中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

イスラエル

ロシア機撃墜後のロシア・イスラエル関係

ラタキアに対するイスラエル機の攻撃と関連して、シリアの防空部隊が誤ってロシア機を撃墜したことから、今後のシリアを巡る両国の関係が注目されているところ、al qods al arabi net はイスラエル紙イディオノット・アハロノートの軍事評論家が、この問題について書いた評論を載せていると伝えています。

それによると、プーチンも撃墜したのはシリア軍であったことを認め、またネタニアフもロシア兵の死亡について残念の意を表明し、当時の状況についてプーチンに詳しく説明し、今回の事件の調査の結果はロシアにも連絡すると約束したことから、今回の事件はイスラエルのシリアに対する今後の攻撃には影響を与えないと思われるが、イスラエルはその軍事活動につき、ロシアとより密接に調整することとなろうとしている由。

さらにこの専門家は、今後の両国間の問題は、シリアの対空ミサイル近代化問題で、ネタニアフ首相はプーチンに対して、シリア軍にS300やS200の近代化されたミサイルを引き渡さないように、説得を続けることになろうとしています。

これまでもロシアのシリア軍へのS300供与は度々話題に上ったが、ネタニアフはトランプの協力も得て、これまではプーチンが供与しないように説得することに成功してきたとのことです。

http://www.aljazeera.net/news/arabic/2018/9/19/أنقذوا-الأطفال-المجاعة-تتهدد-5-ملايين-طفل-باليمن

ロシアの地対空(対ミサイルも含む)防衛システムについては、既にイランがS300を導入し、トルコがより新型で射程の長いS400の導入を進めようとしていて(米国が猛反対しているが、それにもかかわらず、エルドアンは2019年導入の方向で動いている模様)、更に、カタールもS400の導入に関心を示していると伝えられています。

そこにきて、さらにシリアに対するS300の供与問題が浮上してきている訳で、中東は正しくロシアのミサイルの重要な市場になりつつある感がしますね。

ロシア機撃墜の余波(プーチンの反応等)

ロシア機のラタキア沖における撃墜(シリアの防空網によるもの)については、ロシア国防省がイスラエルを非難し、何らかの報復を示唆する等、イスラエル・ロシア関係が緊張しましたが、プーチンの発言で、どうやらとりあえず問題は下火になった模様です。

アラビア語メディア及びhaaretz net 等は、プーチンが記者団に対して、この事件は悲劇的なものではあったが、撃墜したのはシリア防空網で、イスラエル機ではないと語ったとして、haaretz net はプーチンがイスラエルの責任を否定したと報じています。
またロシアがとるべき対応措置については報復の権利は維持するも、当面の措置としてはシリアのロシア軍の防空能力の強化であるとした由。

他方、ネタニアフは、プーチンに電話をして、ロシア兵15名の死亡に遺憾の意を示しつつも、ロシア機の撃墜はシリア防空軍によるもので、イスラエル機は関係しておらず、撃墜された当時はイスラエル機は本国に帰還する途中で、当該空域には居なかったとして、イスラエ機がロシア機を隠れ蓑として使ったとのロシアの説を否定した由。

また、ロシア空軍の元将軍等は、シリアの保有するS200地対空ミサイルは旧式で、更新が必要となっているが、問題はシリア軍の訓練で、彼らは味方と敵も区別できないと語った由。

更に、情報としてイスラエルからの事前通告の時間的余裕が十分であったか否かの問題はさておいて、事前通告は「1分前」よりはかなり前にされていたとした由。

また、ロシア国防省だったかが、仏のフリゲート艦が、艦対地ミサイルをラタキア向けに発射したとしたことに対しては、在米仏大使が完全な捏造であるとして、ロシアの非難を否定した由。

他方イスラエル機の目標については、シリア人権網は、弾薬庫であるとしているが、これが政府軍のものかヒズボッラー等イラン関係のものかは不明。
取りあえずは、これ以上イスラエル―ロシア関係の緊張は抑えられた模様ですが、今後の問題としてal jazeera net などはイスラエル機のシリア上空での活動は制約されざるをえまいとしています。

また上記の通り、ロシア空軍幹部の間にもシリア防空軍の訓練等にかなり大っぴらな批判があるようで、またS200が旧式で更新の必要があるとしたことから新型ミサイルの供与問題等も出てくべく、この問題は今後ともまだまだ尾を引くかと思われます。

ロシア機の撃墜(ロシアのイスラエル非難)

ロシア機がラタキア沖合の海上で(シリア政府の対空砲で)撃墜されたらしいことは、既に報告済みですが、アラビア語メディア及びイスラエル・メディアは、いずれもロシアはこの事件にはイスラエルに責任があるとして、モスクワ駐在のイスラエル大使を招致して説明を要求したと報じています。
(ロシアも撃墜したのはシリアの防空部隊であることは受け入れている模様)

それによると、ロシア国防省のイスラエルに対する非難は2点で、一つはこのような攻撃を、ロシアに通告したのは実際に攻撃を行う1分前だったこと、もう一つは4機のイスラエル機がロシア機の近くを通ったので、シリア防空網が誤ってロシア機を標的にしたということで、イスラエルは重大な挑発行為を行ったということのようです。

