中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

ムスリム同胞団

反ムスリム同胞団集会と同胞団支持の集会(カイロ)

2日ほど前に、世俗主義者、左派、リベラルなどの勢力が、24日(金曜日)反ムスリム同胞団の集会を計画しているが、賛同者が少ないという報道があり、それでは特にご報告する必要もないと思っていましたら、24日付のal arabiya net と al jazeera net は、24日それらの勢力が、8月24日百万人集会と称して(エジプト人も大げさな名前が好きになりましたね!)カイロのアッバシーヤ広場から国防省、大統領府へかけて集会を計画していると報じています。

 他方ムスリム同胞団を支持する勢力及びイスラム主義勢力(サラフィー主義者か?)がこれに対抗して、例のタハリール広場で合法性を守る100万人集会を計画していると報じています(こちらの方は金曜礼拝後に集まる由。世俗主義の方の時間は不明)

 いずれにしても、問題はそれぞれの勢力がどの程度の人間を集められるかが焦点なので、明日になればその辺もわかるでしょう。

http://www.alarabiya.net/articles/2012/08/24/233888.html
http://www.aljazeera.net/news/pages/a5da461d-cc8b-47c3-b4e5-92f167964dd7?GoogleStatID=1

エジプト・イスラエル関係(エジプトでの抗議デモ)

エジプト兵の殺害に関連してのエジプト国内の抗議はまだ続いている模様で、26日の金曜日にも複数の県庁所在地で抗議デモが行われたとのことです。

特にカイロでは、いくつかのモスクでの金曜礼拝の後、繰り出した群衆がイスラエル大使館の前に集結して、反イスラエルのスローガンを叫んだとのことで、これに対して警官隊も兵員輸送車をはじめ多数動員されて大使館の前を閉鎖したとのことです。

また群衆は郊外のマアディにあるイスラエル大使公邸にも押しかけたとのことです。

今回のデモでは、ほとんどの政治勢力が参加したとのことですが、カイロでも地方でもムスリム同胞団の参加が目立ったとのことです。これはアレキサンドリアのデモでも同様で、同胞団及びイスラム勢力がデモ隊の多くを占めていたとのことです。

今後の政局で、同胞団の影響力が注目されているときに、反イスラエルデモで特に同胞団の動員が目立つというところが気になります。

http://www.alquds.co.uk/index.asp?fname=latest\data\2011-08-26-14-23-37.htm

ムスリム同胞団の動向

本日は既にエジプトのムスリム同胞団に関するニュースを書きましたが、その後エジプト及びシリアにおけるその動向について、短いニュースを。

いずれもal jazeerah net の16日付の記事によるものです。

.┘献廛

ムスリム同胞団は政治団体結成の自由が復活し次第、政党を結成するつもりであると声明した。
同胞団幹部は、これまで同胞団が政党を結成しなかったのは、その結成が与党が同意したものしか認められなかったからであると説明した。
他方同胞団の報道担当は、同胞団としては大統領選には出馬しないことを確認し、同胞団も他の政治勢力と同様に政治活動の自由はあるが、政党結成に若干の時間を要すると述べた。

▲轡螢

シリアの同胞団は平和的改革の要求を再確認した。
これは前同胞団総管理者(注:アラビア語からの直訳)がアサド大統領あての書簡で再確認したもので、シリア政府に対して現在の腐敗した体制を改革して自由と公正と尊厳に基づいた国民の進歩を実現することを要求している。
また同胞団は先月現総管理者の名前で、アサドに対してチュニジアの例に倣って祖国のために民衆の列に復帰することを呼び掛けた。
また現総管理者は最近、アサドに対して現政権が何時までも民衆の抑圧を続けるならば、抗議運動と非暴力不服従を行うことになるだろうと警告した。
なお同胞団は2年前に反対党等の野党連合から離脱し、野党活動を停止していたが、その2周年目に反対活動を再開するか否か検討中であると声明している。

http://www.aljazeera.net/NR/exeres/B5B8A6B4-870C-4BEA-8E8A-F31A00DF98FA.htm?GoogleStatID=1
http://www.aljazeera.net/NR/exeres/34924480-07B0-41AC-9014-51AB58A5F6EC.htm?GoogleStatID=1

憲法改正員会の構成に関するコプトからの異議申し立て(エジプト)

エジプトの軍事評議会が憲法改正のための草案作りのために委員会を設置したことは先ほどご紹介したばかりですが、その構成について早速コプト(キリスト教徒)から異議が出ているようです。


al qods al arabi net の15日付の記事は、コプトのNPOである「人権のためのエジプト連盟」の議長が15日声明を発し、数百万を数えるコプトは憲法委員会の構成に反対すると表明したと報じています。


それによると、同委員会にはコプトを代表する委員がいないのに、ムスリム同胞団を代表する委員が含まれているとして、憲法の改正の委員会には特定の宗教やイデオロギーの代表を含むべきではないとしているとのことです。


