中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

アメリカ

米・トルコ両大統領の電話会談(シリア)

どうもシリア東北部のシリア民主軍(YPGが中心)に支配地域を巡って、トルコと米は駆け引き、調整を行っているように見えます。

アラビア語メディア及びhurryiet net (トルコ紙)は、エルドアンとトランプ大統領が2日電話で、シリア問題につき協議し、特にmanbij での合同パトロールの実施、イドリブ問題について協議したが、両者は今後とも密接な連絡を取り、シリア問題で調整していくことに合意したとのことです。

確かに2日には、これまで両国の懸念事項であったmanbij での両国の合同パトロールが始まりました。

しかし、上記2問題のために、両首脳がわざわざ電話会談をしたとは考えにくい所で、特に現在直近に迫った中間選挙で米国各地を飛び歩き、種々の問題発言で、大忙しのトランプが、こんな問題で態々トルコの大統領と電話会談するとは常識的には考えらません。

manbijの合同パトロールの件は、精々国務省とか国防相の中堅レベル以下の話でしょうし、イドリブ問題に至っては、こう言っては何ですが、米国はそもそも蚊帳の外の話です(要するにあそこの停戦とか過激派の撤退とかはロシア・トルコが合意したもの)

ということは、お忙しいトランプを煩わすようなシリア関係問題が他にあったことになり(勿論トルコのエルドアンからすれば、当然ながらkhasshoggi事件は提起したと思われる)、おそらくそれはユーフラティス東岸のシリア民主軍支配地域に関してであろうと思われます。

この地域についてはエルドアンは、何度もテロリスト(要するにYPG)から解放すると発言していて、現実にトルコ軍が国境付近に展開している上に、最近トルコがこの地域を砲撃し、それにYPGも応戦する事件がありました。

この事件について、確か米国務省はそのような一方的な行為(トルコの砲撃)は地域の安定のみならず、現地に居る米兵の安全をも害するとしてトルコの攻撃に遺憾の意を表していました。
そのため米国が中心の有志連合はトルコとシリア民主軍の間を調停していると表明していました。
然るに、アラビア語メディアによれば、トルコ軍は準備の段階を終え、何時でも地上軍の侵攻のできる状態になっていると報じていました。

そこで、二つの同盟軍に挟まれた米国としては、トルコではエルドアンが独裁的権限を握っていることに鑑み、それでなくとも忙しいトランプのお出ましを願ったというところだろうと推測されます。
現在のところ両者がどういう話し合いをしたかは不明ですが、あのトランプが激しく非難していないところから見ると、完全な物別れということではなかったと思われます。

またエルドアンも、まさかkhasshoggi事件とシリア政策を結びつけてはいないと思いますが、いずれにしても今後の動きが注目されます。

https://www.alquds.co.uk/%d8%a7%d8%b1%d8%af%d9%88%d8%ba%d8%a7%d9%86-%d9%8a%d9%86%d8%a7%d9%82%d8%b4-%d9%85%d9%84%d9%81-%d8%b3%d9%88%d8%b1%d9%8a%d8%a7-%d9%85%d8%b9-%d8%aa%d8%b1%d8%a7%d9%85%d8%a8-%d9%88%d8%a7%d9%84%d9%82/
http://www.hurriyetdailynews.com/erdogan-trump-discuss-syrias-manbij-idlib-in-phone-call-138500
http://www.aljazeera.net/news/international/2018/11/1/ترامب-وأردوغان-يبحثان-الوضع-بمنبج-وإدلب
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/syria/2018/11/01/التحالف-يتوسط-لخفض-التوتر-بين-تركيا-وسوريا-الديمقراطية-.html

khasshogi事件(イスラエルとエジプト首脳のサウディ皇太子擁護)

al qods al arabi net とal jazeera net は、washington postやイスラエル報道を引いて、ネタニアフとシーシ(エジプト大統領)が米政権高官に対して、サウディ皇太子擁護の働きかけをしていると報じています。

このwashington postはkhasshoggiが寄稿員をしていた新聞で、当然彼を支持していますが、イスラエルとエジプト首脳のサウディ皇太子擁護という話になると、これまでの両国のサウディとの関係や立場から見て、十分あり得る話で、むしろ報道されたのが遅かった位だと思います。

