中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

オバマ

米国の拒否権(米議会の圧力)

先日の国連安保理での入植地建設非難決議に対する米国の拒否権行使は、改めて中東紛争に関する米国の孤立振りを印象付けました(英独仏を含めたの安保理理事国14カ国が総て支持、棄権さえ無かった)。

この問題について、28日付の y net news は、米国の拒否権行使は、オバマ政権の国連でのこれまでの政策及びイデオロギーに拒否権を使わせることになったと評価したうえで、それは米国議会の力であったと主張しています(確かに、その時の投票後・・だったと思うが・・の投票説明をした、米国常駐代表の演説は完全な弁解に終始し、オバマ政権の不本意さが見え見えのスピーチでした)

同記事は、この拒否権行使の裏には、共和党、民主党を問わず、外交委員会のメンバー、その中東小委員会のメンバー等が一致して率先して精力的に、オバマ政権に働きかけたことがあったと指摘しています。

そして、同記事は外交問題に関する大統領と議会の複雑な関係、憲法上の check and balance 制度を解説するとともに、ベトナム戦争以来の両者の関係の歴史を解説しています。

そして、中東に関しては、米議会はイスラエルが尖鋭に対立する現在の議会でも、両党がともに支持しうる共通の数少ない問題であることを示すとともに、イスラエルの問題は純粋な外交問題ではなく、議会にとってはキリスト教・ユダヤ教と言う基盤に立つ国内問題であると論じています。

そして同記事はイスラエルとしては、米議会の力を認め、議会の力を利用していくと言う、従来からの政策を今後とも推進すべきであると強調しています。

記事の要点は以上の通りで、こと中東問題になると議会の関心と影響力が殊の外、強いことは周知の事実ですが、先日の拒否権行使についてここまであからさまに、イスラエル紙に米国議会の力とそのイスラエル一辺倒ぶりを謳歌されてしまうと、今後のオバマ政権下での米国の中東和平に対する力の無いであろうことを改めて予告されたようなものです。

先日も書いた通り、米国の中東における影響力には大きな陰りが見えており、その米国がおそらく世界中の大部分が正義と感じることを正義と感じない様であれば、その影響力のさらなる低下は必然ではないかと思われ、半ば暗澹たる感じがしないでもありません。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4034927,00.html

入植地に関する安保理決議(総会へ?)

イスラエルの入植地建設非難決議に対する米国の拒否権行使については先にご紹介しましたが、パレスチナ側としてはその代替として緊急総会を開いて、同様の決議案の採択(総会では米国の拒否権がないので、大差での採択は確実)を検討中の模様です。

そのニュースを報じたhaaretz netの20日付の記事が、先日の拒否権行使に至る若干の経緯などを解説していますので、要点のみ次の通り。

「米国の拒否権に伴いパレスチナは今週、国連総会の緊急総会を開催し、イスラエル非難の決議案を採択する予定である。

米国の拒否権は、そもそも米国の入植地政策に反するが、これに対するアラブの反応は中東和平をより危機的にするであろう。

ネタニアフの要請でぺレス大統領がアッバスに電話をして(と言うことはネタニアフはアッバスと電話もできない間になっている訳ですな!)交渉に戻ることを要請したが、アッバスは入植地の凍結が先決とこれを拒否した。

オバマは18日アッバスと50分電話で話して、決議案が米国の中東での利益を害する可能性があり、また米議員がパレスチナへの援助を停止する可能性があると警告した。その日の午後クリントン長官が更に強い調子で警告した。

拒否権行使後、米大使は米国の立場と拒否権との間の矛盾を説明する難しい仕事を負わされた。他方英国大使は英、仏、独を代表して入植地の建設は国際法違反であると声明した。

拒否権行使は米国議員からは評判が良いが、イスラエルの国連大使は決議案は通過しなかったが、イスラエルはこれまで以上に国連で孤立したと報告した。

オバマ政権は拒否権はアラブ世界における米国の立場を更に悪化させると危惧している。他方アッバスの立場は、米国の圧力に屈しなかったということで強化された。」

http://www.haaretz.com/print-edition/news/pa-to-call-urgent-un-session-over-settlement-resolution-veto-1.344479

米国の中東外交の危機?

