中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

アメリカ

エルサレム問題(国連での攻防)

トランプ宣言に対するパレスチナでの抗議運動については、先ほど書きましたが、この問題は明日以降,国連を舞台にした攻防が始まる模様です。

y net news は安保理が18日、イスラエルの入植地に関する安保理決議の履行状況を審議する非公式協議をするが、アッバス議長は安保理を使って,米国に最大限の圧力をかけるつもりであると報じています。
記事の要点は次の通り。

・エルドアン大統領は,トルコのトランプ宣言抗議者に対して、国連を舞台にしてトランプ宣言を撤回させると発言した。
・パレスチナの国連代表は、17日夕、この問題に関する決議案を提出すると語った
とのことで、今月の安保理議長国日本の手腕が問われる難しい月になるでしょう。

http://www.aljazeera.net/news/international/2017/12/15/مبادرات-تركية-إلى-الأمم-المتحدة-لإلغاء-قرار-ترمب
http://www.alquds.co.uk/?p=845161

「イスラエル当局は、アッバス議長がこれまでのゲームのルールを変えて、安保理に対して、パレスチナをエルサレムを首都とする、国連正式メンバーとして承認するように求めるであろうと考えている。
国連加盟には先ず安保理の承認が必要で、現在パレスチナはバチカンと同じくオブザーバーとして認められているが、正式加盟を申請することで、国際社会の多数の支持を得て、米国に拒否権の行使を余儀なくさせようとしている
(要するに米国の孤立を際立たせることになるが、これまで米国を調停者として期待していたので、その怒りを買うことは避けてきたという意味。米国の拒否権は織り込み済み)
もう一つは国連の投票規則を活用して、米国の拒否権を防ぐやり方で、米国のエルサレム承認を安保理決議違反として提訴し、米国は問題の当事者だから、投票に参加することはできないと、議論する考えの由。
当然米国はこれに対してあらゆる法的議論を駆使して反対することになろう由」

ttps://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5056819,00.html

果たしてパレスチナがそこまでいくか否か、現時点では不明だが、米国は正直な調停者としての資格を失ったとのアッバスの発言が真意であれば、上記のような動きも当然あり得るかと思われます。
取りあえず。

エルサレム問題2

エルサレムに関するトランプ宣言から4日がたちましたが、al jazeera net は4日目の犠牲者は、西岸とガザで231名の負傷者と報じています。
イスラエルのy net news も、同日の犠牲者は西岸で171名、ガザで60名としており、ほぼ同じ数字で、先ずはかなり正確なところかと思います。
また同日には新たな死者は出なかった模様です。

このような状況を踏まえて、イスラエル紙のネットは、イスラエル側の喜びの表現も、パレスチナ側の怒りの表現も、抑制されたものであったと形容していました。死者が出なかったことは評価できるとして、負傷者が230名以上で、果たして抑制されたものと言えるのか否か議論のあるところでしょう・・・。

他方、朝方お伝えしたアラブ連盟の外相会議については10日早朝、最終コミュニケが発出された(ということは文言の調整等で手間取っていたのでしょう)とのことですが、当然予測されたトランプ宣言に対する非難(無効である、国際法違反である、中東和平を疎外する等々)以外では、総ての国にエルサレムを首都とするパレスチナ国家の承認を要請し、また近々(1ヶ月以内)にアラブ首脳会議をヨルダンで開催することを検討するとなっている模様です。

要するに、誰も真面目に聞かないような(アラブがこのような形で非難するであろうことは、当然誰もが予想していたところで、それ以上でも、それ以下でもなかったから)口先の非難より以上にはアラブ首脳会議の開催検討ということくらいが、アラブ連盟のできたことなのでしょう。

朝方予告した通り、アラブ各国に対して、米国との関係を断絶するように勧告するなどという「過激な」文言は盛り込まれなかったようです。

その他では、先に報告した通り中東を歴訪するペンス副大統領との関係で、アッバス議長が予定していた会談を取りやめるほか、エジプトのコプト教の大司教も副大統領とは会わないとのことです。

http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2017/12/09/وزراء-الخارجية-العرب-يبحثون-وضع-القدس.html
https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5054201,00.html
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/12/9/أكثر-من-مئتي-مصاب-بمواجهات-مستمرة-بالضفة-وغزة

ということで、アラブ各国が何もする能力が無いか、その意思がないことが明らかになり、パレスチナ民衆も現状では大騒擾を起こすまでに怒り狂っている訳でもないと観測できようにおもわれます。しかし、問題はこの後パレスチナ民衆がどこまで抑制できるか、更にはアラブ各国の民衆がいつまで彼らの政府の口先だけの非難で満足しているかでしょう。

もしそれで済めば、CNNなどがコメントしているように、トランプの賭けが勝ったということなのでしょうが、どうも今回の米政府のしたことは、中長期的に見れば、アラブ世界に大きな影響を残すことになりそうです。