またynet news によれば、ロシア国防相はイスラエル国防相に対して、事件に関しては、イスラエルにすべての責任があると非難したとのことです。

現在までのところイスラエル政府の反応は不明ですが(何しろ、そもそもイスラエル機がラタキアを攻撃した事実すら確認していないのだから)、haaretz netは、ロシアの抗議はそのメンツを保つための工作であるとコメントしています。

シリア上空での米等有志連合機、ロシア機、政府軍機が比較的狭い領域で入り乱れて活動していることは、事故や誤認識による事件の危険性が強いことは、前から指摘されてきたところで、これまではかろうじてそのような事故が起きなかっただけのことかもしれません。

但し、ロシア軍と米等有志連合、およびイスラエル軍は相互にそれぞれの活動を事前連絡している模様で、今回もロシア国防省によれば、攻撃の1分前に通告があったとのことです。
事実関係は勿論不明ですが(おそらく今回はイスラエルもかなり詳細な時系列を公表せざるを得なくなるかもしれない)、攻撃の1分前と言うのが事実ならば、確かに極めて挑発的な行為ですが、おそらくそんなことはなく、時間的には常識的な余裕をもって通告されたが、何らかの理由で現地の航空機にその辺が連絡されなかったというのが真相ではないかという気がしますが、勿論そのへんの事情は知る由もありません。

いずれにせよ、今後ロシアがこの問題をどのくらい国際化、深刻化するかが注目されるところでしょうか。

ラタキアに対するミサイル攻撃?

シリア北部に関しもう一つ
アラビア語メディアとy net news等イスラエルメディアは、17日夕北部シリアの港町のラタキアがミサイルで攻撃されたと報じています。

シリア政府系のサナ通信は、イスラエルの攻撃で、シリアの対ミサイル防衛網が複数のミサイルを撃墜したと報じています。

イスラエル側は、イスラエル国防軍(IDF)報道官が、コメントしないとしているとのことですが、アラビア語メディアは攻撃の写真とするものを掲載しており、現地では大きな火の手が目撃され、爆発音も響いたとのことですから、少なくとも何らかの爆発があったことは事実でしょう。

・al jazeera net は、攻撃されたのはラタキアの3地点とのことで、独通信は、ラタキアの東入り口にあるガス発電所、市の東部にある技術工場(軍の工場かと思われる)、科学技術研究所(通常この名前の研究所では化学兵器の研究、生産をしていることが多い)の3ヵ所の由。

・サナ通信とロシアのスプートニク通信は、ロシアのhameemeem基地で、ロシアとシリアの防空部隊がミサイル等を捕捉したと報じている由。
スプートニクはまた、ロシア国防省の話として、hameemeeem 基地と上空を飛行中のロシア機(14名搭乗)との通信が失われたとしている由。

・さらに複数のロシアメディアは、地中海の仏フリゲートから艦対地ミサイルが発射されたと報じているがその狙いがラタキアか否かは不明としている由。

ということで、事実関係は未だ不鮮明ではありますが、報道が事実とすれば、IDF等の攻撃があまりにロシア軍の基地に近い所で行われていて、その狙いが何か気になるところです
さらにこの攻撃については当然ロシア軍にも事前予告されているのでしょうね?

他方y net news はシリア人権網の数字として、この2ヵ月間にシリアで、IDFの攻撃で死亡したイラン兵、イラン系民兵の数は113名に上り、そのうち28名はイラン人将校や民兵の戦闘員と報じています。

イスラエルは戦時報道管制を敷いていて、その活動についてはコメントしない場合が多いので、イスラエル軍の関与の度合いやその目的等は不明ですが、上記y net news の記事を待つまでもなく、この2ヵ月シリアにおけるイランのプレゼンスに対するIDFの攻撃はエスカレートしているように思われます。
今回のラタキア攻撃も(事実とすれば)イランのプレゼンスを狙ったものでしょうか?

イスラエル・トルコの関係改善?

al qods al arabi netは、イスラエル紙イディオノット・ハロノートが、現在イスラエルとトルコとの間ではこの5月以来途絶えている(5月のガザにおけるIDFのパレスチナ人60名の殺害以来の由)外交関係を再開し、相互の大使を帰任させる方向で話し合いが行われていると報じていると伝えています。
それによると、イスラエルとトルコの航空機がUAEのアブダビに向かったとのことで、(明示はしていないが、アブダビで最終的な交渉が行われることを示唆している。仮にその通りとして、双方の代表団のレベルは不明・・外相レベルか?)、仮に合意が成立すれば、10月早々にも大使の帰任が実現するだろうとしています。
記事はさら、にシリア内戦が終結に近づき、シーア派のアサドがイランの支援の下に、シリアを平定しようとしていることに、イスラエルとスンイ派のトルコがともに危機感を抱いていることが関係していると付記していて、また最近米国の圧力でトルコ経済が困難に直面していることも関係していると付記しています
http://www.alquds.co.uk/?p=1017057
これまでトルコはパレスチナ問題では、多くのアラブ諸国よりもより「アラブ的・親パレスチナ的」政策をとってきたイスラエルと鋭く対立してきましたが、考えてみれば、トルコにとって現実的にはより切実な問題であるシリア内戦については、イスラエルと共通の戦略的立場にあり、両国が関係改善しようとするのは、自然な流れかと思います。
またエルドアンとしては米国との関係改善にイスラエルの影響を期待するところもあるだろうと推測されます


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