中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

アメリカの外交政策

エルサレム問題(アラブ3首脳会議等)

トランプ宣言に対する抗議は10日もパレスチナ各地及びアラブ諸国で続き、パレスチナでは157名が負傷したとのことです。

他方、この問題はアラブ諸国政府にとっても深刻な問題になっている模様で、al jazeera net は、エジプト、ヨルダン、パレスチナの3首脳が11日カイロで、首脳会議を開き、この問題を協議すると報じています。
このため、アッバス議長は、先ずヨルダンを訪れアブダッラー国王と会談し、その後カイロに到着したとのことですが、シーシ大統領もヨルダン国王等と電話での協議をしている由。
(エジプトのトランプ宣言に関する明確な立場は不明ですが…当然宣言に反対し、エルサレムへの米大の移転反対という建前では、他のアラブ諸国と同じですが・・・、同じal jazeera net の別の記事は、アズハリ総長とコプト教の大司教が、米副大統領との会談を拒否したことはシーシ大統領を困惑させているのか、大統領とも打ち合わせたうえでのことか、との議論がエジプト国内で行われていると報じています。
またal qods al arabi net はヨルダンのサウディ大使が、ヨルダンの抗議デモが、サウディ皇太子が米国の手先であるとのプラカードを掲げたことに鑑み、サウディ人や学生に、デモに参加しないように呼びかけたことに対して、ヨルダン国内でも議論が起きていると報じている)
またトルコのエルドアン大統領は、13日アンカラにて、イスラム諸国会議の緊急首脳会議を開くことになった模様ですが、アッバス議長はカイロ訪問前にトルコも訪問している由
なお、トルコ紙のhurryiet net は、同首脳会議はエルサレムをパレスチナの首都として認めることになろうと報じています。
なお、エルドアンは、イスラエルをテロ国家として激しく非難し、これに対してネタニアフがトルコは多数のクルド人を殺している国家であると非難し返している由
http://www.aljazeera.net/news/reportsandinterviews/2017/12/10/هل-أحرج-الطيب-وتواضروس-النظام-المصري
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/12/10/قمة-مصرية-أردنية-فلسطينية-بالقاهرة-بشأن-القدس
http://www.alquds.co.uk/?p=842192
http://www.hurriyetdailynews.com/oic-summit-in-istanbul-should-recognize-jerusalem-as-palestines-capital-adnan-al-husayni-123893

トランプ宣言に関しては、サウディ等が支持しているとの報も見られるところ、この問題で最も困難な立場に立たされるのはヨルダンで(何しろ、国民お半分はパレスチナ系である上に、未だにあるアクサ・モスクのある場所の管理権は、67年前支配していたヨルダンにある。)あると思われるが、エジプトも強力なイスラム過激派を抱えている関係上、下手な妥協を見せると命取りにもなりかねないことから、急きょ3種首脳会議となったものと思われます。
まずはその結果を見て、ついでイスラム諸国会議の結果を見るしかないと思いますが、どうやらエルサレム問題は、前から予測されていた通り、アラブ諸国にとっても深刻な問題となる可能性を露呈してきた感があります。
それにしてもことパレスチナ問題となると、トルコはアラブ諸国以上にアラブ的になりますが、数年前のトルコからのガザ向けの救援船がイスラエル海軍のコマンド部隊に急襲され、トルコ人が数人死亡した事件で、イスラエル政府が補償金(または見舞金)を払うことでほぼ合意ができていましたが、あの件はどうなったのでしょうかね?








エルサレム問題2

エルサレムに関するトランプ宣言から4日がたちましたが、al jazeera net は4日目の犠牲者は、西岸とガザで231名の負傷者と報じています。
イスラエルのy net news も、同日の犠牲者は西岸で171名、ガザで60名としており、ほぼ同じ数字で、先ずはかなり正確なところかと思います。
また同日には新たな死者は出なかった模様です。

このような状況を踏まえて、イスラエル紙のネットは、イスラエル側の喜びの表現も、パレスチナ側の怒りの表現も、抑制されたものであったと形容していました。死者が出なかったことは評価できるとして、負傷者が230名以上で、果たして抑制されたものと言えるのか否か議論のあるところでしょう・・・。

