中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

アッバス

ハマスの人気上昇とアッバスの人気低下

al jazeera net は、最近のパレスチナ調査所の世論調査によると、現在選挙があれば、議長選挙でも議会選挙でもハマスが容易にアッバス及びファタハを破るとの結果が出たと報じています。
これはイスラエルのガザ攻撃を受けて、パレスチナ政治研究センターが8月26日から30日まで行った、西岸とガザでの世論調査の結果とのことです。

イスラエルのガザ攻撃とその結果の多数のパレスチナ民衆の死傷者を受けて、ハマスの人気が上昇したのか、逆に低下したのか、若干の議論もあったようですが、この結果からは明らかにハマスの人気上昇、ファタハとアッバスの人気低迷がでており、特に西岸におけるファタハとアッバスの人気に大きな陰りが出ており、パレスチナ指導部に大きな変化が出、中東紛争の平和的解決に関するこれまでの動きが更に阻害される可能性が出てきたようにおもわれます。

IS等の過激派の伸長と合わせて、、中東でもう一つ懸念すべき材料が生じた感があります。
記事の要点のみ次の通り

最近のパレスチナ人への世論調査によると、今選挙があればハマスが容易にファタハとアッバス議長を破る可能性が強い。
パレスチナ研究所によると、2006年以後、ハマスの人気に関して劇的な変化があり、特に先日のイスラエルの攻撃に対してのその軍事部門の抵抗以来、人気は急増している。

今選挙があれば、ハマスの政治副部長のイスマイリア・ハニア(前のガザ首相)が議長選挙で63%を得、アッバス議長は32%にとどまるとされる。
ハニアはガザで53%の得票率だが、西岸では63%を得るとされる。
これに対してアッバス議長はガザでは45%を得るが、西岸では25%にとどまる。
イスラエルの攻撃前にガザと西岸で、アッバス議長が53%、ハニアが41%であった。
仮にファタハで人気があるが現在服役中のバルグーティも加えた3者の競争でも、ハニアが48%、バルグーティが29%、アッバスが19%となる。

議会選挙でもハマスが46%、ファタハが31%、その他の諸派が7%、17%が未定としている。
また69%が6か月以内に選挙が行われるべきと考えるとしている。

http://www.aljazeera.net/news/arabic/2014/9/3/استطلاع-حماس-ستفوز-بالرئاسية-والتشريعية-لو-أجريت-الآن

入植地に関する安保理決議(総会へ?)

イスラエルの入植地建設非難決議に対する米国の拒否権行使については先にご紹介しましたが、パレスチナ側としてはその代替として緊急総会を開いて、同様の決議案の採択(総会では米国の拒否権がないので、大差での採択は確実)を検討中の模様です。

そのニュースを報じたhaaretz netの20日付の記事が、先日の拒否権行使に至る若干の経緯などを解説していますので、要点のみ次の通り。

「米国の拒否権に伴いパレスチナは今週、国連総会の緊急総会を開催し、イスラエル非難の決議案を採択する予定である。

米国の拒否権は、そもそも米国の入植地政策に反するが、これに対するアラブの反応は中東和平をより危機的にするであろう。

ネタニアフの要請でぺレス大統領がアッバスに電話をして(と言うことはネタニアフはアッバスと電話もできない間になっている訳ですな!)交渉に戻ることを要請したが、アッバスは入植地の凍結が先決とこれを拒否した。

オバマは18日アッバスと50分電話で話して、決議案が米国の中東での利益を害する可能性があり、また米議員がパレスチナへの援助を停止する可能性があると警告した。その日の午後クリントン長官が更に強い調子で警告した。

拒否権行使後、米大使は米国の立場と拒否権との間の矛盾を説明する難しい仕事を負わされた。他方英国大使は英、仏、独を代表して入植地の建設は国際法違反であると声明した。

拒否権行使は米国議員からは評判が良いが、イスラエルの国連大使は決議案は通過しなかったが、イスラエルはこれまで以上に国連で孤立したと報告した。

オバマ政権は拒否権はアラブ世界における米国の立場を更に悪化させると危惧している。他方アッバスの立場は、米国の圧力に屈しなかったということで強化された。」

http://www.haaretz.com/print-edition/news/pa-to-call-urgent-un-session-over-settlement-resolution-veto-1.344479

NYの3者会談(イスラエル紙の論説)

