中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

イスラム

米公館に対する攻撃(問題の映画の作成者について)

ムハンマッドを誹謗した映画のため、米国のカイロ大使館とベンガジの領事館が攻撃されたことは既にご報告しましたが、12日付のhaaretz net とal arabiya net は、騒動の元になった映画製作者について概要次の通り報じています。

haaretzによれば、
映画を作ったのは Sam Bacileというカリフォルニアの不動産業者で、ユダヤ系のイスラエル人と自称する50代の男で、シナリオを描き、映画を製作した人物とのことですが、事件後行方をくらましており、haartzとの電話会話では、イスラムは癌のような存在で、彼はイスラエルのためにイスラムの実像を暴露する映画を作ったと語ったとのことです。

映画は Innocence of Muslims という名前の2時間もので、100人のユダヤ人の寄付で500万ドルの経費で作られたが、そのうち13分の英語版がユーチューブに流されたとのことで、この中でムハンマッドはインチキな女たらしで、小児性愛を認める者として描かれてるとのことです。

他方al arabiya の方は、
この男の写真を探したが、全く見つからなかったが、Sam Bacile は実在の52歳の男で、11日から姿をくらましている。
レバノン人キリスト教徒で同じ名前の有名な家族がいるが(現在のレバノンのエネルギー水大臣もその一人)、それとこの男は関係がない。
それにしても自由の国でなにかといえば写真はつきものの米国に住みながら、写真が一枚もないとは不思議である。
等と報じています。

記事の要点は以上で、haaretz netの方もそもそもこの男がユダヤ系のイスラエル人ということについて「自称」としており、またarabiya netの方も写真が一枚もないのは異常だと報じており、どうもこの話は何処か不透明なところがありますが、取り敢えずご報告しておきます。

http://www.haaretz.com/news/middle-east/israeli-filmmaker-in-hiding-after-anti-islam-movie-sparks-deadly-libya-egypt-protests-1.464459/israeli-filmmaker-in-hiding-after-anti-islam-movie-sparks-deadly-libya-egypt-protests-1.464459
http://www.alarabiya.net/articles/2012/09/12/237591.html

トルコとイスラム

エジプトなどで起きている抗議運動との関連から、エジプトなどのモデルはトルコの穏健イスラム主義ではないか、との議論が日本でもされていますが、8日のhurryiet net はトルコ人の半数は近代化と原理主義が戦っているとの意識を有していると報じています。

その記事は、米国のDCにあるPEW研究所が中東、アフリカ、アジアでムスリムが過半数を占める国で世論調査を行い、トルコでは2010年に1013名にインタビューした結果を報じていますが、興味のあるところ次の通りです。

・トルコでは半数が原理主義と近代化主義者との間に闘争があると考え、大半(74%)が自分は近代化陣営に属すると考えている。
原理主義陣営に属すると考えているのは11%である。

・トルコ人の69%がイスラムがトルコ政治で大きな役割を果たしていると考えている。
この数字は2002年には、そう考える者が45%で、そう考えないものが44%と拮抗していた。

・トルコ人の38%がイスラムは更に大きな役割を果たすべきと考えている。
 
・トルコ人の75%が民主主義政体を他の如何なる政体よりも好ましいと考えている。

http://www.hurriyetdailynews.com/n.php?n=11-percent-of-turkish-muslims-say-they-are-fundamentalists-survey-said-2011-02-04

名誉の犯罪

本日のeconomist誌電子版に依ると、最近シリアのアサド大統領が、名誉の犯罪と言われるものについて、これまで殺人の場合でも、最低の刑期の規定がなく、最長でも1年で出所してきたものを、最低2年間は入獄させるとの大統領令を出し、欧米の人権団体がこれを評価していると報じています。

名誉の犯罪とは、中東等のイスラム諸国で、女性の親や兄弟や親族が女性の不行跡のために(基本的にはセックス絡みのスキャンダル)一族の名誉が失われたとして、彼女を殺す行為で、これに対してほとんどの中東の国が、一族の名誉を守るための止むに止まれない行為として、一応は彼を裁判にかけても、殆どが1年以内に出所させているという問題を指します。

これはイスラムの問題と言うよりは、中東の部族社会の「掟」という性格を有するものと考えられますが、中東の近代化、世俗化に伴って徐々にその数が減少してきたとみられていたのが、昨今のイスラム回帰現象に伴い、中東一円、アラブ諸国で増加しつつある重大な人権侵害の問題と言われています。

筆者もその昔レバノンの山岳地帯の村を通りかかったときに、若い男を肩車に乗せ(ということは彼が英雄と言うことを示す)村の男が行進しているのに出くわし、近くの人に事情を聞いたら、ある家族で旦那が出稼ぎでクウェイトに1年間出かけている間にその奥さんが浮気をして、奥さんの弟(肩車の主)が彼女を刺し殺したが、彼が1年たたずに出所してきて、村では英雄として歓迎しているという説明でした。

このような風習は湾岸諸国のみならずシリア、ヨルダン、イラク等の比較的「文明開化」のアラブ諸国でも最近増加しているようで、国際的人権団体が警鐘を鳴らしていたものです。

21世紀の世の中こういう風習が増加しているというのも中東の一面です。
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