中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

トルコ

米の対トルコ制裁問題(独のトルコ擁護)

このところトランプと独メルケル首相の確執が目立ちますが(尤も、トランプと仲の悪いのは欧州全般でしょうか)、al jazeera net は、メルケル首相が13日記者会見での質問に対し、ドイツとしてはトルコの繁栄を願っており、トルコの動揺を利益とする者は誰もいないと語ったと報じています。
また独経済相も、トランプの政策による経済戦争に対して懸念を表明し、米のトルコと中国に対しする鉄鋼等に対する関税増は、世界経済を害し、経済成長を阻害し、信頼を損なうことになると批判した由

一方で、トルコリラは対ドルで1ドル7リラに達した由
他方トルコ中央銀行は、トルコの銀行で流動性の問題を抱えるところについては、必要な支援を行うと表明した由。
http://www.aljazeera.net/news/international/2018/8/13/ميركل-نريد-تركيا-مزدهرة-ونرفض-زعزعة-استقرارها
ドイツには多数のトルコ系元移民が存在するので、独首相としては、トルコに対して連帯感を示したものかと思いますが、どうもそれを越えて、トランプの経済政策一般に対する不満の表明でもあるような気がします


米トルコ関係の危機

米トルコ関係が、トランプの対トルコ制裁(アルミニウムおよび鉄鋼に対する大幅関税)の声明、トルコリラの歴史的暴落で、危機的関係に陥ったことは先に報告しましたが、その後の若干の補足など次の通り。
なお、この問題は、このままさらに悪化すれば、中東の政治関係を変化させかねない重大な問題で、邦字紙等もかなり詳しく報じていますので、この小さなブログでの記事は落穂ひろいとでも考えてください。

  • 両国関係を協議するために米国を訪問していたトルコ代表団は11日だったかのに米国を離れたが、何らの成果もなかった模様。
  • トランプの提起したアルミニウムと鉄鋼に対する大幅関税は、13日から適用されるが、エルドアン大統領等トルコ政府は、米国の措置は一方的で、平等な関係にあるべき国際規範に反しており、トルコとしては、米国の命令に応じるわけにはいかないとしています。このような立場は、与党AKPのみならず、ほぼ主要な野党にも共通した立場の模様です。
  • トルコ外務省は、米国の制裁に対してはトルコも対抗措置を取ると表明したが、今のところいかなる対抗措置を取るかは不明。
  • トルコが経済的な対抗措置で、トランプの制裁に影響を与えうるか否かは不明(双方の力のバランスからして、トルコとして効果的な対米経済制裁という選択はないのではないか?)
  • そのような立場を反映してか、エルドアンなどの発言に、トルコが親米、NATOの忠実なメンバーという立場を離れ、ロシア、イラン、中国等との関係の緊密化を選択するだろうという発言が増えている。(エルドアンは、対米危機のさなかプーチン・ロシア大統領を電話し、両国関係のさらなる増進に合意した。また、イランのザリフ外相は、トランプの対トルコ制裁を非難し、イランとしてトルコとの関係強化に熱心であるとした由。要するに皮肉なことに、トランプの政策が、米国の制裁対象となっているロシア、イラン、トルコ3国の緊密化をもたらす可能性が出てきている)
  • アラビア語メディアやトルコメディアでは、既にトルコの親米枠組みからの離脱と言う、歴史的な大転換の可能性が出てきたとのコメントが見られるが、具体的には(両国関係が悪化すると常にトルコが恐喝の材料として使う材料だが)インチェリック空港の使用許可の取り消し問題が取りざたされています。
http://www.alquds.co.uk/?p=993156
http://www.hurriyetdailynews.com/iran-slams-us-for-bullying-turkey-135693
http://www.aljazeera.net/news/international/2018/8/11/أردوغان-يتجه-شرقا-هل-طلقت-تركيا-الغرب
http://www.hurriyetdailynews.com/turkey-to-retaliate-against-trumps-metal-tariffs-135688

取り敢えずのところ以上で、今後トルコがその通貨のさらなる下落を推してまで、対米強硬路線を貫くか否かは不明で、どこかの時点で何らかの妥協を模索する可能性もあるかと思われます。
しかし、ここまでエルドアン等トルコ政府が、米国の政策は不当な覇権的政策で、一方的にトルコの屈服を求めるものだとの議論に終始し、トルコの野党も一般民衆もそのような政府の立場を支持していることから、トルコ政府としては政治的に大幅な妥協は難しく(特にトランプの求めるものが米神父の釈放のため、イスラムが大勢を占めるトルコでは妥協には反発する声が大きくなることが予測される)、当面かなりの経済的犠牲を覚悟しても、現在の対米強硬路線を続ける以外に道がなさそうな気がします。

米・トルコ経済戦争

トルコによるロシア地対空ミサイルS400の購入問題、F35のトルコへの売却問題、米神父のトルコでの交流問題等で、NATOの同盟国のトルコと米国の関係は極めて緊張していましたが、ここにきてさらに悪化し、トルコのエルドアン大統領は(米国が)トルコに対して経済戦争を仕掛けていると発言するまでに至りました。