何しろ、客観的に見れば、パレスチナ人はイスラエル政府に対して圧倒的に弱い立場にあるので、何らかの米政府の調停と介入、更にはイスラエル政府に対する圧力がない限り、初めから意味のある交渉などできないのが、冷厳な現実で、仮にパレスチナ暫定政府が声明通り、米国との接触を断ったりすれば、実質的に損をするのはパレスチナ側であることは目に見えており、イスラエルとしては和平が進まないことをいいことに、今後とも既成事実を積み重ねていくのでしょう。

そこでCNNなどのコメンテーターの中には、トランプはこれまでもイスラエルが喉から手が出るほど欲しがっていたエルサレムを与えたのだから、ネタニアフに対しては大きな貸しを作った形で、これまでの規制の外交観念とは全く次元の異なる取引をしようとしていて、ネタニアフも断りにくくなるだろうなどとする人もいるようです。

しかし、中東の市場やタクシーに乗る時の駆け引きでも、切り札は温存しておくのが、鉄則で、いったん相手が欲しいものを与えてしまったが最後、相手の譲歩を引き出すことは不可能になります。
更に言えば、そもそもトランプは中東和平など、自分の米国内での権力固めの材料ぐらいにしか。考えていないように思われます。
まあ、今後どうなりますか? 取りあえず。

エルサレム問題(アラブ連盟外相会議)

トランプのエルサレムに関する宣言を受けての、アラブ連盟外相会議は9日カイロで行われ、会議後の最終声明にて、トランプ宣言に対する地域内及び国際的対応に関する2つの決議を採択することになっている模様ですが、今のところ採択されたという報道はありません。

但し、事前に予測されていた通り、アラブ連盟は「口先の抗議」をする以上の実行的な措置は取らない、というか取れない模様です。

アラビア語メディアは、いずれもアラブ外交筋が、この最終声明に「いかなる国家でもエルサレムに大使館を移転する国との全ての関係は断絶する」との1980年のアラブ首脳会議の決定を実施に移すようにとの勧告は入らないだろうと語ったと報じています。
(先日お伝えしたサウディ、バハレン、エジプト等の本心が事実か否かは不明ですが、少なくとも彼らがそのような勧告に賛成することはないだろうと思います)

更にトランプ宣言に対抗するものとして、パレスチナ国家承認国に、改めて「エルサレムを首都とするパレスチナ」を承認するように働きかける、という項目が入りそうです。
このような項目が入ると、一応目先ではアラブ諸国としても何かしているように見えまた現実に、世界中のアラブ外交官は忙しくなるだろうと思いますが、ある意味では、実質意味のない宣伝のためだけの骨折り仕事でしょうね。

それよりも、注目されたのは、相変わらずのアラブ間の喧嘩で(カタール問題)、al jazeera net は、カタール外相の演説(サウディの次の由)が始まると、多くの放送局が中継を中止し、彼の演説の最後の文言で、再開されたと報じています。

http://www.alquds.co.uk/?p=841721
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/12/9/الوزاري-العربي-يبحث-الرد-على-قرار-ترمب-بشأن-القدس

予測通り、アラブ諸国が何もしない(できない)ことはますます明らかになりつつありますが、問題は今後パレスチナ現地の状況がどう推移するのか、IS等が動くのか、他のアラブ諸国での抗議運動があらに騒擾にまで発展するかという所ではないでしょうか。

米大使館のエルサレム移転

トランプがエルサレムをイスラエルの首都と認定し、米大使館をエルサレムに移す(現在はテルアビブにある)と水(6日)に発表するだろうと表明したことは、先に報告した通りですが、その後、彼の娘婿のクシュナーが、トランプは決定を先延ばしするだろうと語ったとか、この問題を巡っては、田舎芝居じみたやり取りが続いていましたが(という表現が悪ければ、米政府内の良識派の意見にも配慮しようとして、というべきか?)、どうやらトランプは6日、予定通りに決定を発表する模様です。

もっとも、al qods al arabi net はトランプが、アッバス議長(パレスチナ)とアブダッラー国王(ヨルダン)に電話で、米大使館のエルサレム移転は決定していると語ったが、その時期については明示しなかったと伝えています。

また、アラビア語メディアはそろって、アラブ諸国、国際社会が、これに対して反対して、そろってその危険性と重大性を指摘しているとしていますが、先日開かれたアラブ連盟緊急会合(どうせ常任代表レベルに過ぎないが)は、移転はアラブ諸国に対する宣戦布告であると警告した由。

イスラエルでは、アラブ占領地等での予測される騒擾に備えて警戒態勢が強化されている由。

http://www.alquds.co.uk/?p=839204
http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/american-elections-2016/2017/12/06/ترامب-سيعترف-بالقدس-عاصمة-لاسرائيل-مسؤول-اميركي-.html
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/12/6/تحذيرات-وترقب-لإعلان-ترمب-نقل-سفارة-بلاده-للقدس
http://www.alquds.co.uk/?p=839532

