから、この問題が両国間の問題となってきた)に対する武器供与、軍事訓練、砂漠の砂の壁に対するトンネル構築(将来のモロッコとの戦いで利用するため)等を支援してきたことが原因としている由(イランとヒズボッラーの関係に鑑みれば、モロッコはイランがヒズボッラーを使って、西サハラ問題に介入しているとみている)
特に軍事訓練では、ヒズボッラーは2人一組から5人組までの極少人数によるゲリラ戦の方法を訓練していて(これはイスラエルとの戦闘で身に着けた戦法の由)、この戦法は将来のポリサリオとの戦いで、モロッコに対してはかなりの脅威となると見られている由

モロッコと言えば、北アフリカの西端にあり、イランからは最も遠いアラブの国で、こんなところまでイランがちょっかいを出すとは、驚きですが、下記の通りイランはそのホメイニ革命以来シーア派の育成等の問題でモロッコとはけなくな関係が続いてきたようです。
それにしても、ここにきてがぜん外交関係の断絶までに至ったのは、矢張りイスラエル、米とイランの関係が緊張している中東情勢が背景にありそうです

al arabiya netはイラン革命後の両国関係について次のような経緯を載せています
・モロッコ・イラン関係の悪化は、亡命した前皇帝をモロッコが受け入れたことから始まった
・外交関係の復活は1991年になって行われ、イランはモロッコ大使館を再開した。
・しかし、関係はアハマディネジャード元大統領の時に再び悪化し、モロッコは2008年シーア派の政党を解散させた
・さらに2009年には、イラン大使館員がシーア派支援に関与したとして、モロッコは一方的に外交関係を断絶した。
・2016年には、新しいシーア派の組織が表れ再び両国関係は悪化した
・今回は3回目の断交になるが、今回はポリサリオに対する軍事支援の問題であるだけに、モロッコにとっては最も危険なものと見られている
https://www.alarabiya.net/ar/north-africa/2018/05/01/المغرب-يقطع-علاقاته-مع-إيران-لدعمها-جبهة-البوليساريو.html
http://www.alquds.co.uk/?p=926966









アラブ・アフリカ首脳会議

朝方報告したアラブ・アフリカ首脳会議からの欠席者は、モロッコの他に、サウディ、UAE ,カタール、バハレンに加えて、オマーン、イエメン、ソマリアもこれに加わり、8か国となった由。
まあ、これ自体は象徴的な問題ですが、興味深いのはGCC諸国で、いつもはサウディと足並みをそろえるクウェイトが出席していて、いつもは割と別行動をとるオマンが欠席に決めたことです。
中々GCCだけでも一致した行動というのは難しそうです。クウェイトが出席した意図は不明です。
まあ、イエメンの欠席はサウディが欠席ならそうなるのでしょうね。
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2016/11/23/8-دول-عربية-تتضامن-مع-المغرب-وتنسحب-من-قمة-غينيا.html
livedoor プロフィール

abu_mustafa

最新コメント
Categories
記事検索
Archives