国連安保理でのイスラエル入植地非難決議に米国は拒否権を発動しましたが、英仏を含む総ての14理事国は決議案を支持し、その共同提案国には120カ国以上が名を連ねたように、米国は完全に孤立していました。

イスラエル紙によるとオバマは投票前に、アッバス議長に対して決議の投票に固執しないように強い警告を発したとのことですが、結局投票にかけられ、米国は孤立しての拒否権行使に追い込まれ、パレスチナ幹部はこの米国の行動を惨めであると表現し、パレスチナとして和平政策を見直さざるを得ないと発言したとのことです(尤も、見直したからと言って、パレスナ側にも局面打開の名案があるとは思えませんが、見直しの結果がイスラエル及び米国に取ってより好もしからざる方向へ向かうことは必至でしょう)。

そしてこの国連での投票が米国にとって最悪のタイミングで来たことは事実です。

何しろ中東で米国最大の同盟国であるエジプトのムバラク大統領が倒れ、その対応ぶりで国内外から批判があるが、中でも米国にとって最大の問題はエジプトに次いで、と言うか,もしかしたらエジプトよりも重要なサウディアラビアの国王が、オバマの対応に非常に反発して、ムバラクに米国の援助に対する肩代わりとして資金援助を申し出たとのニュースがあるほどに、関係がぎくしゃくしていることです。

更にそのサウディアラビアとの関係では、現在のバハレンの状況があります。バハレンは軍隊も動員してシーア派中心の抗議運動の制圧に乗り出して、オバマはバハレン政府に自制を呼びかけましたが、サウディ等の湾岸保守国は事件最中にバハレンの首都マナマで湾岸協力理事会の外相会議を開き、バハレン政府を政治的、治安的、軍事的に支持することを声明しました。

今後仮にバハレン情勢がさらに緊張すれば、サウディアラビアの政策と完全に対立する可能性も出てきます。
他の湾岸国、例えばクウェイトやオマンでも抗議運動の兆しが出てきています。

また米国にとっての対テロ最前線国であるイエメンでは、抗議運動が拡大し、激しさを増しこそすれ、沈静化する様子は見られません。

またもう一つの同盟国であるヨルダンでも抗議運動、部族対パレスチナ人の対立(おまけにこちらの方はパレスチナ出身で、開明的な王妃が焦点にされた点で極めて微妙)が生じ、国王の立場も複雑になりつつあります。

このような中で、米国がムバラク後のエジプトをイスラエルとの和平路線につなぎとめ、抗議運動からの動揺が中東、特に親米国家中に広がったり、これらの国家、政府の中に米国に対する不信感や疑念が広がることを阻止するためには、米国としては本来アラブ諸国にとって最重要課題であるパレスチナ問題について、その100%の要求の実現は無理でも米国以外に、公正で永続する解決をもたらせる者はいないと言うイメージが極めて重要です。

サダトがソ連から米国に乗り換えたのも、彼に言わせれば米国が中東のカードをすべて握っているからで、米国に頼らない限りシナイ半島の奪還もパレスチナ和平も実現不可能だったからです。

それと合わせて、中東の指導者にとって米国との良好な関係の最大の理由は、それが中東での自国の安全維持と繁栄にとって欠かせられないからということでした。

それがここにきてこのあり様です。米国との同盟が必ずしも、その国の安定を意味しないどころか、下手をすると民主化支持と言うことで反政府派を支持し、援助さえ撤回しかねないのが米国外交と言うことは、サウデイ国王でなくとも嫌と言うほどわかったのではないでしょうか?

そこに来て今回の拒否権です。米国に言われなくとも民主化と言うことは民衆の要求に応えることですから、殆どのアラブ民衆が要求している、パレスチナ人に対する正義に反する(とアラブ人が思っている)拒否権を行使した米国と仲良くしていくことが、アラブ政権にとってますます難しくなることは目に見えています。

何しろ民衆の要求に応えろと言ったのは米国ですから。まさか、それが純粋の国内問題だけを指していて、外交問題、特にパレスチナ問題は別だという議論は通用しないでしょうね。

14対1でも120対1でも良いのですが、国際社会で米国とイスラエルが孤立していることは事実で、それを拒否権でも軍事力でもなんでもいいのですが、力でもってねじふせるやり方が民主的と考える人は先ずいないでしょう。アラブ世界では殆どゼロでしょうね。

これからバハレンに限らず、場合によってはサウディの安定さえ疑問がつきかねない時に、国際社会にとっては、矢張り米国が安定して信頼できる外交政策で、中東の安全保障を維持してくれることが死活的に重要です。

その観点からすれば、最近の米国の動きはあまり生産的ではないと言うか、極めて稚拙である気がします。
そもそもパレスチナ問題についてアラブ人の期待を高めたのは米国です。その米国がネタニアフの抵抗にあって入植地の建設凍結要求をあっさり引っ込め、中東和平交渉で専らアッバスに圧力をかけて、なんとか成果をもたらそうとした結果がこれです。

その辺の事実関係は先日al jajeerah が暴露したパレスチナ代表団の文書からも明らかだと思います。

こうなると米国の稚拙な外交の次の犠牲者はアッバス議長かもしれません。仮にアッバス議長が去るようなことになれば、米国はもしかするとムバラク以上に重要なパートナーを失いうことになるかもしれません。