このような重大事件ともなると、中東政治から切り離して、単純に人権問題としては処理しきれない問題であることが改めて強調されたようなものでしょうか。

両者の記事の要点のみ、

・washington post紙は、1日エジプトのシーシ大統領とネタニアフが電話で、米政府高官に対して、サウディ皇太子擁護の働きかけをしていると報じている。
その働きかけの内容に通じているソースは、両首脳は米政府に対して、皇太子は中東における重要な戦略パートナーであるとして、彼を擁護した由。
また両者はkhasshoggi は、テロ集団であるムスリム同胞団のメンバーであったとのサウディの主張を繰り返した由。(khasshoggi がムスリム同胞団員だったというのは本当ですかね?他ではあまり聞きませんが…もちろん同胞団であろうがなかろうが、これを殺害していい理由にはならないが)

・この点に関し、イスラエルTV10チャネルは、ネタニアフがサウディは、対イランのイスラエル、UAE、エジプトとの重要な同盟者であると伝えたと報じている。
さらに、同TVは、イスラエル高官が米に対し、khasshoggi 事件は重大ではあるが、サウディとの間には中東の安定を保つという重大な利害があり、サウディでの(首脳の)変化は重大な影響をもたらすと伝えた由。

khasshoggi事件

事件が事件ですから、日本でもその後の進展ぶりにつき大きく報道されるかと思うので、極く手短に。

・イスタンブールを訪問していたサウディの検事総長は31日帰国しましたが、トルコ当局はサウディ側は何ら新しい情報を提供せずに、ビデオや録音等の実物を検分したいとしたとして、不満を表明した由。

・イスタンブール氏の検事局は、文書の形での声明で,khasshoggi は総領事館に入った直後に絞殺され、その遺体は分断されたと発表した。
また、サウディ検事総長は遺体を処分した「協力者」について情報を提供しなかった由。
これがトルコ当局の、本件に関する、最初の公式の発表の由。

・トルコ与党AKPの報道官は、khasshoggiの殺害は、サウディ政府の最高レベルの指示なしでは、実行されなかったと語った。

・トランプ大統領は、記者の質問に答え、サウディが自分(大統領)を騙したとは思っていないが、彼ら自身を騙しているのだろうと語った
(興味あることに、al arabiya net もこれを報じているところ、報じているところは大統領を騙したとは思っていない、というところだけで、サウディが自分自身・・・・というところは削除してある)

・米国務長官は、この事件は国際法違反であると語った。
(総領事館内で、派遣国自身による犯罪であることを指していると思われる)

取り敢えず以上ですが、サウディは検事総長の派遣で、事件の幕引きを図ろうとし、トルコは今後とも情報の公表で、サウディの責任を追及していこうとすると思われるが、矢張り遺体を見つけたとか、サウディ内の誰かが亡命して内情でも暴露しない限り、決定的なパンチにはかけるかと思われる。

ということは今後は米国等がどの程度サウディに対する圧力を強めるか、という点とサウディ内で、どの程度、皇太子に対する不満と反抗的状況が盛り上がるかに移ってきたように思われます。

トランプという個人(大統領ではあるが)を除けば、米国内では共和党も含め、サウディに対する信頼は大幅に低下したように見えますが、矢張り武器取引とか石油とか巨額の資金を有するサウディのことですから、時間がたてば「元通り」という可能性も強そうですね。

米国務、国防両長官のイエメン停戦呼びかけ

al qods al arabi net とal jazeera net は、米国務、国防両長官(もっとも前者は国防長官の発言だけを紹介)が、イエメンでは人道的悲劇を招いている内戦を早急に終わらせる必要があるとして、停戦及び今月中の和平協議の開催を呼びかけたと報じています。

前者は国防長官が30日ワシントンの米国平和財団で、イエメンの停戦と30日以内の和平協議の開催を呼びかけたと速報ベースで報じています。

これに対して、後者は国務長官が30日夕、声明で、多数の人命を奪ったイエメン内戦の悲劇を終わらせるために、戦闘行為を終わらせるべき時期に来ていると語ったと報じています。

国務長官はその中で、サウディとUAEは居住地帯に対する空爆を中止し、hothyグループはサウディやUAEに対するミサイル攻撃を中止すべきであるとした由。
(尤も、最近ミサイルのニュースがないところ、もしかするとさしものhothyのミサイルのストックも底を突いたのかもしれない)

そして、国連のイエメン特使が呼びかけている、和平協議は来月(ということは11月)にも始まるべきであるとした由。
取りあえず、ニュースとしては以上ですが、特にal jazeera net は、この米両長官の発言は、これまでの米政府の対イエメン政策の重大な変更であるとコメントしています。

これまでもNGOとか一部の米議員等はイエメンにおけるサウディ等の空爆を強く非難し、米国のサウディ支援を非難してきましたが、トランプ政権は一貫して、サウディ支援の姿勢を変えませんでした。

