中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

レバノン

ハリリの辞任撤回

どうも、イエメン情勢の急展開等に紛れて、記事にするのをすっかり忘れていましたが、確か先にサウディで辞任を表明し、大きな話題となったレバノンのハリリ首相は、5日彼のレバノン帰国後の初閣議のあと、辞表を撤回しました。
(このことは勿論アラビア語メディアでも報じられていましたが、若干旧聞に属するためか、本日のネット記事には見当たらない(それはそうだろう。トランプのエルサレム問題決定で、もちきりで、こんな古い話を報じている余裕はなさそう!)ので、取りあえず見つけた、ynet news の記事からですが、それによると、ハリリは、閣議が「レバノンは他のアラブ諸国の戦闘や内政には中立で、干渉しない」と決定したことを受けて、辞表を撤回したとのことです。
しかし、同ネットもこの意味は必ずしも明確ではない、としているように、おそらくは親ヒズボッラー(シリア)グループと反ヒズボッラーグループの妥協の産物で、これでレバノンの政策が大きく変わるということではなさそうです。
https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5052361,00.html

ハリリの辞任表明の経緯とその後の進展については、未だに謎が多くて、真相は不明ですが(もっとも、他の中東のより深刻な問題が大きく表面出でてきた現在、レバノン内部の問題など、おそらくは国際社会が大きな関心を払う問題ではなくなったような気がします)。
しかし、所詮あの問題もヒズボッラー(ということは後ろにいるシリアとイラン)対その影響力の拡大に反対するスンイ派勢力の角逐問題である以上、より大きな中東全体の問題にかかわる問題です。
ということで、若干手遅れではありますが、かってな仮説を書いておきます。不十分な情報で書くものですから、御異論を持つ向きは多いと思いますので、是非コメント欄にご意見ください。

・レバノン閣議の決定の意味が何であるかの問題はあるが、あの表現は基本的にはヒズボッラーの他のアラブ諸国への干渉、介入に歯止めをかける性質のもので、(ほかのレバノン政治勢力で、そんな大それたこと?をしようとしたり、そんな力を有する者はない)その意味では、建前上一定の歯止めをかけたことにして、ハリリの辞表撤回に道を開いたもの。
しかし、シリアで数千人を失ったようなヒズボッラーがこんな合意位で、大きく立場を変えるはずはなく、所詮は同床異夢の現状糊塗に過ぎない。
・ハリリがなぜ1週間に2回もサウディを訪れ、2回目の訪問で辞意を表明し、その後2週間だったかサウディに滞在したことで、多くの人が、辞任はサウディに強制されたもので、彼はサウディに軟禁されていたなどと、もっともらしい議論をしていた。
・このような議論は、その後の彼の仏メディア等等に対する発言で払拭されたように思われるが、なぜ彼がこんな行動に出たかは、彼が上記インタビューの中で、彼としては湾岸に済む30万人のレバノン人を犠牲にすることはできないと語ったことに一つの鍵があるように思われる。
・想像の域を出ないが、おそらく最初のサウディ訪問はサウディから呼びつけられ、今後ともヒズボッラーがシリアのみならず、特にイエメンで反スンイ派の行動を続ければ、サウディ等湾岸諸国は在留レバノン人を追放することになると警告(脅迫)されたのではないか?
・そこでハリリは慌ててレバノンに飛んで帰り、サウディ等の脅迫を伝え、ヒズボッラーの活動抑制を訴えた(もちろん舞台裏で!)が、これに反発したヒズボッラーやその支持者が、彼を脅迫し、為に彼は生命の危険さえ感じたのではないか?
・そこで彼は再度サウディに舞い戻り、サウディ皇太子らと協議して、辞任表明という奥の手を使って(彼はサウディ支持者ということで知られていて、ヒズボッラ―の支持を受けているアウン大統領のカウンターバランスとして首相にされているもので、彼が辞任することは、レバノンの勢力バランスを崩し、その政治危機の再燃を意味する)物事を動かそうとしたのではないか?
彼やサウディの目論見通り、彼の辞任を受けて、レバノンでは政治危機再来に対する懸念が高まり、関係者(ということはヒズボッラー)が妥協するようにとの圧力が高まった。
このためアウン大統領等も裏で協議をして、ハリリ復帰の見返りに、上記のようなアラブ政治不干渉の政府決定をすることで、取りあえずの幕引きを図ったのではないか?
・お蔭で、レバノンではハリリの帰国で安堵感が広がっていると伝えられている。
・しかし、この問題は所詮はレバノンを舞台にした、中東、アラブ政治の駆け引き問題なので、今後ともハリリが職にとどまり、レバノンは政治危機を脱したのか否かは、イエメン情勢とかシリア、イラク情勢とかの、アラブ諸国問題、イランお対アラブ政策で決まっていくのではないか?
勿論直接的には、今後ヒズボッラーがどのような路線をとるかが大きな鍵かと思われる