軍事評議会が任命した委員は前 majulis dawla (国家評議会とでも訳すのでしょうか?申し訳ないがその性格不明で、誰かエジプトに詳しい人教えてください!)議長の tareq al bashry 以下8名の委員で構成されていますが、上記NPOはそのうちの1名は尊敬される法律家ではあるがコプトの代表ではない、と述べているところから多分コプト教徒ではないかと思われます(最高憲法裁判所の samy yusef )。
NPOはまたメンバーの sobhy salem は同胞団のメンバーで、委員長の bashry は同胞団ではないが、イスラム的傾向の強いものであるとしています。

記事の要点は以上ですが、ムスリム同胞団が表に出てこようが来まいが、現実の政治の中で既にその存在が無視できないものであることを示していると同時に、今後のエジプトの政治においてもイスラムと政治、イスラムと国家の問題は、少数派のコプトの処遇の問題とも絡んで、エジプト政治の中心課題の一つであることを示しているのではないでしょうか?


http://www.alquds.co.uk/index.asp?fname=latest/data/2011-02-15-14-21-55.htm

エジプト情勢(今後の内政)

ムバラクが辞任しましたが、今後のエジプトがどこへ行くのか、余り新しい情報が入ってこない段階で取りあえずの考えをまとめておこうと思います。

後から読み返してみれば、おそらくとんでもない見当違いの意見であることは間違いないと思いますが、時々はそのような作業も後から反省するための材料として必要でしょう。

先ず内政の方ですが、タハリールの連中もオバマも真の民主主義を、と叫んでいますが、それがそう簡単でないことだけはまず確実でしょう。先にジャスミン革命とやらを成し遂げたチュニジアでさえ、未だその行き先は不確定で真の民主主義が実現するかは不透明です。

チュニジアに比べれば、エジプトは大国で、社会や国のあり方もずっと複雑で、この「大国」は巨大タンカーと同じで、そう簡単に舵の切り替えができるとは思えません。何しろ基本的にはナセル革命の1952年以来の軍事政権ですから。

前にも何度か書いたかと思いますが、革命を起こす時には組織の無い民衆(仏革命が典型。今回はfacebookなどで集まった青年たち)の熱情で旧体制は壊れるが、その後如何なる新体制を作るかと言うことになると、革命勢力の間の長く血生臭い闘争を通じて、組織力のある勢力が他の勢力を排除して権力を独占する、と言うのが人類の長い歴史の教訓だったかと思います。

勿論情報社会の現代は昔とは違うと言う意見もあるだろうし、18日間と言う長い期間を通じて青年達の間に連帯と組織が生まれてきた可能性もあるとは思います。
しかし技術や何かが変化したところで、人間の社会の基本的な枠組みが、根本的に変わるると考えるのはいささか早計ではないかと思っています。

まず現状はと言えば、軍が鍵を握っていることは誰の目にも明らかで、当面は軍(除くムバラク、おそらくスレイマンも)を中心にいろいろの勢力が今後の体制の在り方について協議、離合集散、喧嘩をしながら、徐々に新しい体制が生まれて行くのでしょうが、その中で軍(もしこれが今でも一枚岩であるならば)の思惑はかなり確実と思われます。

要するに頭に誰を持ってこようが、基本的には軍が最重要な物事の決定権を保持し(と言うことは別な言葉で言えば、「支配し」)、軍人の特権待遇もできる限り維持すると言うことでしょう。

その為には、可能ならば軍が頭につくことが最も望ましいが、そうでなければなるべく軍の意向を忠実に実行するおとなしい人物だが、民主主義の顔として尤もらしい人物が最適と言うことになります。

勿論このような軍の希望が実現するかは解らず、少しずつ妥協して行かざるを得ない可能性も強いと思いますが、軍が真の民主化のために喜んで(進んで)自らの特権的地位を放棄するとは考えない方が無難かと思っています。
軍が特権と最大の発言権を有しているというこの体制はナセル革命以来のもので、チュニジアの軍とはあり方が根本的に違っています。

軍の出方を見る一つの観点は軍情報部、警察、情報機関と言う一連の治安維持機関による警察国家的体質を、果たして軍が解体する用意があるのか、またどの程度真剣に速やかにこれをやるかです。と言うのはこの秘密警察的体質はなにもムバラクが作ったものではなく、ナセル以来のエジプト軍事政権の体質そのものだからです。

このような秘密警察を使って反抗を力で抑え、翼賛議会で表面的な民衆のお墨付きを得ると言うやり方が、これまでの伝統でした。サダト以来若干の手直しはありましたが、基本的な体制、体質は昔のままです。