ということで、取りあえず本日までのところ、特段予測されていなかった問題は起きてはいませんが、問題は今後のアラブ人の反応でしょう。

アッバス等は、この決定は米国を仲介者とした和平の動きを殺すもんだとしているようですが、常識的に誰もトランプの下で、中東和平が動くとは予測していなかったはずで、その意味では、当面大きな変化はないと思います。
精々クシュナー等の田舎芝居の動きが止まる程度でしょう。

問題は占領地等の民衆の動きで、彼らのフラストレーションは相当高まっているので、各地での騒擾は避けられず入植者との衝突や治安部隊に対する攻撃が続く可能性もあり、イスラエル兵や入植者の行動がパレスチナ人を殺傷すれば、衝突はさらに拡大する可能性があり、これから当面イスラエルを含めたパレスチナ地域は、極めて緊張した状況を呈するのではないでしょうか?

そのような、民衆の激高は一人パレスチナ人に止まらず、他のアラブ諸国やイスラム諸国にも波及する可能性があり、特に親米的と目される諸国(ヨルダン、サウディ、パキスタン等)では政府は、難しい対応を迫られる可能性が出てきそうです。

それよりもやばそうなのは、これをきっかけに、ISやアルカイダ等の過激イスラム・テロリストが中東や欧州で、テロに走ることで、こちらが一番の危険性があるかもしれません。

ということで、当面中東への旅行を計画しておられる方は、明日以降の状況の進展をフォローして、また信頼できる渡航情報に目を光らせる等、とにかく普段以上の警戒をすることが重要と思われます。

米大使館のエルサレム移転問題

多くの問題では激しく対立しあうアラブ諸国ですが、ことパレスチナ問題、特にエルサレムの問題となると、イラン等の他のイスラム諸国も巻き込んで、「反イスラム、反アラブ」的政策に、一致して強硬な立場をとることは周知の事実です。

そのエルサレムについては、新しく建設されるべきパレスチナ国家の首都であるべきであるとして、パレスチナ問題の包括的な最終解決の前に、一方的な行為として、その帰属を決めることには強い反対があり、世界の国々が大使館をエルサレムに設けることは、そこがイスラエルのものであるとのイスラエルの主張を認めることになるとして強く反対し、これまでは米国も含めて大部分の国は大使館をエルサレムではなく、テルアビブに置いてきました。

ところが、トランプ大統領は選挙公約として米大使館のエルサレム移転を掲げ、6日にも移転を決定したと発表するのではないか(確かこれまで歴代米政府は、ユダヤ票との関係もあり、移転に公式に反対はしないが、6ヵ月ごとにその決定を延期するという形で、実質的に移転しない政策ををとってきたかと思う)との見方が、米政府府内で流れ、CNN等もそのへんの問題を盛んに報じています。
またアラブメディアも、大統領の娘婿でパレスチナ問題の特使だったと思う、クシュナ氏が、トランプは未だ熟考中であると語ったなどと報じています。

アラブの反応としては、アラブ連盟事務局長が、米政府に対して、その様な一方的措置はパレスチナ和平を壊すものだとして警告したとのことです。
アラブ連盟ではまた、パレスチナ代表の要請に基づき、12月5日に常駐代表レベルの緊急会合を開いてこの問題を協議する由。
また、これまで仲直りをしたとされつつも、未だ種々の問題で和解が進んでいない模様の、PLOとハマスもアッバス議長やハニエ政治局長が、この問題について、民衆が街頭に出てきて抗議することを呼びかけることで合意したとのことです。

http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/12/4/عباس-وهنية-يطالبان-بخروج-الجماهير-غضبا-للقدس
http://www.alquds.co.uk/?p=838160
http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/american-elections-2016/2017/12/03/كوشنر-ترمب-ما-زال-يدرس-موضوع-نقل-السفارة-للقدس-.html

未だ、トランプの最終決断?がどうなるかは不明ですが、現在元安全保障補佐官だったフリンが、特別検察官と取引をすることが公表され、彼が大統領選挙戦当時からのトランプ陣営とロシアの癒着を認めているのではないかとして、トランプの政治的立場に打撃を与えるのではないかとされている時だけに、とにかく米国の国益よりは自己の政治的利害をすべて優先させるトランプのことですから、米国民の目をくらます意味で、エルサレムの移転を決める公算が強そうな気がします。

勿論政権内部でも国務省やその他には、常識的な意見が多いとは思いますが、トランプ政権では、矢張りトランプが独裁者のようです。
そうなると、パレスチナ西岸やガザのみならず、各地でアラブ大衆の抗議運動が強まり、占領地ではイスラエル兵とパレスチナ人の衝突が予測され、またこの機会にISやアルカイダ等のテロ組織も、米権益や米国人に危害を加えようとする可能性が高いと思います。
まずは、トランプの決定を待つしかありませんが、どうも中東は全面的に不安定な状態を迎えるような気がしています。
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