ハリリの仏誌とのインタビュー

アラビア語メディアはいずれも、ハリリ首相の仏誌パリ・マッチ(30日発行)とのインタビューの内容を掲載していますが、それぞれ若干違うところがありますが、取りまとめ次の通り。
それにしても、非常に率直な発言で、こんな発言をしたら、またもやアサドかヒズボッラーから命を狙われるのではないかという気がするくらいです。

・ハリリはインタビューで、彼の生命に対する脅威はあるかとの質問に対して、未だにシリア政権から狙われていると発言した。
彼は、彼に対しては、シリア政府を含む敵がその命を狙ってきたが、アサド政権は彼に対する死刑を宣告していたと語った。
・彼はヒズボッラーのアラブ諸国に対する干渉が、レバノンに高くつくことになることを恐れていると繰り返した。
・彼は先日の彼の辞任表明は、世界に対して、レバノンはヒズボッラーの湾岸への介入(すなわちイエメン)を認めるわけにはいかないというメッセージであったと説明した。
この点に関し、湾岸地方には30万人のレバノン人が居住していて、ヒズボッラーの介入がもたらす影響に責任を持てないとのメッセージが理解されたので、辞任問題は近く解決するだろうと語った。
(要するに撤回するという意味か?)
・シリア内戦でアサドが勝利をしたのか、との質問に対して、勝利したのはアサドではなくプーチンとロウハニであると答えた
・、またイスラエルがシリア内でイランとヒズボッラ―の権益を攻撃した場合にどうするのか、と問われ、これはシリアの問題であり、レバノンとしては何もしないと答えた。
・他方ヒズボッラーについて、レバノン内でヒズボッラーの政治的役割はあり、彼らは武器を有しているが、レバノン内では使っていないし、彼らが武器を使用しないことがレバノンの利益であると答えた
http://www.alquds.co.uk/?p=836132
http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2017/11/30/الحريري-أخشى-أن-يكلفنا-دور-حزب-الله-في-المنطقة-غالياً.html
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/11/30/الحريري-اللبنانيون-اختاروا-الحوار-لمصلحة-بلدهم

これはハリリの仏誌とのインタビュー記事の孫引きになるので、正確さの問題はあるかもしれませんが、大きくはずれてはいないでしょう。

それにしても、彼のサウディにおける辞任表明から、多くの人が盛んに彼の離任はサウディに強制されたもので、彼はサウディに軟禁されていたなどという話を、さももっともらしく流していたのは、一体どういうことなのでしょうか?
彼が暗殺されたハリリ父の息子で、初めからヒズボッラ―とのバランスをとるために首相に据えられたことは周知の事実でしたが、彼自身からこのような発言があったのちも、その様な発言をした人は自説に固執するのでしょうか?







ハリリのヒズボッラー非難

アラビア語メディアはいずれも、ハリリの仏TVとのインタビューを報じていますが、その中でハリリはヒズボッラーが約束(彼の組閣時のか?)に従って、アラブ問題について、中立の立場をとらない限り辞任すると語ったとのことです。
もっとも、彼はサウディでの出来事は彼自身の問題としておくとしており、未だ本当に謎が解けたわけではありませんが、この報道の通りであれば、彼はサウディと組んでレバノンにショック療法を与えようとしたものではないかと想像され、今後どう動くのかは分かりませんが、彼の辞任が世界中に大きく報じられ、また彼が帰国したことでレバノンではホッとした空気が広がり、彼の人気が上がっているということなので、取りあえずは彼の「賭け」は成功したということなのでしょうか?
記事の要点のみ

・ハリリは27日仏テレビCnewsとのインタビューで、彼は現在首相にとどまるつもりだが、ヒズボッラーがそのやり方を変更しなければ辞任すると語った。
彼は、ヒズボッラーのアラブ諸国に対する介入が現在のレバノンの政治危機の根源で、彼としてはその内閣に外国に介入する勢力を抱えるわけにはいかないとした由。
彼は更に、イランがヒズボッラーの介入の背後にいるとした。
彼はまた辞表を書いたのは自分自身で、レバノン政治にショックを与えようとしたと語った。
さらに、今後の交渉で政府の力関係は変更しうるし、自分としては早期選挙も受け入れる用意があるとした。
http://www.alquds.co.uk/?p=834277
http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2017/11/27/الحريري-على-حزب-الله-إظهار-الحياد-بالصراعات-الإقليمية.html
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/11/27/الحريري-سأستقيل-إذا-لم-يغير-حزب-الله-الوضع-الراهن
確か彼はさウディでだったか、生命の危険にさらされていると発言していたかと思いますが、ここまであからさまにヒズボッラー批判をして、その危険はないのでしょうか?
その辺の問題について大統領とも十分協議し、国民に広く彼の懸念を伝えることで、むしろ暗殺の危険を防ごうとしているのでしょうか?
ヒズボッラーはどう出るのでしょうか?




