中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

アラブ首長国連邦

ホデイダの戦い(NY Times の記事)

ホデイダの戦いは政府軍等が、ホデイダ空港を制圧し、ホデイダ港及び市を巡る戦闘に移ると思われていましたが、どうやら現在のところ戦闘は奇妙な手詰まり状況にある模様です。

この辺の事情に関し、al qods al arabi netは、1日発行の米NY Times紙が、ホデイダ港と市での市街戦に巻き込まれることを恐れたアラブ首長国連邦(UAE)の意向が戦闘が停止している理由であると報じています。
記事によると、UAEは当初ホデイダ攻略戦の目標は2つであるとして、その一つがホデイダ空港とホデイダ港の制圧・奪還で、もう一つがそれによりhothyグループを和平のテーブルにつかせることだとしていた由。

これまでの戦闘での双方の損失は予測されていたよりも少ないが、UAE軍は市街戦での損失を避けたく、またUAEが支援しているイエメン軍には市街戦の能力がない由。
このためUAEとしては、国連特使の和平活動に期待をかけることとしたが、その背景の一つは国際社会が民間人の被害が大きいホデイダ攻撃に反対で、特に米国がロジ面での支援を拒否していることが大きい由。
但し、UAEとしても完全には支配していない、その傘下のイエメン部隊が軍事行動を起こす可能性もあり、情勢は未だ流動的の由。

http://www.alquds.co.uk/?p=965935

ホデイダの戦闘が奇妙な手詰まり状況を見せていることに関して、この記事はかなり説得力のある説明をしているように思われます。
確かに、hothyグループの兵士は歴戦の兵士で、山岳戦のみならず市街戦でも勇猛だろうと思われます。
それにサウディ軍に比してもUAE軍は実戦経験に乏しく、また人口の少ないUAEとしては消耗戦で人員の損失が大きい市街戦には2の足を踏んでいることは十分あり得ると思われます。

ホデイダ情勢(イエメン)

ホデイダ情勢について取りまとめたところ次の通りですが、久しぶりに出てきた元ノーベル平和賞受賞者のアラブ首長国連邦(UAE)等の非難は、現在の政局に対する影響力はないものの、おそらく的をついた批判ではないでしょうか?

  • UAEの外務担当国務相は、1日、国連特使のホデイダに関する調停を支援するために、ホデイダに関し、暫定的な停戦を行うと発表した。停戦は既に実施されている模様。
  • イエメン政府は、ホデイダ港問題の解決には、hothyグループのホデイダからの無条件、完全な撤退が必要との立場を繰り返した。イエメン政府によれば、国連特使はこのようなイエメン政府のメッセージをもって2日再度サナアを訪問し、hohty側と協議する予定の由
  • (他方不思議なことと言うか、イエメン内戦の曖昧な性格を反映してか)アラブ連合によれば、現在ホデイダ港では7隻の船が荷の積み下ろしを行っていて、更に7隻が入港待ちをしている由。(近辺で戦闘が行われ、港を巡ってもいつ戦闘があるかわからないという状況で、積み下ろしをしたり沖待ちをしたりする船舶がいるとはちょっと考えにくいが、これまでのホデイダを巡る戦闘では、港湾設備に大きな被害はなく、また戦闘も港の近くでは行われていない、要するにかなり「なあ、なあ」の戦闘の性格があるということなのでしょう)
  • イエメン人(女性)でアラブの春でノーベル平和賞を受賞したカルマン女史は、ホデイダでの停戦をhadi大統領ではなく、UAEの国務大臣が、そのツイッターで停戦を発表したことに対して、何故hadiではなくUAEが決めるのか、何のための戦闘かと厳しく非難して、hadi大統領がアデンに帰ったが、UAEはその政策を一向に変更する様子もない。サウディも同様であるとして、hadiの帰還は物事を後ろに進めるだけで、何ら前へ進めることにはならないとして、イエメンではUAEが全ての物事を決めて、その後ろにはサウディがいると厳しく非難しているとのことです。(ごまめの歯ぎしり、という言葉を思い出しますが、おそらくかなりのイエメン人の感じはこういうことではないでしょうか?)
http://www.alquds.co.uk/?p=965262
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/yemen/2018/07/02/غريفيت-إلى-صنعاء-لمطالبة-الحوثي-بانسحاب-كامل-من-الحديدة.html
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2018/7/1/الإمارات-تعلن-وقفا-مؤقتا-لعملياته-العسكرية-بالحديدة
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/yemen/2018/07/01/التحالف-7-سفن-تفرغ-حمولتها-بميناء-الحديدة-و7-تنتظر.html

ホデイダ攻防戦

ホデイダの攻防戦に関し、確かCNNだったかは「世界の忘れていた戦争」と題して、イエメン内戦を久しぶりに大きく取り上げていたかと思いますが、アラビア語メディアから、取りまとめたところ次の通り。

  • 政府軍等は、ホデイダ空港に接近し、al arabiya net などによると、hothy 軍は兵士数十名を失う大きな損失を被った由。
  • これに対して、hothyグループの指導者abdel malik al hothyは、 その支持者たちに対して、ホデイダの戦いの重要性を強調して、ホデイダに赴いて、街と港を守るようによびかけた。
  • 英国の呼びかけで開かれた安保理は14日、協議を続けているが、国連はホデイダ港が破壊され、閉鎖され、イエメン北部に対する人道支援や物資の供給が阻害されることに懸念を表明した。(記事には明記していないが、いわゆる議長声明等の正式の安保理の意思表示ではなく、事務総長等国連職員の発言の様に思われる)
  • 他方匿名条件のUAE責任者は、米国がホデイダに関する情報面での協力及び港の機雷除去に関する、UAEの援助要請を拒否したと語った。他方仏は機雷除去に対する協力を約した由。ホデイダ港にはhothyグループが機雷を敷設したとされている由。

http://www.alquds.co.uk/?p=955139
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/yemen/2018/06/15/شاهد-الجيش-اليمني-يصل-محيط-مطار-الحديدة.html
http://www.alquds.co.uk/?p=955406
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2018/6/14/قلق-دولي-على-مصير-مئات-آلاف-اليمنيين-بالحديدة