ムバラクは確かにイスラエルとの平和を維持し、米国との同盟を維持しました。しかしこの路線は彼が作ったものではなく、彼の前任のサダトがひいたものです。またエジプトの国益と言う観点からは、基本的にはそれ以外の選択はなかったと思います。

それに対してアッバスは、アラファトの時代から中東紛争の平和的解決のための交渉者として活動してきており、そのカリスマ性の無さを除けば、余り腐敗の噂も聞かないし(尤も彼の周辺の腐敗はよく聞くが)、独裁的と言うことでもなさそうだし、とにかく相当打たれ強い実務家で、安定した米国のパートナーと言う印象を与えます。

特にハマスとパレスチナが主導権争いをしている時に、アッバスが去ることはパレスチナの権威と言う点からも大きな打撃と思われます。

オバマがこの危機をどのようにして乗り切ろうとしているのか、勿論全く解りませんが、少なくとも今回の拒否権の後のダメージコントロールは手早くしてもらう必要があると思います。

何しろ、好き嫌いは別にして中東の安定にとって、内部の力学は別として、外部からこれを支えるのは、米国を置いて他にないのですから。

遺憾ながら、ロシアも中国も現状を破壊したり人に迎合することは巧みですが、国際社会の安定を建設的に支えるという意思は未だ見られません。欧州に至っては依然として力不足です。

日本に全く力がないことは言うまでもありません。

いろいろと文句を行っても、結局は今のところ、未だ米国頼みなのです。

http://www.jpost.com/International/Article.aspx?id=208875

エジプト情勢(CIAは昨年末オバマに警告)

国際的に大きな事件が起こると、特に米国では、情報機関が政権責任者に対して適切な情報を適切な時に報告していたか否かが、必ず問題とされますが、今回のエジプトの情勢についても、米議会でCIAが証言を求められ、オバマ政権には昨年暮れにはじめてエジプト政権が危ない可能性があるとの報告を上げたと述べたとのことです。

これは4日のal qods al arabi net が報じているもので、CIAの副長官が上院の情報委員会での質問に応えて証言したとのことです。

委員会の委員長はCIAが適切な情報を適時に挙げていたか否かについて疑念を有し、米政府は情報機関からのそのような情報を必要としていると指摘した由。

またこのような事態が起こるのを防ぐために社会的ネットワークを活用しているのかとも質問した由(注:ここがなにを意味するのかは不明だが、仮に米国の情報機関がエジプトの国内で、何らかの工作をしていたのかと言う意味であれば、友好国内における情報機関の工作と言う意味で極めてデリケートな問題に触れていることになると思います)。

また委員会のメンバーはCIAがエジプトの情勢についてどのような報告をしていたのか時系列的に説明する資料を10日以内に提出するように求めたとのことです。

http://www.alquds.co.uk/index.asp?fname=latest/data/2011-02-04-00-49-03.htm

NYの3者会談(イスラエル紙の論説)

国連総会の機会にNYでオバマ、アッバス、ネタニアフの3者会談が行われたが、特段の成果がなかったと報じられているところ、25日付のjerusalem post 電子版は、さらに踏み込んで3者会談はアッバスの立場を弱めたと評しています。

今回ミッチェル特使のイスラエル訪問が、入植地の凍結問題で何らの成果もあげなかった直後に、何のために3者首脳会談が開かれたのか全く不思議な話ですが(オバマの自己の説得力に対する過信か、とにかくこれまで声高に中東和平を進めると公言してきただけに、なにもなくとも会談と言う形だけを繕ったかのいずれかでしょうが)、このような会談に出席したアッバスの立場が更に弱くなると言うことは当然予測されていたことですが、イスラエルの有力紙に指摘されると言うのもまたせつないものです。

アッバスは1000回も入植地問題について進展がない限りネタニアフとは会わないと明言してきたが、今回その舌の根も乾かないうちに3者会談でネタニアフと会った。アッバスに近い筋でさえオバマがなぜこのような形でアッバスを貶めるようなことをしたのかいぶかっているが、彼らもアッバスが無条件でネタニアフと会ったことを極めて遺憾と思っている。

特にアッバスがこのような状況ではネタニアフとは会えないと明言した直後に米政府が3者会談を宣言したことについて、アッバスはオバマの強い要請を断れなかったと歯切れの悪い説明をしている。
またこの会談はハマス及びPLO内の強硬派のアッバスに対する立場を強め、彼らはアッバスは米国の操り人形であると公言している。
アラブの消息筋の中にはアッバスとしてはアラブ政府の弱い立場のためオバマに対して強い姿勢が採れなかったとして、中にはネタニアフと会うことを強く勧めた政府もあったとしている。

(注、この政府がどこか書いてないが、先にも書いた通り、アッバスと会談したヨルダン国王は和平を進めることの緊急性を指摘したと報じられており、少なくとも「弱腰のアラブ政府」に一つがヨルダンであることは間違いないかと思われる)
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