ところが、イスタンブールにおけるkhasshoggi殺害事件を契機として、米国のサウディ支援政策に疑問を挟む有力者が増大し、与党の共和党でもその様な意見が出始め、トランプとしても何らかの新しい政策を示す必要に迫られていたと見られます。

kshasshoggi 事件とイエメン内戦とを比べると、前者では皇太子の関与の有無が直接問題になっているのに対し、イエメンでは(勿論内戦への介入を決めたのは皇太子と見られるが)その点は直接の問題とはなっておらず、さらに重大な人道危機問題となっていることに鑑みても、イエメン政策を転換して、人道問題に無関心、サウディの政策を無条件で支持しているとの批判を避けようとしたのではないかと思われます。

しかし、米国内政治で見れば、トランプはパイプ爆弾での発言、更にはユダヤ教会での殺人事件を巡る発言、さらにメキシコ国境への米軍6000名派遣問題で忙殺され、イエメン内戦問題などに頭を使う余裕はなかったのではないかと思われます。

その意味では、米政権内で、比較的まともと思われる、国防長官が「鬼のいない間」に新しい政策を打ち出した可能性もあり(因みに、CNNでもこの話は全く報じられていない)、今後果たして米政府が真面目にフォローアップをするのかがいささか疑問が持たれるところです。

因みに、al arabiya net もal sharq al awsat net も、この動きを(今のところ)全く報じていないことが、気になります。何らかのサウディの政治的意図が入っているのでしょうか?

来月と言えば、明日からですが、一日も早い停戦が待たれます。

khasshoggi事件(米紙の記事等)

khasshoggi事件も、流石にこれだけ日が経つと、本日は特に目新しい記事は見当たりません。

精々、hurryiet netが英国のsunday express というタブロイド紙が、彼はサウディがイエメンで化学兵器を使ったという情報を公表するはずだったこと及びサウディが彼の殺害を計画していたことを英国情報関係者が知っていたと報じているとなどと伝えているだけです。
(この英国の新聞はよく知りませんが、hurryiet  net がわざわざ「タブロイド紙」と書いたのは、要するに余り信頼できるメディアではないと示唆しているかと思われる)

イスタンブールを訪問したサウディの検事総長の話がどうなったかも不明で、またどうやらトルコ当局は彼の遺体の場所を突き止めてない模様で、こうなってくると、トルコ当局がこれまでリークしていた(と思われる)種々の情報が、どこまで核心をつかんでいて、どこまで開示するかに、今後の進展がかかっていそうです。

そのようなときに彼が寄稿員をしていたwashington post が本件の迷宮入りを予測したか?どちらかというと真相解明に悲観的な記事を載せたと、al qods al arabi net が報じています。

記事の表題は『ベンバラカ暗殺53周年 khasshoggiのファイルはベンバラカのファイルと同じ運命をたどるか?』というもので、1965年10月29日にパリで誘拐され、、殺されたと見られている、当時のモロッコ反体制派マハディ・ベン・バラカ事件の真相と今回の事件を比較しています。

類似の点として、遺体がどうなったかが不明なことで、どちらの場合も証拠隠滅のために硫酸が使われたとか、頭部はモロッコ国王やサウディ皇太子に見せるために本国に送られたとかの噂があることが共通点であるとしています。

そして、ベンバラカ事件は、当時も国際的なスキャンダルを生じ、当時の仏大統領ドゴールがモロッコとの外交関係を断絶し、仏情報機関を改組することとなったとしています。

但し、今回はサウディが殺害を認めたのに対して、モロッコの件は未だ闇に葬られたままで、モロッコは勿論、情報関係者が関係したと思われる仏も米も情報開示に応じていないとしています。

このような欧米のモロッコの犯罪を擁護する立場が、当時のハッサン国王をして、多数の反対派を逮捕、誘拐し、拷問し、インチキ裁判で投獄したㇼ、殺害したりさせることになったとしています。

そして冷戦時代の当時は、欧米は社会主義者であったベンバラカの死に涙を流そうとはしなかったとしています。
(トランプ等の立場に対する当てつけか)

取りあえず。

https://www.alquds.co.uk/%d8%a8%d9%85%d9%86%d8%a7%d8%b3%d8%a8%d8%a9-%d8%a7%d9%84%d8%b0%d9%83%d8%b1%d9%89-53-%d9%84%d8%a7%d8%ba%d8%aa%d9%8a%d8%a7%d9%84%d9%87-%d9%87%d9%84-%d8%b3%d9%8a%d8%b4%d9%87%d8%af-%d9%85%d9%84%d9%81/
http://www.hurriyetdailynews.com/uk-intelligence-knew-saudi-plot-to-kill-khashoggi-report-138352
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