その直接のきっかけはトルコ・リラの暴落のようで、米国との関係悪化等を背景に本年既に、対ドル等でその通貨価値の3分の1を失っていた、リラは1日で15%を失い、10日には対ドル6・5リラと歴史的な低値を付けた模様です。
その背景として、トランプがツイッターで、トルコからの鉱物輸入に対する関税を大幅値上げすると書き込み、アルミニュームに対しては20%の関税、鉄鋼に対しては50%の関税をかけるとしたことがあるとのことです。
このためトルコ各地の銀行では、トルコリラからドルまたはユーロに換金する動きや、ドル等外貨を大量に引き出す動きが広がり、銀行によってはこれに対応できないところも生じた由

これに対してエルドアンは、国民に対して、トルコはこのような圧力には絶対に屈しないとして、ドルやユーロや金を保有している国民に対して、トルコリラを購入するように呼びかけた由。
(これを報じるアラビア語メディアも、このような対応は傷に包帯をする程度のもので、トルコ国民、特に産業等に投資しているトルコ人、外国人お間には警戒心が強まっていると報じています)
また、このような状況お背景にエルドアンはプーチン・ロシア大統領と電話会談をし、ロシア外務省は両首脳がエネルギー等の分野での両国間協力の進展を評価し、さらに積極的な進展を図るとしたとし、トルコ側も経済的な協力と合わせて、軍事面での協力での協力の重要性も指摘したとのことです。
またトルコの野党も政府を支持し、米国の圧力には屈しないと声明した由
他方トルコ外務省等は、トルコ政府は貿易問題については世界貿易機構WTOの原則と規則に従って行動しており、他の国も(要するに米国も)国際約束と規則に従って行動することを期待していると声明した由
https://www.alarabiya.net/ar/aswaq/2018/08/10/لماذا-انهارت-الليرة-التركية-بعد-خطاب-أردوغان؟.html
http://www.alquds.co.uk/?p=992433
http://www.aljazeera.net/news/ebusiness/2018/8/10/أردوغان-إذا-كان-لديهم-الدولار-فلنا-ربنا-وشعبنا

取り敢えずのところ以上で、当面はトルコリラがさらに下落を続けるのかが注目されますが、やはり米国は腐っても鯛で、大統領のツイっトだけで、中東の主要国の通貨を暴落させるのですから、流石なものです。
これで中東で米国[トランプ)の怒りを買って自国通貨が大暴落した国はイランに次いでトルコとなりましたが(尤もイランの天文学的暴落に比せば、トルコはまだまだましだが)こんな風にして、自国の同盟国の経済に圧力を加えていくことは、今後米国が中東の安定を進めていくうえで大きな足かせにになるような気がします。
それにしても米国の措置に対して、プーチンとエルドアンが電話協議をして、両国の協力関係を増資させるとするところなど、不真面目に考えれば、漫画チックな光景でしょうかね


トルコー米ーロシア関係(風刺画)

cartoon8-8-2018-[1]トルコー米ーロシアの三角関係に関する風刺画です。
トルコ帽をかぶった男が、交通標識の所で迷っています。
米・F35戦闘機と書かれた方へ行くべきか、S400ミサイルのロシアと書かれた方へ行くべきか?
なかなか面白い風刺ですが、トルコが悩んでいるのは、特に同盟国の米との関係で、戦闘機のみならず、多くの問題があるからだと思います。
https://aawsat.com/home/cartoon/1356021/%D8%A3%D9%85%D8%AC%D8%AF-%D8%B1%D8%B3%D9%85%D9%8A




米・トルコ関係の悪化

このところNATOの加盟国であるトルコと米国の関係の軋み(ロシア製S400購入問題、クルド政策等)が目立ちますが、この関係がさらに緊張している模様です

一つは武器購入に絡んだ問題ですが、米下院は、トルコのS400購入問題が米安全保障に影響を与えないと、国防総省が結論付けるまでは、トルコの購入したF35戦闘機の引き渡しを差し止めるとの決議を359対59の大差で可決し、法案は上院へ送られるとのことです。

もう一つはトルコ在住米人神父の問題で、Andrew Brunsonはテロ組織(2016年だったかにクーデター未遂事件を起こしたとされるギューーレン師一派のことらしい)と関係したとの容疑で、21週間刑務所に収監されていたが、米政府の働きかけで、釈放されたものの、自宅軟禁とされ、また出国が禁止された由。
この事件に関し、トランプ大統領は、トルコ政府が同神父を釈放しなければ、トルコに対して重大な制裁を加えると発言した由。
これに対してトルコ政府は、大統領府以下猛烈に反発して、トルコは長い歴史を有する法治国家であるとして、米国の内政問題介入に反発した由
なお、この問題にはどうやら裏があって、haaretz net によると、この問題はNATO首脳会議の際に両首脳間で話し合われ、エルドアンがイスラエルがテロ容疑(ハマス幇助容疑)で逮捕しているトルコ人女性)を釈放する代わりにトルコが米神父を釈放することとなったものの由にて、イスラエルはこのトルコ人女性を国外退去とした由。
然るにトルコが米神父を釈放はしたものの、自宅軟禁いしていることについてトランプが良かったという事情がある模様です。
逆にトルコ側は、米政府がギューレン師問題等で、協力しないとして非難を強めている模様
http://www.alquds.co.uk/?p=982096
http://www.alquds.co.uk/?p=982426
https://www.haaretz.com/israel-news/trump-pressured-israel-to-release-detained-turkish-terror-suspect-1.6316994

政治的な面からすると、F35とS400問題の方が、はるかに重要ではないかと思われるも、トランプが絡んでくるとなかなか厄介なことになるようです。




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