中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

オマーン

湾岸諸国でのウイルス感染の蔓延

アラブ諸国でのコロナウイルスの感染については累次報告していますが、al sharq al awsat net は、湾岸での感染者は急増していて、これらの国々はその対策に全力を挙げだしたと報じています。

記事によると、湾岸諸国では25日、イランからの帰国者の間で、ウイルスの感染者が急増し、保健当局は感染国への渡航禁止(日本も入っている可能性あり)、帰国者の強制検査及び隔離を含むウイルス対策に取り組み始めたとのことです。

バハレン当局は、イランからの帰国者の中で、6人のサウイディ人女性を含め21名の感染者が出たと発表したが、彼らはUAEのドバイまたはシャルジャ経由とのことで、これまでの感染者が23名となったと発表した。

バハレン当局は学校及び幼稚園が2週間閉鎖されると発表した由。
又追って知らせのあるまでの間、国民のイラン渡航を禁止した由。

クウェイトではイランから帰国の女性1名及び3名の感染が確認され、隔離されたが、現在までの感染者は9名となった由。

他方、UAE航空当局は、取りあえず1週間イラン向けの全ての乗客、貨物便を停止するがさらに追加の可能性があると発表した由。

UAEではこれまで13名の感染者が出ており、北京以外の全ての中国への航空便の発着を禁止した由。

オマーンでも昨日2名の追加が出て、感染者が4名となった由。

オマーンはイラン在住者の帰国のために航空機の派遣を予定し、26日以降はイラン船による、貨物の輸入を禁止する由。

現在までのところ、サウディとカタールでは感染者は発表されていない。
これら湾岸諸国は基本的に富裕国で、医療体制もそれなりにしっかりしていると思うが(特にUAEは中東、アフリカの先進医療センターになることを目指していた)周辺のイエメン、イラク、シリア等は内戦、騒擾でコロナ対策まで手が回らないと思われるし、エジプトは最近人口が1億人を超えた超高密度の国で、富裕国ではないので、これらの国への感染が怖いですね。

新しいオマーンのスルタン

本日は中東にしては物事が極めてスムースに(こう言っては語弊がありますが)テキパキと進んでいます。

先ほどはイラン政府がミサイルの誤射でウクライナ機を撃墜したことを認め、謝罪したとお伝えしましたが、本日のもう一つの大きな出来事のオマーンのスルタン・カブースについても新スルタンが決まり、既に就任したとのことです。

新スルタンは、カブースの叔父さん(だと思う)にあたる、haitham ben tareq aal saiid(アラビア文字からの訳)で、これまで文化・遺跡大臣等を歴任し、スルタン・カブースとも近い関係にあった由。

https://www.alquds.co.uk/%d8%aa%d8%b9%d9%8a%d9%8a%d9%86-%d9%87%d9%8a%d8%ab%d9%85-%d8%a8%d9%86-%d8%b7%d8%a7%d8%b1%d9%82-%d8%a2%d9%84-%d8%b3%d8%b9%d9%8a%d8%af-%d8%b3%d9%84%d8%b7%d9%86%d8%a7-%d9%84%d8%b9%d9%85%d8%a7%d9%86-%d8%ae/
https://www.aljazeera.net/news/politics/2020/1/11/قابوس-بن-سعيد-سلطنة-عمان-وفاة-حداد

何しろ、故カブースは首相等も自分が兼轄し、後継者も指名していなかったこともあり、もしかすると後継者の決定は手間取るかとも思われましたが、非常に手際よく決定された模様です。

もっとも、これまでオマーンと言えばカブースと思われていたように、言葉は悪いが「カブースの一人商店」であったオマーンをどうやって統治していくのか、未だまだ未知数ではないかと言う気がします。

特に米・イランの対立から湾岸情勢が不透明になっている現在、新スルタンの手腕が問われることになりそうです。

これで安倍総理のオマーン訪問は予定通りで、新スルタンに祝辞を述べる最初の外国要人の一人に入りそうです。

オマーン外相のイラン訪問

イランと米国との対立激化で、湾岸情勢が緊張しているときに(トランプはイランと交渉しても良いという発言と合わせて、イランが戦争に訴えれば、イランと言う国は無くなるなどと脅迫しており、ロウハニ大統領も、イランは米国と交渉する用意はあるが、現在はそのときではない、などと発言している。
またイランが核合意の枠を超えて、合意で許された以上の濃縮ウランを保有しようとしているとか、イランは1年以内に核を保有できるか?などの記事も出始めた。
またペルシャ湾では米空部機動部隊が演習を始めたし、イラン軍も活動を活発化させるとの報道もある)、al sharq al awsat net とal jazeera net は、オマーンのアラウィ外相が突然イランを訪問し、ザリフ外相と会談したと報じています。

そのうちal jazeera net はオマーンのジャーナリストが、アラウィ外相が、和平イニシアティブを持って行ったか、米国からの何らかのメッセージを携行した可能性があるとしていると報じています。

このような見方が正しいか否かは、勿論不明ですが、従来からのオマーンの立場(GCCの中で常にイランとも関係を保ち、またGCC諸国間の内部対立からも距離をとり、更にはイスラエル首相の訪問を受け入れる等、アラブ諸国の中で極めてユニークな立場をとってきた)から考えても、また米イラン紛争が発生すれば、オマーンも深刻な影響を受けざるを得ないことから、少なくともスルタンの意向を受けて、和平の可能性を打診しに行ったことは十分考えられます。

