中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

アメリカ

安保理での米国の孤立(ガザ問題)

内外のメディアでは、トランプ政権の政策、北朝鮮の非核化問題、EU等に対する関税問題の2つが大きな注目を浴びていて、そのうち貿易問題については、トランプの「唯我独尊、一人我が道を行く」政策が貿易戦争を招き、国際経済に甚大な被害を与えかねないと国際的な懸念が高まっていて、米国内でも経済界、共和党内からも、不審の念が表明されていると伝えられています。

このような問題に比せば、国際的な重大問題ではない所為か、我が国の報道は全く触れていない模様ですが、ガザに関する安保理の2つの決議案に対する米国の態度は、この問題ではさらに米国の国際的孤立が深まっていることを示しています。

その力が落ちたりとはいえ、矢張り現在でも唯一の超大国(ロシアと中国は、現時点では超大国とまでは言えまい)で、いくらトランプが独裁的に行動しようとしているとはいえ、ロシア、中国と比較したら、未だ未だ「自由と民主主義の砦」である米国の国際的孤立が深まることは、長い目で見れば我が国にとっても、深刻な問題かと思います。

ガザ問題では、安保理で2つの決議案が否決されましたが、記事の要点のみ、次の通り。

  • 安保理は1日、ガザ問題に関し、パレエスチナ人の保護に関するクウェイト決議案を採決したが、賛成10ヵ国、棄権4ヵ国(英、ポーランド、オランダ、エチオピア)、反対米国で、米国の拒否権で否決された。(記事には出ていないが、仏は賛成したことになる。いずれにしても、賛成が10ヵ国を上回ったので、拒否権がなければ決議案は成立するので、米としては反対投票せざるを得なかったものか)
  • さらに安保理は、上記決議案に対抗して米国が提出した決議案(ハマスを非難する等)を採決したが、賛成1(米国)、反対3(クウェイト、ロシア、中国)、棄権11で否決した。(米国提出の決議案が、米国以外のどの国の支持も得られずに否決されるとは、ある意味では前代未聞のことで・・・棄権11ということは、国際社会の皮肉な対応の反映か・・・この問題に関しての米国の国際的孤立を浮き彫りにしたと思われる)
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2018/6/1/فيتو-أميركي-يجهض-مشروع-قرار-لحماية-الفلسطينيين
http://www.alquds.co.uk/?p=946413
http://www.alquds.co.uk/?p=946474

新悪の枢軸(トランプーネタニアフービンサルマン)

悪の枢軸と言えば、ブッシュ(息子)大統領がイラン、イラク、北朝鮮を指して言った言葉で有名ですが、最近では新枢軸として、米―イスラエル―サウディの名前が出されているようです。

これは特に新しい発想でもないかと思いますが、al jazeera net はパリ発効のアフリカに関する雑誌juenne afrique (確かかなり左の雑誌だったかと思う)が、トランプ、ネタニアフ、ビンサルマン皇太子(サウディ)の同盟をさして、新悪の枢軸と名付けたと報じています。
また彼らの悪の枢軸の後ろにはこれに従う、エジプトやUAE等の小さな悪が控えている、としています。

記事は、財力と軍事力のある彼らは、中東を彼らの思うような地域に変えるべく、中東に戦火を持ち込もうとしているが、これまでのこの種同盟と同じく失敗する運命にあるとしている由。
いずれにせよ、彼らが中東で狙っていることは3つで;

  • 一つはイランをアラブ諸国の影響地域から追い出し、その国境地域に閉じ込めること。(ただし、これにはイランが抵抗して成功しないであろう由。)
  • 2つ目がパレスンチな問題解決の提案づくりとその実施で、これはトランプがその義理の息子に与えた仕事の由、但し、和平案は新しく作る必要はなく、ネタニアフの案が既にあり、米大使館のエルサレム移転等着々と実施されつつある由。
  • 3つ目がロシアをイランから引き離すこと。
である由。

然し、雑誌としては、これら3国が富裕で強力であっても、上記3つの目的を達成する現実的な力や手段を有しているとは思わない由。

http://www.aljazeera.net/news/presstour/2018/5/25/أميركا-وإسرائيل-والسعودية-محور-الشر

この種のレッテル張りは、余りにジャーナリスティックで、よほど注意しないと、耳に心地よい言葉に足をとられ、本質を見失う恐れがありますが・・まあ、それが情宣の目的ですが・・・・、米―イスラエル―サウディが中東にとっての悪の枢軸という見方は、なかなか面白いものがあり、かなりいい所を言い当てているかと思われます。

それにしても、旧悪の枢軸の一国(北朝鮮)に対してトランプが、悪口雑言を言いはなったり、また突然気味の悪いようなお世辞を言ったり、していることを見るに、要するにこの種のレッテルが如何に信用すべきものではないものか、現実が如実に示していると思います。

トランプ政権のゴラン高地のイスラエル主権承認?