ハリリのヒズボッラー批判

ハリリの辞任表明とその後のサウディ滞在の真相は未だに謎ですが(いろいろと解説や意見はあるが、本人の口または信頼できる筋からの説明はない)、25日、同氏事務所から出された声明で、ヒズボッラーに関して(いかなるヒズボッラーの動きでも、アラブ諸国に影響を与えたり、その安定を損なうようなものは、受け入れられない」と表明しました。

http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/11/25/الحريري-لحزب-الله-نرفض-ما-يمس-الأشقاء-العرب
http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2017/11/25/الحريري-نرفض-أي-موقف-لحزب-الله-يضر-بالدول-العربية.html
http://www.alquds.co.uk/?p=833126

どうにもわかりにくい話で、この声明も(アラビアメディがほぼ同内容の報道をしているので、上記の声明が出されたこと自体は間違いないが)、その本当の狙いが何なのか良く分かりません。
一見したところでは、これまでも対立してきたヒズボッラーとの関係をはっきりさせることが主眼(確か彼の辞任の扱いを今後の大統領等との話し合いで、納得できるまで凍結しているはず)だろうと思われますが、ヒズボッラー(イラン)がおいそれと、その様な意見に耳を傾けるはずもない…傾ける格好はするかもしれない。
もしかするとサウディが彼の帰国を認める(サウディが拘束していたとしての話だが…)条件として、このような声明を出すことをつけていたという可能性も完全にない訳ではないかもしれません。
彼の本心が前者であれば、レバノンはアラブの問題から中立であるべきだとの彼の主張に反して、レバノン内政が緊張することもありうるかもしれません。

いずれにしても、al qods al arabi net の別の記事は、ハリリが父親の暗殺後にサウディから帰ってきて、政治に参加した時にはその人気は極めて高かった(シーア派を除くと思うが)、そん後ヒズボッラーと妥協して、ヒズボッラーを入れた政府を作ったりしたために、スンニ派およびレバノン一般で、その人気が下がっていたが、今回の事件でハリリの人気は急上昇していると報じています。
まあ、国民の人気などは水物ですから、何時まで続くかは分かりませんが、少なくとも当面は彼にとっては強い味方でしょうね。

http://www.alquds.co.uk/?p=833363

ハリリの帰国とその後

ハリリ首相は22日帰国して、独立記念日祝賀会にも、大統領と並んで出席し、その後大統領と国会議長との3者会談、さらに大統領とのさしの会談もあった模様ですが、レバノン政治の謎は少しも解けてはおらず、未だに雲に隠れたままです。
要するに一番知りたいのは
 彼がサウディで辞任を表明した本当の背景は何か?要するにサウディに追強制されてのものか?
 なぜ彼は辞表提出の州に態々2度もサウディを訪問したのか?
 彼は本当にサウディで自由を拘束されていたのか?
 2週間たって彼が帰国した背景は?仏等のサウディに対する働きかけの結果か?
等の事柄ですが、これらについては、今になるも、彼の口からも、サウディ政府からも、レバノン大統領からも、その他の如何なる信頼すべき筋からも、説明は全くされていない状況です。

それはともかく、al qods al arabi net は2つの記事で、ハリリは大統領に対して、辞表を当面凍結するように要請し、辞表の扱いについては、今後関係者との対話の結果によるとしたと報じています。
また、この凍結という措置は、エジプトと仏のイニシアティブで、その考えに従って、ハリリはサウディからカイロ経由でベイルートに帰国したとしています
(この話も、現時点では、確認のしようはありませんが、もし事実であれば、矢張りハリリの辞意表明は、ヒズボッラーとの対立が背景にあって、その辺を話し合いで解決するように仏エジプトが間に立ったということになるのでしょうね。サウディの強制説とは異なってきますかね?)

他方、al jazeera net はハリリを支持するスンイ派の政治グループ「将来の潮流」内には意見の相違が顕著で、ハリリも難しい事態に直面するであろうと書いていますが、それ以上詳しいことはないので、相違点が何で、どのくらい深刻なものかは不明です。

他方ヒズボッラーの議会グループは、ハリリが関係者と対話するとしたことを前向きの姿勢として歓迎し、辞表の凍結も歓迎した由。
http://www.alquds.co.uk/?p=832105
http://www.alquds.co.uk/?p=831473
http://www.aljazeera.net/news/reportsandinterviews/2017/11/23/الحريري-يواجه-تحدي-التباينات-داخل-تيار-المستقبل



















 
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