他方、朝方お伝えしたアラブ連盟の外相会議については10日早朝、最終コミュニケが発出された(ということは文言の調整等で手間取っていたのでしょう)とのことですが、当然予測されたトランプ宣言に対する非難(無効である、国際法違反である、中東和平を疎外する等々)以外では、総ての国にエルサレムを首都とするパレスチナ国家の承認を要請し、また近々(1ヶ月以内)にアラブ首脳会議をヨルダンで開催することを検討するとなっている模様です。

要するに、誰も真面目に聞かないような(アラブがこのような形で非難するであろうことは、当然誰もが予想していたところで、それ以上でも、それ以下でもなかったから)口先の非難より以上にはアラブ首脳会議の開催検討ということくらいが、アラブ連盟のできたことなのでしょう。

朝方予告した通り、アラブ各国に対して、米国との関係を断絶するように勧告するなどという「過激な」文言は盛り込まれなかったようです。

その他では、先に報告した通り中東を歴訪するペンス副大統領との関係で、アッバス議長が予定していた会談を取りやめるほか、エジプトのコプト教の大司教も副大統領とは会わないとのことです。

http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2017/12/09/وزراء-الخارجية-العرب-يبحثون-وضع-القدس.html
https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5054201,00.html
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/12/9/أكثر-من-مئتي-مصاب-بمواجهات-مستمرة-بالضفة-وغزة

ということで、アラブ各国が何もする能力が無いか、その意思がないことが明らかになり、パレスチナ民衆も現状では大騒擾を起こすまでに怒り狂っている訳でもないと観測できようにおもわれます。しかし、問題はこの後パレスチナ民衆がどこまで抑制できるか、更にはアラブ各国の民衆がいつまで彼らの政府の口先だけの非難で満足しているかでしょう。

もしそれで済めば、CNNなどがコメントしているように、トランプの賭けが勝ったということなのでしょうが、どうも今回の米政府のしたことは、中長期的に見れば、アラブ世界に大きな影響を残すことになりそうです。

何しろ、客観的に見れば、パレスチナ人はイスラエル政府に対して圧倒的に弱い立場にあるので、何らかの米政府の調停と介入、更にはイスラエル政府に対する圧力がない限り、初めから意味のある交渉などできないのが、冷厳な現実で、仮にパレスチナ暫定政府が声明通り、米国との接触を断ったりすれば、実質的に損をするのはパレスチナ側であることは目に見えており、イスラエルとしては和平が進まないことをいいことに、今後とも既成事実を積み重ねていくのでしょう。

そこでCNNなどのコメンテーターの中には、トランプはこれまでもイスラエルが喉から手が出るほど欲しがっていたエルサレムを与えたのだから、ネタニアフに対しては大きな貸しを作った形で、これまでの規制の外交観念とは全く次元の異なる取引をしようとしていて、ネタニアフも断りにくくなるだろうなどとする人もいるようです。

しかし、中東の市場やタクシーに乗る時の駆け引きでも、切り札は温存しておくのが、鉄則で、いったん相手が欲しいものを与えてしまったが最後、相手の譲歩を引き出すことは不可能になります。
更に言えば、そもそもトランプは中東和平など、自分の米国内での権力固めの材料ぐらいにしか。考えていないように思われます。
まあ、今後どうなりますか? 取りあえず。

エルサレム問題(アラブ連盟外相会議)

トランプのエルサレムに関する宣言を受けての、アラブ連盟外相会議は9日カイロで行われ、会議後の最終声明にて、トランプ宣言に対する地域内及び国際的対応に関する2つの決議を採択することになっている模様ですが、今のところ採択されたという報道はありません。

但し、事前に予測されていた通り、アラブ連盟は「口先の抗議」をする以上の実行的な措置は取らない、というか取れない模様です。

アラビア語メディアは、いずれもアラブ外交筋が、この最終声明に「いかなる国家でもエルサレムに大使館を移転する国との全ての関係は断絶する」との1980年のアラブ首脳会議の決定を実施に移すようにとの勧告は入らないだろうと語ったと報じています。
(先日お伝えしたサウディ、バハレン、エジプト等の本心が事実か否かは不明ですが、少なくとも彼らがそのような勧告に賛成することはないだろうと思います)