トランプが米大使館のエルサレム移転を決定した(要するにエルサレムはイスラエルの首都として認めたということ)ことに対する国際的反響は、広く報じられていますが、今度はゴラン高原の番かもしれません。

al arabiya net は、イスラエルの情報大臣が、トランプ政権はイスラエル占領下のゴラン高原に対するイスラエルの主権を認めるだろうと語ったと報じています。
同大臣は、シリアにおけるイラン勢力の拡大がイスラエルにとって深刻な問題とされており、現在でもイスラエルが併合したゴラン高原に対する脅威が問題となっているが、米国が同地のイスラエルの主権を認める好機であり、承認は数ヵ月以内にあるだろうとしている由。

http://www.alquds.co.uk/?p=940476

ゴラン高原はシリアからイスラエルにつながる戦略的高地で、1967年の第3次中東戦争でイスラエルが占領し、今もその多くはイスラエルの占領下にあります。

イスラエルは1981年だったかのゴラン高地法で、同地をほぼイスラエルの領土として取り扱っている(最近のイランミサイルの発射等でもイスラエルの領土侵害という言葉を使っている)が、同地はこれまでパレスチナの一部であったことはなく、常にシリアの一部であったために、国際法的に同地の帰属は争う余地のないものとして、イスラエル占領下にあるシリア領土と認識されています。

このような認識は過去のイスラエル政府も共有していて、パレスチナ問題の交渉が難しくなると、イスラエルが中東の和平を希求している証拠として、ゴラン高原の返還とシリアとの平和条約という話が何度も出てきました(このような対応をシリア・オプションと呼んでいる)。

その最も典型的な例はバラク首相の時のシリア・オプションで、この時は両者の交渉がほぼまとまりかけたが、イスラエル軍の撤退問題で、ガリラヤ湖からの精々数十メートルの差で合意ができなかったとさえ言われていました。

したがって、歴代イスラエル政府も国際法的には、ゴラン高地は当然返還されるべき土地と認識していたことは明らかですが、他方、占領が長引く間入植者も増大し、イスラエル人の意識でも同地はイスラエルの一部という意識が強くなり、特にシリア内戦の影響で、過激派の浸透を防ぐため及びイランのイスラルとの国境までの勢力拡大に反対する観点から、現在ではイスラエル内の良識派でも、近い将来の返還が妥当と考える人は少なくなっている模様です。

しかし、当面の治安問題と、国際法等の観点からの領有権問題は、基本的に別問題で、いくらなんでも歴代イスラエル政府までもが、国際法的にはシリアの一部と考えてきた土地について、トランプ政権がイスラエルの主権を認めるというのは、エルサレムの問題以上に(勿論政治的には、エルサレム問題の方がはるかに重大だが)国際法上の規範を逸脱した(武力による領土の拡張は認めないという原則)やり方で、仮にこの報道が事実で、米国がそのような政策をとれば、日本も主張している国際問題の法による支配を、これまで、法の支配を最も主張してきた米国が無視することになるわけで、今後の国際秩序にとっては、極めて由々しいことだろうと思います。

イランの核合意順守に関するハメネイの7条件

米国の対イラン12ヵ条要求は先にお伝えしましたが、al qods al arabi net およびal jazeera netは、ハメネイが欧州諸国に対して、イランが核合意にとどまるための7条件を開示したと報じています。

これはハメネイが23日テヘランで軍、政府関係者等を集めた集会で行った演説で、TV放映されたものとのことですが、そのなかでハメネイは米国の対イラン敵意は深く、米国は政治、経済、軍事のあらゆる方策でイラン体制の転覆を企ててきたと非難した由。