安保理等での国際社会の懸念にもかかわらず、ホデイダ攻撃は続行している模様で、その進展ぶりは今後のイエメン情勢を大きく左右すると思われます。

アデン情勢(UAEに対する反感)

イエメンに関しては、先ほど西部の主要港ホデイダ(サナアから北部への主要貿易港)の政府軍による奪還が進んでいるとの記事を紹介しましたが、南部のアデンではアラブ首長国連邦(UAE)の尊大な行動に対する反感が高まっている模様です。

al qods al arabi net の2つの記事は、アデンで我が物顔に行動する、UAEの支援する民兵が、アデン奪還に活躍した活動家を逮捕したことに抗議して(逮捕の理由は壁に「打倒 UAE」と書いたとか)、民衆がUAEの旗とアブダビ皇太子の肖像を引きずり下ろし、それを公道に放置し、車や通行人に踏ませたと報じています。

http://www.alquds.co.uk/?p=942711
http://www.alquds.co.uk/?p=942587

上記民衆の行動自体は、ある意味でたわいもないものですが、中東では顔を泥靴で汚すのは、大変な侮辱で(まあ他の国でもそうだが)、先日のスコトラ島の港と空港の占拠と言い、南部イエメンに対するUAEの行動が益々分割の野心を露わにしつつあることに対する、イエメン人の反感が高まっていることを示すものでしょう。

どうやら朝方の北部、西部方面における、政府軍の前進と合わせると、イエメン内戦は、政府軍、アラブ連合軍対hothy軍の内戦から、北部はサウディ南部はUAEの勢力圏に分割され、それに対する人民の抵抗が続くという泥沼状態に陥るのでしょうか?

UAEとサウディの覇権争い(スコトラ島)

イエメン領でインド洋に浮かぶ島(多くの固有動植物の故に世界遺産に指定されている)スコトラ島に、アラブ首長国(UAE)軍が部隊と戦車等を送り込んで、空港や港を占拠したが、その後サウディ政府が、調停団と部隊を送り込んで、UAE部隊は撤退したことは先に報告したところです。

一応イエメン正統政府を支援するためという名目で、軍事介入したアラブ連合軍が、政府支援そっちのけで、覇権争いをしているかに見えるのは、まさに奇妙な図式ですが、この問題につてal qods al arabi net は英independent紙の現地レポートを引いて、UAEとサウディの覇権争いで、前者の占領が後者の占領に代わっただけだと報じています。
興味のある記事なので、その要点次の通り。

UAEが部隊を送り込んだことで、正統政府とUAEの対立が先鋭化したスコトラ島に関し、サウディの介入でUAEは部隊を撤退させたが、英independent紙の現地レポートは、これは単に一つの占領が、別の占領にとってかわられたに過ぎないと書いている。

同記事は、UAEの部隊派遣は「占領」であって同島の世界遺産を脅かしたが、これは同島を巡るサウディとUAEの対立を示していて、UAEは湾岸地帯におけるサウディの覇権に対抗して、軍事的植民地主義を推し進めようとしたとしていて、スコトラ島がその対立の中点になったとしている。
記事は更に、イエメン首相はサウディの調停で、スコトラ問題は収束したと語ったが、同紙の記者が島民と話したところで、現実はかなり違っているとしている。

記事は更にUAEが空港、港を占拠したやり方は、ロシアがウクライナとの間でクリミヤ半島を併合したやり方と似ているとしている。
英紙とは別に、UAEのメディアは、イエメン内相が先日、アデンはUAEの占領下にあるも同然で、政府関係者もUAE軍の同意なしには行動できないと語った(このことは既に報告済み)ことを攻撃し、現実無視の虚言であるとして、イエメン軍の参謀本部は麻痺しているとして、その改組を要求した報じている。

http://livedoor.blogcms.jp/blog/abu_mustafa/article/edit

これまでの南イエメンにおけるUAE軍の行動に鑑みれば、上記記事の説明は、誠にその通りという気がしますが、問題はサウディとUAEとの間にそのような対立関係が現実にあるのか(両国と鋭く対立しているカタール系のal jazeera net でもその様な報道は見かけていない)ということですが、更により基本的な問題として、本当にUAEが帝国主義的野望を有しているのか?ということです。

どうも昔の既成観念があるせいか、UAEの人口など全部合わせてもたかが知れていると思っていましたが、どうやら900万人を越えた模様で、その意味では最早人口小国ではないかもしれず、帝国主義的野望を抱いてもおかしくはないかもしれません。

しかし、どうやら900万人のうち、元からの土着民の系統は13%程度で、残りはアラブ、インド、パキスタンその他の国からの出稼ぎ人(要するに外国人)の模様です。
確かUAEでは、彼らがクーデターなどを引き起こす分子になることを警戒して、これら外国人に対してUAE国籍を与えることには、極端に慎重である、と聞いています。

まあ100万強の人間と金と近代兵器があれば、周辺の貧乏国を支配下におさめることは難しくはないでしょうが、下手をするとトンビに油揚げをさらわれることにもなりかねません。
どうも昔の既成観念もあり、UAEなどは、石油とイランとの貿易等からの、通商国家として、栄えていくことがふさわしいという気がして仕方がないのですが、どうも現地での情勢はUAEは帝国主義の方に進んでいるみたいです。
事実関係はともかく取りあえず。
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