更にトランプ宣言に対抗するものとして、パレスチナ国家承認国に、改めて「エルサレムを首都とするパレスチナ」を承認するように働きかける、という項目が入りそうです。
このような項目が入ると、一応目先ではアラブ諸国としても何かしているように見えまた現実に、世界中のアラブ外交官は忙しくなるだろうと思いますが、ある意味では、実質意味のない宣伝のためだけの骨折り仕事でしょうね。

それよりも、注目されたのは、相変わらずのアラブ間の喧嘩で(カタール問題)、al jazeera net は、カタール外相の演説(サウディの次の由)が始まると、多くの放送局が中継を中止し、彼の演説の最後の文言で、再開されたと報じています。

http://www.alquds.co.uk/?p=841721
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/12/9/الوزاري-العربي-يبحث-الرد-على-قرار-ترمب-بشأن-القدس

予測通り、アラブ諸国が何もしない(できない)ことはますます明らかになりつつありますが、問題は今後パレスチナ現地の状況がどう推移するのか、IS等が動くのか、他のアラブ諸国での抗議運動があらに騒擾にまで発展するかという所ではないでしょうか。

トランプ宣言(風刺画)

960414cd-72fd-4e1f-a5cf-ca90c66ca855[1]余り風刺のきいた絵ではないように思いますが、トランプ宣言と題する風刺画です。
左の尖った山にはバルフォア宣言と書かれ、そのうえでアラブ人が血を流しています。そこをトランプ宣言と書かれたとがった山に向かって、トランプが嫌がるアラブ人を引っ張っていきますが、道には髑髏が転がっています

相当やられたらしいアラブ人は、「これは和平を阻害するのだがな」と言いながら引っ張られていきます。
http://www.aljazeera.net/news/caricature/2017/12/7/كاريكاتير-وعد-بلفور-ووعد-ترمب

エルサレム問題

トランプのエルサレムをイスラエルの首都として承認するとの決定については、8日が金曜日(金曜礼拝の日)であったこともあり、礼拝後のパレスチナ民衆とIDFの衝突で、この問題が起きてから始めて、パレスチナ人の死者が出ました。
アラビア語メディアやy net news によると、死者2名で、8日だけで負傷者300名(800と数字もある)が出た模様です。
y net news nによれば、ガザとの境界近くで2名が死亡し、55名が負傷し、西岸では250名が負傷した由。

更に、イスラエルのsderotを狙ったロケットが、ガザから発射され、iron domeが捕捉したが、その破片が落ちて、1名がショックで治療を受けた由。
これに対してIDF機が報復の空爆を行い、赤ん坊を含む15名が負傷した由。

その他アラブ諸国各地で、抗議デモが生じているところ、現在のところ深刻な騒擾状態は生じていない模様。
またIS等のテロも、昨日の時点では生じていない模様です。
しかし、ヒズボッラーのナスラッラ―書記長などは、パレスチナ人、アラブ人、ムスリムによる息の長い、新たなインティファーダを呼びかけているようで、この問題は今後とも長く尾を引きそうです。

他方、国連安保理は8日(NY時間)に開催され、国連事務局を含めて大多数の国がトランプの決定に批判または非難の意を表明したが、米代表は大統領決定を擁護して、トランプはクリントン、ブッシュ、オバマが議会の決議(エルサレムはイスラエルの首都であるというもの)に同意しながら、実行して来なかったことを実行しただけのことであり、また米国はイスラエル国家の境界については何も決定していないとした由。
代表は更にパレスチナ人やアラブがこの決定を口実に、暴力に走れば、彼らは平和のパートナーではなくなる、と警告した由。
(米代表がいみじくも強調した通り、擬態は確か1995年だったかにエルサレムを首都として承認することを決議しており、今回のトランプの決定はそれを実行したままであるが、その間3人もの大統領が、米外交にとって、また中東和平にとって、議会の決議は阻害要因以外の何物でもないとして実行してこなかったことが物語るように、こと中東和平問題に関しては、欧州の同盟国からも孤立し、いわばグローバル・スタンダードに反する米国(世論も含めて)の立場の矛盾が表れているように思われる)
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/12/8/معارضة-بمجلس-الأمن-لقرار-ترمب-حول-القدس
http://www.alquds.co.uk/?p=841228
https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5053724,00.html
https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5054033,00.html
https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5053922,00.html
http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2017/12/08/تحسباً-لـ-جمعة-الغضب-تعزيزات-أمنية-إسرائيلية-بالضفة-.html
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