その意味でもチュニジアの軍の場合とは、歴史的に根本的なところで違っています。
これから軍がこのような体質を改めていけるのか誠に興味深いところです。

反対派の象徴として出てきたエルバラダイ(それからアムル・ムサもか?)などは、もしかしたら当面の軍部支配を民主化と言う色をつけるための頭として有効な人かもしれないし、もしかしたら軍にはそのような価値観を認められて頭について、内部から改革のできる人かもしれません。国内に基盤のない彼の役割はそんなところかなという気がします。

軍と並んで、今後最も重要な役割を果たしそうなのが、ムスリム同胞団です。と言うか、今のところ同胞団と軍以外にしっかりした政治的組織を有し、常に多数の支持者を動員できる組織の存在を知らないのです。

チュニジアの場合、労働組合がかなり重要な役割を果たしましたが、エジプトの場合労働組合、職能組合、婦人・青年組織等も政府の弾圧にもかかわらず同胞団系がしぶとく生き残り、それ以外は殆ど無力と言うのが私の昔の知識ですが、その後変化があるのかもしれません。

今回の革命でも、同胞団は自らが先頭に出てイスラム原理主義に対する一般国民のアレルギーを刺激せずに、政府に弾圧の口実を与えないが、スレイマンとの対話には参加し、その後この対話が余り人気がないと見るや更に反政府の姿勢を強めると言う、はなはだ柔軟かつ巧妙な戦術をとった様な気がします。

また当初都市中産階級が圧倒的に多かった抗議運動の参加者が会を重ねるごとに労働者、貧困層をも加えて、数的に飛躍的に増大していった背景には同胞団の動員もしくは指示があったのではないかと疑っていますが、その辺は報道がないので不明です。

軍がスレイマンとの対話に同胞団を加えたのも、おそらくはこのような同胞団の実力をも考慮してのことだったのではないかと思います。

ナセル以来の軍事政権は同胞団を最大の敵として、過酷な弾圧を加えてきましたが、軍事政権にとっての最大の危険分子はサイイド・コトブ(ナセル時代に死刑)の系統をひく過激な原理主義者で、その多くは同胞団が穏健化(と言うか政治団体化)することに反発して、分離独立して行きました。

その残りの政治運動を通じての目的達成と言う主流派とは、特にサダト大統領は一面協力(政権に利用)と言う政策をとってきました。同胞団が余り大きな力や威信を獲得して政権の独占体制に脅威とならない限り、これを利用すると言うのがムバラクの下でも基本的な考えであったかと思います。

と言うことは新体制でムスリム同胞団が何らかの役割を果たすことはいわば必然だと思います。問題はそれがどの程度のもので、同胞団が今後エジプトの政権の中で何を求めていくか(要するに、トルコ流の穏健イスラム主義の国家を求めるのか、イラン流の原理主義国家を求めるのか、ということ)によることになると思います。

イラン流(と言ってもあそこはシーア派だから、どちらかと言うと昔のスーダンと言った方が良いか?)の原理主義国家を求めるとなると、世俗的なエジプト国民との関係は勿論、世俗主義の権化たる軍との関係も極めて緊張したものになるでしょう。

何しろムバラク政権下で厳しく弾圧され、表に来なかった同胞団のことですから、現実の組織力、支持勢力、内部の潮流等不明なことだらけで、それらの点は今後徐々に明らかになって行くとしか言いようがないと思います。

最後のその他の民主化勢力ですが、これは雑多なうえに、まとまりもなく、これを一つの勢力として考える訳にはいかないのではないかと思います。

タハリール広場に集まった民主化勢力の中に左翼勢力と言う表現がありましたが、これが何を指しているかは明らかではありません。
エジプトはイラクと並んでその昔、共産党が活躍した数少ない中東の国ですが、彼らはそれこそ本物の少数派だと思います。

もう一つナセル革命の中の左派の伝統を引く連中(例えば昔のハーレッド・モヒェッディーンの系統をひく者たち)もいましたが、彼らも影響力の無いold marxists と思います。
他方 facebook で集まった若者達になると、何らかの組織があるのか、どういう思想傾向なのかさっぱり解りません。尤も、これらの若者は日本の青年と同じで、既成観念の理念や組織等の基準で判断する範疇を越えた新しい連中で、組織概念にしても全く別の観点から考えなければならないのかもしれません。

そうなると年寄りには評価はほとんど不可能です。

しかし、今回のタハリール広場で示した、彼らの集客力(と言ったら言葉が悪く動員力と言うべきですが)、弾圧にも屈しない強い精神力と行動力、自発的に人間の盾やロジを組織した組織力等を見ると、彼らが新体制で何らかの大きな役割を果たさないはずがないと思えるのですが、それがどういう形でどう組織されてくるかと言うところが、今の段階では見えてきません。

と言うことで、今の段階で考えると必然的に軍とムスリム同胞団の力が現実のものとして圧倒的に見えてくるのですが、いずれにしてもその辺は今後の進展を見なければ何も言えないと言うことになるのでしょう。

下らない長文にここまでお付き合いいただきご苦労様です。

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