中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

オマン

オマン情勢(1日)

オマンの北の町ソハールで大規模な抗議デモが行われたことは先にお伝えしましたが、1日付のal jazeerah net の記事によれば、オマン軍は1日市の中心のサッカー場に集まっていた群衆を解散させるのに成功したとのことです。
軍はサッカー場の周辺に数十台の装甲車を配置したとのことですが、特段の衝突もなしに群衆は解散した由。
またそれまで閉鎖されていたソハールの港の入口も解除された由。但し群衆はトラックで港に至る道を閉鎖している趣。
他方、首都のマスカットでも東部のサラーラでも改革、腐敗音絶を求める抗議デモがあった由、但し双方とも参加者の数は限られ得ちた模様です。
なお、オマン治安当局のやり方については、国際人権団体が、必要以上に暴力を使うと批判し、抗議運動参加者の人権を尊重するように求めたとのことです。
http://www.aljazeera.net/NR/exeres/0E77191D-8F4E-4806-90FC-212B8BCC7021.htm?GoogleStatID=9

エジプト情勢(中東への影響)

先ほどエジプトの今後に関して取りあえずの考えをまとめてみました。甚だ杜撰ですが、その都度考えをまとめて置くのも大事でしょう。

と言うことであのアラブ諸国、中東への波及問題、影響について、取りあえず考えられるところを自分なりにまとめてみました。請うご批判。コメント期待しています。

先ず第1に、エジプトの影響は避けられないでしょうね。アラブ世界、中東におけるエジプトの地位、影響力は(彼ら自身が思っているほど、と言うか昔ほどではないと思うが。何しろ今では中東中に大学はあるし、情報はむしろal jazeerah やロンドン発行の新聞の方が影響力もある。カイロ大学と「アラブの声」時代のアラブ民族主義のように中東全体を鼓舞するイデオロギーもない)はチュニジアとは比較にならないと思います。
そのエジプトで3週間前には難攻不落と思われていたムバラク体制が、カードの城のように潰れた影響は大きいと思う。

第2に、その影響はアラブ世界に留まらずイランにまで及ぶ可能性もあると思う。イランから最近聞こえてくる声は、先の大統領選挙の不正に対する非難に加えて、物価高騰の生活に対する影響、アハマディネジャードの警察国家に対する批判等エジプトの旧体制に対する非難と基本的に変わらない。
おそらくイラン・イスラム共和国の正当性が、宗教的にはグランド・アヤトラでもなかった権威の無いハメネイの指導下の硬直した独裁体制下で失われてしまった点で、ムバラク政権の正当性が失われてしまっていた点と共通していると思う。
しかし、矢張りイランはシーア派だし、民族的にもイラン人で、地理的にも遠く、直接の影響と言う点では、先ず周辺のアラブ諸国であろう。

第3に、これまでチュニジアの抗議運動に影響されたかで、抗議運動、民主化要求の起こっているのは、報道された限りでは、ヨルダン、アルジェリア、イエメン、スーダン、バハレン等であるが、その他でも抗議運動が起きていた可能性はあります。
これらのうち最も弱いところは、国民の貧しさ、政府の不安定なことそれから個人の独裁長期政権と言う観点からはイエメンであろう(ふと考えてみたら、ムバラクにしろ、スレイマンにしろ、ベンアリにしろ、サーレハにしろ相当の老人です。その昔、ソ連、東欧圏の崩壊直前に老害と言う意味で gerontocratie と言う言葉が良く使われました。チュニジア、エジプトの抗議運動の主力が facebook などで集まる青年たちであったことを考えると、正しく今回の政変も gerontocratie に対する若者の反抗と言う側面もあるかと思われる)
勿論、イエメンの場合11日の抗議デモの主力は旧南イエメンの分離を主張する者たちと言う意味で、他の国とは異なる側面もあるが、この問題にしても90年に統合して、94年に内戦が発生し、完全に鎮圧された後、現在に至るまで殆ど20年近くも分離主義運動の力が衰えないとすれば、統合を強制維持する正当性も失われつつあるかもしれない。

第4に、先ほどの gerontocratie 老害の話からすれば、アルジェリア、リビアなどが第1の候補になるが、老害と言う点ではサウディアラビアもトップランナーの資格ありです。
シリアは若い大統領だが、世襲の個人独裁者と言うことで、ある意味では同じ問題を抱えているかもしれない。
アルジェリアでの抗議運動は時々伝えられるが、リビアは全く伝えられない。ここは余りに秘密警察が強過ぎて、昔のチュニジアやエジプトほどの自由もないと言うことなのでしょうか?
若い連中があのカッダーフィのエクセントリックな治世に満足しているとは到底思えないのだが。

第5に、ヨルダンでも抗議運動が広がっているが、あそこは王制がパレスチナ人と東岸の部族民をつなぐ役割を果たしており、国王も若いし、上手くやっていけば、王様の権限を徐々に制限して英国風の議会制王制として生き残る可能性は強いと思われる。
モロッコも現在の国王は若いが、ヨルダンに比せば、はるかに国民の貧富の差が大きく、王室周辺の腐敗と蓄財がはるかにひどく、これらの点を如何に改善していけるかが生き残りの鍵ではないかと思われます。

第6に、余り話題にはなっていないが、一番影響を受ける可能性があるのがアッバス率いるパレスチナではないか。
なにしろPLOについてはアラファト時代から腐敗と蓄財の噂が絶えず(現に私の知っていた男も娘の壮大な結婚式で有名になった)、また最近はイスラエルに一方的に妥協していると言う情報が al jazeerah に流れたり、ネタニアフとムバラクに従属しているという批判も強く、また選挙もほとんどしてこなかったという意味で、民主化と言う点からも甚だその得点は低い。
そのアッバスが後ろ盾のムバラクを失い、特にムスリム同胞団などが政治的な力を発揮してくると、ハマスとの関係でも立場は不利になる可能性が強いと思われます。
もしかするとネタニアフがムバラクの失墜を恐れていた最大の理由はここにあるかもしれません。

第7に、湾岸でもカブース・オマン国王はまさしく老人だがその後継問題も出てくる可能性も想像され、その他の国は民主主義など聞いたこともない、というような国ばかりだから、いずれこれらの国に民主化の動きが波及しきても、それほど驚くことではないかもしれません。

第8に、スーダンも既に民主化の要求が起きており、南部が独立し、経済的に打撃を受けたりしたら、ここも大きな影響を受ける可能性の強い国でしょうね。

と言うことで殆どの国がエジプトの影響を受ける可能性を多かれ少なかれ有していると思われます。

名前を上げなかったのはレバノンくらいですが、ここは流石に独裁政権はないが、自分たちが言うほどの民主主義がある訳ではなく、仏から独立当時の宗派に基礎をおいた制度が、これまた制度的疲労を起こして長いのに、アラブ政治の波間にゆすぶられてると言うこともあり、根本的な制度の近代化を怠って来たところで(尤もそんなことをすると、それこそ国中が血の海になる可能性もないわけではない)、ここでも若い人たちから老人支配に対する拒否の動きが起きてくる可能性も低くはないと思います。

以上、特段の情報もなしに思いつくままに書いてみましたが、多分1月も経って読み返したら、赤面するのでしょうね。

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