国連総会の機会にNYでオバマ、アッバス、ネタニアフの3者会談が行われたが、特段の成果がなかったと報じられているところ、25日付のjerusalem post 電子版は、さらに踏み込んで3者会談はアッバスの立場を弱めたと評しています。

今回ミッチェル特使のイスラエル訪問が、入植地の凍結問題で何らの成果もあげなかった直後に、何のために3者首脳会談が開かれたのか全く不思議な話ですが(オバマの自己の説得力に対する過信か、とにかくこれまで声高に中東和平を進めると公言してきただけに、なにもなくとも会談と言う形だけを繕ったかのいずれかでしょうが)、このような会談に出席したアッバスの立場が更に弱くなると言うことは当然予測されていたことですが、イスラエルの有力紙に指摘されると言うのもまたせつないものです。

アッバスは1000回も入植地問題について進展がない限りネタニアフとは会わないと明言してきたが、今回その舌の根も乾かないうちに3者会談でネタニアフと会った。アッバスに近い筋でさえオバマがなぜこのような形でアッバスを貶めるようなことをしたのかいぶかっているが、彼らもアッバスが無条件でネタニアフと会ったことを極めて遺憾と思っている。

特にアッバスがこのような状況ではネタニアフとは会えないと明言した直後に米政府が3者会談を宣言したことについて、アッバスはオバマの強い要請を断れなかったと歯切れの悪い説明をしている。
またこの会談はハマス及びPLO内の強硬派のアッバスに対する立場を強め、彼らはアッバスは米国の操り人形であると公言している。
アラブの消息筋の中にはアッバスとしてはアラブ政府の弱い立場のためオバマに対して強い姿勢が採れなかったとして、中にはネタニアフと会うことを強く勧めた政府もあったとしている。

(注、この政府がどこか書いてないが、先にも書いた通り、アッバスと会談したヨルダン国王は和平を進めることの緊急性を指摘したと報じられており、少なくとも「弱腰のアラブ政府」に一つがヨルダンであることは間違いないかと思われる)

悪運強いネタニアフ?

先日イスラエル内閣が(たしか)455戸の既存の入植地での新しい住宅建設を決めたという報道とエジプト情報機関の斡旋にもかかわらず、ファタハとハマスの和解交渉が難航しているという報道があったと言うことはご報告しました。
またアッバスPLO議長がイスラエルが入植をすべて凍結しない限り、和平交渉に応じないという立場をとっていることは良く知られています。
つまり、ハマスとファタハの話し合いがどうなろうと、ネタニアフは既存の入植地の人口の自然増加に対応するだけで、何ら新たな入植地の建設はしないとのコミットに違反してと嘯きながら、当面厄介な和平交渉からは逃れられるということです。

おまけに、ブッシュとは違ってパレスチナ和平に真剣で取り組むものとみられていたオバマ大統領は米政権最大の案件とか言う国民健康保険問題を抱えて、当面中東の問題などに大きな力を注sぐ余裕はなさそうです。また仮にあったとしても、現実的な問題としては、カルザイ政権のインチキ選挙が大きな問題となっている、アフガニスタン情勢の方がはるかに緊急性があり、その上でさらにパレスチナ問題にまで手を広げることができるとも思われない。

と言うことは、オバマ政権の成立で、強い圧力を受けて、国内政治的にも苦しい和平交渉に応じぜざるを得ず、持ち前の粘り腰でも今回ばかりは、相当苦労するだろうと思われていたネタニアフは、アラブ側の事情と米国の事情と言う天与の要因で、棚ぼた餅式に当分は自分がサボタージュをしなくても、和平交渉そのものがそもそも動かなくなったものとみられます。

昔からつくづく思うのだが、どうしてアラブ人と言うのはいつもいつもネガティブな条件を付けては、自分の方から交渉そのものをできなくして、結局は損をすることを性懲りもなく続けるのでしょうね。入植地の完全凍結までは交渉もしないと言っている限りは、ネタニアフはオバマがかんかんに怒らない程度の、ごく小さな住宅建設などをやっていれば、いつまでも交渉は始まらず、損をするのはパレスチナ人と言う図式が続くだけなのですがね。

以上の見方は勿論小生の個人的な見方ですが、どこかで重大な見落としがあったり、重要情報に接していなかったりと言うことで、この見方が完全に間違っていると嬉しいのですが、そんなことはないでしょうね。

矢張りネタニアフは悪運強い男です。
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