そしてイランとしては欧州と核合意維持のために協力する用意があるが、これまでの英・仏・独の動きは米国と同調しつつあるように見えると警告し、欧州がイランとの協力にすぐに踏み切らなければ、イランは核開発を再開するであろうと警告した由。

ハメネイは欧州諸国に対して、
  • 米国の核合意違反について非難の声明を出すこと。
  • ミサイル開発、イランの中東での活動制限のための新しい条約締結の動きをしないこと。
  • 米国の対イラン制裁に反対すること。
  • 欧州の銀行がイランとの貿易を守るための措置をとること。
  • 欧州諸国が米国の圧力に抗して、イラン原油の売却を守ること。
  • 欧州諸国がイラン原油を購入すること。
を要求し、イランは欧州諸国の行動が遅れれば、核既発の再開の権利を留保するとした由。
(7条件とあるも、キチンと整理されて報じられていない所為か、全部報じたものではない所為か、上記から見ると6条件だか7条件だか不明ではあるが、報道のまま)

他方ザリフ外相も、イランは米国の非論理的且つ非文明的な要求は拒否するとして、EUとの間で核合意維持のために交渉するであろうと述べた由。

http://www.alquds.co.uk/?p=940191
http://www.aljazeera.net/news/international/2018/5/23/شروط-خامنئي-السبعة-للالتزام-بالاتفاق-النووي

以上の通り、ハメネイの7項目要求は、見たところ米国の12ヵ条要求の全面拒否で、今後欧州諸国の交渉継続の努力はあっても、米国とイランの強硬姿勢がぶつかっている以上、どうも湾岸情勢は対決の方向に動く可能性が強いような気がします。
勿論今後の情勢を見極めなければならないが(何しろ気まぐれで、思い付き外交のトランプのことですから、昨日まで口を極めて罵っていた金さんを手のひらを返したように持ち上げたり、米朝首脳会談が来月12日に開催と発表されても、未だ延期が口にされる等、イランについてもどうなるか分かったものではありません)とりあえず。

国務長官の対イラン要求12ヵ条(アラブ諸国等の反応)

米国務長官の対イラン12ヵ条要求に対するアラブ諸国等の反応は、取りあえずのところは昨日お伝えしたかと思いますが、本日もal arabiya net (サウディ系)は欧州諸国とアラブ諸国の反応を報じています。

記事自体は既知のところで、欧州諸国ではEU代表、英、独等が、イランの核合意は今後も守っていくと表明したとされていて、他方アラブ諸国についてはアラブ首長国連邦(UAE)外務担当国務相、バハレン政府が、それぞれ米国務長官の立場を支持するとしたとしています。

https://www.alarabiya.net/ar/iran/2018/05/22/تأييد-عربي-وتحفظ-أوروبي-تجاه-خطة-أميركا-لمواجهة-طهران.html

上記のことは特段のニュースでもなんでもないと思いますが、注目されるのはサウディの衛星放送のネットでありながら、サウディ政府がいかなる立場かについて一言も触れていないことです。
その他若干のメディアでもサウディの反応については触れていないようです。

これまで対イランの話となると、サルマン皇太子は反イランの急先鋒で、サウディとしては彼の意を受けた外務大臣がかなり迅速に明確な意思表示をしてたような気がします。
それがここにきて、米国の重要な対イラン要求(これらの項目はそもそもこれまでサウディが要求してきたものとも同じと思われる)に対して、サウディ政府が明確な支持を表明していないとはどうしたことでしょうか?

サウディ系のメディアであれば、麗々しく「米もついに正当なサウディの要求を支持して、イランに強硬な要求をした」とか発言しそうなものです。

サウディ政府はトランプの米大使館のエルサレム移転表明では苦しい立場に立たされ、その本音はともかく、公式には反対せざるを得なかった(アラブ連盟の会合等)こともあり、もしかすると余り明確にトランプ政権と立場を同じにすることにためらいが出てきているのでしょうか?

しかし、エルサレム問題はともかく、対イラン問題であれば、これまでのサウディの立場とも一致するもので、大きな問題はないはずです。
それともサウディ国内で皇太子の政策に対する抵抗が強くなりつつあるのでしょうか?
これだけの問題で、大騒ぎするのは「はやとちり」のそしりを免れせんが、どうも不思議な感じが抜けないので、取りあえず。
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