オマーンと言う国が、米イラン対立の中で、どの程度の影響力を有しているかは不明ですが、緊張を深める湾岸で、一つの和平への糸口の可能性と言う意味で注目されます。

スルタンの後継者問題(オマーン)

アルジェリアが20年間のブーテフリカ時代の終わりを迎え、今後どうなるかが中の腐れるということを連日お伝えしていますが、中東の反対側のオマーンでも支配者の後継問題が起きつつある模様です。

勿論どこまで正確な話かは不明ですが、確かスルタンは癌の治療もしており、このような心配が出てきても、おかしくはないかと思います。

al qods al arabi net は、仏le figaro紙を引いて、これまでオマーンの安定の柱(国内的安定はもとよりだが、イラン米国等も親密な関係にあり、イエメン内戦の政治的解決等地域問題でも、穏健かつ積極的な役割を果たしてきた)であったスルタン・カブスの後継者の問題が出てきているとしています。

記事によると、スルタンは現在79歳で、その治世は49年に及ぶが、彼は(確か首相兼任)でオマーンの政治で圧倒的な力を示してきたが、子供も居なく皇太子も居ないために、彼の後がどうなるかが深刻な問題になりつつあるとしています。
(そしてどこか昔の中国の清朝だったかの皇帝が宮殿の額の後ろに誰も見れない後継者の名前を書いた書簡を安置していた、と言う話を想起させる話ですが)スルタンは、マスカットの宮殿とサララの宮殿(夏の宮殿になるのか?)の双方の金庫に厳重に封印した書簡をしまっていて、それには後継者の名前が書いてあるとのことです。

スルタンに万一のことがあった場合には、王族間でその後継者を協議することになるが、協議がまとまらなければ、これら書簡を開くことになる由。
オマーン人はできればスルタンが生前後継者を指名することを望んでいる由。

また問題としては、多くのオマーン人が、サウディとUAEがオマンに対する野心を有していることだとして、昨年イスラエル首相ネタニアフが、モサド長官とともに突然オマーンを訪問したのは、スルタンとしてこのような事態の可能性に備え、イスラエルの協力を確保しておこうとの深謀遠慮があったとみられている由。

サウディとUAEのオマ-ンに対する圧力

al qods al arabi net は、米Stratfor(アラビア文字から)が、サウディとUAEがオマーンに対して、対イラン、カタール政策等を変更し、彼らの主導に従うように圧力をかけていると報じています。

このStratforと言うのが中東に関して、どの程度情報があるのか知りませんが、オマーンの湾岸における若干特異な立場に鑑みれば、十分あり得る話ですので、記事の要点のみ次の通り。

  • 米ネットは、オマーンが湾岸諸国の争いで中立の立場を取り、イランとも関係を維持していることに対し、トランプの対イラン制裁もあり、サウディとUAEがオマーンの立場を変えるように、圧力を加えていると報じている。特にオマーンは、GCC湾岸協力評議会を湾岸連合に変えるとのサウディ等の立場に反対したことで、高い代償を払っている由。
  • これに対して、オマーンはその政策にバランスを保つことの経験を有しているし、国際的、地域的にその立場についての支持を要請するだろうとしている。
  • オマーンは、昨年カタールを包囲し孤立化させるとのUAEの政策に同意せず、カタールとの関係を維持し、さらにはイランとの外交、通商関係を維持している。
  • イエメンに関しては、オマーンは和平交渉を促進するためにすべての勢力との関係を維持し、また(南イエメンの)マハッラでの影響力をUAEと争っている。このマハッラ県はオマーンに近く、かってはオマーンの影響圏であったが、UAEが軍事的な圧力を強めている。
  • これに対して、サウディとUAEはオマーンが地域内問題について、より柔軟に両国の政策を支持し、イランとの通商を停止し、hothyグループとの関係を断ち、カタール包囲に加わることを求め、圧力を加えている。
  • 両国はオマーンに対する圧力の手段を種々有しているが、一つは米国に対して、オマーンがイラン包囲の「弱い環」をなしており、イランの立場を助けることになっていると説得することである。これに失敗しても、UAEに居住するオマーン人や企業に圧力を加えることができる。サウディもオマーンに3億1000万ドルの投資ファンドを有している。
  • さらに両国はスルタン・カブースの後継問題を利用することができ、誰がその後継者となるか慎重に見極めようとしている。
http://www.alquds.co.uk/?p=1006982

オマーンとイランお関係は、イラン皇帝時代に、オマーンのドファール地方で共産系ゲリラの反乱があり(当時の南イエメンが支援)、これに対して、イランが軍を送って、反乱の鎮圧を助けた時以来のもので、現在でもイランとは密接な関係を有している。
イエメンに関しても、このブログでも紹介した通り、オマーンは内戦の双方とも関係を有し、オマーンで交渉が行われたこともあった。
なお、最後の所のスルタンの後継者問題と言うのは、スルタンは確か70年以降ほぼ独裁的な権力を抑えていて(確か首相も彼が兼任、一時は長いこと、外相も兼任し、実際の実務を外務担当国務大臣が預かってきたこともあった)、実子もいないことから、お年寄りになっていることもあり…確か最近では各種首脳会議への出席もめっきり減っている印象・・・・、その後継者がどうなるのかが前から注目されていた)
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